講義概要・シラバス

講義概要・シラバス

宗教と平和 (戦争・正義・平和 -宗教多元社会の中で-)

概 要

 この授業は,現代世界における紛争,戦争,テロなどの問題を比較宗教学的な視点から考察し,異なる信仰や価値観を持つ者同士が,地域社会や国際社会において,いかに共存・共生していくかを考えるために必要な知識や認識を得ることを目的としています。 
 この授業はブレンディッド・ラーニングとして実施され,主体的に学びたい方のためのものです。この授業は,教室での対面授業8回,オンデマンド授業7回によって構成されています。詳しいことは初回の授業で説明します。下記「授業計画」において各オンデマンド授業に付されている日付は課題提出の締め切り日を示しています(教室での授業はありません)。都合のよい時間にオンデマンド動画で学習し,各回で示された課題を期日までにe-class(同志社大学のラーニング・マネージメント・システム)上に提出していただきます(各回とも月曜日12:00が締め切りです)。 
 また,学びの成果を確認し,理解を深めるために教室での対面授業を行います。教室授業は,小グループでのディスカッションと発表,全体討議によって構成されるアクティブラーニングが中心となります。この授業は,教室授業の回数が少なく,学習時間の自由度は高いですが,学習量は決して少なくありません。リーディング・アサインメントもあります。真剣に学びたい人のみ,履修するようにしてください。1週間に2回授業がある形になりますので,春学期の半分で授業は終了します。 
 20世紀には二つの世界大戦をはじめ様々な戦争や紛争が起こり,また,21世紀はじめには9・11同時多発テロ事件が起こりました。それらの背景や影響を,特に宗教思想との関係に注目して考えていきます。ポスト冷戦時代の地域紛争に関しては,ユダヤ教・キリスト教・イスラームの相互関係が不可避的に問われてきました。そうした一神教に特徴的に見られるロジックを分析すると同時に,一見,宗教対立と見えるものが,いかに政治的に偽装されたものかであるかにも,注意を払っていきたいと考えています。  
 戦争に対する考え方を歴史的に俯瞰するために,キリスト教史において現れた,戦争をめぐる三つの類型,すなわち,絶対平和主義(pacifism),正戦(just war)論,聖戦(holy war)論を取り上げます。ただし,それがキリスト教世界内部の論理として自己完結しないように,他の宗教,特にイスラームの戦争理解や正義理解,および,日本における戦争・平和理解を参照軸として用います。 
 日本の論壇では,一神教を独善性の象徴と見なし,多神教的思考にこそ世界平和の鍵があるという安直な主張がいまだに繰り返されています。こうした平板な文明論を批判的に克服していくために,宗教と暴力の関係を多元的に理解していきます。 また,近代日本が戦争への道を歩み始めたとき,そこには宗教および宗教政策が深く関与していました。グローバルな文脈の中で,日本の近現代史における問題点も掘り下げていきます。


到達目標

 学生が,現代世界における紛争,戦争,テロなどの問題を比較宗教学的な視点から考察し,異なる信仰や価値観を持つ者同士が,地域社会や国際社会において,いかに共存・共生していくかを考えるために必要な知識や認識を得ることを目的とします。

 

授業計画

1(04/13) (教室 1)導入──なぜ人は戦うのか? ☞ 資料 resume01.pdf

 

 
2(04/19) (オンデマンド 1)戦争を理解するための諸概念──20~21世紀における戦争を踏まえて ☞ 資料 resume02.pdf

 

 
3(04/20) (教室2)アクティブラーニング

 
4(04/26) (オンデマンド 2)政治と宗教のはざまの暴力──古代世界から現代まで ☞ 資料 resume04.pdf

 

 
5(04/27) (教室 3)アクティブラーニング

 
6(05/10) (オンデマンド 3)絶対平和主義──非暴力の実践 ☞ 資料 resume06.pdf

 

 
7(05/11) (教室 4)アクティブラーニング

 
8(05/17) (オンデマンド 4)正戦論──「正しい」戦争の模索 ☞ 資料 resume08.pdf

 

 
9(05/18) (教室 5)アクティブラーニング

 
10(05/24) (オンデマンド 5)聖戦論──古くて新しい戦争モデル ☞ 資料 resume10.pdf

 

 
11(05/25) (教室 6)アクティブラーニング

 
12(05/31) (オンデマンド 6)政教分離──暴力を抑止するための知恵 ☞ 資料 resume12.pdf

 

 
13(06/01) (教室7)アクティブラーニング

 
14(06/07) (オンデマンド 7)平和と正義を実現するための課題──見えざる偶像崇拝,犠牲のシステム ☞ 資料 resume14.pdf

 

 
15(06/08) (教室 8)まとめ──寛容の文化を求めて,授業内評価 ☞ 資料 resume15.pdf

 

成績評価基準

・オンデマンド授業での課題提出(各回5%×7回) 35%
 課題において求められていることを的確に理解し、自分の意見をしっかりと表現してください。
・教室での対面授業への出席(各回5%×8回) 40%
 ディスカッションでの積極的な貢献を評価します。なお、10分以上の遅刻は出席としませんのでご注意ください。交通遅延等,不可避の事情があった場合には証明書を出していただければ考慮いたします。
・期末試験 25%
 授業で扱った内容の内、基本的な項目を出題します。

 

テキスト

小原克博 『一神教とは何か-キリスト教,ユダヤ教,イスラームを知るために-』 (平凡社、2018)
リーディング・アサインメントとして使用します。

※参考文献は,オンデマンド動画,教室授業の中で適宜紹介します。