講演「胎児の人権、出生前診断」(同志社大学 赤ちゃん学研究センター 定期セミナー)同志社大学 学研都市キャンパス、2016年9月5日
【講演要旨】
胎児の人権をめぐる倫理的議論は「パーソン論」として展開されてきた。それは人間としての尊厳を与えられる境界線をめぐる議論であるが、医療倫理(生命倫理)だけでなく、法制度や宗教的な価値観とも密接に関係しながら論じられてきた。胎児の人権をめぐる具体的な事例として、米国においては中絶論争をとりあげ、その争点と共に、それがいかに大きな社会的関心事となってきたかを示したい。
また、胎児の人権や中絶問題に関係する別の課題として出生前診断、とりわけ、比較的近年あらわれてきた診断方法における倫理的課題をとりあげる。胎児超音波検査によるNT (nuchal translucency)の計測、新型出生前診断(無侵襲的出生前遺伝学的検査、NIPT)を議論の対象としたい。いずれも患者(妊婦および家族)の「知る権利」を拡大するという意味において「自己決定権」を強化している。生殖補助医療の技術的発展と患者の自己決定権の拡大の相乗効果がもたらす未来についても展望したい。