世界キリスト教情報 第1679信(2023.04.03)
◎「聖週間」始まる=教皇、バチカンで「受難の主日」ミサ
◎教皇が呼吸器感染症で数日入院=バチカン発表
◎フィンランドのNATO加盟確定、トルコが批准
◎ダヴィデ像を生徒に見せ校長辞任=米フロリダ州の騒ぎに専門家の対応は?
◎イスラエル議会、ユダヤ人定住禁止の法律を修正
◎「聖週間」始まる=教皇、バチカンで「受難の主日」ミサ
【CJC】カトリック教会の典礼暦は4月2日、復活祭直前の1週間「聖週間」を迎えた。初日「受難の主日」、教皇フランシスコは、バチカンでミサをおこなわれた。バチカン・ニュースの報道を紹介する。
呼吸器感染症のために入院していたローマのジェメッリ病院を前日4月1日に退院した教皇は、この朝「受難の主日」のミサをバチカンの聖ペトロ(サンピエトロ)広場で行われた。
ミサには、およそ6万人の信者が参加した。
「枝の主日」とも呼ばれる「受難の主日」は、イエスのエルサレム入城の際、民衆が歓呼してイエスを迎え、その足元に服や木の枝を敷いた出来事を思い起こし、ミサの前にオリーブやしゅろなどの枝を手に宗教行列が行われる。
この宗教行列で用いられる「枝」の中には、「パルムレロ」と呼ばれる、しゅろの葉を編んだものもある。バチカンには、16世紀、教皇シスト5世の時代より、イタリアのリグーリア地方から「パルムレロ」がもたらされてきた。
広場に白いジープで到着した教皇は、オベリスク前でミサ参加者らが持つ枝を祝別。この後、聖職者・修道者・信徒の代表らが、賛歌の調べの中、枝を掲げ、大聖堂前の祭壇に向かって行列した。
続いて捧げられたミサでは、教皇は「開祭」「ことばの典礼」「閉祭」を、枢機卿団の副主席レオナルド・サンドリ枢機卿が「感謝の典礼」を司式した。
ミサ中の福音朗読では、マタイ福音書から主の受難(27、11~54)が朗読された。
教皇は説教で、「わが神、わが神、なぜわたしをお見捨てになったのですか」(マタイ27、46)という、十字架上のイエスが受難の苦しみの頂点で叫ばれた言葉を観想された。
「神から愛された御ひとり子イエスが、これほどの状況までに至ったのはなぜなのか。その答えはただ一つ、わたしたちのためであった」と教皇は強調。
「イエスはわたしたちと共にいるために究極まで連帯された。それはわたしたちの誰一人、孤独や悲嘆の中に見捨てられないためであった」と述べられた。
十字架上のイエスは絶望にとらわれたままでいることなく、神に祈り、神にご自身を託される。「『わたしの神よ、わたしの神よ、なぜわたしをお見捨てになるのか』(詩編22、2)という詩編の言葉を叫びながら、イエスはご自身の霊を御父の御手にゆだね(参照=ルカ23、46)、見捨てられた中で神に信頼された。それだけではない。その究極の状態の中で、ご自分を見捨てた弟子たちを愛し続け、ご自分を十字架につけた者たちを赦された」と教皇は指摘。
「こうして、わたしたちの悪の深淵はより大きな愛にひたされ、分裂は交わりに変わり、離れていたものは近づき、闇は光となり、わたしたちの惨めさはいつくしみに抱擁された」と語られた。
「イエスのわたしたちにあまねく捧げられた愛は、わたしたちの石の心を憐れみと優しさ、同情に満ちた肉の心に変えることができる。見捨てられたキリストは、見捨てられた人たちを探すようにとわたしたちを動かす。なぜなら、彼らの中には、貧しさだけでなく、見捨てられたイエス、わたしたちを救うため人間の状態の奥底まで降りて来られたイエスがおられるからである」と教皇は話された。
「今日、人々の間に、多くの『見捨てられたキリスト』がいる」と述べた教皇は、「イエスはこれらの見捨てられた人たちを見つめ、心にかけるようにと願われる。拒絶され、疎外された人たちはキリストの生きたイコンだからである」と説かれた。
ミサの終わりに、教皇は「お告げの祈り」を唱えられた。
そして、儀式終了後、教皇は専用ジープで、聖ペトロ広場と広場前の大通りにあふれる巡礼者たちの間を一巡された。
◎教皇が呼吸器感染症で数日入院=バチカン発表
【CJC】ローマ教皇庁(バチカン)は3月29日、教皇フランシスコ(86)が呼吸器の感染症でローマ市内のアゴスティーノ・ジェメッリ総合病院に入院した。バチカン・ニュースが発表した。
バチカンのマッテオ・ブルーニ広報局長によると、教皇は数日前から呼吸困難を訴えていた。同日午後にアゴスティーノ・ジェメッリ総合病院で検査を受け、呼吸器の感染症が判明した。感染症は新型コロナウイルスではないとしている。
バチカンは当初、教皇が「事前に予定されていた検査のため病院に入った」と説明していたが、夜に発表内容をあらためた。各国メディアからの問い合わせが相次いだためとみられる。
マッテオ・ブルーニ広報局長は3月31日午後、教皇はご自分の病室に付属する礼拝堂で祈りのための時間を持たれ、その後、聖体を受けられた、と発表した。
次いで教皇は、ジェメッリ総合病院の小児腫瘍科の病棟を訪問し、生後数週間の男の子に洗礼をさずけられた。
この訪問の際、教皇は居合わせた医療スタッフらに向かい、キリストの十字架を毎日証しするように召された人たちの肉体上の苦しみや精神的苦悩を和らげることに貢献するすべての人々への思いを述べ、その自己犠牲と奉仕の精神に感謝を表された。
教皇はこの訪問の後、ご自分の病棟に戻った。
教皇フランシスコは、4月1日午前、ジェメッリ総合病院を退院、バチカンに戻った。
退院の朝、教皇は、同病院の母体であるサクロ・クオーレ・カトリック大学の総長をはじめ、同病院責任者、そして教皇を担当した医師や看護師ら医療スタッフらに感謝を述べられた。
午前10時半過ぎ、ジェメッリ病院を後にされた教皇は、病院の外で車を止められ、待機していた患者や家族、報道陣らに挨拶された。
人々と言葉を交わす中で、教皇は、前晩、娘を亡くし深い悲しみの中にある両親に寄り添い、祈りを捧げられた。
この後、教皇はローマ市内の聖マリア大聖堂に向かい、同大聖堂に伝わる聖母子画「サルス・ポプリ・ロマーニ」(ローマ人の救い、の意味)の前でしばし祈られた。
教皇はこの祈りを通して、ジェメッリ病院で出会った小児腫瘍科と小児神経科の子どもたち、また病気や、親しい人々の喪失のために苦しむすべての人々を聖母に託されたという。
教皇は、同日午前11時半頃、バチカンに戻った。
◎フィンランドのNATO加盟確定、トルコが批准
【CJC】アンカラ発ロイター通信によると、トルコ議会は3月30日、フィンランドの北大西洋条約機構(NATO)加盟を認める法案を承認した。これでNATO加盟30カ国全ての批准手続きが完了し、フィンランドのNATO加盟が確定した。
トルコのエルドアン大統領は今月、フィンランドがテロ対策強化や防衛関連輸出の自由化で具体的な措置を講じたと評価。議会がフィンランドのNATO加盟批准手続きを開始すると言明していた。
フィンランド政府はトルコ議会の採決を受けて声明を出し、「NATOへの加盟はフィンランドの安全保障を強化し、バルト海地域と北欧の安定性と安全性を高める」とした。
フィンランドのマリン首相はトルコ議会の採決後、「フィンランドは現在も将来もスウェーデンと共に立ち、同国の申請を支持する」と述べた。
スウェーデンに関してはハンガリーでも、加盟承認を巡る議会の採決は予定されていない。
NATOのストルテンベルグ事務総長は、トルコとハンガリーに対し、両国の申請を批准するよう促している。
米国や加盟国は7月11日にリトアニアで開催されるNATO首脳会議で、両国が正式に加盟することを期待している。
米国務省は、トルコのフィンランド加盟承認を歓迎すると発表。スウェーデンの加盟についても迅速に批准するよう求めた。
NATOのストルテンベルグ事務総長はトルコとハンガリーに対し、両国の申請を批准するよう促している。
◎ダヴィデ像を生徒に見せ校長辞任=米フロリダ州の騒ぎに専門家の対応は?
【CJC】米フロリダ州の小中学校で、イタリア・ルネッサンスの代表的作家ミケランジェロによる「ダヴィデ」像の写真を教師が授業で6年生に見せ、校長が辞職に追い込まれた問題で、像を所蔵するイタリア・フィレンツェの美術館が当の学校の教師や生徒たちを招待した。
英メディア「BBC」によると、ダヴィデ像の写真が「ポルノ」的だという親の苦情が、校長の辞職につながったという報道を受けて、フィレンツェのアカデミア美術館のセシリー・ホルベルク館長は、ルネッサンス美術を学んでいたクラスを同館に招待した。
ホルベルク館長は、校長は「ほめられるべきで、罰せられるべきではない」と指摘。「ダヴィデ像は紛れもなく、ルネッサンス期の芸術と文化の象徴で、ダヴィデ像を見せずにルネッサンスの話をするなど意味がない」と述べた。
旧約聖書に登場するダヴィデを全裸で表した全身像は、欧州で史上最も有名な美術作品の一つ。神への信心と石を投げるための武器だけを手に、巨人ゴリアテに立ち向かったその姿を刻んだ全長5メートル17センチの彫像だ。
米フロリダ州タラハシー郡のタラハシー・クラシカル学校でこのほど、ルネッサンス美術を11歳と12歳の生徒に教える授業で、ダヴィデ像が紹介された。同校は、独自の歴史古典教育を重視する認可校。
この学校では例年、ダヴィデ像を生徒に見せる際には事前に保護者へ連絡していたものの、今回は連絡をしていなかったことから、1人の親が学校に抗議した。ほかに2人の親が、事前連絡が欲しかったと学校に苦情を伝えたという。同校のホープ・カラスクイラ校長は3月23日、辞任するか解雇されるか選ぶよう学校の理事会に告げられたため辞任したと、地元紙タラハシー・デモクラットに明らかにした。
◎イスラエル議会、ユダヤ人定住禁止の法律を修正
【CJC】エルサレム21日発ロイター通信によると、イスラエル議会は3月21日、ヨルダン川西岸の四つのユダヤ人入植地を巡り、退去を命じた2005年の法律の修正案を可決した。
法律の特定条項を削除することで、ユダヤ系住民は立ち退きを命じられたこれらの入植地にイスラエル軍の承認を条件に戻ることができる。
イスラエル政府とパレスチナ自治政府の当局者は19日、情勢悪化につながる言動の自制で一致したばかり。ネタニヤフ政権の強権的な姿勢が浮き彫りになった。
米国務省のパテル副報道官は「緊張が高まる中での法改正は挑発的だ」と指摘。イスラム教のラマダン(断食月)やユダヤ教の過越祭、キリスト教の復活祭休暇に向け情勢を沈静化しようとする取り組みに逆行すると非難した。
欧州連合(EU)も緊張緩和の努力に逆効果をもたらすとの声明を発表した。