世界キリスト教情報 第1658信(2022.10.31)
- モスクワ市職員の3分の1が「国外逃亡」情報=ニューズウイーク日本版
- 実物大に再現した「ノアの箱舟」=米テーマパークに集まる天地創造説信者
- ヘルプマークは国旗の誤用?=スイス政府は抗議する意向なさそう
- 教皇、イタリアの「カトリック・アクション」の若者たちと出会い
- 教皇、ルクセンブルグのベッテル首相と会談
- 教皇、ソウルの繁華街で発生した転倒事故の犠牲者悼む
- 教皇、ポルノは「修道女さえ見る」と危険性を警告
- 《メディア展望》
◎モスクワ市職員の3分の1が「国外逃亡」情報=ニューズウイーク日本版
【CJC】ニューズウイーク日本版が10月29日伝えるところでは、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、ウクライナに派遣する予備役の部分的動員を発令したことを受け、モスクワ市職員の3分の1近くが1カ月の間に国外に逃れたと、地元メディアが報じた。
地元メディア「ネストカ」は、住宅や地域サービス、医療、教育など、大規模な部門の男性職員やIT部門の専門家たちが一斉に逃げ出したと、事情に詳しい関係筋の話として伝えた。
職員の多くは正式に辞職しておらず、関係当局に届け出もしていないという。「彼らはマグカップも洗わず、職場に私物を残したままいなくなった」と、ある情報筋は語っている。
プーチン大統領は9月21日、ウクライナでの戦闘に予備役30万人を動員すると発表。その後の2週間で、徴兵を避けるために市民37万人以上がジョージア、フィンランド、カザフスタン、モンゴルなど近隣国に逃れた。
10月中旬には、徴兵されたモスクワ市職員がウクライナで死亡したことで、同市職員が大量に辞職していた。
著名なロシア人ジャーナリストで元大統領候補のクセニア・ソブチャク(40)も、リトアニアに逃れた。同国首都ビリニュスの情報機関によると、26日朝に警察当局がモスクワにあるソブチャクの自宅を強制捜査したという。
ロシア国営「タス通信」は、ソブチャクのメディア担当者であるキリル・スハノフと共に刑事事件の容疑者として彼女を逮捕するよう、治安当局が命令を受けたと報じている。
◎実物大に再現した「ノアの箱舟」=米テーマパークに集まる天地創造説信者
【CJC】AFP通信(日本語)によると、米ケンタッキー州ピーターズバーグにある、実物大をうたう「ノアの箱舟」を再現したテーマパーク。進化論を偽りとする世界観を主張し、全米から天地創造説の信者が訪れている。
テーマパーク「アーク・エンカウンター」(箱舟との遭遇)とその関連施設「創造博物館」では、紀元前4000年ごろに神が文字通り6日間で天地を創造したとの信念が全面に押し出されている。
キリスト教福音派の信者たちが、約6500万年前の恐竜の絶滅といった、科学的事実に鋭く反論する壮観な展示を目当てにここへやって来る。
「進化論者は恐竜を利用して自分たちの世界観を誇示します。ですからその恐竜を、言うなれば取り返しているのです」と、「アーク・エンカウンター」と「創造博物館」の共同設立者マーク・ルーイ氏は語る。
同氏は肉食恐竜アロサウルスの骨格標本の横に立ち、ここでは恐竜について異なる見解を提示していると話した。「その大半は約4500年前、ノアの洪水で絶滅したのです」
創造博物館は2007年に開館した。資金は天地創造説を確固として信じる団体「アンサーズ・イン・ジェネシス」(創世記に答え)の募金活動と支援で賄われた。
2016年には、そこから約70キロ離れたウィリアムズタウンに「アーク・エンカウンター」がオープン。ノアの箱舟のレプリカは、聖書に記載されている通り全長150メートル、高さ15メートル、幅25メートルの大きさだ。
米世論調査会社「ギャラップ」が2019年に行った調査によると、米国人の40%は、神が人間を創造したのは今から1万年前にも満たない数千年前の出来事だと考えている。
米国における天地創造説を扱った著者で、ニューヨーク州立大学ビンガムトン校の歴史学者アダム・ラーツ氏は、米国で創造論者を自称することは、むしろ「より広い文化的分断における識別子」になると指摘する。
「例えば、『私は創造論者と言えると思います。なぜならポルノグラフィーが嫌いだし、人工妊娠中絶の権利やLGBTQ(性的少数者)の権利を認めたくないからです』といった具合です」
共同設立者のルーイ氏によると、このテーマパークと博物館に来るのは大半が共和党支持者だ。施設として候補者を支持することはすべきでないとしつつも、「今日の政治的争点を避けては通れない」と語った。
◎ヘルプマークは国旗の誤用?=スイス政府は抗議する意向なさそう
【CJC】スイス公共放送協会国際部として、スイスのニュースや情報を世界中に届けている「SWI」(スイスインフォ)が、日本の駅や車内で「赤地に白十字と白いハートをあしらったヘルプマーク」が、「あなたの支援を必要としています」であって、「私はスイスが好き」ではない。スイス国旗の誤用との指摘も挙がっているが、スイス政府が公式に抗議する意向はなさそうだ、とその背景を10月28日報じた。
ヘルプマークは「援助や配慮を必要としている方々が、そのことを周囲の方に知らせることができるマーク」。義足や人工関節を使用している、内部障がいや難病を持つ、妊娠初期など、外見だけでは分からない障がいや困難を抱えている人に配布している。このマークを身に着けた人には電車・バスで席を譲る、事故や災害時に避難をサポートするなど、周囲の人が手を差し伸べるよう呼びかけている。東京都が2012年に導入し、20年の東京五輪・パラリンピックに合わせて日本で公式マークとなった。
10月初め、歌手の椎名林檎さんが発表したCDの特典がソーシャルメディアなどで大きな話題となった。赤地に白い十字とリンゴを模したマークを並べたカードケースが、東京都の発行するヘルプマークと似ていると指摘された。
ヘルプマークは「援助や配慮を必要としている方々が、そのことを周囲の方に知らせることができるマーク」。義足や人工関節を使用している、内部障がいや難病を持つ、妊娠初期など、外見だけでは分からない障がいや困難を抱えている人に配布している。このマークを身に着けた人には電車・バスで席を譲る、事故や災害時に避難をサポートするなど、周囲の人が手を差し伸べるよう呼びかけている。東京都が2012年に導入し、20年の東京五輪・パラリンピックに合わせて全国で公式マークとなった。
これに酷似した椎名さんのCD特典に対し、「グッズと混同されてヘルプマークを持った人が必要な支援を受けにくくなるのでは」といった指摘が相次いだ。赤十字社や東京都庁からの指摘もあり、10月18日、CD販売元はグッズのデザイン変更を決めた。
しかし、「ヘルプマークのデザインも赤十字マークやスイス国旗に類似しており各規約に抵触していると考えられる」という指摘も挙がった。ヘルプマークを「ずっとスイス製のバッグのブランドマークだと勘違いしていた」との告白もあった。
こうした懸念を強く持ち、各所に働きかけているのは、日本在住のスイス人、ロジャー・モッティーニ氏。東京大学や早稲田大学などで教鞭をとり、スイス・日本の交流史をまとめた「未知との遭遇
スイスと日本他のサイトへ」の著書もある。
モッティーニ氏はSWIの取材に、「もしスイスに観光にきた日本人がヘルプマークを携行して、その意味や使われ方をスイス人に説明したら、その人の気質にもよるが、やはり『非友好的な』反応をするだろう」と訴えた。
スイスが国として東京都のヘルプマークに苦情を申し立てることはできるのか? 結論から言えば、答えは「できるがしない」だ。
スイスは国旗デザインの使用を厳重に規制している。2017年に施行された新商標保護法と新紋章保護法(通称スイスネス法)は、「スイス製」であることを示すために白十字を製品・サービスの販売に使えるケースを厳格に定めている。
だがスイスネス法が適用されるのはスイス国内企業だけだ。外国企業に対しては、所在国での商標法や不正競争防止法、あるいは多国間・二国間協定に基づいて異議を唱えている。
知的所有権機関は各国大使館などを通じ、全世界で年間200件前後の悪用事例に介入している。同機関のダフィッド・シュテークル氏によると、スイスブランドを悪用する意図がある場合だけでなく、「赤十字は使えないから反転させた赤地に白十字を使うのは、世界的に珍しいことではない」という。
赤十字のマークは紛争地域で病院や救護員を攻撃から守るための重要な印であり、使用できる組織も国際法で決まっている。赤十字の創始者アンリ・デュナンの祖国であるスイスに敬意を示して採用された歴史がある。
スイスが白十字を厳重に守るのは、それだけのブランド価値があるからだ。スイスにもたらす経済効果は年間60億フラン(約9000億円)と試算される。
だが逆に、こうした経済損失をもたらさないケースでは介入しない場合の方が多い。ヘルプマークのケースでは「スイス輸出企業に影響はなく、スイスの利害関係者を想定できない」ため、苦情を申し立てるには至らないという。
◎教皇、イタリアの「カトリック・アクション」の若者たちと出会い
【CJC】教皇フランシスコは10月29日、イタリアの「カトリック・アクション」の若者たちとの出会いを持たれた。「カトリック・アクション」は、信徒たちの使徒的活動を目的とした組織で、その中には少年・青年・成人・学生・職業人など様々なグループがある。
この日、バチカンのパウロ6世ホールには、イタリア各地の小教区で活動する「カトリック・アクション」の青年リーダーたちが集った。
教皇は参加者への挨拶で、自身と「カトリック・アクション」の若者たちとは世代が違っても「教会や小教区に対する情熱は同じ」と話し、今日の小教区の現状や、その活性化のためのヒントなどを一緒に考えられた。
小教区において人々の間に「兄弟愛」を育んでいるカトリックアクションの会員たちの日頃の活動に教皇は感謝を述べた。
小教区共同体に所属・参加する人々の規模が縮小している現状について、教皇は、これは近年の社会的傾向に、新型コロナウイルスによるパンデミックの影響がさらに加わったものと分析した。
また、個人や小さなグループに閉じこもり、人間関係に距離をおく現代の文化傾向が、キリスト教共同体の中にも影を落としている、とも述べた。
こうした現状を恐れず、小教区に兄弟愛と多様性の中の調和を育てるため、一人一人が何かをしなくてはならない、と述べた教皇は、その手始めにまず自分たちが心を開き、他者との出会いを求めるべき、と招いた。
また、教皇は若者たちに社会の「パン種」となるよう願い、聖霊と共にあるならば、あらゆる場所で、人間性をもたらすパン種となれるだろう、と語った。
「地の塩」「世の光」として生きるからには、生ぬるさに陥ることなく、「塩」であり、「光」であり続けなければならない、と青年たちを励ました。
そして、教皇は、アッシジの聖フランシスコをはじめ、聖クララ、ヴィテルボの聖ローザ、悲しみの聖母の聖ガブリエル、聖ドメニコ・サヴィオ、聖ジエンマ・ガルガーニ、聖マリア・ゴレッティ、福者ピエール・ジョルジョ・フラッサーティ、福者キアラ・バダノ、福者カルロ・アクティスなど、聖性を生きた数多くのイタリアの若者たちの名を列挙。
パン種であること、この世にありながらこの世に属さないとはどういうことであるのか、をこれらの聖人・福者たちから学ぶようにと勧めつつ、教皇は喜びと勇気をもって前進するよう参加者らを力づけた。
◎教皇、ルクセンブルグのベッテル首相と会談
【CJC】教皇フランシスコは10月29日、バチカン宮殿にルクセンブルグ大公国のグザヴィエ・ベッテル首相を迎え個人会談を行った。バチカン・ニュース(日本語)が報じた。
ベッテル首相は、続いてバチカンの国務長官ピエトロ・パロリン枢機卿と外務局長ポール・リチャード・ギャラガー大司教とも会談した。
これらの会談では、バチカンとルクセンブルグの良好な関係に満足が表明された。次いで、教会と国家の関係など、双方に共通の関心テーマが話し合われた。
また、ヨーロッパや国際情勢をめぐり、特にウクライナにおける戦争や平和への取り組みが中心テーマとなったほか、移民危機や難民・避難民への支援についても意見が交換された。
◎教皇、ソウルの繁華街で発生した転倒事故の犠牲者悼む
【CJC】教皇フランシスコは10月30日、日曜正午の祈りの集いで、韓国ソウルの繁華街で発生した転倒事故に言及、犠牲者の冥福を祈った。
29日夜、ソウルの梨泰院(イテウォン)の路地で起きた、密集の中の転倒や圧迫による犠牲者はこれまで154人、負傷者は133人確認されている。
教皇は、ソウルで前晩発生した突然の雑踏事故の悲劇のために亡くなった、若者たちをはじめとするすべての人々を心に留め、これらの犠牲者を復活の主に託して祈った。
◎教皇、ポルノは「修道女さえ見る」と危険性を警告
【CJC】教皇フランシスコは10月24日、オンラインでポルノを見ることの危険性について、「司祭としての心を弱める」と述べ、司祭や修道女らに警告を発した。英メディアBBC(日本語)が報じた。
86歳の教皇は、バチカン(ローマ教皇庁)で行われた司祭や神学生の会合で、デジタル技術とソーシャルメディアの最適な使用方法について質問に答えた。
その中で、ポルノは「司祭や修道女さえ持っている悪習」だと説明。「悪魔はそこから侵入して来る」と述べた。
ソーシャルメディアやデジタル技術をどう使うかについては、活用すべきだが、時間を浪費し過ぎてはならないとした。そして、「純粋な心、イエスが毎日受け取っている心は、ポルノの情報は受け取れない」と話した。
教皇はまた、「誘惑されないよう、携帯電話から削除する」よう助言した。
カトリック教会では、ポルノを貞操に対する侵害行為と見なしている。
《メディア展望》
=カトリック新聞(10月30日)=https://www.cwjpn.com/cwjpn/
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=クリスチャン新聞(10月30日)=https://クリスチャン新聞.com
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