世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1644信(2022.07.25)

  • 教皇、カナダ訪問は「先住民の人々を抱擁する旅」
  • ドイツで「脱原発」議論の激しさ増す
  • 中絶禁止のフィリピン、危険な代替手段に頼らざるを得ない女性たち
  • ロシア、「軍事インフラを破壊」とオデッサ港攻撃認める
  • 《メディア展望》

 

◎教皇、カナダ訪問は「先住民の人々を抱擁する旅」

 【CJC】教皇フランシスコは7月17日、日曜正午の祈りの集いで、カナダ訪問について説明された。
 この24日から30日まで、教皇はカナダ政府と同国のカトリック教会、そして先住民共同体の招きに応え、エドモントン、マスクワシス、ラック・セント・アン、ケベック・シティー、イカルイトなどを司牧訪問される。バチカン・ニュースによって紹介する。
 教皇はこの旅を通し、「イエスの名のもとに、カナダの人々の間を訪れながら、特に先住民の人々を抱擁したい」と述べた。
 教皇はこの訪問を通じ、カナダのかつての先住民同化政策下、カトリック教会が運営に関わった寄宿学校で先住民の人々が体験した苦しみに耳を傾け、ご自身の寄り添いを直接伝えたいと願った。
 教皇は、「残念ながら、カナダでは、いくつかの修道会の会員を含む多くのキリスト教徒たちが、文化同一化政策に関わり、過去に様々な形で先住民の共同体を深く傷つけた」と述べた教皇は、そのためにカナダの先住民族を代表するいくつかのグループがバチカンを訪問した際、これらの人々が受けた苦しみに対し、ご自身の悲しみと連帯を伝えた、と語った。
 教皇は、カナダ訪問を翌々日に控えた7月22日、海外訪問の際に習慣とされてきたように、ローマの聖マリア大聖堂(サンタ・マリア・マッジョーレ)を訪れ、古くから伝えられる聖母子画「サルス・ポプリ・ロマーニ」(ローマ人の救い)を前に祈り、カナダ訪問を聖母の保護に託した。
 教皇は7月24日午前9時過ぎ、ローマのフィウミチーノ(レオナルド・ダ・ヴィンチ)国際空港から特別機で、カナダへの司牧訪問に出発した。
 訪問は、教皇フランシスコにとって37回目の海外司牧訪問(イタリアを除く)。
 また、教皇フランシスコはカナダを訪問する2人目の教皇となる。
 一方、カナダ側にとっては、教皇を迎えるのは4回目。聖ヨハネ・パウロ2世は1984年、87年、そして「ワールドユースデー・トロント大会」が開催された2002年と、3回にわたり同国を訪れている。
 教皇は、エドモントンに向かう特別機の機内で記者団に挨拶し、「今日は(日曜日正午恒例の)お告げの祈りはないが、ここで行いましょう」と述べ、短い講話を行った。
 教皇は、この日がカトリック教会の「祖父母と高齢者のための祈願日」にあたることに触れ、若者たちとお年寄りとの交流の大切さを強調した。
 教皇は、祖父母たちの歴史や伝統やしきたりを伝える役割を示しつつ、若い人たちが祖父母と触れ合い、そこからルーツを汲み取り、前進していく力を得るようにと望まれた。
 アルゼンチンの詩人、フランシスコ・ルイス・ベルナルディスの詩を思い起こしながら、教皇は「木に咲く花は地の中から来るもの」、その根とはすなわち祖父母である、と話した。
 また、教皇は、修道者の立場からの助言として、修道生活において高齢の会員らを「修道会の叡智」「奉献生活の祖父母」として大切にし、若い修道者や志願者らがお年寄りの修道者たちから多くの経験を学び、豊かな支えを得ることができるよう願われた。
 教皇は、同日午前11時過ぎ、最初の訪問地、同国西部アルバータ州の州都エドモントンに到着した。
 エドモントン国際空港で、教皇はメアリー・サイモン総督、ジャスティン・トルドー首相、先住民の代表たちに迎えられた。
 教皇は空港内で総督、首相と共に歓迎式に臨み、先住民の人々が奏で、歌う伝統音楽に耳を傾けられた。
 この後、教皇はエドモントンでの滞在先となる市内の神学院に向かった。


◎ドイツで「脱原発」議論の激しさ増す

 【CJC】ドイツで「脱原発」をめぐる議論が激しさを増してきた。ベルリン発時事通信の報道を紹介する。国内で稼働中の原発3基は全て年末で停止する予定だが、ウクライナ侵攻を続けるロシアとの対立を背景に、エネルギー危機が深刻化。与野党から原発停止の延期を求める声が上がっている。
 ショルツ独連立政権は、原発停止が電力供給に与える影響などを精査する「ストレステスト」の実施を表明。経済・気候保護省の報道官は7月18日、数週間以内に結果を公表すると述べた。
 政府は3月にも同様の調査を行った。ただ、脱原発の延期がエネルギー確保にもたらす効果は限定的で、「推奨しない」と結論付けている。
 その後、欧州連合(EU)などが侵攻を非難して対ロ制裁を強化すると、ドイツが天然ガスの調達で依存するロシアからの供給は激減。エネルギー価格も一段と高騰したため、脱原発を「より厳しい想定」の下で再点検することにしたという。
 連立政権の一翼を担い、脱原発を推進してきた環境政党、緑の党のラング共同党首は17日、公共放送ARDの番組に出演。賛成意見が広がりつつある原発の稼働延長について、「現状では正しい道ではない」と述べ、改めて反対を唱えた。一方で「選択肢を完全に排除したことはない。現状で何が合理的かを常に検討していく」とも発言し、延期容認に含みを持たせた。
 ドイツは総発電量に占める原発の割合が6%とわずか。それでも、原発の稼働を続けて発電利用を増やし、代わりに発電用のガスを暖房用に回せば、ロシアがガス供給を一段と絞った場合の対抗策になり得るとみられている。これから冬が近づき、ガス不足が拡大すると、脱原発の延期要求はさらに強まりそうだ。


◎中絶禁止のフィリピン、危険な代替手段に頼らざるを得ない女性たち

 【CJC】米メディア『CNN』によると、カトリック教徒が多数を占めるフィリピンでは、1世紀以上前から人工妊娠中絶は法で禁じられており、中絶したことが判明した女性には2~6年の懲役が科される。また中絶手術を行ったり、中絶を手伝った医師や看護師らも国から厳しい処罰を受ける。
 そのためフィリピンでは多くの女性が、リスクを顧みず、望まない妊娠や実行不可能な妊娠に対し、中絶以外の方法を模索する。
 『フィリピン安全な中絶支援ネットワーク』(PINSAN)の広報担当クララ・リタ・パディラ弁護士は、フィリピンの妊娠中絶法の「漸進的な解釈」は存在するが、レイプや近親相姦(そうかん)といった深刻なケースや、妊婦の命を救うためであっても明確な適用除外規定はないという。
 パディラ氏によると、中絶を行った女性の大半は貧しい家庭の出身で、その多くが25歳未満だという。法的なサービスが受けられない女性たちは、助産師、神霊治療家、訓練を受けていない医師らが仮設診療所で行う危険な地下中絶手術に頼ることが多い、とパディラ氏は指摘する。


◎ロシア、「軍事インフラを破壊」とオデッサ港攻撃認める

 【CJC】ロシア外務省のザハロワ報道官は7月24日、ロシア軍が23日にウクライナ南部のオデッサ港を攻撃したことを認めた。高精度のミサイルで軍事インフラを破壊したとしている。穀物輸出に関連する施設ではなく、輸出再開の合意違反にはあたらないと主張するつもりだとみられる。日本経済新聞木寺もも子記者のイスタンブールからの報道を紹介する。
 ザハロワ氏はSNS(交流サイト)に投稿し、ウクライナのゼレンスキー大統領が攻撃を合意違反だと非難したのに反論した。タス通信によると、ロシア国防省も24日、オデッサ港への攻撃で、ウクライナの軍艦と米国から提供された対艦ミサイル「ハープーン」の倉庫を破壊したと明らかにした。
 トルコのアカル国防相は23日、ロシアから「オデッサ港への攻撃には一切関与していない」という趣旨の説明を受けたと明らかにしていた。事実ならロシアの説明には矛盾がある。
 ウクライナは穀物輸出の再開に向けた準備を続けるとしているが、貨物船が航行する「回廊」の安全性に不安が生じ、本格的な輸出再開には速くも暗雲が垂れこめる。国連、米国などは相次いでロシアを非難した。
 一方、24日にロシア、ウクライナ産穀物の輸入国であるエジプトを訪れたロシアのラブロフ外相は「ロシアの穀物輸出業者が(輸出の)約束を全て果たすことを再確認した」と述べた。


《メディア展望》
 
 =カトリック新聞(7月24日)=https://www.cwjpn.com/cwjpn/
▼教皇メッセージ=「祖父母と高齢者のための世界祈願日」=高齢者は世界を解放する
▼安倍元首相殺害を受け教皇、弔電送る=司教協議会会長も談話発表
▼教皇ら3教会指導者=南スーダンにメッセージ=「平和への決意を守って」
▼教皇、訪問は延期も=コンゴ人共同体とミサ
▼教皇、インタビューで、改革は枢機卿団の総意
▼教皇、ロイターに語る=中国と暫定合意更新望む
▼受け継いだ信仰=いのちへのまなざし描く=独学の日本画家 鈴木忠実さんに聞く
 
 =KiriShin(7月21日)=https://www.kirishin.com
▼40年以上変わらぬ実態=旧・統一協会=昨年だけで被害額3億超=安倍元首相銃撃で波紋広がる
▼神道政治連盟の冊子配布受けマイノリティ宣教センターが意見表明
▼安倍元首相銃撃で全国霊感商法対策弁護士連絡会が声明=「支持するような行動は慎んで」
▼非武装平和国家の実現に向け聖公会が首相に要請
▼苫小牧で外国人船員支えた36年=「キリスト教船員奉仕会」解散
 
 =クリスチャン新聞(7月24日)=https://クリスチャン新聞.com
▼【参院選終え、考える】日本のキリスト教と政治(寄稿・山口陽一)
▼神戸改革派神学校、夏期信徒講座開催=「平和をつくる教会」テーマに
▼「マイさん追悼ミサ」で阿部頼義牧師=「悲しいが、無駄ではなかった」末期がんで亡くなったカメルーン人の仮放免者しのぶ
▼安倍元首相殺害受け、有志が緊急祈祷会
▼元首相銃撃事件の背後にカルト家庭崩壊問題の闇
▼カルト・緊急講座で斎藤篤牧師=多額の寄付をさせるシステム

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