世界キリスト教情報 第1636信(2022.05.30)
- 墓地不足でイスラム教徒アフガン難民が正教会の墓に
- ウクライナ正教会がロシア正教会と関係断絶=侵攻擁護の総主教を批判
- 教皇、モンゴルの仏教指導者らと会見
- 韓国カトリック教会から史上4人目の枢機卿、兪興植氏
- 「ベイビー・ブローカー」が主演男優賞、作品はエキュメニカル審査員賞=カンヌ国際映画祭
- アンジェロ・ソダノ枢機卿逝去、元国務長官
- 《メディア展望》
◎墓地不足でイスラム教徒アフガン難民が正教会の墓に
【CJC】アテネ郊外のギリシャ正教会シスト墓地に、アフガニスタン難民エスファンディヤル・ファグキリさんの5歳の息子は眠っている。小さな墓地の前でファグキリさんは「二重の苦しみ」を味わっている、とAFP通信に話す。
ファグキリさんは5人いる子どもの1人を失っただけではなく、埋葬されたのがキリスト教正教会の墓地だったため、イスラム教の戒律に従うことができないでいる。
ファグキリさん一家は2020年9月から、アテネ北部のマラカサ難民キャンプで暮らしていた。息子のハシボラちゃんは21年1月、キャンプの入り口でトラックにひかれた。ハシボラちゃんの埋葬後、3年後の24年には遺体を掘り起こさなければならないと言われた。
慢性的な土地不足に悩むギリシャでは、遺体の掘り起こしが一般的に行われている。人口1000万人の3割以上が住むアテネで、土地不足は特に深刻な問題となっている。
イスラム教では、遺体の掘り起こしも、火葬も認められていないとファグキリさんは指摘する。
シスト墓地近くの自治体担当者は、有料の一族の墓がある人以外は「3年後に強制的に掘り起こす必要がある」と強調する。
遺骨は、墓地内の教会の納骨堂に安置されることが多い。
ギリシャでは、ギリシャ正教徒が大半を占めている。イスラム教徒向けの墓地は、アテネから750キロも離れている北東部トラキアにあるだけだ。
ギリシャはかつてオスマン帝国の支配下にあったことから、トルコ国境近くのトラキアには何百年も前から少数派のイスラム教徒が暮らしてきた。
アテネのイスラム教徒は以前はごくわずかだった。だが2015年の難民危機で中東、北アフリカ、南アジアから戦争や貧困を逃れ多数の難民がギリシャに流入した。現在は50万人ほどがアテネに暮らしている。
多くの難民家族にとって、トラキアは埋葬地としては遠すぎ、遺体の移送費用を捻出するのも難しい。
ギリシャ正教会は2016年、シスト墓地の敷地のうち、2万平方メートルをイスラム教徒に割り当てることを決めたという。
だが、請負業者と裁判沙汰になり、整備は進んでいない。
宗教問題も管轄する教育省の高官は、イスラム教徒の墓地整備事業は承認済みだとし、「アテネにはイスラム教徒が多いことを考えると、実現するだろう」と語った。
だが、人権団体や最大野党・急進左派連合(SYRIZA)は、政府が強硬な反移民政策をとっていることから、実現には懐疑的だ。
アテネでは2020年11月に初めて正式なモスクが開設された。だが、正教会や国家主義団体などから強い反発があり、完成までに10年以上かかっている。
◎ウクライナ正教会がロシア正教会と関係断絶=侵攻擁護の総主教を批判
【CJC】リビウ発共同通信が、ウクライナ・メディアによるとして報じるところでは、ロシア正教会に融和的とされてきたのウクライナ正教会が5月27日、ロシアのウクライナ侵攻を非難し、ロシア正教会との関係断絶を宣言した。
ロシア正教会の最高位キリル総主教はプーチン大統領との関係が深く、ウクライナ侵攻を擁護している。ウクライナ正教会側は、こうした姿勢を批判した上で、ロシアとウクライナに対し交渉による停戦を呼びかけた。
◎教皇、モンゴルの仏教指導者らと会見
【CJC】教皇フランシスコは5月28日、モンゴルの仏教指導者たちと会見した。カトリック・ニュースが報じた。
モンゴルの仏教界の代表者からなる公式使節のバチカン訪問は、モンゴルにおけるカトリック教会の知牧区創設と、教皇庁とモンゴル間の外交関係樹立30年を背景に行われた。
教皇は、平和は人類の熱い願いであり、あらゆるレベルの対話を通して平和と非暴力の文化を築くことは今日の急務と強調。一方で、宗教を暴力と憎悪の正当化に用いる人々がいることを遺憾とされた。
イエスと仏陀は平和の構築者、非暴力の推進者であった、と教皇は語り、紛争や戦争に傷ついた世界において、わたしたち宗教指導者は、暴力を捨て平和の文明を築くため、皆の意志を励ます義務がある、と話された。
教皇は、モンゴルの諸宗教の平和的共存の伝統に触れつつ、この多様性における調和の古い歴史が、これからも信教の自由と共通善の促進のための協力を通して続き、カトリック教会との良好な関係が育まれていくことを願われた。
◎韓国カトリック教会から史上4人目の枢機卿、兪興植氏
【CJC】教皇フランシスコは5月29日、新しい枢機卿21人の任命を発表した。韓国KBS放送によると、この中には教皇庁聖職者省の兪興植(ユ・フンシク)長官(70)も指名された。韓国カトリック教会からの枢機卿任命は史上4人目。
兪氏は1951年、忠清南道(チュンチョンナムド)で生まれ、79年に教皇庁立ラテラノ大学神学科を卒業し、司祭となった。
韓国の大田(テジョン)カトリック大学の教授や総長を経て2003年司教。2005年からは大田教区長を務め、昨21年6月、世界の教区の司祭や助祭の活動を審議、支援する役割を担う聖職者省の長官に任命された。
新しい枢機卿21人は8月27日にバチカンで行われる枢機卿会議で教皇により叙任される。
◎「ベイビー・ブローカー」が主演男優賞、作品はエキュメニカル審査員賞=カンヌ国際映画祭
【CJC】第75回カンヌ国際映画祭は5月28日に最終日を迎え、是枝裕和監督(59)が韓国で製作した「ベイビー・ブローカー」は、ベイビー・ブローカーの演技で、ソン・ガンホが主演男優賞を獲得した。作品はキリスト教系団体が選ぶエキュメニカル審査員賞を獲得した。
エキュメニカル審査員賞は、カンヌ国際映画祭の独立部門の一つで、キリスト教関連の国際映画組織「SIGNIS AND INTERFILM」の審査員6人によって、コンペティション部門出品作の中から選ばれる賞。「人間の内面を豊かに描いた作品」に与えられる。日本人監督の作品としてはこれまで、濱口竜介の「ドライブ・マイ・カー」、青山真治の「EUREKA(ユリイカ)」、河瀬直美の「光」が受賞してきた。
韓国人俳優がカンヌ国際映画祭の最優秀男優賞を受賞したのは初めて。是枝の監督作としては、柳楽優弥が「誰も知らない」で受賞して以来。
◎アンジェロ・ソダノ枢機卿逝去、元国務長官
【CJC】バチカンの元国務長官、枢機卿会の前主席、アンジェロ・ソダノ枢機卿が、5月27日、新型コロナウイルスによる肺炎のため入院先のローマ市内の病院で亡くなった。94歳。バチカン・ニュースが報じた。
ソダノ枢機卿は、聖ヨハネ・パウロ2世、ベネディクト16世の2代の教皇のもとで、1991年から2006年まで国務長官を務め、05年から19年まで枢機卿会の主席にあった。長きにわたりバチカンの外交に携わる中、国際平和のために貢献した。
ソダノ枢機卿は1927年、イタリア・ピエモンテ州イーゾラ・ダスティに生まれた。
1950年、アスティで司祭叙階。59年、教皇庁の外交の世界に入り、エクアドル、ウルグアイ、チリの教皇大使館に務めたほか、使節メンバーとしてルーマニア、ハンガリー、東ドイツを訪問した。
77年、ノヴァ・ディ・チェーザレ名義大司教のタイトルと共に、チリ教皇大使に任命される。翌年司教叙階。チリとアルゼンチン間の領土をめぐる対立回避に尽力。
88年、国務省外務局長、ロシアのための教皇庁委員会議長。
91年、国務長官に指名と共に枢機卿に任命。2002年、枢機卿会副主席。
05年、ベネディクト16世が選出されたコンクラーベに参加。ベネディクト16世より、国務長官職における留任を確認された。それまで枢機卿会主席であったヨハネ・ラッツィンガー枢機卿の教皇登位に伴い、枢機卿会の選挙が行われ、新たに枢機卿会主席に選ばれた。
06年、定年を理由とする国務長官からの引退願いを承認される。12年、14年、15年のシノドスに参加。19年、枢機卿会主席を引退した。
ソダノ枢機卿の逝去によって、現在の全枢機卿数は208人、そのうち教皇選挙の投票権を持つ80歳未満の枢機卿は117人、投票権を持たない80歳以上の枢機卿は91人となった。
《メディア展望》
=カトリック新聞(5月29日)=https://www.cwjpn.com/cwjpn/
▼香港のゼン枢機卿=保釈後は「元気」=民主派支援で逮捕
▼教皇、10人を列聖=聖母奉献修道会創立者やシャルル・ド・フーコーら=神の愛を受け入れる聖性
▼教皇、LGBTの信者に、「神は子どもたちを捨てない」
▼沖縄復帰50年=国の政策転換求めて=本土の地方議会へ陳情開始=〝沖縄の基地引き取り〟の市民グループ
▼カトリック教育に関わる全ての人が学び合えるサイト=「Salt」開設
=KiriShin(5月21日・既出再掲)=https://www.kirishin.com
▼日本基督教団霊南坂教会=海渡り、よみがえる響き=ハルモニウム修復への願い=教会遺産 後世にどう残す?
▼13年ぶりに韓国で開催=ローザンヌ世界宣教会議
▼「ヒトラーにユダヤ人の血」=ロシア外相発言でイスラエル反発
▼教皇、キリル総主教を叱責=プーチン氏の「侍者になるな」
▼香港、陳日君枢機卿や歌手を国安法違反容疑で逮捕
=クリスチャン新聞(5月29日)=https://クリスチャン新聞.com
▼Sо!Sо! Wоrship! 賛美集会開催=福島沿岸の教会つなぐ
▼第4回ローザンヌ世界宣教会議24年ソウルで=「インフルエンサー」数千人集め使命共有
▼CLCからしだね書店1周年記念=平和のための戦い=福島避難民と障がい者の親がトーク
▼学習会「『沖縄復帰50年』を考える」で平良亀之助氏=本土並みになるまで政府に建議書の中身を訴え続ける
▼JECA史上初の全国青年大会「DAWN2022」開催=「主体性」「リアルな感覚」重視