世界キリスト教情報 第1625信(2022.03.14)
- 教皇「神の名において願う、ウクライナでの殺りくを止めよ」と訴え
- バチカン国務長官パロリン枢機卿がロシア外相と電話会談
- ウクライナ戦争の一因はプライドパレード、とロシア正教会トップ
- 駐ウクライナ教皇大使、人道危機の中の大きな連帯に触れる
- スイスへのウクライナ難民「最大6万人」、特別滞在許可証発行へ
- 核廃絶の議論活性化を緊急に=米サンタフェ大司教が呼び掛け
- ボルソナロ大統領が福音派有力者と支持固め集会で、プーチンを「最強の男」と称賛
- 全光勲牧師、またも選挙遊説の形で「防疫無力化」を図る集会
- 《メディア展望》
◎教皇「神の名において願う、ウクライナでの殺りくを止めよ」と訴え
【CJC】バチカン・ニュースによると、教皇フランシスコは、3月13日正午の祈りの集いで、ウクライナの状況に苦悩を表明、町を破壊し、子どもたちや罪のない人々を殺害する攻撃を直ちに停止するよう訴えた。
バチカンの広場の巡礼者と共に「お告げの祈り」(聖母マリアへの受胎告知を記念する祈り)を唱えた教皇は、「おとめマリアの名を冠した都市マリウポリは、ウクライナを破壊しつつある耐えがたい戦争によって、今や殉教の町となった」と悲しみを表した。
「子どもたちや、罪のない人々、無防備な市民への残忍な殺害を正当化することはできない」と教皇は述べ、「これらの都市が墓場と化す前に、この受け入れがたい武力攻撃を止めるように」と訴えた。
そして、「心の苦悩をもって、戦争の終結を祈る人々と声を一つにしたい」と述べた教皇は、「神の名において、苦しむ人たちの叫びを聞き、爆撃と攻撃を中止せよ」「神の名において願う、この殺りくを止めよ」と呼びかけた。
避難民ら、苦しむ人々の中におられるキリストの存在を教皇は指摘しつつ、教区や修道会、すべての教会共同体に、平和のための祈りを強化するよう招いた。
「神は戦争の神ではなく、平和の神である。暴力に頼む者は、神の名を冒涜する」と教皇は話し、苦しむ人々のために、また人々の心を平和への意志へと回心させるために、広場の巡礼者と一緒に沈黙の祈りを捧げた。
◎バチカン国務長官パロリン枢機卿がロシア外相と電話会談
【CJC】バチカンの国務長官ピエトロ・パロリン枢機卿は3月8日、ロシアのセルゲイ・ラヴロフ外相と電話会談をした。
バチカンのマッテオ・ブルーニ広報局長の声明によると、この会談でパロリン枢機卿は、ウクライナで起きている戦争に対する教皇フランシスコの深い憂慮を伝えると共に、教皇の3月6日のお告げの祈りにおけるアピール内容を改めて提示した。
パロリン枢機卿は、特に武力攻撃の停止と、市民と救助関係者のための人道回廊の保証、武力に対する和平協議の優先を強調した。
最後に、パロリン枢機卿は、教皇庁は平和のためにあらゆる努力を惜しまない意向であることを再び表明した。
◎ウクライナ戦争の一因はプライドパレード、とロシア正教会トップ
【CJC】ロシア正教会トップのキリル総主教は3月12日までに、性的少数者らが性の多様性を訴えるプライドパレードが「ウクライナの戦争」の原因の一つになったとの認識を示した。米メディア「CNN」が報じた。
キリル総主教はプーチン大統領の長年の盟友とされる。総主教はモスクワでの説教で、「(ウクライナ東部の)ドンバス地域での紛争は世界の大国と名乗る関係国が差し出す価値観といわれるものに対する根本的な拒否に根差している」と主張。
総主教はウクライナの戦争を人間が神の教えを守る形而上学的な意味合いを持つ闘争とも形容。「国際的な関係の領域で現在起きていることは政治的な意味合いを帯びているだけではない」とし、「政治とは違ったはるかに重要な人間の魂の救済の問題である」と説いた。
「神の教えに背けば神聖さと罪の境界線をあいまいにしながら教えの尊さを損ね、さらに罪を人間の振る舞いの一つの例や見本ともなり得るとして助長する人々は決して許されるものではない」とも強調。「この問題に関する本当の戦争が現在起きている」と訴えた。
総主教はロシアによるウクライナ侵攻の開始以降、批判的な姿勢を打ち出さないことで教会内部からも圧力を受けていたとされる。今回の発言は逆に、プーチン大統領が思い描いているとされる精神的かつ現世的なロシア帝国創出に支持を寄せる内容ともなった。
◎駐ウクライナ教皇大使、人道危機の中の大きな連帯に触れる
【CJC】バチカン・ニュースによると、駐ウクライナ教皇大使ヴィスヴァルダス・クルボカス大司教は、このたびカトリック系基金「苦しむ教会への助け」のインタビューに答え、ウクライナの人道危機の深刻さを語ると共に、その中での大きな連帯に触れた。
クルボカス大司教は、ウクライナの「人道危機は非常に重大であり、その心配が常に心を占めているが、いつでも助けを差し伸べることが可能という状態になく、時にはカリタスや赤十字のような団体でさえも何もできないことがある」と過酷な現状を述べた。
同大司教は、戦争勃発直後の数日間の対応の困難さを語る一方で、カトリックだけでなく、正教会や、イスラム教などの組織が皆、食糧の配給や、電気・暖房がない場所等、最も厳しい状況下にいた人たちの避難を手伝うなど、その連帯はまさに「トータル」なものであった、と話した。
大使は、皆がこの「現実とは思われない」状態を「映画のように」感じている、とも語り、このような中で「自分自身と多くの信者たちに、わたしたちの根本的な武器は、謙遜さと神への完全な委託、連帯と愛である、と言い聞かせている」と述べた。
この戦争には何か悪魔的なものがあり、それに対して皆が「断食、祈り、大きな謙遜と愛」をもって答えることができる、と述べたクルボカス大司教は、「この悲劇的な戦争は、預言者イザヤが言うように、神を新しい眼差し、信頼の眼差し、謙遜と回心をもって見つめるようわたしたちを招いている」と話した。
大使は、教皇が寄り添いの言葉だけでなく、枢機卿2人を現地に派遣してくれたことに深い感謝を表明した。
また、「苦しむ教会への助け」基金による、困窮している教区への援助、特にこうした教区で働く司祭や修道者への支援に感謝を述べつつ、破壊された多くの学校、病院などのために今後、再建・再編が大きな課題となるだろう、と語った。
◎スイスへのウクライナ難民「最大6万人」、特別滞在許可証発行へ
【CJC】スイスのカリン・ケラー・ズッター司法相は、ロシアの侵攻を受けたウクライナから5万~6万人の難民が流入するとの見通しを示した。スイス公共放送協会(SBC)の国際部で、スイスに関する報道を独立した立場で行うSWIが報じた。
ズッター司法相は3月10日、大衆紙「ブリック」のインタビューで、スイスにどれだけのウクライナ人が流入するかは戦闘がどれだけ長引くかによって変わるが、最大6万人になる可能性があると発言。これはスイスにとって「非常に大きな試練だ」と述べた。
司法相は、戦争から逃れてきたウクライナ人の受け入れは簡単ではないと述べた。「間違いや不十分な点が出てくるかもしれない。全ての難民は登録する必要がある。連邦や州の提供する宿泊施設に加え、民間の支援が必要になるだろう」と指摘。「これには長い時間がかかるかもしれない」と述べた。
連邦内閣は11日、特別に「S滞在許可証」を発行することを決めた。今回の戦争の被災者で緊急に保護が必要な人に発行され、1年間スイスに居住し労働することが可能だ。学齢期の子供は教育を受けることができる。期限は必要に応じ延長される。
「S滞在許可証」は1990年代のユーゴスラビア戦争を受けて設けられた枠組みだが、これまで発行された例はない。
スイスに住むウクライナ人は約1万1千人と、他国に比べると少ない。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、戦争でウクライナ国民4400万人のうち1千万~1500万人が国を追われると推定する。フィリッポ・グランディ難民高等弁務官は第二次世界大戦以来、欧州で最も急速に拡大している難民危機だと指摘している。
ズッター司法相は、危機から抜け出す方法は「プーチン氏」の一択だと発言。ロシアのウラジミール・プーチン大統領が「いつでもこの戦争を終わらせる力を持っている」と述べた。
◎核廃絶の議論活性化を緊急に=米サンタフェ大司教が呼び掛け
【CJC】米カトリック教会で、西部ニューメキシコ州を管轄するジョン・ウェスター・サンタフェ大司教は3月9日、核保有国のロシアがウクライナ侵略を続けるなかで「核兵器廃絶の議論を地域や国レベル、世界で活性化させることが緊急に必要だ」と語り、核兵器禁止条約を含む核廃絶・軍縮の条約を広げるよう呼び掛けた。
民主党内の団体「進歩的米民主党員」(PDA)の地元支部のオンライン月例会合にゲストとして出席し、発言した。日本共産党の「しんぶん赤旗」が3月13日報じた。
ウェスター大司教は、ロシアのプーチン大統領が核戦力の警戒態勢強化を命じたというニュースに触れて「背筋が凍った」と強調。「核兵器を使えば何も残らず、平和は築けない」と批判した。
ウェスター大司教は今年1月、教区の信者に宛てた書簡「司教教書」で、核兵器を開発するロスアラモス国立研究所を抱える大司教区として、禁止条約を実践する「特別の責任を負っている」と表明している。
◎ボルソナロ大統領が福音派有力者と支持固め集会で、プーチンを「最強の男」と称賛
【CJC】ブラジルのボルソナロ大統領が3月8日、大統領官邸に福音派リーダーや政治家を集めた会を行った。その際、大統領は「私はこの国をあなた達が望むような方向に運営する」との問題発言や、ロシアのプーチン大統領を褒める言葉まで公言したことで波紋を呼んでいる。現地紙の報道をブラジル日報10日が伝えた。
この会には福音派牧師24人を先頭に100人以上の福音派大臣や上下両院議員が勢ぞろいした。
下院議員の中には、下院の福音派議員連盟のソステネス・カヴァルカンチ議員(ウニオン)や、福音派議連会長で政党「共和者(RP)党首のマルコス・ペレイラ下院議員の姿もあった。
最後に演説を行ったボルソナロ氏は「私はこの国をあなた達が望むような方向に運営する。だが、それは非常に難しい。それでも全力を尽くしているつもりだ」と語った。
ボルソナロ氏はさらにロシアのプーチン大統領に言及し、プーチン氏を「世界最強の男の一人」と称え、「地球は私たちの家。神は全てを超えるのだ」と発言した。この発言は、大統領自身がウクライナ危機に関して「中立の立場」とする中で行われたもの。
◎全光勲牧師、またも選挙遊説の形で「防疫無力化」を図る集会
【CJC】ソウル中区の清渓(チョンゲ)広場で3月5日、数千人が集まり祈祷会が開かれた。現地紙『東亜日報』が報じた。同広場で警察推定約8000人が集まった3・1節祈祷会が開かれてから4日ぶり。今度も防疫指針上、人員制限の影響を受けない選挙遊説の形で開かれた。
警察によると、サラン第一教会の全光勲(チョン・グァンフン)牧師が主催した「1000万国民祈祷会」は5日午前11時から光化門一帯で開かれた。全国から集まった参加者が警察推算で4100人に達した。
主催側は、全牧師が代表を務める国民革命党所属の国会議員補欠選挙出馬者の選挙遊説だと主張したが、遊説は最初の約1時間だけ。午後12時からは、サラン第一教会関係者などが車両に乗り込み、「献金参加」を呼びかける発言をした。
祈祷会は集会開始から5時間半が過ぎた午後4時半頃、警察の解散命令で終わった。警察は同日、取り締まりの根拠がないとして解散を要請しなかったが、遊説発言が終わったところで、選管が「これ以上は選挙遊説と認められない」と判断し、解散手続きを進めたという。
《メディア展望》
=カトリック新聞(3月13日)=https://www.cwjpn.com/cwjpn/
教皇、ウクライナの平和祈る=ロシア軍の侵攻に「心痛」
教皇一般謁見講話=世代間の結び付き取り戻す
長崎教区=中村倫明大司教着座=「キリストのように、キリストとともに」
軍事進攻の即時停止を=声明、談話、発表相次ぐ
「性虐待被害者のための祈りと償いの日」に=司教協会長=祈りを呼び掛ける
=KiriShin(3月11日)=https://www.kirishin.com
ウクライナ危機 ゆらぐ世界=教会は祈りと支援へ
ロシアのウクライナ軍事進攻に日本のキリスト教界からも抗議
中国が共産党大会前に宗教統制=ネット布教の制限強化
日韓和解と平和プラットフォーム=佐渡金山の世界遺産推薦に抗議
クリスチャントゥデイ、「クリスチャン新聞」根田祥一氏を提訴
=クリスチャン新聞(3月13日)=https://クリスチャン新聞.com
ロシア侵攻で国内避難のウクライナ人に聞く=「私は国を離れない」=この規模にまでなるとは誰も予期していなかった
有志でウクライナのための祈祷会緊急開催=ロシア軍事侵攻即時停止、撤退祈る
クリスチャントゥデイ、根田祥一氏を提訴
ウクライナ侵攻=学長ら声明相次ぐ=建学の精神土台に平和求め
「脅威あおるな」9条推す会=神戸国際支縁機構はウクライナ救援募金