世界キリスト教情報 第1573信(2021.03.15)
- 米バイデン政権、「子ども移民」増加に妙案なく最大級の試練に
- ニューヨークYMCAがキャンプ場3カ所売却へ
- 教皇、イラク司牧訪問終えてバチカンに
- イタリアが昨年に続き、復活祭は原則外出禁止
- スリランカで「非急進化」目的の過激派拘束が可能に?
- 新駐日教皇大使にボッカルディ大司教
- 世界80カ国以上で福音伝えたルイス・パラウ死去=「教皇は長年の友人」
- 《メディア展望》
◎米バイデン政権、「子ども移民」増加に妙案なく最大級の試練に
【CJC】ワシントン発ロイター通信などが報じるところでは、ジョー・バイデン米大統領は、メキシコとの国境に子どもだけで到着する「子どもの移民」が増え続けている問題への対応を急いでいる。しかし選択肢は限られる上にどれも妙案ではない。
子どもの流入はバイデン氏が、トランプ前大統領によって厳格化された移民規制の一部を緩めたことで増加している。これに対し、野党・共和党からだけでなく、子どもたちが国境の拘置施設にあまりに長くとどめられている状況を懸念する民主党内の一部からも、バイデン氏の方針を批判する声が出ている。
米国家安全保障会議(NSC)のメキシコ国境問題責任者ロバータ・ジェイコブソン氏と国務省は3月10日、トランプ前政権が打ち切っていた「セントラル・アメリカン・マイナーズ」プログラムを復活させると発表した。同プログラムは、子どもたちが母国で申請すれば、米国の家族や親類に合流するのを認める制度だ。
親や法的に保護者と認められる者に伴われずに国境にやってくる子どもが増え続ければ、当局は保護用の緊急シェルターの収容能力を拡大するか、認可滞在施設をより多く開設する時間のかかる作業に取り掛かるか、さもなければ子どもを自由にするのを早めるしかなくなる。
ある政府高官はロイター通信に「大小さまざまな軌道修正をしなければならない。選択肢はどれも決して素晴らしいものではない。それでも可能性のある措置を念入りに精査中だ」と語った。
◎ニューヨークYMCAがキャンプ場3カ所売却へ
【CJC】米紙ニューヨーク・タイムズは3月8日付けで、「グレーターニューヨークYMCA」が、1918年から運営してきた同市北郊のユグノー地域にあるキャンプ場、タルコット、マカリスター、グリーンキルの3カ所を売却する、と報じた。
YMCAの広報担当者は「資金源のスポーツジムがコロナ下で閉鎖され、半分を超すスタッフ2000人を解雇しても1億ドル(約100億円)の歳入不足に陥る」、「キャンプ場売却は苦渋の決断だった」と話している。
売却を知らなかった関係者は、事前に相談もなかったことに衝撃を受けている。
夏のキャンプには、毎年約1200人の子どもたちが参加していた。その60%はニューヨーク市在住。70%が有色人種だった。このキャンプでカウンセラーを務めたこともある記録映画作者のジョン・ブロックさん(69)は「公民権問題と捉えている。マイノリティー・コミュニティーが深刻な打撃を受けている例の一つだ」と指摘する。
売却額は500万ドル(約5億円)を予想しているが、最終決定には至っていない。夏のキャンプに引き続き使用することを条件とすると買い手捜しも容易ではない。
売却を惜しむ声が続々と寄せられている。サウスブロンクス地区で暮らしていたフン・エスコバーさんは当時12歳。喘息に悩まされ、盗難やいじめにおびえ、食事に事欠くこともあった。YMCAのキャンプが唯一の憩いの場だった。新鮮な空気、健康的な食事、銃弾を避ける必要もなく、自信を取り戻した。現在29歳のエスコバーさんは警察官として活躍している。「キャンプは私の家だった。生まれて6カ月の息子にも行ってもらいたかったのに残念」という。
◎教皇、イラク司牧訪問終えてバチカンに戻る
【CJC】教皇フランシスコの3月5日から3日間にわたるイラク司牧訪問について、バチカン・ニュースを始め各国メディアの報道からまとめた。
教皇は、同国滞在中、首都バグダッドをはじめ、中南部ナジャフ、南部ウル、そして北部のアルビル、モスル、カラコシュを訪れ、様々な会見や集い、ミサや祈りなどを通して、人々と交流し、イラクの今日の姿に接すると共に、未来に向け復興を励ました。
訪問最終日の8日、教皇は、バグダッド国際空港でバルハム・サリフ大統領と短い会談の後、大統領夫妻と、政府・教会関係者に見送られ、現地時間午前9時54分、イタリア航空特別機でイラクを後にした。
教皇は、特別機の機内で、記者団の質問に答えた。
2年前の教皇とアル=アズハルのグランド・イマーム、アフマド・アル・タイーブ師による共同文書「世界平和のための人類の兄弟愛」に続き、今回イラク訪問で、同国のイスラム教シーア派最高権威、サイード・アリ・シスタニ師と会見したことについて、教皇は兄弟愛の歩みの重要さを強調。アブダビにおける共同文書によってかき立てられた兄弟愛への思いが、回勅「フラテッリ・トゥッティ」につながった、と述べた。
教皇は、シスタニ師の、人間は宗教によって兄弟であるか、あるいは創造によって平等である、という言葉を思い出しつつ、「兄弟愛の中に平等がある。わたしたちは平等以下になることはできない」と述べた。
人間は皆兄弟であるということは重要であり、この人類的兄弟愛に基づき、他の宗教とも対話を進める必要がある、と教皇は語った。
教皇は、第二バチカン公会議は諸宗教対話において大きな一歩を踏み出した、と指摘した。
諸宗教対話の歩みをめぐり、カトリック教義に反する、異端に由来する、リスクがある、との批判もあるが、これらの決定は常に祈りと対話、助言と熟考のうちになされるものであり、第二バチカン公会議の方針に従ったもの、と話した。
イラク訪問で特に印象づけられたこととして、教皇は、モスルで見た破壊の跡は想像もできないもので、破壊された教会の前で立ち止まったが言葉もなかった、と述べた。
最も心に触れたものは、カラコシュでの一人の母親の証言や、真の貧しさや奉仕、悔い改めを知る司祭の話だった、と教皇は振り返った。この婦人は過激派組織「イスラム国」の爆撃で息子を失ったにも関わらず、赦しを語ったことに心を打たれた、と教皇は述べた。
教皇は、誰がこの破壊者たちに武器を売ったのかという思いがわいた、と述べ、武器を売る者たちに、せめて正直に武器を売っていると言って欲しいが、しかし彼らはそれを言うことはない、と語った。
今後の海外訪問をめぐる質問の中で、アルゼンチンに行く予定はあるかとの問いに対し、教皇は、「アルゼンチンには76年いたから十分では、と答えている」と話した。
教皇は、自分を「祖国嫌い」などと想像しないように、と話しつつ、まだアルゼンチン、ウルグアイ、ブラジル南部など、行っていない国・場所があるため、もし機会があれば訪問は可能、と話された。
今回の訪問は他の訪問より疲れた、と体力的な感想を述べた教皇は、84歳という年齢の波は、一気に来るのではなく、後から少しずつやってくる、と語った。
現在計画されている海外訪問として、教皇はハンガリーで開催の国際聖体大会への出席が検討されていることを明らかにした。中東の他国への訪問計画について、教皇は、まだ仮定であり約束でもある、と前置きした上で、レバノンの名を挙げた。
シリア訪問の可能性を問われた教皇は、シリアをいつも心にかけているが、訪問を考えてはいない、と語った。
イタリア時間8日正午過ぎ、ローマ郊外のフィウミチーノ国際空港(レオナルド・ダ・ヴィンチ国際空港)に到着した教皇は、バチカン
へ戻る前に、市内の聖マリア大聖堂(サンタ・マリア・マッジョーレ)を訪れた。
教皇は、聖母子画「サルス・ポプリ・ロマーニ」の礼拝堂で祈り、イラクから持ち帰った花束を祭壇に捧げたという。
そして、教皇はバチカンに戻り、第33回海外司牧訪問を終えた。
◎イタリアが昨年に続き、復活祭は原則外出禁止
【CJC】イタリア政府は3月12日、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、4月4日の復活祭(イースター)前後の同3~5日を全国的に原則外出禁止にすると発表した。昨年のイースター期間も外出禁止措置が取られた。
イタリアでは新型コロナで連日数百人が死亡。英国由来の変異株感染者の割合も増えている。ドラギ首相は、ワクチン接種を加速させていく考えを示した、と共同通信が伝えた。
◎スリランカで「非急進化」目的の過激派拘束が可能に?
【CJC】スリランカ政府は3月13日、宗教的な過激主義者を取り締まり、「非急進化」を目的に被疑者を最長2年拘束できるテロ対策法の適用を発表した。AFP通信が報じた。また2019年のイスラム過激派の犯行とみられる爆発事件以降、一時的に禁止されていたイスラム教徒の女性が着用するベール「ブルカ」の着用を正式に禁止する方針も明らかにした。
サラス・ウィーラセケラ公安相は、コロンボで記者団に対し、全身を覆うブルカは「わが国の安全保障に直接影響を及ぼすもの」、「最近になってスリランカに入ってきたもので、宗教的な過激思想の象徴だ」とコメント。ブルカ着用を禁止する文書に署名したと発表した。ただし法案の成立には、閣議と大統領支持派が3分の2を占める議会で承認を得る必要がある。
スリランカでは2019年4月、279人が死亡したイスラム過激派による連続爆破事件が発生、直後の非常事態宣言下でブルカの着用が一時的に禁止された。
◎新駐日教皇大使にボッカルディ大司教
【CJC】教皇フランシスコは3月11日、日本における新しい教皇大使に、レオ・ボッカルディ大司教(67=駐イラン教皇大使)を任命した。バチカン・ニュースが報じた。
ボッカルディ大司教は、イタリア出身、1953年4月生まれ。1979年、司祭叙階。2007年、スーダンおよびエリトリアにおける教皇大使。同年、司教叙階。ビテトゥム名義大司教。2013年より駐イラン教皇大使。
◎世界80カ国以上で福音伝えたルイス・パラウ死去=「教皇は長年の友人」
【CJC】著名な大衆伝道者ビリー・グラハムの後継者の1人として目され、世界80カ国以上でイエス・キリストの福音を伝えたルイス・パラウが3月11日、米オレゴン州ポートランドの自宅で肺がんのため86歳で死去した。葬儀は、ポートランドで小規模に行われる模様。
現地メディアなどが相次ぎ伝えた中で、専門週刊誌クリスチャニティ・トゥデイの報道を紹介する。
パラウは65年以上にわたり、世界規模の伝道で影響力のある務めを果たしてきた。80カ国以上でメッセージを語り、またテレビやラジオ、書籍などを通して10億人以上に福音を伝えた。
アルゼンチンからの移民で、米国に居宅を構えたパラウは、中南米などの国家元首にも福音を伝え、「クルセード」(十字軍)と呼ばれる大規模伝道には、プロテスタント、正教会、カトリックなどさまざまなキリスト教徒が集まった。
1990年代に入ると、パラウは米国に焦点を当て始めた。積極的にリーダーシップを発揮した子どもたちの影響で、パラウの伝道イベントは、ロックコンサートや社会奉仕活動を中心としたものになっていった。99年、ニューヨーク・タイムズ紙が、グラハムの後継者予測調査をした時、パラウはその第一候補だった。
パラウは、ブエノスアイレス郊外の小さな町、インゲニエロ・マッシュヴィッツで育った。第一次世界大戦後にスペインから移民してきた両親を持つ父ルイス・パラウと、スコットランド人とフランス人の家系を持つ母マチルデ・バルフォー・デ・パラウのもと、7人家族の唯一の男子として、バイリンガルの家庭に生まれた。パラウは、バイリンガルだった両親を通じて、幼い頃から英語を学んだ。
パラウの伝道活動は、ペンテコステ派を中心とした地元の教会や聖書協会が何十年にもわたって行ってきた伝道活動の後に行われることが多い。来会者に語りかけるだけでなく、パラウと彼の伝道チームは地域のリーダーたちとの出会いを求めた。「グアテマラのカルロス・アラナ・オソリオ大統領とは、12分の予定が1時間も続き、大統領はパラウから聖書を受け取り、勉強したいと言った」と1974年のことをクリスチャニティ・トゥデイ誌は報じている。
国際的な奉仕活動や、20世紀後半に中南米諸国が経験した政治的な混乱にもかかわらず、パラウは政治的なコメントをほとんどしない人と評された。
後に世界で最も有名なアルゼンチン人となる人物ホルヘ・ベルゴリオとも、パラウは長年の友人だった。その友人が2013年に教皇フランシスコになった。パラウはその就任を歓迎し、「アルゼンチンのこと、教皇の人柄のこと、そして福音派キリスト教徒に対する教皇の開放性のことを考えると、とてもエキサイティングだった。彼を知っていただけに感動した」と語っている。
教派を超えたパートナーシップの精神は、パラウの「クルセード」にも見られ、地元の教会との協力関係や、長年疎遠だったキリスト教徒同士の信頼関係の構築に反映している。協力関係は、プロテスタントの信徒に働きかけるだけでなく、広く行われている。エジプトやロシアのように、福音派と正統派のキリスト教徒が長く対立していた国では、「クルセード」がパートナーシップのきっかけとなった。中米では、カトリックとカリスマ派が彼のイベントに参加した。
「興味深いことに、米国は世界で最も教派間の協力が難しい国。アメリカは『神の下、一つの国』という主題を口にするが、それは理論に留まる。都市全体で行うクルセードが未信者に触れるのではなく、教会が一緒になって未信者に触れるのだ」とパラウは語っている。
時が経つにつれ、パラウの米国での存在感は強くなり、方向も変わってきた。会場も、スポーツアリーナからダウンタウンの公園に変更した。社会奉仕活動を行うようになった。数十の教会に衛星放送で伝道を中継する時には、地元のバンドや講演者、地元のスポーツなどを招いてビーチパーティーを行い、大学生にアピールすることを勧めたりもした。
イリノイ州のウィートン大学ビリー・グラハム・センターのエド・ステッツァー理事長は、「パラウは明らかに正統派であり、不愉快なものではなかった。全国規模の催しでは出来ない何かを彼はやったのだ」と指摘している。
《メディア展望》
=カトリック新聞(3月14日)=https://www.cwjpn.com/cwjpn/
「連帯のきずな」希望の光に=東日本大震災から10年=司教団がメッセージ
復興10年の歩みに学ぶ=教会の支援 課題と"強み"
教皇フランシスコ=イラクを訪問
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ドイツ司教協議会=事務局長に女性選出=性虐待に揺れる総会
=KiriShin(3月11日・再掲)=https://www.kirishin.com
★無料相談会=「持続可能な教会会計」話し合う="キャッシュレス献金"など具体案も
★外キ協オンラインで全国集会=外国人留学生らの苦境も共有
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★「水陸機動団」常駐密約報道に=バプ連臨時委「驚愕と恐怖」
★バチカンがコロナ禍で赤字拡大の見通し
=クリスチャン新聞(3月14日)=https://クリスチャン新聞.com
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「CLCからしだね書店」開店=『福祉と福音』発信するブックカフェ
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ミャンマー=ハッカYMCA総主事が国軍に拘束=世界から連帯の祈り
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