世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1572信(2021.03.08)

  • 「生き残ったら奇跡」と戦時下の日本をバチカンに報告した書簡確認
  • 教皇、イラク訪問を前にビデオメッセージで挨拶
  • 教皇、ローマ発、バグダッド着=初のイラク司牧訪問
  • 教皇、イラク司牧訪問2日目にシーア派最高権威シスタニ師と会談
  • 教皇のイラク司牧訪問、全日程こなしローマへ
  • ≪メディア展望≫

 

◎「生き残ったら奇跡」と戦時下の日本をバチカンに報告した書簡確認

 【CJC】ローマ発共同通信が、第2次大戦中に駐日ローマ教皇使節(現在の大使に相当)を務めたパウロ・マレラ大司教が戦時下の日本の様子をバチカン(ローマ教皇庁)高官に報告した書簡が現存することが3月3日までに分かったと報じている。
 書簡は、空襲警報が絶えず鳴り響く日々に言及し「この破滅の後に生き残る人がいれば奇跡だ!」「外国人にできることは全く何もない!」と伝えていた。
 教皇ピウス12世(在位1939~58年)関連の機密文書をバチカンが公開、共同通信が1944年12月12日付のイタリア語で手書きされた書簡を確認した。


◎教皇、イラク訪問を前にビデオメッセージで挨拶

 【CJC】教皇フランシスコは、3月5日からのイラク訪問を前に4日、同国の人々にビデオを通し挨拶を送った。
 このビデオメッセージで、教皇は次のように話した。公設バチカン・ニュースの報道により、メッセージの要旨を紹介する。
 間もなく、やっと念願がかない、わたしは皆さんとご一緒することができるでしょう。皆さんとお会いし、様々な顔を見つめ、古いたぐいまれな文明のゆりかごである皆さんのお国を訪れることを、わたしは強く望んでいました。
 何年もの戦争とテロリズムの後、赦しと和解を主に祈り求めるため、心のなぐさめと傷のいやしを神に願うために、わたしは悔悛の巡礼者としてまいります。平和の巡礼者として訪れ、「あなたがたは皆兄弟です」と繰り返すために。
 そうです、平和の巡礼者として、兄弟愛の追求のもとに、皆さんのもとを訪れたいと思います。イスラム教徒、ユダヤ教徒、キリスト教徒を、ただ一つの家族として一致させる、父祖アブラハムのしるしのうちに、共に祈り、歩みたいという望みに動かされてまいります。
 親愛なるキリスト教徒の皆さん、非常につらい試練の中でイエスにおける信仰を証ししたあなたがたに、お会いするのを待ちきれない思いです。
 殉教者としての一つの教会との出会いを光栄に思います。皆さんの証しに感謝します。あなたがたが目にした多すぎるほどの殉教者たちの存在は、わたしたちが愛の謙遜な力をもって耐えることを助けてくれます。
 わたしは皆さんに全教会の愛情あふれる思いをお伝えしたいと思います。全教会は、あなたがたと傷つき苦しむ中東に心を寄せ、皆さんが前に進めるようにと応援しています。
 親愛なる兄弟姉妹の皆さん、わたしはここ数年、皆さんのことを思い続けていました。皆さんは大きな苦しみの中にも、完全に打ちのめされることはありませんでした。
 ニネベからは、ヨナの預言が響いてきます。それはニネベの都の滅びを防ぎ、新しい希望、神の希望をもたらしました。
 パンデミックによるこの困難な時代、兄弟愛を強めるべく助け合い、平和な未来を共に築きましょう。すべての宗教の兄弟姉妹たちと皆で力を合わせましょう。
 数千年前、皆さんの地でアブラハムは歩み始めました。今は、わたしたちが、同じ精神をもって、平和の道を共に歩み続ける時です。
 そのためにすべての皆さんに、いと高き神の平和と祝福を祈ります。
 皆さん、どうかわたしの訪問を祈りと共に見守ってください。ありがとうございました。


◎教皇、ローマ発、バグダッド着=初のイラク司牧訪問

 【CJC】バチカン・ニュースによると、教皇フランシスコは3月5日早朝、イラクへ向け33回目の海外司牧訪問(イタリアを除く)に出発した。教皇のイラク訪問は初めて
 出発前、教皇はバチカンのサンタ・マルタ館で、聖エジディオ共同体などで支援を受けている数人のイラク難民と言葉を交わした。
 イタリア時間午前7時45分、教皇はローマ郊外のフィウミチーノ国際空港(レオナルド・ダ・ヴィンチ国際空港)からイタリア航空特別機でイラクの首都バグダッドに向かい、現地時間同日13時58分、バグダッド国際空港に到着、ムスタファ・カディミ首相に迎えられ、教皇として初めてイラクの地を踏んだ。
 子どもたちから花束を受け取られた教皇は、カディミ首相と並び、儀仗兵に見守られながら、長い絨毯の上を進まれた。
 空港内で教皇は、民族衣装の人々の合唱、伝統音楽の演奏、舞踏による温かい出迎えを受けられた。次いで、教皇は空港内のホールでカディミ首相と短い会見を行われた。
 その後、教皇はバグダッド市内の大統領官邸へと向かった。沿道には、厳しい警備の中にも、教皇を歓迎しイラクとバチカンの旗を振る市民たちの姿が見られた。
 教皇は、大統領官邸にバルハム・サリフ大統領を表敬。続いて官邸内のホールでイラク各界の代表および同国駐在の外交団と会見した。
 長年望んできたイラク訪問がようやく実現した喜びを表明した教皇は、イラクの地は「文明のゆりかご」、父祖アブラハムと多くの預言者たちを介した救いの歴史と、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教の偉大な宗教的伝統と深く結びついた場所である、と述べ、同国へのこのたびの招待を大統領に感謝した。
 次いで、教皇はイラクのカトリック教会関係者に向け、この訪問を通し、信者たちの信仰、希望、イラク社会における慈愛の奉仕を励ましたいと話した。
 また、教皇は同国の他のキリスト教会や諸宗教代表者らに挨拶をおくりつつ、真の宗教の教えは平和と相互理解、兄弟愛などの価値に結びついているという強い確信のもとに、兄弟姉妹として共に歩むことができるようにと希望した。
 イラクにおいてここ数十年、複数の戦争、テロリズム、原理主義に基づく宗教的分派による闘争などが、異なる民族や宗教の平和な共存を妨げ、死と破壊をもたらしてきたことを教皇は振り返った。
 これらの出来事が人々と社会に植え付けた深い傷を見つめながら、教皇は特に残忍な迫害の犠牲になったヤジディ教徒たちの苦しみに言及した。
 教皇は、互いを同じ人類家族として見つめることでのみ、復興のプロセスを有効に進め、より正義に満ちた人間的な世界を次世代に残すことができる、と話された。
 イラク社会の歴史的な宗教・文化・民族の多様性は、取り除くべき障害ではなく、貴重な豊かさであると述べた教皇は、今日イラクはこの多様な要素を、紛争の種ではなく、社会の調和ある協力を生み出すものとして、世界、特に中東に示さなければならない、と話した。
 教皇は、宗教の本質は平和と兄弟愛に奉仕すべきものと強調。神の名のもとに殺人やテロや迫害が正当化されてはならないと述べた。
 また、イラクの地におけるキリスト教徒たちの歴史ある存在に触れた教皇は、キリスト者たちが完全な権利と自由を享受し、責任をもって社会に参加することで、宗教・民族・文化の多様性が国の発展と調和に寄与することを証しできるよう望まれた。


◎教皇、イラク司牧訪問2日目にシーア派最高権威シスタニ師と会談

 【CJC】イラクを司牧訪問中の教皇フラランシスコは訪問2日目の3月6日を迎えた。バチカン・ニュースや同行記者たちによると、教皇は早朝、バグダッドから約160キロ南のナジャフを訪れ、イスラム教シーア派の最高権威サイード・アリ・シスタニ師(90)と会談した。
 会談はシスタニ師の自宅で行われた。公の場にシスタニ師が姿を現すことはほとんどなく、報道関係者の会談場所への入場は認められなかった。
 シスタニ師側の発表では、同師は、イラクのキリスト教徒は他の市民と同様に平穏で安全な生活を送り、憲法における権利を保障されるべきだと述べた。
 他宗教指導者らとの交流を積極的に進めている教皇は、バングラデシュやモロッコ、トルコ、アラブ首長国連邦(UAE)など、イスラム教徒が多数派を占める国でスンニ派の指導者らと面会してきた。
 一方、シスタニ師は世界に約2億人いるシーア派の大多数から支持されている。イスラム教徒の中では少数派のシーア派だが、イラクでは多数派で、シスタニ師は国内で多大な影響力を持っている。
 会談後、教皇はさらに南方のナシリヤに移動。そこから約24キロ郊外のウル遺跡に向かった。
 ウルは、かつてメソポタミア南部に位置した古代都市。旧約聖書の「創世記」には「カルデアのウル」と記され、父祖アブラハムの生誕の地とされている。
 遺跡の一角で、イスラム教スンニ派やヤジーディ教、ゾロアスター教など諸宗教指導者たちとの親睦会が行われた。親睦会では、創世記やコーランの1節が朗読された。
 教皇は挨拶の中で、アブラハムが生まれ、神の声に従い旅立ったこの場所から、共にアブラハムを父祖として尊ぶ、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、そして他の宗教の人々が、互いを兄弟姉妹として、アブラハムと同じように天の星を見つめながら、平和の道を共に歩んでいけるようにと、呼びかけた。
 真の宗教性とは、神を礼拝し、隣人を愛すること、と述べた教皇は、今日の世界はしばしば神を忘れ、その誤ったイメージを与えようとするが、神を信じる者は、兄弟愛を通して、神の愛と父性を証しするよう招かれている、と語った。
 また、教皇は、神はいつくしみ深い方であり、神の名のもとに兄弟を憎むことは、最も冒涜的なことである、と話した。
 イラク北部でテロによって破壊された教会の修復を、イスラム教徒のボランティアの若者たちが手伝ったエピソードを思い起こされた教皇は、このような暗い闇の時にも星は輝いている、と話し、すべての聖なる場所が皆の平和と出会いのオアシスとなるよう、父祖アブラハムの助けを願った。
 天はわたしたちが歩むべき道として、平和の道を示している、と教皇は強調しつつ、人類家族がすべての子らを受け入れ、同じ天を見つめ、同じ地平を平和のうちに歩んでいけるようにと祈った。
 教皇は、同日午後、バグダッドに戻り、カルデア典礼カトリック教会のカテドラルでミサを捧げた。
 教皇は8日までの同国滞在中、過激派組織「イスラム国」2014~17年に支配した北部モスルや、「イスラム国」の標的となったキリスト教徒の町カラコシュを訪問し融和を訴える。


◎教皇のイラク司牧訪問、全日程こなしローマへ

 【CJC】バチカン・ニュースなどが伝えるところでは、教皇フランシスコは3月7日、イラク司牧訪問の実質的最終日といえる滞在3日目を迎え、同国北部に向かい、クルド人自治区の中心都市アルビールで、キリスト教徒が多くいるアイン・カヴァ地区の大通りに集まった群衆に挨拶したあとフランソ・ハリーリ・スタジアムに移動、新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、3万人収容のところを参加者を最大1万人に制限して大規模ミサを執り行った。
 教皇は「親愛なるクルドの人々」と呼び掛け、イラクが過激派組織「イスラム国」による破壊などから再建を進めていることを念頭に「これからもイラクは常に私の心にある。平和な未来のため一つに結束し取り組もう」と訴えた。
 ミサにはイラク・クルド地域政府のネチルヴァン・バルザーニ大統領、マスルール・バルザーニ首相、クバト・タラバーニ副首相、ジニーン・へニス国連事務総長イラク特使のほか、地域にある外交使節代表、宗教及び政府の当局者たちも出席した。
 アルビールに次いで訪れたモスルでは、紛争の傷跡が残る広場で、教皇はすべての犠牲者のために祈られた。次いでモスル中心部にあるカラクシュで開催されたミサに参列した教皇は、午後アルビールに戻った。
 夕刻、バクダッドに移動した教皇は、ここで1晩過ごしたあと8日早朝、4日間の日程を終え、空港で行われた見送りの式典のあとローマへの帰途に就いた。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(3月7日)=https://www.cwjpn.com/cwjpn/
★東日本大震災復興支援=10年の歩みを振り返る(仙台教区使徒座管理者=小松 史朗 神父)
☆東日本大震災復興支援=第47回全ベース会議=支援態勢の区切り 4月に向け各ベースの準備状況報告
★教皇庁典礼秘跡省長官ロベール・サラ枢機卿退任=東日本大震災被災地を視察
★バチカンの21年度予算=パンデミックで大幅赤字に
★バチカンは支持を表明=ワクチン特許保護の緩和
 
 =KiriShin(3月11日)=https://www.kirishin.com
★東日本大震災特集=「復興」の陰に無数の物語=被災地になお残された課題(ミッション東北 会津聖書教会牧師=高橋 拓男)
★東アジアのリアル=新型コロナと韓国教会の教会学校(延世大学研究教授=李恵源)
★「クラブハウス」の活用法めぐり牧師が「倫理」を提案
★聖学院大「全学礼拝」をアーカイブ化=フェイスブックで配信
★セミロックダウンの段階的緩和=スイスのメディア評価分かれる
 
 =クリスチャン新聞(3月7日)=https://クリスチャン新聞.com
★東日本大震災から10年=教会の地域救援協力が浸透
★「アジアから天皇制問う視点欠落」=「第55回靖国国営化2・11集会」で金性済氏
★精神障がい者が作るオリジナルゴスペルCD=「希望の灯り」制作プロジェクト始動
★東日本大震災から10年目を迎えて=「支援の中で育んだ思いを次世代へ」(クラッシュジャパン元事務局長=岩上敬人)
★タイ民主化運動=世代で溝=WEAウェブで現地クリスチャン見解

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