世界キリスト教情報 第1566信(2021.01.25)
- 「来て、見なさい」=世界広報の日に向け教皇メッセージ
- 核兵器禁止条約発効、バチカン外務局長「共通善を目指して」
- バチカン銀行元総裁、公金横領と資金洗浄で禁錮8年11月
- ロシアで今年も無病息災願い極寒の海で沐浴
- エチオピア正教会が18日に公現祭
- 韓国の新規コロナ感染者が再び400人台に=宗教教育施設で集団感染
- マドリード中心部で教会保有の建物が爆発し3人死亡
- ≪メディア展望≫
◎「来て、見なさい」=世界広報の日に向け教皇メッセージ
【CJC】教皇フランシスコは、5月に記念する「第55回世界広報の日」に先立ち、メッセージを発表した。公設バチカン・ニュースが1月23日報じた。
カトリック教会の「世界広報の日」は、日本では、復活節第6主日に記念される(今年は5月9日)。
今年のテーマは、「『来て、見なさい』(ヨハネ1・46)人々との出会いを通し、ありのままを伝える」(仮訳)。
教皇は、このメッセージで、既存の情報に甘んじたり、机上の情報収集のみに陥ることなく、自ら行動し、出かけ、出会い、見聞きし、現実から感じ取ると共に、福音の告知の歴史のように、人と人、心と心の出会いを大切にした広報・報道の在り方を提示している。
教皇は特に、今日、コピーされた情報や、あらゆるメディアで流れる同一情報、前もって準備された情報が、取材やルポルタージュなど「靴をすり減らして得た情報」の占めるべき場を奪っていることに懸念を示した。
ヨハネ福音書で、イエスの弟子となったフィリポは、ナタナエルと出会う。ナザレの人、イエスとの出会いを語るフィリポに、ナタナエルが「ナザレから何か良いものが出るだろうか」と言うと、フィリポは「来て、見なさい」と言った(参照=ヨハネ1・45~46)。
ナタナエルはイエスに会いに行き、その時、彼の人生は変わった、と教皇は記し、キリスト教信仰は、このような直接の出会い、経験から生まれていった、と述べている。
教皇は、世界がパンデミックに覆われたこの時、地球の各地の多くの現実が「来て、見なさい」とコミュニケーションに携わる人々を招いている、と強調した。
パンデミックをはじめ他の危機を語る時、豊かな世界の視点だけから語ることなく、貧しい人々の現実や、また恵まれた社会の中の隠された貧困にも目を向けることを教皇は願った。
また、教皇は、インターネット上の様々なソーシャルメディアが、物事を伝え、分かち合う能力を広げる一方で、事実確認のない情報流布の危険をも指摘された。
2000年以上にわたり、キリスト教の魅力は人々との出会いの中で連綿と語り継がれてきた、と述べた教皇は、人々との出会いを通し、そこで見たままを伝えていくことが、わたしたちのこれからの挑戦となるだろう、と記した。
◎核兵器禁止条約発効、バチカン外務局長「共通善を目指して」
【CJC】バチカンの外務局長リチャード・ギャラガー大司教は、1月22日に発効した核兵器禁止条約(TPNW)に対する教皇庁の取り組みについて語った。公設バチカン・ニュースの報道を紹介する。
原子力の戦争目的の使用は倫理に反すると同様に、核兵器の保有も倫理に反する、と教皇フランシスコは、2019年11月24日、広島の平和記念公園で述べ、核兵器のない世界への思いを強調している。
ギャラガー大司教は、17年の核兵器禁止条約採択までは、核兵器をはっきりと法的拘束力をもって禁止する国際条約はなかった、と説明した。
同条約の発効は、すでに禁じられている化学兵器や生物兵器など他の大量破壊兵器のカテゴリーの中に核兵器を明瞭な形で加えることになり、こうして核兵器は、恒常的にその使用と保有を非難され、正当化されない武器の中に入ることになった、として大司教は、これが教皇庁がこの条約の発効のために取り組んだ理由の一つである、と述べた。また、教皇庁はその起草プロセスにも積極的に参加したが、条項の多くは、直接・間接的に人間を中心に据え、人道的な規範、平和条約との密接な関係を思い起こさせる内容になっていると話した。
大司教は、多国間主義に対する圧力に抵抗し、疑念と不信の力学を克服するためには、政府関係者・非政府関係者による、皆の継続した取り組みが必要、と述べた。また、同条約で完全に認められたもう一つの重要な点は、平和を学び、核兵器の危険と現在と未来にわたるその影響など、様々な観点から軍縮への意識を向上することの大切さである、と語った。同大司教は、教育と意識向上も、核兵器のない世界を形作り、核兵器を拒否する文化、いのち・平和・いやしの文化を推進する上で大事や役割を負っている、と話した。
「威嚇」という観点から、今日の世界が直面する新型コロナウイルスによるパンデミックに触れた同大司教は、この危機は、わたしたちの安全に対する概念を再考させるものであった、と述べた。世界の平和と安全は、相互破壊や全滅への脅威や、権力バランスや力の法則を基礎とするものであってはならず、それは対話・連帯・正義・人間の統合的発展、基本的人権の尊重・環境保護・教育や医療システムの向上、人民間の信頼構築の上に築かれなければならない、と語った。
核兵器のない世界の実現には、教皇フランシスコの回勅「ラウダート・シ」が説くような、統合的エコロジーにおける「すべては互いにつながっている」という意識に基づく構想が欠かせず、核兵器禁止条約はこうした方向性を持ったものである、と大司教は指摘、さらにその構想は、見えない特殊な利害の保護ではなく、共通善をゆるぎない目的とする対話を通してのみ築くことができるだろう、と述べた。
◎バチカン銀行元総裁、公金横領と資金洗浄で禁錮8年11月
【CJC】バチカンの裁判所は1月21日、「バチカン銀行」の通称で知られるローマ教皇庁の財政管理組織「宗教事業協会」(IOR)の元総裁、アンジェロ・カロイア被告(81=イタリア人)に対し、公金横領とマネーロンダリング(資金洗浄)の罪で禁錮8年11月の有罪判決を言い渡した。AFP通信が報じた。
バチカンの裁判所が金融犯罪で実刑判決を下すのは史上初。教皇フランシスコは、バチカンのガバナンス改革を推進しており、画期的な判決、とAFP通信。
1989~2009年にIOR総裁を務めたカロイア被告は、弁護士ら2人と共謀してIORがイタリア国内に所有する不動産20件以上を市場価値より安値で売却したと見せ掛け、多額の売却益をスイスで資金洗浄したとして起訴された。検察当局は、不正に得た利益は総額5900万ユーロ(約74億円)に上ると主張している。
バチカンの発表によると裁判所は、被告らが「買い手の支払った金額の一部ないしはIORに帰属する資金(中略)総額およそ1900万ユーロ(約24億円)を着服した」と断定した。
◎ロシアで今年も無病息災願い極寒の海で沐浴
【CJC】ロシア正教会でキリストが洗礼を受けた日とされる「主の洗礼祭」の1月19日、ロシア各地で信者らが極寒の海や川で沐浴する伝統行事が行われた。「聖水」とされる水を浴びたり飲んだりすれば無病息災につながると信じられている、と共同通信が伝えた。
極東のウラジオストクでは市街地近くの凍結したアムール湾に氷をくりぬいた会場が設けられた。18日深夜、聖職者が祈りをささげ、十字架を海水に浸して「聖水」にした後、水着姿の市民が身震いをしながら次々と水に入り、十字を切った。
非常事態省は各地に救急隊員を多数配置し、市民を見守った。
◎エチオピア正教会が18日に公現祭
【CJC】エチオピア正教会の祭り「ティムカット」が1月18日、首都のアディスアベバや古都ゴンダルで催され、多くの人が集まった。
ティムカットはエチオピア正教会の公現祭で、ヨルダン川でイエス・キリストが洗礼者ヨハネから洗礼を受けたことに由来する行事。
東方諸教会・非カルケドン派に分類されるエチオピア正教会は、エチオピアのほか、世界中で信徒公称3600万人、全東方諸教会中最大の規模とされている。
◎韓国の新規コロナ感染者が再び400人台に=宗教教育施設で集団感染
【CJC】ソウル発聯合ニュースによると、韓国の中央防疫対策本部は1月25日、同日午前0時現在の国内の新型コロナウイルス感染者数(累計)が前日午前0時時点より437人増えて、7万5521人になったと発表した。
1日当たり新規感染者数437人は24日(392人)に比べ45人増だった。新規感染者の内訳は市中感染が405人、海外からの入国者の感染が32人。
休日は検査件数が減り、新規感染者が減少すると予想されたが、宗教団体が運営する中部・大田の非認可教育施設「IEM国際学校」で約120人の感染が確認され、感染規模が大きくなった。丁世均(チョン・セギュン)首相は新たな集団感染の発生に懸念を示し、大規模な感染拡大につながらないよう、初動対応に万全を期すことを指示した。
韓国で昨年11月中旬から本格化した流行の「第3波」は先月25日(1240人)をピークに減少傾向にある。1日当たりの新規感染者数は12月まで連日1000人台を記録していたが、今年に入って2日間を除き、1000人を下回っている。この1週間は300人台が3回、400人台が4回だった。
新たに確認された市中感染者405人を地域別にみると、ソウル市が91人、京畿道が72人、仁川市が13人で、首都圏が176人を占めた。
首都圏以外の地域では大田市が125人、釜山市が19人、光州市が15人、大邱市と慶尚北道がそれぞれ14人、忠清南道が13人、慶尚南道が11人、忠清北道が8人、江原道と全羅南道がそれぞれ3人、蔚山市と世宗市がそれぞれ2人だった。
主な感染事例をみると、「IEM国際学校」に関係する感染者数が計127人となった。首都圏のデイケアセンターや首都圏以外の文化施設、教会、入浴施設などで感染者が相次いでいる。
◎マドリード中心部で教会保有の建物が爆発し3人死亡
【CJC】ロイター通信が報じるところでは、スペインの首都マドリード中心部で1月20日、カトリック教会が保有する建物が爆発し、少なくとも3人が死亡、11人が負傷した。4人が病院に搬送され、1人は重体。救急当局はガス漏れが原因との検証結果を示したが、ガス漏れ発生の要因についてはまだ分かっていないとしている。
爆発が起きた建物は、中心部から周辺部に伸びるトレド通り沿いにあり、司祭の宿舎として使われ、生活困窮者に対する食事の提供も行われていた。爆発で上層5階の外壁が吹き飛んで完全に倒壊したが、下の2階はほとんど損傷を受けなかった。
ブルガリア外務省によると、死者にはブルガリア国籍の1人が含まれているという。
《メディア展望》
=カトリック新聞(1月24日)=https://www.cwjpn.com/cwjpn/
★「核兵器禁止条約」発効=被爆地の司教が共同声明=日本は率先して署名・批准を
★阪神淡路大震災から26年=つながりはコロナ禍の中でも=1・17追悼と新生の祈りinたかとり
★教皇庁典礼秘跡省=「灰の水曜日」に特別な対応を通達=コロナウイルス感染症対策「司祭は何も言わずに灰を頭にかける」
★教皇、教会法改定命じる=朗読奉仕者と祭壇奉仕者=女性も公式任命が可能に
★教皇フランシスコとベネディクト16世=1回目のワクチン接種
=KiriShin(1月21日)=https://www.kirishin.com
★「緊急事態宣言」再出発=各教派が対応表明=ホーリネス教団、聖公会、カトリック
★オンラインで香港を覚える祈祷会="祈ること「しか」でなく「こそ」"
★日本聖書協会=新理事長に石田学氏
★李登輝を送る台湾社会とキリスト教
★女性も朗読奉仕者と祭壇奉仕者に=教皇が自発教令で道開く
=クリスチャン新聞(1月24日)=https://クリスチャン新聞.com
★コロナ禍で路上生活者支援=足立愛の教会給食伝道、「給付金」も
★形態、食料提供の仕方変え=超教派で支援活動を継続=代々木公園通路チャペル
★新たなクリスチャン文化の創造、発信、交流の場に=コミュニティーサイト「アリシアの森」グランドオープン
★開催有無関わらず祈る=オリ・パラ200日前祈祷会開催
★放送伝道、OCC、国際支援に献身=榊原寛氏逝去