世界キリスト教情報 第1556信(2020.11.16)
- 当選確実にしたバイデン氏が教皇と電話協議
- マカリック元枢機卿の性的虐待を歴代教皇が軽視=バチカン報告書
- 教皇「訪朝したい」と離任の韓国大使に
- WCCアブオム議長ら、"深刻な危機"に教会の役割振り返る
- ロシア正教会イラリオン府主教、信者を侮辱する風刺画を否定
- スペインでまたも美術品「修復」失敗事件
- ≪メディア展望≫
◎当選確実にしたバイデン氏が教皇と電話協議
【CJC】米大統領選で当選を確実にした民主党のジョー・バイデン前副大統領は11月12日、教皇フランシスコと電話協議した。
ケネディ大統領以来、カトリック教徒として米史上2人目の大統領となるバイデン氏は、教皇の祝福に謝意を示し、貧困や気候変動、移民・難民問題などの国際課題に「協力して取り組みたい」との考えを伝えた。
バイデン氏は、選挙演説でも聖書の1節や教皇の言葉を引用することがあった。
◎マカリック元枢機卿の性的虐待を歴代教皇が軽視=バチカン報告書
【CJC】教皇庁は11月10日、未成年者への性的虐待疑惑が持たれていたセオドア・マカリック元ワシントン大司教・元枢機卿に関するレポートを公表した。教皇フランシスコの委託のもと、国務省により作成された報告書は、完成まで2年を費やした。公設バチカン・ニュースが報じた。
報告書は、歴代の教皇や教会幹部が虐待についての報告を軽視し、人事などで誤った判断を下してきた、との見解を示している。
国務長官ピエトロ・パロリン枢機卿は、報告書の作成は、過去のあやまちを二度と繰り返さないための、真理の追究によって動かされたもの、と述べた。
報告書からは、いくつかの動かしがたい点が浮かび上がる。まず、過去に犯された誤りについて。その過ちは、1人の犯罪責任者を、教会の位階において高い役務につけることを可能としてしまった。その誤りは、今後同様のことが繰り返されないようにと、すでに施行されている、新しい規則をもたらすことになった。
次に指摘されるのは、2017年まで、マカリック師(当時)による未成年者への虐待をめぐり、具体的な証拠を備えた告発はなかった、という点。未成年者をめぐる、十分な証拠の揃った最初の告発は、3年前のものであり、それによって直ちに教会法上の措置がとられた。そして、教皇フランシスコの決定により、まず同師の枢機卿の位が取り上げられ、その後、聖職からも解かれる結果に至った。
事件は、教会全体が学ぶべき痛ましい教訓を残すことになった。実際、2019年2月に開催された、「教会における未成年者の保護」のための司教会合後、教皇フランシスコによってとられたいくつかの対応の中には、未成年者への性的虐待のケースに関し、「教皇レベルの機密」を廃止するなどの処置が見られた。
パロリン枢機卿は、今回のレポートをめぐる声明で、「これは真理の追究に動かされたもの」と述べている。そして「苦しみには、希望の眼差しが伴います。このようなことが二度と繰り返されないためには、より効果的な規則と共に、心からの回心が必要です。福音を告げる、信頼に足りる司牧者たちが必要です。これらは、『わたしを離れては、あなたがたは何もできない』というイエスの言葉に信頼しつつ、ただ聖霊の恵みによってのみ可能であることを、わたしたちはしっかり自覚しなくてはなりません」と話した。
◎教皇「訪朝したい」と離任の韓国大使に
【CJC】韓国の聯合ニュースがローマ発で報じるところでは、教皇フランシスコが朝鮮半島の平和定着のために北朝鮮を訪問したい意向をあらためて示していたことが11月11日(現地時間)、分かった。在バチカン韓国大使館によると、教皇は先月23日、任期を終えて帰国する李百萬(イ・ベンマン)大使と面会した際にこうした考えを示した。
教皇は、2018年10月にバチカンを訪問した文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領を通じて北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長(朝鮮労働党委員長)からの訪朝要請を伝えられると、「公式の招きがあれば行くことができる」と事実上受け入れる考えを明らかにしている。これについて李氏が今も有効かと尋ねたところ、教皇は「今も同じ考えだ」と答えたという。
李大使は「教皇は地上最後の冷戦地帯である朝鮮半島の平和が世界平和と直結していることを誰よりもよく知っている。教皇の積極的な訪朝意思の裏には平和に対する願いが込められているとみるべきだ」と述べた。
一方、バチカンのピエトロ・パロリン国務長官は23日に李氏と面会した際、「教皇が北朝鮮を訪問するには最低限の条件がそろう必要がある」と慎重な姿勢を見せながらも、訪朝の可能性は否定しなかった。
◎WCCアブオム議長ら、"深刻な危機"に教会の役割振り返る
【CJC】世界教会協議会(WCC)常置委員会は11月9日から13日までオンラインで開催した。アグネス・アブオム議長とイオアン・ソーカ暫定総幹事は、"深刻な危機"に直面している世界で果たすWCCの役割について焦点を絞ることを明らかにした。
アブオム氏は、WCCの活動を強化すべきものについて、世界はまだ新型コロナウイルスとの大規模な戦いの中にあることを指摘した。「新型コロナは、開発構想達成に向けた勢いを突然打ち壊し、世界が前世紀に経験した中で最も深刻な経済的・社会的危機を引き起こした」という。
世界食糧計画(WFP)によると、世界の子どもたちのうち1000万人が激烈な栄養不良に直面する可能性がある、とアブオム氏は指摘した。「社会的距離の取り方、感染者の隔離や追跡に加えて、水と石鹸で定期的に手を洗うことは、コロナウイルスによる感染を防ぐ最重要対策の一つと認識されています。しかし多くの人々はいまだに水と石鹸を使った手洗いがない」と言う。
この1年で女性や女児に対する性的・身体的暴力が劇的に増加していることは深刻な懸念、とアブオム氏は続ける。「安全保障、健康、金銭面での不安が緊張を高め、新型コロナの流行が終わってからも続く窮屈で狭い生活環境によって、性的暴力は増加する可能性が高い」とも述べ、いじめも増加傾向にあると付け加えた。
ソーカ暫定総幹事は、2022年9月にドイツのカールスルーエで開催されるWCC第11回総会の主題「キリストの愛が世界を和解と統一へ導く」の神学的基盤を提示した。この主題は、世界中の人々、さまざまな信仰の人々の対話を促進するというWCCの交わりの中で解釈される。
「キリストの愛は希望を広げます。全世界と全宇宙を和解と統一に向かわせることは、まさに神の目的です」とソーカ氏は語った。
同氏は、WCCは目に見える一致という目標を求め続けている、として「その過程で、私たちは、使徒的信仰の一致を見出し、そこで生き、キリスト教の一致、人類の一致とすべての被造物の一致がどのように絡み合っているのか、世界への共通の証しに従事することを約束されたこの交わりが何を意味するのかを、互いに学び続けています」と述べている。
◎ロシア正教会イラリオン府主教、信者を侮辱する風刺画を否定
【CJC】ロシア正教会のイラリオン府主教が、フランスでの悲劇的なテロについて11月7日、信者を侮辱する風刺画を否定した。
スプートニク通信によると、「ロシア24」の放送で、イラリオン主教は、「信者の感情を侮辱することは許しがたい。刊行され、拡散され、子供たちに見せられるこの種の諷刺画は、実際に何百万人ものイスラム教信者の感情を侮辱するということを理解しなければならない。これらの諷刺画を禁じる必要がある。これは、フランスで一部の人が考えているような言論の自由の表現ではなく、宗教的偏狭の表れである」と語り、「宗教的集団の信者の不満を招き、対立を煽り得る」と指摘した。
同時に、いかなる宗教的伝統も憎悪を求めることはなく、宗教は信者に人々が互いに平和と調和の中で生きることを求めていると強調した。
主教は「我が国は、他の国々と共有できるような、さまざまな宗教的伝統の共存という素晴らしい経験を蓄積してきたと私は思う」と付け加えた。
◎スペインでまたも美術品「修復」失敗事件
【CJC】専門家以外が芸術作品を修復することを禁止する法律はないとされるスペインで、また美術品修復失敗事件が発生した。マドリードの北方250キロにある人口8万人の都市パレンシアのウニカッハ銀行の建物の正面を飾っている像の女性の顔が修復作業でとんでもない顔になったことが現地メディアで報じられた。
北東部の都市ボルハで2012年、「この人を見よ」と題された19世紀の壁画が地元の高齢女性による「修復」作業によって大きなダメージを受けたことの再来、と指摘する声も出ている。
壁画「この人を見よ」は「サルのキリスト」として世界的に知られ、観光客が群がるようになったので、その「再来」を望む願いもありそうだ。
彼女の修復作品を見る為に22万人が訪れた。世界で一番熱狂者が多いのは米国と日本だという。著名になる前までは訪れる人は年間でも僅か3000人ほどだったそうだ。
北部ナバーラ州エステーリャの聖ミゲル教会は18年、16世紀の木彫りの聖ホルヘ像の清掃を美術教師に任せたあと、その容貌がおもちゃのフィギュアのように変えられた。さらに今年7月には、ヴァレンシア地方のコレクターがバロック時代の画家バルトロメ・エステバン・ムリーリョの作品の複製画を家具修復業者に依頼した結果、作品が様変わりされた事件も伝えられた。
スペイン美術保全協会は今年7月に発表した声明文で「保全・修復の専門家は近年、仕事に恵まれず、海外へ拠点を移したり廃業したりせざるを得なくなっている。その結果、この分野のビジネス構造は現在、弱体化しており、今日我々が経験している悲惨な危機によってさらに悪化している。保全・修復の専門職は脆弱であり、スペイン全土で消滅する深刻なリスクにさらされている」と指摘していた。
保存修復協会のフェルナンド・カレラ氏は誰であっても芸術品の修復ができてしまう法律の現状について「薬剤師の資格がない人が薬を売ることを許可されたり、建築家でないにもかかわらず建物を作れる状況を想像できますか?」と問いかけ、芸術品の修復についての法整備を強く求めている。
今になっても、そのような声が続くのは、逆にスペインには芸術品が多数あり、それへの評価も統一されてはいないから、とも見られる。アントニオ・ガウディの「サグラダ・ファミリア」(聖家族教会)への評価を、ユネスコの世界遺産に登録される前からのことと意に介さない気質がここにも投影されているようだ。
《メディア展望》
=カトリック新聞(11月15日)=https://www.cwjpn.com/cwjpn/
★教皇メッセージ=「貧しい人のための世界祈願日」=祈りに伴う苦しむ人との連帯
★教皇庁国務省の書簡=「同性婚」認めない教義は不変=映画の教皇発言は「編集」の結果
★障害ある人々に聞く=コロナ禍が生んだ新たな困難=マスクや社会的距離が"弊害"に=東京カトリック障害者連絡協議会ヨブの会=久しぶりのミサで
★福岡カトリック神学院=「神学院祭」を動画配信=院内ツアーやドラマも
★第31回聖書事業功労賞=大阪教区 和田幹男神父が受賞=聖書学と聖書翻訳に貢献
=KiriShin(11月11日)=https://www.kirishin.com
★マスク着用、3密回避で聖餐は可能=専門的知見から提言 堀成美さん(感染症対策コンサルタント)=日本聖書神学校=「感染症と教会」テーマに修養会
★カトリック正平協がシンポ=オンラインで「戦後75年と憲法」
★WCRPが上智大などとシンポ=「分断から和解と包摂へ」
★世界福音同盟次期総主事に神学者トーマス・シルマッハー氏
★バチカンと中国=司教任命権暫定合意を2年延長
=クリスチャン新聞(11月15日)=https://クリスチャン新聞.com
★総収録5,000人以上『日本キリスト教歴史人名事典』刊行=先人の活力 現代に励まし=日本社会、学術界にも影響広く
★第51回キリスト教功労者顕彰式=功労者に船戸良隆氏=アジアの人々への支援活動に従事
★G&M=PC版「聴くドラマ聖書」リリース=画面・音声共有簡単=コミュニティーで
★恵みシャレー軽井沢=神の計画信じ、祈り積む=キリスト教宿泊研修施設継続の道は模索
★世界福音同盟次期総主事にドイツ人神学者トーマス・シルマッハー氏