世界キリスト教情報 第1538信(2020.07.13)
- トルコ大統領、世界遺産アヤソフィアを「モスク」と宣言
- トルコの旧大聖堂モスク化に教皇「非常に悲しい」
- トルコ大統領府報道官「礼拝開放決定は世界遺産消滅にはならない」
- 教皇「謙遜で柔和な人々は神の御国を証しする」
- 英国国教会トップが奴隷制念頭に歴史の直視訴え
- ドイツの教会で信者離れ進む
- 米ロサンゼルス郊外の249年の歴史持つ教会で火事
- フロリダ州でもカトリック教会に放火
- ≪メディア展望≫
◎トルコ大統領、世界遺産アヤソフィアを「モスク」と宣言
【CJC】トルコのレジェプ・タイップ・エルドアン大統領は7月10日、イスタンブールの世界遺産アヤソフィアをモスク(礼拝所)に戻して拝礼の場とする大統領令に署名した。アタチュルク初代大統領によるモスクから博物館へ変更する1934年の閣議決定を無効とする最高行政裁判所の同日判決を受けた。
1500年の歴史を持つアヤソフィアはキリスト教徒とイスラム教徒双方から尊崇されており、国外からは、アヤソフィアの地位を変えるべきでないとの声が上がっていたが、エルドアン氏は判決が出た1時間後に新政令を発表した。
ギリシャ文化省はトルコ裁判所の判決について文明世界に対する「あからさまな挑発行為だ」と反発、ロシアのインタファクス通信は、ロシア正教会のウラジミール・ルゴイダ報道官が「数百万人に上るキリスト教徒の懸念の声は届かなかった」と批判している。タス通信も、判決はさらなる分離につながる可能性があると報じた。
裁判所は、判決で「アヤソフィアがモスクに部類され、この分野以外での使用は法的に可能でないとの判断に至った」と述べた。「アヤソフィアのモスクとしての使用を止め、アヤソフィアを博物館と定義した1934年の政令は法を順守していない」としている。
議会では、エルドアン大統領が政令を読み上げた後、与党・公正発展党(AK党)の議員が立ち上がって拍手喝采した。
大統領は、今月24日に最初のイスラム礼拝が行われると説明、イスラム教徒以外の住民や外国人にも門戸が開かれると表明した。
国連教育科学文化機関(ユネスコ)は、トルコの決定を受け、アヤソフィアの世界遺産としての地位を見直すと明らかにした。世界遺産登録に必要な国境や世代を超えた重要な遺跡としての普遍的価値に対する影響という点で、今回の決定が疑義をもたらすと指摘している。
オードレ・アズレ事務局長も、ユネスコとの事前協議なしに決定が下されたことに「深い遺憾」の意を表明した。
◎トルコの旧大聖堂モスク化に教皇「非常に悲しい」
【CJC】教皇フランシスコは7月12日、トルコのレジェプ・タイップ・エルドアン大統領がイスタンブールの旧大聖堂アヤソフィアをイスラム教の「モスク」(礼拝所)とする大統領令に署名したことに関し「非常に悲しんでいる」と述べた。公営バチカン・ニュースが報じた。
教皇の発言は、同日(7月第2日曜日)記念されたカトリック教会の「船員の日」に向けたメッセージに続いて行われた。
この日の「船員の日」にあたり、教皇は海で仕事に従事するすべての人々、特に家族や祖国から遠く離れて働く人々に挨拶した。
次いで、教皇は「海は、わたしの思いをここから少し離れた、イスタンブールに運びます。わたしはアヤソフィアを思い、非常に悲しんでいます」と語った。
6世紀、キリスト教の大聖堂として建てられアヤソフィアは、15世紀からモスクとして使用され、トルコ共和国建国後、1935年に宗教施設から博物館になった。85年、ユネスコに世界遺産として登録された「イスタンブール歴史地域」の一部を構成している。
◎トルコ大統領府報道官「礼拝開放決定は世界遺産消滅にはならない」
【CJC】トルコ共和国大統領府のイブラヒム・カルン報道官が「アヤソフィアの礼拝開放決定により世界遺産がなくなる」という批判は正しくないと指摘した。
トルコ共和国大統領府のカルン報道官は、イスラムの礼拝堂(モスク)アヤソフィアが礼拝に開放されることについて、イギリスの公共放送BBCとトルコ英語放送TRT・ワールドにコメントした。
カルン報道官は、アヤソフィアにある象徴には、イスラム、キリスト教、仏教といった宗教の違いに関係なく誰もが接することができると表明した。
カルン報道官は、「アヤソフィア・ジャーミイが礼拝に開放されるとの決定により世界の遺産でなくなる」という批判は正しくないと指摘し、宗教の自由についてはトルコでは400以上もの教会やシナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)が開放されていると述べた。
アヤソフィアの礼拝開放決定は、イスタンブールにあるイスラムの礼拝堂(モスク)の数ではなく、アヤソフィアの歴史的重要性と宗教的重要性に関するものだと表明したカルン報道官は、「イスラムの信者、キリスト教の信者、信じる者、信じない者、誰もがアヤソフィアを訪れることができる。誰に対しても制限されることはない」と述べた。
◎教皇「謙遜で柔和な人々は神の御国を証しする」
【CJC】教皇フランシスコは7月5日、バチカンで正午の祈りの集いを行った。
教皇は同日正午、「お告げの祈り」をバチカンのサンピエトロ広場に集った巡礼者らと共に唱えられた。
祈りの前の講話で、教皇はこの日の福音朗読箇所、マタイ福音書(11・25~30)を取り上げた。
この講話に向け、記者団に事前配布された原稿では、教皇が香港問題への関心を表明し、「私は社会的な自由、特に宗教の自由が、さまざまな国際文書に記されているように、完全な形で表現されることを願っている」と述べることになっていた。
ところが、教皇が窓に姿を現す直前に、バチカン側から「香港の部分には言及しない」と記者団に通告があり、実際、教皇は読まなかった。具体的な理由の説明はなかったという。カトリック系メディアの多くが報じている。
◎英国国教会トップが奴隷制念頭に歴史の直視訴え
【CJC】アングリカン・コミュニオン(全世界聖公会)の最高指導者で、英国国教会首座のジャスティン・ウェルビー・カンタベリー大主教は7月9日、教会と奴隷制の関係を念頭に、信者たちに国教会の良い歴史も負の歴史もすべて認めるよう呼び掛け、良い未来を築こうとするなら、厄介な歴史の「重荷」に向き合わなければならない、と述べた。AFP通信の報道を紹介する。
ウェルビー大主教の発言は、オンラインで開催されたスティーブン・コットレル主教の第98代ヨーク大主教就任式で行われた。
ローマ・カトリック教会を離脱したヘンリー8世が1534年に創設した英国国教会は、すでに奴隷制と関連する教会の歴史を「恥の源」と呼び、謝罪を表明していた。
ウェルビー大主教は「キリスト教徒として生きるには、世界中のキリスト教徒の共同体の中で生きるだけでなく、教会の歴史とも共にあることが必要とされる」「英国国教会には聖人も奴隷商人もおり、誇り高い人、高位聖職者のほか、人々に謙虚に使える者もいた」と述べ、「彼らはすべて教会の一部であり、改革され、悔やまれ、見習うべき遺産である」と指摘した。
◎ドイツの教会で信者離れ進む
【CJC】ドイツの教会で信者離れが激化している。カトリック教会では、2019年には27万2771人が脱会した。前年2018年の21万6078人から大幅に増加している。『カトリック・ニュース・サービス』の記事を紹介する。
ドイツ司教協議会会長のゲオルグ・べッツィング大司教は6月26日の声明で、「もちろん、この減少は人口動態によるものでもあるが、私たちの具体的な司牧的・社会的行動が、もはや多くの人々を教会生活へ導く動機付けになっていないことを示しているのは明らかだ」と言う。
「教会を離れる人が非常に多いことは、特に私たちの"重荷"になっている。教会を離れた人、また離れようとしている人に、まず私たちに話をするように誘っている。教会を去る人の増加は、教会共同体での信仰生活への疎外感がさらに強くなっている兆候なのだ。
カトリック教徒の数は2018年の2300万人から19年には2260万人に減少した。
カトリック教徒は19年に、ドイツの総人口約8400万人のうち27・2%を占めているが、18年の27・7%から微減している。
教会のミサに出席するカトリック教徒の割合は、前年の9・3%に比べて19年は9・1%と、過去最低の水準にまで低下している。
プロテスタント20教会を代表するドイツ福音教会(EKD)も6月26日、年次統計を発表した。それによると、会員数は2018年の2114万人から2019年には2070万人と、44万人減少した。
教会からの正式脱会は、国の教会税を回避したいという願望が動機となってもいる。個人がカトリックとして登録されている場合、所得税の8~9%がカトリック教会に渡される。教会税の支払いを止める唯一の方法は、教会員であることを放棄する、と公式に宣言すること。ただそうなると、もはやカトリックの秘跡や埋葬を受けることは認められない。
ベッツィング大司教の地元リンブルグ教区では、19年に9439人が教会を離れた。脱会者数は18年よりも1459人増えている。
この3月にラインハルト・マルクス枢機卿の後任として司教協議会会長に就任した同司教は、教会は「時代の精神を追いかける」のではなく、第2バチカン公会議で呼びかけられた「時代のしるし」を認識することで対応すべきだと述べた。
◎米ロサンゼルス郊外の249年の歴史持つ教会で火事
【CJC】米メディアCNNが報じるところでは、カリフォルニア州ロサンゼルス郊外サンガブリエル市で、7月11日未明、249年の歴史を持つカトリック教会が火事に見舞われた。消防当局が出火原因について捜査している。
消防隊員が現場に到着した時には、教会の屋根と入り口が炎に包まれていた。隊員が火を消そうと教会内に進入したところ、屋根や天井の一部が燃え落ち始めた。隊員約80人が約3時間にわたって消火作業を行った。
屋根の火災を鎮火した後、隊員は再び教会内に入り祭壇付近の消火に当たり1700年代後半にさかのぼる歴史的な遺物や工芸品を保護した。併設されていた博物館も延焼を免れた。
火災発生当時、教会内部には誰もいなかった。教会は250周年の記念に向けて改装工事が行われていた。
教会はコロナウイルス流行のために4カ月間閉鎖、再開を予定していた。
◎フロリダ州でもカトリック教会に放火
【CJC】米フロリダ州北部オカラ市のクイーン・オブ・ピース・カトリック教会で7月11日朝、教会員がミサの準備をしている間に、男が教会の正面ドアを突き破ってミニバンを衝突させ放火した。
地元メディア『オーランド・ニュース6』は、男が焼夷弾を投げて建物に火をつけたと報じている。
保安官事務所によると、放火犯を車で追跡し、逮捕したという。放火犯の名前は公表されておらず、告発もされていないが、連邦アルコール・タバコ・銃器局が捜査に協力している。
教会は、毎週伝統的なラテン語ミサを行うことで知られている。
《メディア展望》
=カトリック新聞(7月12日)=https://www.cwjpn.com/cwjpn/
★香港の枢機卿「逮捕覚悟」=国家安全維持法に反対姿勢
★バチカン高官トップ=米国とイスラエルの大使と会見=「一方的行動」に懸念を表明
★船員の日(7月第2日曜)=AOS誕生から100年
★難民移住移動者委員会など6団体=入管法"改正"に 共同声明発表
★教皇フランシスコ=災害や人道危機に苦しむ人々のために祈る
=KiriShin(7月11日)=https://www.kirishin.com
★九州南部豪雨 警戒続く=熊本、岡山、広島から「全国」へ=被災支援での教訓とつながりを
★都立校教員ら処分の不公正に異議=黒川前検事長の「訓告」受け公開質問状
★日本宗教連盟、持続化給付金めぐる自民党とのやり取りを公開
★「教会の彫像も見直す」=カンタベリー大主教
★香港の牧師・神学者らがバルメン宣言模した「香港2020福音宣言」を発表
=クリスチャン新聞(7月12日)=https://クリスチャン新聞.com
★キリスト全国災害ネット=オンラインで第1回会合=全国6地区の同じ世話人で働きを継続
★がん患者の対話の場、世田谷深沢にオープン=教会に広がるがん哲学外来カフェ
★賭け麻雀で「訓告」、日の丸君が代で「懲戒」=「公務員処分に不公平」教員ら公開質問状
★香港国家安全維持法成立=教会の混乱と抵抗
★教会地域をつなぐ場に=関西キリスト災害ネットワーク懇談会