世界キリスト教情報 第1512信(2020.01.13)
- 「核兵器のない世界を」と教皇、駐バチカン外交団に新年の挨拶
- マニラで黒いキリスト像に330万人殺到
- トルコ・アルメニア使徒教会第85代総主教が着座宣誓
- 正教徒が1月7日に降誕祭祝う
- プーチン大統領「トランプ大統領をシリアに招待しては」と提案
- 再選へ「岩盤支持層」固めるトランプ氏、福音派離反に警戒感
- 《メディア展望》
◎「核兵器のない世界を」と教皇、駐バチカン外交団に新年の挨拶
【CJC】バチカン(ローマ教皇庁)公営バチカン・ニュースが、教皇フランシスコは、1月9日、駐バチカン外交団に新年の挨拶をおくったことを報じた。。
バチカン宮殿の王宮の間で行われたこの恒例の出会いには、現在バチカンと外交関係を持つ183カ国に、マルタ騎士団と欧州連合を加えた、185の国と組織の代表が集った。
教皇はこの挨拶の中で、昨年行われた海外司牧訪問や教会の行事を振り返りつつ、そこから各地の紛争や緊張状態、未成年者の虐待、環境保全、核兵器非保有など、今日の世界と教会が抱える現状と課題を浮きぼりにした。
その中で教皇は、昨年11月に訪れた日本について触れ、「人類が体験しうる限りの苦しみと恐怖にじかに触れた」と語り、「広島と長崎の被爆者の証言に耳を傾ける中で、核兵器による人類絶滅の脅威の上に真の平和を築くことはできないとの思いを強くした」と話した。
「被爆者は1945年8月に起きた恐怖と、今日まで続く筆舌に尽くしがたい苦しみを、後世に決して繰り返させないとの共通の思いを、生きたともし火として保ち続けている」
「核兵器のような、高度な破壊力を持った兵器による支配と破壊へのあらゆる願望を前に、人類の良心がより強まるよう、被爆者たちの証言は、犠牲者たちの記憶を呼び覚まし、保っている」
「核兵器は、恐怖や、不信、敵意を広めるだけでなく、希望を破壊する。核兵器の使用は、倫理に反するものであり、人類とその尊厳に対するだけでなく、わたしたちの共通の家のあらゆる未来に対する犯罪である」
「核兵器のない世界は可能であり、必要である」と述べた教皇は、大量破壊兵器の保有が世界を安全にするわけではないことを十分に意識するようにと、政治責任者たちに訴えた。
◎マニラで黒いキリスト像に330万人殺到
【CJC】フィリピンのマニラ首都圏マニラ市で1月9日、触れれば病気が治ったり幸運が舞い込んだりすると信じられている黒いキリスト像を載せた山車がキリノ広場から市内を練り歩く毎年恒例のカトリック教会の最大行事の一つ「ブラックナザレ祭」が開催された。キリノ広場からの出発前、キアポ教会で同教会エルナンド・コロネル司祭司式による深夜ミサが行われ、このほど枢機卿に選任され、フィリピンを離れることになったルイス・アントニオ・タグレ・マニラ大司教が最後の祝福を行った。
信者たちは等身大のキリスト像を一目見ようと、夜明け前に集まった。像を載せた金属製の山車は綱で引かれ、午前4時から午後9時近くまで、市内の狭い街路7キロ分を練り歩いた。
山車に載せられ、市内を巡行する「ブラックナザレ」に信者約330万人(警察推計では100万人以上)が行列を作ったが、例年よりも早い約16時間半で巡行を終えキアポ教会に到着した。過去5年では最短時間を記録した。。
山車が通るルートには大勢の信者が殺到し、キリスト像に少しでも触れようとする人、像をタオルでぬぐおうとする人、あるいはせめて山車につながったロープに触れたいという人たちが次々と山車によじ登ろうとした。
ただ信者たちは素足での参加が基本で、殺到する人々が将棋倒しを起こすこともあり負傷者が後を絶たない。
赤十字社によると、今年は祭りの中盤に差し掛かった時点ですでに約220人が切り傷やめまい、打撲、捻挫などで手当てを受けたという。この祭りでは毎年数百人がけがをし、数人の死者が出ることも少なくない。昨2019年の「ブラックナザレ祭」には100万人以上が詰め掛け、2人が死亡している。
マニラ市内では、混乱を避けるため役所や学校などは休みとなり、爆弾テロ対策で携帯電話の電波も停止されるなど厳戒体制が敷かれた。
「ブラックナザレ」は約400年前にメキシコからフィリピンに運んで来られた際、船上で火事に遭い黒く焦げてしまったという話が伝わっている。
◎トルコ・アルメニア使徒教会第85代総主教が着座宣誓
【CJC】アルメニア使徒教会(アルメニア正教会)の第85代総主教に選ばれたサハク・マシャルヤン氏が、イスタンブールのファーティヒ区クムカプ地区にある聖母マリア教会で行われた式典により、サハク2世として総主教に着座した。
TRT(テーレーテー=トルコ・ラジオ・テレビ協会=日本語版)が伝えたところでは、サハク2世は、2019年3月8日に総主教メスロブ2世が死去した後に、12月11日に招集された選出会議で投票が行われた結果、アルメニア使徒教会の第85代総主教に選ばれた。
アルメニア使徒教会は、アルメニアと世界各地にあるアルメニア人コミュニティで信仰されているキリスト教・非カルケドン派の教会。約500万人の信者を擁する。使徒教会の名は、十二使徒がアルメニアにキリスト教を伝えたとの伝承に由来する。
総主教の宣誓の朗読後、自身に渡された総主教の杖を受け取って「総主教」の称号により会場に集まった人々に語りかけたサハク2世は、大きな責任が自分を待っているとして、自身に託された人々の利益に適う活動を主導し、信徒の利益のためにプロジェクトを実施していくと述べた。
式典に参列した人々に感謝の意を伝えたサハク2世は、「わが国の存続と発展のために神に祈り、尊敬すべきレジェプ・ターイプ・エルドアン大統領に健やかな日々があるよう願う」と語った。
◎正教徒が1月7日に降誕祭祝う
【CJC】1月7日、世界各地の正教徒はキリスト降誕を祝っている。降誕は、深夜に行われる教会の祭典奉神礼(礼拝)の中で祝われる。ロシアのスプートニク通信が紹介している。
イイスス・ハリストス(イエス・キリスト)の降誕はキリスト教徒にとって全人類の歴史上、中心的な出来事と考えられている。
モスクワおよびロシア総主教のキリル1世は今夜、伝統に従い、ロシア国内「総本山」とされているモスクワ総主教直轄の首座聖堂、救世主ハリストス大聖堂で降誕奉神礼を行った。同大聖堂には数千人の信者が集まった。
ウラジーミル・プーチン大統領は2年連続して、降誕祭をサンクトペテルブルクで迎え、今年はスパソ・プレオブラジェンスキー大聖堂(救世主顕栄大聖堂)の奉神礼に参加した。
◎プーチン大統領「トランプ大統領をシリアに招待しては」と提案
【CJC】ロシアのウラジミール・プーチン大統領が、シリアのバッシャール・アル=アサド大統領に、ドナルド・トランプ米大統領をシリアの首都ダマスカスに招待することを提案した。ロシアのスプートニク通信が伝えている。
プーチン大統領は1月7日にダマスカスを訪問、アサド大統領と会談を行った。
プーチン大統領とアサド大統領が会談した際、キリスト教の使徒パウロがたどった道のりが話題となった。聖書によると使徒パウロは洗礼前は戦士で、初期のキリスト教徒を迫害する側であった。
アサド大統領は冗談で、トランプ大統領が同じ道をたどればトランプ氏との関係も「まともになる」と語った。
それに答えたプーチン大統領は、トランプ大統領をダマスカスに招くよう提案。アサド大統領も同意し、プーチン大統領はこの招待をトランプ大統領に伝えると約束した。
◎再選へ「岩盤支持層」固めるトランプ氏、福音派離反に警戒感
【CJC】ドナルド・トランプ米大統領は1月3日、南部フロリダ州マイアミのメガチャーチで、11月の大統領選再選に向け、有力支持基盤のキリスト教福音派を集めた集会を開催した。詰め掛けた数千人を前に「2016年の大統領選で福音派は助けてくれた。かつてない票数を得た」と謝意を示し、「20年はこの記録を塗り替えるだろう」と述べ、協力を求めた。AFP通信など内外のメディアが報じた。
「選挙イヤー」最初の集会で福音派に焦点を当てた背景には、福音派の有力誌『クリスチャニティー・トゥデー』が昨年末号に掲載した社説で、ウクライナ疑惑で弾劾訴追されたトランプ氏の罷免を主張して、注目を集めた「福音派内の亀裂」への懸念がある。
同誌は、トランプ氏が政敵の評判を落とすために外国首脳に働き掛けたことは「憲法違反というだけでなく、極めて不道徳だ」と批判した。
福音派は、聖書の記述を文字通り信じるプロテスタント信者。有権者の25%を占めるとされ、16年の大統領選では白人福音派の8割がトランプ氏に投票した。人工妊娠中絶に反対する判事の任命などに期待したためとされ、最新の世論調査でも77%が支持する「岩盤支持層」の一つ。
《メディア展望》
=カトリック新聞(1月12日・休刊)=https://www.cwjpn.com/cwjpn/
=KiriShin(1月11日)=https://www.kirishin.com
★教派超え情報のプラットフォームを=具志堅聖・日本聖書協会総主事
★伊藤詩織さん裁判「支える会」=教会で報告集会「死ななくてよかった」
★核兵器禁止条約への署名・批准を=日本カトリック司教協議会が要請
★性的虐待の隠蔽防止へ=ローマ教皇、守秘義務を廃止
★中国が2月から「宗教団体の管理措置」条例施行
=クリスチャン新聞(1月12日・合併号既報)=https://クリスチャン新聞.com