世界キリスト教情報 第1499信(2019.10.14)
- 「アマゾン特別シノドス」が6日開幕
- 「アマゾン特別シノドス」全体会議に入る
- 韓国擁護すれば非難される雰囲気」=勝谷・札幌司教が韓国で
- 「キリスト教の中国化」のために祈りを求める当局
- 《メディア展望》
◎「アマゾン特別シノドス」が6日開幕
【CJC】「アマゾン周辺地域のための特別『シノドス(世界代表司教会議)』」が10月6日、バチカン(ローマ教皇庁)で教皇フランシスコと参加司教の共同司式のミサによって開幕した。公営バチカン・ニュースが報じた。
翌7日午前、全体会議開始前、教皇はサンピエトロ大聖堂で参加司教と共に、これから始まるシノドスのために祈った。
大聖堂では、アマゾン地域を代表する先住民の人々が、伝統の調べに声を合わせ、宗教行列を行った。教皇はこれらの人々に伴われながら、会議場のシノドス・ホールへと向かわれた。
教皇は、第1回の全体会議開始にあたり、導入の挨拶をした。この中で教皇は、アマゾンの人々を理解し、これらの人々に奉仕するために、司牧・文化・社会・エコロジーなどの視点からのアプローチを通して、謙虚さと勇気をもって耳を傾け、考察、対話するよう、司教たちを励ました。
この会議は、社会発展や文化保護の計画や、森林破壊や搾取に対するアクションを話し合うことを意図していないと述べた教皇は、世俗から離れて、使徒・宣教者としての眼差しと心を持って、改宗主義に陥ることなく、アマゾンの人々の現実の尊重のもとに討議が行われることを希望した。
AFP通信によると、今回の司教会議は、アマゾン地域で孤立する貧しい先住民社会を支援するために開催された。ブラジルなどアマゾン周辺諸国9カ国の113人を含む司教184人が招集され、3週間にわたって議論が交わされる。
会議のためにまとめられた80ページに及ぶ作業文書は、社会的不公正や殺人を含む犯罪などを痛烈な単語を用いて非難し、教会の行動計画を提案している。
教皇は、遠隔地にまで広がるアマゾン地域に住む人々へ布教するために、既婚男性でも司祭になれるようにする提案について議論したい意向を示している。
しかし、アマゾン地域に例外を設けることは、司祭の独身制の崩壊につながるとして、一部の伝統主義者から強い反発を呼んでいる。カトリック教会の教義では、司祭は独身でなければいけないとは定められておらず、また独身制の伝統が始まったのは11世紀のこととされている。
会議では、すでにアマゾン地域の教会で中心的な役割を担っている女性のための公式な役職の設立についても話し合われる予定。
◎「アマゾン特別シノドス」全体会議に入る
【CJC】「アマゾン周辺地域のための特別シノドス」は、10月6日開会式の翌日からバチカン(ローマ教皇庁)のシノドスホールで、全体会議に入った。公営『バチカン・ニュース』(日本語版)によって紹介する。
7日午前の第1回全体会議では、教皇フランシスコの導入の挨拶、同シノドス事務局長、ロレンツォ・バルディッセーリ枢機卿による会議の概要説明、議長を務めるクラウディオ・フンメス枢機卿の基調講話が行われた。
同日午後の第2回全体会議では、最終文書起草メンバー4人、広報委員会メンバー4人が選ばれた。また現在5人の同シノドス事務局メンバー(議長、事務局長、次長、特別次長2人)に、教皇の任命により新たに3人が加えられることになった。
続いて、参加司教たちによる発表と討議が始まった。
この日は、特に、「環境問題における今日の若者たちの積極的な役割」、「企業による水の汲み上げと帯水層汚染による先住民への人権侵害」、「先住民の教会共同体における、典礼とインカルチュレーション」「遠隔地におけるミサや聖体拝領の頻度の問題」などがテーマに挙げられた。
全体会議2日目の8日、午前と午後にわたり行われた全体会議では、本格的な発表と討議が始まった。
午前の第3回全体会議では、アマゾン地域で住民の権利を守る指導者らが犯罪の犠牲となる一方で、国家からは十分な安全が保障されない現実に対し、人権や環境保護の立場から教会のさらなる連帯を訴える意見があった。
また、地下資源の採掘作業の廃棄物による河川の汚染、コカなどの栽培のために伐採される森林の危機に対し、教会は地域の社会・環境を保護するために必要な法整備に叫びを上げるべき、との声が聞かれた。
さらに、失業や暴力、人身取引から逃れるため、アマゾン地域から都会に移民せざるを得ない先住民たちの悲劇についても言及があり、教会が若者たちを保護する必要が説かれた。
遠隔地でのミサにおける司祭の不足について、ある司教らは、共同体の指導者などから既婚者を司祭に叙階する可能性について考察を深める必要を提案する一方、これに対し、このような解決法は司祭を単にミサの執行人としてしまう危険があり、人々が真に必要としているのは、キリスト教生活の師、キリストの現存を具体的に伝える司牧者の存在である、との考えが述べられた。
同日午後の第4回全体会議では、アマゾン地域の環境破壊に対し、より国際社会に訴えかける必要、また、先住民や社会運動をより理解するために、耳を傾け、対話することの重要性、などが述べられた。
司牧的テーマでは、先住民の終身助祭の積極的な育成が提案されたほか、司祭不足を解消するために、アマゾン地域だけでなく、カトリック世界全体が今一度、召命問題を真剣に考える必要があるとの意見も出された。
9日午前に行われた第5回全体会議の発表・討議では、アマゾン地域で起きている、資本主義的発展モデルによる自然破壊や、森林火事、社会腐敗、違法な栽培などについて、懸念が示された。
また、アマゾンの孤立先住民を保護し、人権を守るために、教会による国際的な組織を設ける必要が提案された。
アマゾン住民の必要に教会が応えるために、地元の文化や言語を尊重した典礼、既婚者の司祭叙階、信徒の最大の活用などについて、これらの提案を頭から除外することなく、司教らによる注意深い識別が行われることが希望された。
こうした中、多くの神学生らは独身性や貞潔の価値を再発見したいと望んでいる、という意見もあった。教会はこうした神学生たちの望みに対して沈黙することなく、教会の宝である、彼らの心に訴える神学を施し、育成に力を注いで欲しい、との願いが上がった。
女性をテーマにした発表もあり、アマゾン地域で女性への暴力が広がっていることが報告された。教会生活に女性たちがより参与するよう、宣教に従事する女性信徒の役職を制定してはどうかという意見もあった。
先住民の道徳価値と神学の関係についても発表があり、カトリックの本質的な普遍的価値を先住民的な鍵で再読する必要が指摘された。
同日午後の第6回全体会議では、アマゾン地域における麻薬売買の悲劇とその人的・環境的影響などが伝えられた。
また、水力発電所建設による森林破壊や、自然秩序の崩壊の危険などについても報告があった。
司牧問題については、信者たちの信心業の伝統や習慣を大切にすること、宗教的植民地主義から離れた信頼を育む宗教対話やエキュメニズムの必要なども言及された。
◎韓国擁護すれば非難される雰囲気」=勝谷・札幌司教が韓国で
【CJC】韓国の聯合ニュースがソウルから伝えるところでは、日本カトリック正義と平和協議会の勝谷太治司教が10月9日、ソウル近郊の京畿道坡州市で開かれたカトリック関係の学術会議の基調講演で「最近、日本では韓国を擁護するような発言をすれば非難されるおかしな雰囲気になり始めた。私も被害者の一人だ」と明らかにした。
勝谷司教は、インターネットやマスコミを通じて一部の歴史家や右翼の歴史修正主義者の意見がまるで日本人の大部分の意見であるかのように日本社会に広がっていることに懸念を示した。
札幌でも多くの交流行事が中止になったことや、市民たちがこのような状況を心配していることも紹介。ただ「札幌の玄関口である新千歳空港では仁川から到着する韓国人旅行客に手土産や歓迎のメッセージを渡しているが、このような市民のキャンペーンはほとんど報道されていない」と指摘。むしろ韓国を非難する報道やそれにより発生する事件が多く報道される状況を嘆いた。
勝谷司教は、安倍晋三首相が主張する「積極的平和主義」について、軍事的に世界に貢献する国を作ろうとしているが、日本で「平和」は「東洋平和」という意味で使われ、日清、日露、日中戦争の際に戦争の大義を示した言葉だったと指摘した。
その上で、日本の教会がこれを最大限警戒すると同時に、平和憲法を守るため努力していると強調した。
カトリック議政府教区民族和解委員会と韓国カトリック新聞が「韓日関係の歴史、そして記憶の癒やし」をテーマに共催した会議には、韓国と日本、ロシアのキリスト教関係者、韓国学の専門家らが出席したという。
◎「キリスト教の中国化」のために祈りを求める当局
【CJC】中国では公認の「三自教会」の聖職者が、「神」を「共産主義思想」に差し替えるよう圧力を受けている、と「中国の宗教抑圧を監視する」イタリアのメディア『ビター・ウインター』が報じた。要求に従わないと、政権への背信行為を疑われ、解雇されるという。
この8月、中国北東部、遼寧省にある「三自教会」は、香港の建道神学院を卒業した牧師の職務を一時的に停止した。この牧師が信者の前で台湾の指導者に関して不利な発言を行った別の牧師の発言に反対したため。発言は当局に伝えられ、牧師は「反共産党及び反政府」とされた。
この教会の信者によると、発言の4日後、現地の国家安全局の職員が、教会を訪れ、牧師と協議を行った。特に香港と台湾に関する見解を聞くためだった。また、「家庭教会」や香港在住のキリスト教徒との付き合いが最近あったかどうか、また、香港及び現地での「暴動」に関して公の場で発言を行ったかどうかも協議の焦点となった。
圧力を受けた教会の管理委員会は、通知を出し、この牧師に職務の一時停止処分を科した。現地の情報筋によると、この牧師はこの地域を去ったと見られる。
通知書には「(牧師は)デリケートな話題に関して発言を行い、政府及び教会に迷惑をかけた。政府の要請により、建道神学院との関係を持つこの牧師の職務を一時的に停止する。尚、職務停止及び精神育成期間中の給与は支払われない」と記されていた。
「政治に関する見解」は国営の教会の聖職者に対する主な評価の基準となっている。昨年以来、中国全域の地域の政府は、共産主義の理想に忠実であり、習近平国家主席が掲げる宗教の「中国化」政策に躊躇せずに従う「赤い聖職者」のグループを結成するため、共産党員の基準を用いて牧師をふるいにかけている。
南東部、江西省九江市の牧師は「政府に従っていれば、聖書を理解しているか否かに関係なく、合格するでしょう。政府に認められない場合は、どれだけ説教が上手でも、あるいは、どれだけ聖書を理解していても、価値はありません」と語った。
同じ8月、中央部、河南省新郷市の「基督教両会」(中国基督教協会と中国基督教三自愛国運動委員会)の会員の1人が解雇された。政府の要求に反し、中国伝統文化を説教に盛り込むこと、および、伝統的な中国の祝祭(清明節、端午節、中秋節、国慶節等)に関して話をすること、その他の内容を説教で取り上げることを拒否していた。また、この牧師はキリスト教を「中国化」する中国共産党の政策に対して不満を表面していた。
昨18年10月には、東部、山東省東営市河口区の「三自教会」に所属する48歳の牧師が、説教の中で教会の設立への政府の介入を批判したため、一時的に職務を停止する処分を科されてもいる。
ある地域の三自教会のスタッフは「今は直接的な弾圧はあまり怖くありません。何が起きているのか誰にでも分かるからです。最も恐ろしいのは精神的な混乱です」と不安を口にした。さらにこのスタッフは「三自教会で行われる説教の質は悪化しています。信者たちは無意識のうちに、中国共産党が捏造する誤った考え方を植えつけられているのです。信者たちは徐々に「中国化」されています」と続けた。
昨年、北東部、吉林省では「三自教会」のスタッフ119人が解雇された。「外国の侵入に関与している疑い」があることが解雇の理由の一つに挙げられていた。
河南省偃師市の「三自教会」の責任者は「以前、我々は中国のキリスト教化を願い、祈りを捧げていました。現在、政府は『キリスト教の中国化』のために祈りを捧げることを要求しています」と話した。
《メディア展望》
=カトリック新聞(10月13日)=https://www.cwjpn.com/cwjpn/
★教皇フランシスコ=愛の炎を燃え立たせる=アマゾン特別シノドス開会ミサ
★教皇=年間第3主日を「神のことばの主日」と定める
★多国籍の信徒ら第4回「国際フェスタ」祝う=横浜教区=初めて静岡・浜松で開催
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★グレゴリオの家=40周年で感謝ミサ=所長の橋本さんに教皇から勲章
=KiriShin(10月11日)=https://www.kirishin.com
★「異端カルト110番」サイトオープン=韓国の専門家がセミナーで講演
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★「雨傘運動」元リーダーら米議会で「香港人権法」承認を要請
★モスクと教会とシナゴーグ=1カ所に集めるUAE構想発表
=クリスチャン新聞(10月13 日)=https://クリスチャン新聞.com
★元オールブラックス代表、元全日本代表が対談=ティモ・タガロア氏="信仰"でつらさ乗り越え
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