世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1388信(2017.08.28)

  • 「安全で法に則った受け入れを広げよう」と「世界移民・難民の日」に向け教皇呼び掛け
  • バチカン国務長官パロリン枢機卿がロシア公式訪問
  • パロリン枢機卿がロシア公式訪問を終え、印象語る
  • 世界教会協議会幹部が教皇フランシスコと会談
  • 17歳少年射殺に怒り、葬儀参列の3000人が「麻薬撲滅戦争」デモ
  • ガザの子どもたちがエルサレムを初訪問
  • エルサレム旧市街からビザンチン時代のモザイクと碑文が出土
  • ≪メディア展望≫

 

◎「安全で法に則った受け入れを広げよう」と「世界移民・難民の日」に向け教皇呼び掛け

 【CJC】教皇フランシスコは8月21日、来年度の「世界移民・難民の日」に向けてメッセージを発表した。来年度、カトリック教会は「世界移民・難民の日」を1月14日に記念する。

 これに先立ち、教皇は「移民と難民に、受け入れ、保護、支援、統合を」をタイトルとする、メッセージを発表した。その中で教皇は、「戦争や貧困から逃げる多くの移民の悲しい状況」を「時代の一つのしるし」と述べ、マタイ福音書25章35〜43節を思い起こしつつ、「あらゆる旅人がわたしたちの扉を叩くたびに、それはイエス・キリストとの出会いの機会になる」と説いた。

 バチカン放送(日本語電子版)によると、教皇は、カトリック教会の社会教説の原則に根差した四つの態度、「受け入れる」「保護する」「支援する」「統合する」を提示した。

 「受け入れる」について教皇は、「移民・難民に対し、安全で法に則った受け入れの可能性をより広げることは急務」と強調し、人道上の理由による特別な査証と、家族の呼び寄せに対する認可を、さらに簡略にすることを要望した。

 また、最も弱い立場にある難民のための人道回廊を広げる必要を挙げる一方で、基本的人権が保証されない国に向けての集団追放を非難した。

 「保護する」ことについて教皇は、移民・難民の「保護」は彼らの祖国から始まり、受け入れ国において続けられるべきと述べている。教皇は、移民・難民たちがそれぞれの能力や特技を活かすために、彼らが受け入れ国内の移動の自由や、就労の可能性を持てるよう要望した。

 また「移民や難民を追い出しても解決にはならない。送還される国が、人間の尊厳と基本的人権を尊重できない国なら、なおさらだ」と強調した。

 ただ、具体的な国名への言及は慎重に避けた、とAFP通信などは指摘している。


◎バチカン国務長官パロリン枢機卿がロシア公式訪問

 【CJC】バチカン(ローマ教皇庁)国務長官ピエトロ・パロリン枢機卿は、8月21日から24日の日程でロシアを公式訪問した。バチカン放送(日本語電子版)が報じた。

 パロリン枢機卿の訪問は、ロシア当局の招きに応えるもので、ウラジーミル・プーチン大統領ら、同国政府要人との会談、キリル総主教ら、ロシア正教会指導者との会見、また、ロシアのカトリック教会の聖職者や信者らとの交流を行なう。

 パロリン枢機卿は、2015年にベラルーシ、16年にウクライナを訪れている。バチカンの国務長官のモスクワ訪問は、ソ連崩壊後、ロシア連邦が成立してから、今回が初めて。

 21日、モスクワに到着したパロリン枢機卿は、ロシア正教会・モスクワ総主教庁渉外局長ヒラリオン府主教との会見からスタートした。

 総主教座が置かれたダニーロフ修道院で、ヒラリオン府主教に迎えられたパロリン枢機卿は、ロシアの地を踏んだ感動を表した。

 パロリン枢機卿は会見後、記者団に対し、この出会いが、和やかで、非常に建設的な雰囲気のうちに行われたと述べた。

 翌22日、パロリン枢機卿は、セルゲイ・ラブロフ外相と会談。この中で同枢機卿は、バチカンとロシアの関係をより確かなものとするまたとない機会として、この訪問が実現したことを当局に感謝した。

 ラブロフ外相は、両国関係の発展を評価すると共に、テロや過激主義、諸宗教対話など、世界の諸問題を共に話し合うことができたと語った。

 パロリン枢機卿は、会談後の記者会見で、中東やウクライナなど、世界で人々を苦しめている様々な紛争に対し、正しい、恒久的な解決の追求を願い、共通善と、正義、法治、市民の生活の安全と尊厳が常に優先されるようにと、アピールした。

 そして、バチカンはあらゆる政治的立場を意図することも、取ることもないが、国際法の原則を厳密に守り、世界の平和と秩序を守る義務を広く呼びかけたいと述べた。


◎パロリン枢機卿がロシア公式訪問を終え、印象語る

 【CJC】バチカン(ローマ教皇庁)国務長官ピエトロ・パロリン枢機卿は、ロシア当局の招きに応え、8月21日から24日まで同国を公式訪問した。枢機卿は、バチカンに帰国し、教皇庁広報事務局のインタビューで訪問の印象を語った。バチカン放送(日本語電子版)が伝えている。

 ロシアで枢機卿は、ウラジミール・プーチン大統領、セルゲイ・ラブロフ外相、またロシア正教会のキリル・モスクワ総主教、同総主教庁渉外局長イラリオン府主教と会見した。枢機卿は、ロシア訪問の全体の印象を、本質的にポジティブなものと述べた。要人らとの会見には、和やかで、互いに耳を傾ける、尊重の雰囲気があり、これらの出会いは意味ある、前向きなものであったと語った。

 また、ロシアのカトリック共同体と交流する機会を持ち、特に現地の司教らとの対話を通して、ロシアのカトリック教会の現実、その喜びや希望、また課題や困難を近くから知ることができたと述べ、こうしたことも含め、この訪問は、実のある建設的なものであったと要約できると述べた。

 枢機卿は、帰国後、教皇フランシスコにロシア訪問の内容と成果を報告。現地のカトリック共同体、またプーチン大統領や、キリル総主教からの挨拶を伝えた。すべての対話の機会を非常に大切にされる教皇は、訪問の前向きな成果を受け、満足を表したという。

 キリル総主教との出会いでは、教皇と総主教のハバナでの会見に代表されるように、ロシア正教会とカトリック教会に育まれつつある関係を印象付ける、新しい空気を感じることができたと、同枢機卿は述べた。

 会談では、尊重と親睦の中にも、両教会のデリケートな問題にも触れたが、互いに問題と向き合い、解決を求めようとする前向きな姿勢が生まれたように思うと話した。

 プーチン大統領との会談では、両国関係はもとより、シリアをはじめとする中東問題や、キリスト教徒や他の少数派の宗教共同体に対する迫害、ウクライナ、ベネズエラなどのテーマに言及。同枢機卿はこの席で、ロシアは国際的に大きな役割を負っており、平和のために果たすべきその責任を強調したと述べた。


◎世界教会協議会幹部が教皇フランシスコと会談

 【CJC】バチカン(ローマ教皇庁)で8月23日行われた教皇フランシスコとの会談で、世界教会協議会(WCC)中央委員会のアグネス・アブオム議長とオラフ・フィクセ=トゥベイト総幹事は、世界が今日直面している問題で「真実の正義」をもたらすには「キリスト教一致」がいかに重要であるかを討議した。会談ではまた「一つとなる世界教会運動」の進展についても焦点を絞った。

 教皇との会談で、一致、平和、和解のための祈祷も行われた。トゥベイト総幹事は、「教皇との非常に建設的で、有益な会談に深く感謝している」と語った。

 「人間性の未来は脅かされている。最も貧しいものはすでに最悪の結果を感じている。精神、心、そして優先課題の変化を促進することで、共にいるようにあなたとカトリック教会に勧める」とトゥベイト総幹事は教皇に語り掛けた。

 今回のバチカン訪問は、『キリスト教一致推進評議会』(議長=クルト・コッホ枢機卿)の招請による。

 カトリック教会とWCCとの間で進められてきた「共同作業グループ」についてコッホ枢機卿との会議も行われた。

 トゥベイト総幹事は、コッホ枢機卿にWCC文書「合意IVにおける成長:国際的な対話のテキストと合意された声明=2004〜2014」を贈った。この10年の間に行われた対話の成果を要約したもの。

 WCC側の参加者は『正義と平和評議会』(議長=ピーター・コドボ・アピア・タークソン枢機卿)のフラミニア・ジョヴァネッリ次官補とも会談した。議論は「クライメートジャステイス」(公正な気候変動対策)、核兵器廃絶、移住・移民・排外感情問題など多岐にわたった。


◎17歳少年射殺に怒り、葬儀参列の3000人が「麻薬撲滅戦争」デモ

 【CJC】フィリピンで麻薬の運び屋と疑われ8月17日、警官に射殺された17歳の少年キアン・デロスサントスさんの葬儀が26日、マニラ首都圏カローカン市の『アッシジの聖フランシスコ=ステーション・キテリア』カトリック教会で行われた。

 参列者らは麻薬取り締まりでの超法規的殺害をやめるよう求めてデモ行進した。参加者は約3000人に膨れ上がり、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領の「麻薬撲滅戦争」に抗議する単独のデモとしては最大の規模となった。

 デモ行進には、デロスサントスさんの級友や隣人のほか、教会の神父や修道女、人権活動家らも参加した。

 「麻薬撲滅戦争」は物議を醸しながらも幅広い支持を集め、このようなデモは珍しかった。「麻薬撲滅戦争」に批判的な人たちは、デロスサントスさんの死を警官らの取り締まりで人権侵害が横行している実態を示すものと指摘している。

 ドゥテルテ氏が大統領に就任してからの1年2カ月で、麻薬に関連して約3500人が警官に殺害され、麻薬犯罪絡みだが詳細不明な状況でさらに数千人が殺害された。

 警察は、デロスサントスさんは麻薬の運び屋だと主張し、身柄を拘束しようとしたところ抵抗して発砲してきたと説明したが、防犯カメラの映像には武器を所持していないデロスサントスさんが殺害される直前に警官2人に力ずくで引きずられていく様子が捉えられていた、とAFP通信は報じている。


◎ガザの子どもたちがエルサレムを初訪問

 【CJC】パレスチナ自治区ガザ地区で暮らす子どもたちが8月20日、エルサレムと聖地2カ所を初めて訪れた。国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)が主催している交流プログラムの一環として行われた。AFP通信が報じた。

 同機関によると、参加したのは8〜14歳の子ども91人で、キリストの遺体が埋葬されたと伝えられている「キリストの墓」があるエルサレム旧市街の聖墳墓教会を訪問。アルアクサ・モスクや「岩のドーム」も見学した。91人のうち、7人はガザ地区の外に出るのも初めてだったという。

 同機関のスコット・アンダーソン氏は、子どもたちは「月を超えるほど」大喜びで興奮していたと言い、「他に表現方法はない」と述べた。

 交流プログラムは今年から開始され、数週間前にはヨルダン川西岸で暮らす子どもたちがガザ地区を訪れていた。今後、こうした機会をさらに増やしていきたいという。


◎エルサレム旧市街からビザンチン時代のモザイクと碑文が出土

 【CJC】エルサレムの旧市街で、通信ケーブルの敷設工事現場から、ギリシャ文字の碑文のあるモザイクの床が出土した、とロイター通信が報じている。モザイクと碑文が同時に出土するのは稀。

 碑文によると、床は東ローマ帝国時代の紀元550〜551年、ユスティニアヌス帝在位期間中のもの。

 発掘関係者は、モザイク床の上にあった建物を巡礼者の宿泊施設と見ている。モザイクは撤去され、専門家に託された。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(8月27日)=https://www.cwjpn.com/cwjpn/
★AYD=アジアンユースデー=違いを越え 福音を喜ぶ=青年ら2千人超 22カ国から参加=インドネシア・ジョグジャカルタ
★ベネズエラの枢機卿=米軍事介入を拒絶
★バチカン特使、ベトナム政府に「信教の自由」求める
★モンゴルの教会25周年を祝う=ウランバートル使徒座知牧区
★AIDS(エイズ)文化フォーラムin横浜=「リアル(本物)とであう」

 

 =KiriShin(8月21日・休刊)=https://www/kirishin.com

 

 =クリスチャン新聞(8月27日)=https://クリスチャン新聞.com
★広島被爆72年=平和の鐘 にぶく響く=「核兵器廃絶」潮流と「傘」のジレンマの中で
★72年目の8月6日の広島=各地で平和の祈り=被爆体験に耳傾け
★神は「悔い改めて生きよ」と=内藤容子コンサート「いま信仰告白のとき」
★『沈黙』に着想の作品5点=遠藤周作文学館で展示、対談も=長崎でマコトフジムラ『沈黙と美』刊行記念
★"恐怖の時代に和解と平和"=映画化の永瀬隆氏の心継ぐ=第23回英連邦戦没捕虜追悼礼拝

 
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