世界キリスト教情報 第1353信(2016.12.26)
- 緊迫下にも世界各地でクリスマス祝う
- 教皇がクリスマスメッセージでテロ行為犠牲者に慰めの言葉
- 英女王が教会でのクリスマス礼拝欠席
- トルコ警官がロシアのアンドレイ・カルロフ大使射殺
- ルワンダ虐殺の風刺画掲載でウガンダ国営紙が謝罪
- バチカン博物館に初の女性館長が来月1日誕生
- ≪メディア展望≫
◎緊迫下にも世界各地でクリスマス祝う
【CJC】異常気象、地球規模の地殻変動、それらにも影響を受けてか、政治的思惑によるためか人種・民族間の抗争と避難民の大量発生、移動中の遭難と、相次ぐ悲劇的なニュースに緊迫が増すばかりの世界で、2016年のクリスマスが祝われた。
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フィリピン南部ミンダナオ島の北コタバト州にある教会周辺で24日夜、手投げ弾が爆発し、クリスマスイブのミサの参列者ら16人がけがをした。
ミンダナオ島は、ドゥテルテ大統領の地元。9月には、島内のダバオ市でもテロが起きたほか、大統領警備隊の車両に爆発物が仕掛けられ、けが人が出るなど治安が悪化している。
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イラクでは過激派組織『イスラム国』から北部の都市モスルを奪還する作戦が続く中、すでに解放された周辺の町で24日、キリスト教徒の住民たちが一時的にふるさとに戻り、地元の教会でクリスマスを祝った。10月にイラク軍が奪還したモスル東方20キロにある町バルテラでは24日、キリスト教徒住民たちが3年ぶりに地元の教会でクリスマスを祝った。教会の屋根の上にある十字架は抗争で破壊されたが、クリスマスに間に合うよう、ボランティアの手で修繕されたという。
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ベルギーの首都ブリュッセルにある聖カトリーヌ教会の外壁に神社の鳥居や浮世絵の波模様などが浮かび上がった。日本を紹介する映像を投影するプロジェクションマッピングで、「クリスマス市場」でにぎわう教会前では24日、観衆から称賛の声が上がった。
今年がベルギーと日本の国交樹立150年に当たるのを祝い、日本大使館などが1年間行ってきた記念事業の一環。映像はベルギーの芸術家集団が制作した。
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バチカン(ローマ教皇庁)のサンピエトロ大聖堂で、クリスマスイブのミサが教皇フランシスコによって24日夜、バチカンのサンピエトロ大聖堂で、クリスマスイブ恒例のミサが行われた。教皇は「爆撃を避けるため地下に隠れ、移民でいっぱいになった船に乗る」子どもたちがいると指摘、各地の紛争や難民問題が平穏な生活を奪っている現実に目を向ける大切さを訴えた。また「生まれることもできず、飢えを満たされず、手におもちゃではなく武器を持つ子どもたち」のために立ち向かう努力が必要と説いた。
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イエス・キリストの生誕地とされるヨルダン川西岸パレスチナ暫定自治区のベツレヘムには世界中からキリスト教の巡礼者や観光客が訪れるが、イスラエル側とを隔てる高いコンクリートの壁がたち、住民の移動の自由が厳しく制限されている。
23日、サンタクロースにふんしたパレスチナ人などのグループがイスラエルの検問所に向けてデモ行進を行い、来年で50年となるイスラエルの占領政策に抗議した。参加者らはベルを鳴らしながら「パレスチナに自由を」などと訴えたが、検問所でイスラエルの治安部隊に催涙弾などで追い払われた。
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ベツレヘムにある聖カテリナ教会で、24日深夜から25日未明にかけて、恒例のクリスマスミサが行われた。
聖カテリナ教会に隣接する聖誕教会の前の広場には、大きなクリスマスツリーが飾られた。
2015年はパレスチナ人によるイスラエル人襲撃事件などが相次ぎ、観光客も激減したが、ベツレヘム市は12月に巡礼・観光客12万人の訪問を見込んでいる。ホテルの客室稼働率も約90%にまで回復したという。
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5年以上にわたり内戦が続くシリアでは、政府軍が22日、同国第2の都市アレッポ全域を反体制派から奪還したと宣言した。現地では銃声がやみ、キリスト降誕の場面を再現する準備などが進められた。
◎教皇がクリスマスメッセージでテロ行為犠牲者に慰めの言葉
【CJC】教皇フランシスコは12月25日、バチカン(ローマ教皇庁)のサンピエトロ大聖堂のバルコニーから、毎年恒例のクリスマスメッセージを読み上げ、「ローマと全世界」(ウルビ・エト・オルビ)を祝福した。
教皇は、メッセージの中で特に「この地球に住む人達、とりわけシリアやウクライナそして聖地(パレスチナ及びイスラエル)をはじめ、世界中で行われている戦争や激しい紛争の結果、苦しんでいるすべての人達のもとへ平和が訪れますように」と祈り、テロリズムの犠牲者たちに慰めの言葉を贈った。
6年近く続くシリアの内戦では「あまりにも多くの血が流され」、移住者、そして住居を追われる人々が数多く生じたとして、同国で銃声が止むことを求める、と教皇は述べた。
進展の兆候があまり見られない、イスラエルとパレスチナの問題に対しては「歴史の新たな1ページを記す勇気と決意を持つこと」、さらには「残忍なテロ行為の結果として大切な人を亡くした人たちには平安を希望する」と語った。
天候に恵まれた同日、世界のカトリック教徒12億人を率いる教皇を見上げる広場には約4万人が集まったが、広場を埋め尽くすほどにはならなかった。
独ベルリンの「クリスマス市場」にトラックが突入、12人が死亡した19日の事件直後の休祭日とあって、欧州では治安警備が大幅に強化されている。
◎英女王が教会でのクリスマス礼拝欠席
【CJC】12月25日、英国のエリザベス女王(90)が重い風邪のため教会でのクリスマスの礼拝を欠席した。ロイター通信などが報じた。女王がクリスマスの礼拝に出席しなかったのは、ここ数十年で初めてという。バッキンガム宮殿の報道官が明らかにした。
女王と夫のフィリップ殿下(95)は、例年クリスマスを過ごしているノーフォーク州サンドリンガムの邸宅への出発を1日遅らせ、22日にヘリコプターで移動した。
女王は、王室がウインザーでクリスマスを過ごしていた1960年代半ば以降、サンドリンガムでクリスマスを過ごすようになった1988年以降も、クリスマスの教会での礼拝には毎年出席していた。
フィリップ殿下やチャールズ皇太子と妻のカミラ夫人、他の王室メンバーらはそろって教会に歩いていく伝統行事に参加したという。
女王は英連邦諸国の国民に向けて事前に録画されたクリスマス恒例のメッセージで、「非凡なことを成し遂げる普通の人に会うたびに力をもらいました。ボランティアや介護者、コミュニティーのまとめ役、良き隣人といった人々です。日の当たらない英雄たちの目立たない献身、それが彼らを特別な人にしているのです」と述べた。
女王はマザー・テレサの言葉を引用し、「誰にでも偉大なことができるわけではありません。でも、偉大な愛で小さなことはできるのです」と語った。
女王はリオデジャネイロ五輪や自身の90歳の誕生日の祝賀行事に言及した半面、欧州連合(EU)からの離脱を決めた国民投票という英国にとって今年最大の出来事には触れなかった。
◎トルコ警官がロシアのアンドレイ・カルロフ大使射殺
【CJC】AFP通信によると、トルコの首都アンカラで開かれていた展覧会の会場で12月19日、ロシアのアンドレイ・カルロフ駐トルコ大使が警察官の男に撃たれ、死亡した。男は「アレッポ」や「アッラー・アクバル(神は偉大なり)」などと叫んでいたとされる。
ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は、大使が銃撃で負った傷により死亡したと発表、同国当局が事件を「テロ」と断定したと述べた。
現場に居合わせた日刊紙『ヒュリエト』の記者はAFPに、事件が「展覧会の開幕式で発生した」と説明、「大使がスピーチを行っていた際、スーツ姿の背の高い男がまず空に向かって発砲し、その後大使を狙った」と語った。
◎ルワンダ虐殺の風刺画掲載でウガンダ国営紙が謝罪
【CJC】カンパラ発AFP=時事によると、ウガンダ国営紙『ニュービジョン』は12月21日、隣国ルワンダで80万人以上が死亡した1994年の大虐殺を題材にした風刺画を掲載したことを謝罪し、掲載内容を取り消した。
同紙は20日、ルワンダのカガメ大統領がざんげ室の中に座り、フランシスコ教皇がその外でひざまずいて大虐殺について許しを請う様子を描いた風刺画を掲載した。大統領は先週、カトリック教会が虐殺に関与したとして教皇に謝罪を要求していた。
◎バチカン博物館に初の女性館長が来月1日誕生
【CJC】バチカン(ローマ教皇庁)は12月20日、教皇フランシスコがバチカン博物館の新館長に副館長の女性、バルバラ・ヤッタ氏(54)を任命したと発表した。共同通信が報じた。来年1月1日に就任し、初の女性館長になる。
ヤッタ氏は1962年にローマ生まれ。ローマ大卒業後、公文書の収集や保管などの専門家「アーキビスト」の学位を取得した。イタリア南部ナポリの大学の教授を経て、96年からバチカン図書館で勤務。今年6月からバチカン博物館の副館長を務めている。
バチカン市国と教皇庁で働く女性の割合は近年、増加傾向にある。ただ、教義に厳格な保守派の間では、女性聖職者を容認しない人も多い。
《メディア展望》
各紙は年末・年始特別態勢で、今信は休みます。
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