世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1248信(2014.12.22)

  • 米国とキューバが外交関係再樹立へ交渉
  • キューバとの国交交渉に米共和党反発
  • 教皇が米国とキューバ和解へ橋渡し
  • キューバ見つめてバチカン50年
  • バチカンのサンピエトロ広場でクリスマスツリー点灯
  • 軍事境界線近くにツリー設置計画撤回
  • 韓国でも「日本の平和憲法、ノーベル平和賞候補に」
  • 英国国教会に初の女性主教リビー・レーン牧師
  • タンゴで教皇の78歳誕生日を祝福
  • 《メディア展望》


◎米国とキューバが外交関係再樹立へ交渉

 【CJC=東京】米国のバラク・オバマ大統領は、キューバとの通商関係の見直しと、1961年に閉鎖された在キューバ米大使館再開の用意があると12月17日発表した。またキューバのテロ支援国家指定の再検討を国務省に指示したことも明らかにした。
 キューバのラウル・カストロ議長も、首都ハバナで同日行った演説で、旧敵国同士の両国が半世紀以上を経た後に「外交関係の再樹立に同意した」と発表した。ただ一方で、禁輸措置を「封鎖」と呼び、この問題はこれから解決すべき事案だと指摘した。
 発表に先立ち、両国はそれぞれが拘束していた情報要員の身柄交換を行った。まずキューバでは、投獄されていた米国人請負業者アラン・グロス氏と、米国のスパイとして20年間身柄を拘束されていたキューバ人が解放された。オバマ大統領は、このキューバ人を、最も重要な駐キューバ米工作員の1人としている。米国はキューバのスパイ3人を解放した。


◎キューバとの国交交渉に米共和党反発

 【CJC=東京】キューバと国交正常化交渉に入ると、バラク・オバマ米大統領が発表したことに、野党・共和党が反発している。
 キューバ系米国人で次期大統領候補にも名が挙がるマルコ・ルビオ上院議員は12月17日「カストロ政権を利するもので不可解だ」とキューバ移民の危機感を代弁した。ルビオ氏は上院外交委員会のメンバー。上下院ともに共和が多数を握る1月招集の新議会で、大使人事や大使館の設置予算などを認めない意向を明らかにした。
 ルビオ氏は「オバマ氏は政権の遺産(レガシー)を輝かしいものにしたいだけだ」と批判。そのうえでラウル・カストロ国家評議会議長との和解は「北朝鮮やイラン、ベネズエラの独裁者を優位に立たせるだけだ」と述べ、他の独裁政権に足元を見られると訴えている。


◎教皇が米国とキューバ和解へ橋渡し

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)は12月17日、声明を発表、教皇フランシスコがバラク・オバマ米大統領とキューバのラウル・カストロ国家評議会議長に両国関係を改善するよう促す書簡を送ったり、対話の場を提供したりするなど数カ月にわたり関係改善の「橋渡し」をしていたことを明らかにした。
 共同通信によると、声明は教皇が書簡で、新たな段階の関係を始めるため、人権問題などの解決を両首脳に呼び掛けた、としている。これを受け、両国政府代表団が10月にバチカンを訪問。バチカン側は対話の場を提供し、最終的に双方が容認できる結論に達したという。
 教皇は、米国とキューバの「歴史的な決断」を祝福。バチカン側は、今後も両国関係の進展に向けて支援を続けていく方針を示した。
 オバマ大統領も外交関係再樹立への交渉開始を発表した際、カトリック教会と教皇フランシスコが、両国の関係改善を仲介したことを明らかにしている。


◎キューバ見つめてバチカン50年

 【CJC=東京】米国とキューバが外交関係再樹立に向かう決定をした蔭に、50年にもわたるバチカン(ローマ教皇庁)の外交努力があった。
 制約があるとは言え、キューバではカトリックが主要宗教。米国がキューバへの禁輸政策を続ける中でも、教会としては、米国の司教などがキューバを訪問、「事実上」橋渡し役を務めてきた。またバチカン自身も和解工作を進めてきた。そのハイライトが1984年、当時の教皇ヨハネ・パウロ2世がキューバに隣接するプエルトリコを訪問したことだった、と米カトリック通信CNAは見ている。
 バチカンは1935年にキューバと国交を樹立した。キューバは、バチカンが外交関係を断絶しなかった唯一の共産主義国だった。
 米国は61年に関係を断絶しており、62年10月のミサイル危機に際しては、教皇ヨハネス23世が戦争回避のためにジョン・F・ケネディ大統領とニキタ・フルシチョフ第一書記に書簡を送っている。
 米国司教のキューバ司教との接触も続いていた。72年、米国司教協議会は、禁輸撤回を要請するキューバ司教を支持、そして85年に両国司教協議会は相互訪問を行った。
 80年代には、ボストン大司教区が、米・キューバ関係に活発な働き掛けを行った。大司教のバーナード・ロー枢機卿はキューバとの外交関係樹立を強く支持、禁輸撤回を主張した。枢機卿は85年と89年にキューバを訪問、その都度、フィデル・カストロ国家評議会議長と会見している。ボストン大司教区は、独自のキューバ援助計画も開始した。
 バチカンとキューバ間の関係修復の動きの中心は、当時の正義と平和評議会議長ロジャー・エチェガレイー枢機卿だった。89年に初めてキューバを訪問した際には、クリスマスと元日を含め9日間滞在、フィデル氏とも親密な会談を行った。会談は、キリスト者とユダヤ教徒を30年にもわたって抑圧して来た「無神論国家」の政教関係に新たな局面を開くものとなった。
 会談の間、フィデル氏は教皇を歓迎する熱意を隠すことはなかった。それは国際的に弱まってきた自分のイメージ盛り返そうとしていたことと、ヨハネ・パウロ2世が軍備縮小、第三世界の負債と貧困といった世界の非宗教的な問題の多くに関して自分と意見が一致すると思っていたためと見られる。
 93年12月にも、枢機卿はフィデル氏と会見している。
 キューバの司教は「愛はすべてのものに耐える」というメッセージを公開したが、それは体制に対する教会のアプローチ転換を示すものだった。
 司教たちは、カストロと反対勢力双方に、米国に追放された政治亡命者問題、平和的な国民再融和へ向けての政治対話開始を提案した。このメッセージはエチェガレイ枢機卿とフィデル氏の間に行われた対話の主要問題の一つで、双方が、平和、和解、米国の規制終了の支持を強調した。
 フィデル氏がカトリック教会に対する姿勢を変えたのは、それ以後のことと推測される。同氏は、キューバの将来に関する話し合いのための信用できるパートナーとしてバチカンを認めるようになり、教会への規制を弱めた。
 ヨハネ・パウロ2世は、キューバとの極秘交渉を支持した。交渉は1990年代初めに実行に移され、バチカンとキューバ当局者の間のハイレベル会議を通して進められていた。
 94年7月12日、当時の司教省長官ベルナルディン・ガンティン枢機卿が、キューバの教皇庁使節館でフィデル氏と個人的な会談を行った。会議の後、フィデル氏は使節館でハイメ・ルカス・オルテガ・イ・アラミノ大司教と2時間にわたって会談した。同大司教は10月にはヨハネ・パウロ2世によって枢機卿に任命されている。事実上、「革命」後初のキューバの枢機卿とフィデル氏が話し合ったことになる。
 ローマに戻ったガンティン枢機卿はキューバの宗教状況の改善についてヨハネ・パウロ2世に報告、フィデル氏が教皇訪問を十分に歓迎すると語った。
 96年に、フィデル氏は、バチカンでヨハネ・パウロ2世と会見した。これが98年にヨハネ・パウロ2世の歴史的なキューバ訪問につながった。
 ハバナに到着した最初の教皇として、ヨハネ・パウロ2世は「キューバは自らを世界に開く必要がある。また世界はキューバに近付く必要がある」と語った。
 その10年後の2008年、バチカン国務長官のタルチジオ・ベルトーネ枢機卿がヨハネ・パウロ2世訪問10周年記念を祝うためにキューバを訪問、フィデル氏に代わって政権を握ったラウル・カストロ氏と会見した。
 ジャーナリストとの会談で、ベルトーネ枢機卿は「ドアを開ける機会が来たようだ。ラウル氏は、人々が得られないもの、またその願いなどを十分把握している」と強調した。
 2012年のベネディクト16世の訪問は、世界にキューバが開かれたことを示すものとなった。ベネディクト16世は、米国に対キューバ制裁の解除を求めた。ラウル氏はしばしば教皇の側に姿を見せたが、それはキューバの存在を強調し、教皇訪問の重要性を示すという願望の現れでもあった。
 米国とキューバが外交関係再樹立に向かう決定をするまで50年間のバチカン外交の成果の上に教皇フランシス教皇は今「物語」の主役になった。
 バチカンは12月17日、今年10月に両国代表団を迎え、詰めの協議をしたと明らかにした。
 バチカンが発表した声明によると、教皇フランシスコはオバマ、ラウル両氏に書簡を送り「両国関係を新たな段階に進めるため、特定の収監者の状況を含む人道的な問題を解決するように」と呼びかけていた。「特定の収監者」はキューバで拘束されていた米国人のアラン・グロス氏らを指すとみられる。
 10月の協議では「両国が受け入れ可能な解決策に達した」。バチカン声明によると、17日に78歳の誕生日を迎えた教皇フランシスコは米国とキューバの「歴史的な決断」を歓迎した。オバマ、ラウル両氏も、共に教皇に謝意を表明した。


◎バチカンのサンピエトロ広場でクリスマスツリー点灯

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)のサンピエトロ広場で12月19日、クリスマスツリーの点灯式が行われた。
 ツリーは、イタリア南部カラブリア州から贈られた高さ25・5メートルのモミの木。同広場にツリーを飾る習慣は1982年、当時の教皇・故ヨハネ・パウロ2世治下に始められた。以後毎年、欧州各国から木が寄贈されている。
 サンピエトロ大聖堂の照明が同日から発光ダイオード(LED)に変わった。


◎軍事境界線近くにツリー設置計画撤回

 【CJC=東京】韓国キリスト教総連合会は12月19日、南北軍事境界線に近い京畿道金浦市の愛妓峰展望台にクリスマスツリーを設置する計画を撤回することを明らかにした。聯合ニュースが報じた。
 連合会関係者は「純粋な平和と愛に向けたキリスト教の行事として、真の平和がこの地に訪れるよう努力したかった」と主張。その上で、「南北の対立を強め、国内では保守と進歩(勢力)の対立をあおるという誤解を受け、一部団体の強い反発により(設置予定地の)住民に不安を与えた」と撤回の背景を説明した。 
 北朝鮮はクリスマス電飾に対し、対北朝鮮宣伝施設物と反発して撤去するよう求めていた。2010年には砲撃すると威嚇した。


◎韓国でも「日本の平和憲法、ノーベル平和賞候補に」

 【CJC=東京】韓国紙『中央日報』(日本語電子版)によると、韓国の各界50人余りが12月18日、日本平和憲法9条をノーベル平和賞に推薦するための署名運動に参加することにした。『日本平和憲法9条ノーベル平和賞推薦韓国委員会』が12月18日ソウルで記者会見を行い、「与野党はもちろん宗教・法曹・労働・文化芸術界など各分野で日本平和憲法9条をノーベル平和賞に推薦するための署名運動を始める」と明らかにした。
韓国内での署名運動には保守・中道・進歩を合わせた元老50人余りが参加することにした。
 キリスト教関係では、キム・ヒジュン天主教主教会の議長およびカン・ウイル済州(チェジュ)教区長、キム・チョルボン大韓キリスト教長老会高神総会長、ファン・ヨンデ韓国キリスト教長老会総会長、アン・ジェウン牧師らが参加している。
韓国内で署名運動を推進してきたイ・ブヨン『開かれたウリ党』元議長は「村山富市元首相や小沢一郎生活党代表などが今年9月に「韓国で推進すればどうか」と提案してきて推進することになった」と説明した。


◎英国国教会に初の女性主教リビー・レーン牧師

 【CJC=東京】英国国教会は12月17日、イングランド北部マンチェスター郊外のストックポート教区主教に女性のリビー・レーン牧師を指名した。同派で主教に女性が就くのは初めて。
 ロンドン発時事通信によると、レーン牧師はオックスフォード大卒、2007年から中部チェシャー州で司祭を務めていた。同師はストックポートで「私にとっては驚くべき日であり、教会にとっては歴史的な日だ」と語った。


◎タンゴで教皇の78歳誕生日を祝福

 【CJC=東京】教皇フランシスコが78歳の誕生日を迎えた12月17日、バチカン(ローマ教皇庁)のサンピエトロ広場に約2千人の信者らが集まり、タンゴを踊って祝福した。タンゴは、教皇の出身地アルゼンチンが発祥。
 共同通信によると、教皇がオープンカーに乗って手を振りながら広場を回ると、信者たちがスペイン語やイタリア語などで口々に「おめでとう」と声を掛けた。ケーキも用意され、教皇はにっこりと笑顔を浮かべ、ろうそくの火を吹き消した。
 バチカン報道事務所によると、タンゴ好きで知られる教皇は「祖国にいるような雰囲気だ」と喜んでいたという。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(12月21日)=https://www.cwjpn.com
★教皇フランシスコ=「討論の自由が大切」=シノドス、衝突ではない
★「核兵器廃絶を」=教皇、世界に呼び掛け
★注目の「提題解説(リネアメンタ)」=バチカン=シノドス資料 各国へ
★国際デーに被災地から=物産展や活動紹介=大分教区
★東日本大震災復興支援カレンダー=仙台教区サポートセンターが作成

 =キリスト新聞(12月25日=クリスマス新年号)=https://www.kirishin.com
★燦葉出版40周年=『聖務日課神学歳時記』4分冊刊行
★カトリック・聖公会・福音ルーテル=日本で初の合同礼拝開催
★〝いのちの尊厳〟確立するために=聖学院大と韓国・長老会神学大がシンポ
★並木浩一著作集完結でシンポ=教え子ら「知性の姿」浮き彫りに
★現代の奴隷制度撲滅へ共同宣言

 =クリスチャン新聞(12月21・28日=クリスマス特別号)=https://jpnews.org
★特定秘密保護法施工前=牧師の会が記者会見=「廃法までしぶとく戦う」
★祈りの輪で無から実現=岐阜キングス・ガーデン献堂
★九州発!被災地支援=「サンタプロジェクト九州」=地域の人々の善意を届ける
★日本戦没学生記念会=「不戦の思い」現代につなぐ=映画「学徒出陣」上映・講演
★『パウロの選択』著者=自活伝道の矢島徹郎氏逝く


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