世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1197信(2013.12.30)

  • 混乱の世界にクリスマス
  • 中国はクリスマス祝祭を規制?
  • イラン大統領と最高指導者がツイッターでクリスマス祝福
  • アサド大統領が教皇に書簡、和平会議に向け立場説明か
  • イラク首都のキリスト者地区で爆発
  • 「政教分離」徹底に米国で反発も
  • 教皇フランシスコ教皇は米信者にも高い人気
  • 《短信》
  • 《メディア展望》


◎混乱の世界にクリスマス

 【CJC=東京】首都の知事が収賄容疑で辞任を余儀なくされた日本、鉄道ストが長期化する韓国、ナンバーツーを処刑した北朝鮮、少数民族問題に揺れる中国......さらにはタイ、イラン、ウクライナ、シリア、エジプト、南スーダン、中央アフリカ、ナイジェリアと世界各地で混乱が続く中、2013年のクリスマスを世界は迎えた。
 教皇フランシスコは12月24日、バチカン(ローマ教皇庁)のサンピエトロ大聖堂でクリスマスイブの深夜ミサを行った。大聖堂には各国外交団など教会関係者、信徒約1万人が集まった。聖堂前のサンピエトロ広場にも数万人の信徒や観光客が集まり、教皇のスピーチは大型スクリーンで伝えられた。
 広場にはドイツのバイエルン州ヴァルトミュンヘンのモミノキが装飾を施した枝を広げ、その隣では、大型の「プレゼピオ」(イエス降誕の場面を再現した馬小屋の模型)が置かれた。
 3月に着座以来、最初のクリスマス・ミサで教皇は、「聖なる誕生を最初に目撃したのは地元の羊飼いたちだった」と羊飼いの果たした役割を強調、信仰心の大切さを説いた。
 教皇は、「心が閉ざされ、誇りや偽り、利己主義に支配されているなら、われわれの内面と周囲には暗闇が垂れ込める」として、神の「愛」と「許し」を説き、「神と同胞を愛する者は光の中を歩く」「同胞を憎む者は闇に包まれ、進む道が分からなくなってしまう」と述べて平和を呼び掛けた。
 正教会はユリウス暦に従い、1月7日にクリスマスを祝うが、ロシアのカトリックとプロテスタント信者たちは25日にクリスマスを祝った。
 モスクワのマーラヤ・グルジンスカヤ通りにあるカトリック聖堂で、カトリック教会のモスクワおよびロシア中部パオロ・ペッツィ大司教によって、ミサが行われた。
     ◇
 教皇フランシスコは25日、国際社会に向けたクリスマスのメッセージを発表し、シリアや南スーダン、中央アフリカの紛争に速やかに終止符を打つよう訴えた。
 教皇はバチカンのサンピエトロ広場に集まった世界各国の巡礼者を前にバルコニーからクリスマスのメッセージを読み上げ、シリアや南スーダンなどで激化する戦闘の終結に向けた対話を呼び掛けるとともに、世界の国民がそれぞれ「調停者」となり平和実現に努力するよう求めた。
 教皇はまたアフリカ難民やフィリピン台風被災者への支援を呼びかけた。さらに地中海で相次いだ難民や移民の遭難について「二度と起きてはならない」と指摘。難民船を装った人身売買は「人道に対する罪だ」と述べた。
 教皇フランシスコは正午、バチカン(ローマ教皇庁)のサンピエトロ大聖堂の中央バルコニーから、クリスマスのメッセージ発表した後、ローマと世界に向けた教皇祝福「ウルビ・エト・オルビ」(ローマ市と全世界へ)を贈った。
 英国国教会と聖公会共同体の最高指導者カンタベリー大主教のジャスティン・ウエルビー氏も着座以来最初のクリスマスに際し、カンタベリー大聖堂で、英国の貧者と世界各地の紛争被害者が直面している「不正」に焦点をあてて説教した。大主教は、中東でキリスト者共同体が、信仰のために迫害を受けていることを非難した。

◎中国はクリスマス祝祭を規制?

 【CJC=東京】共同通信が、米政府系放送局ラジオ自由アジア報道として伝えるところでは、中国で住民の権利回復運動をしていた河南省濮陽市のキリスト教会の牧師、張少傑氏が当局に拘束されたことに反発する信者や弁護士を、警察当局などが弾圧し、各地の教会にクリスマス祝祭の規模縮小や、都市部での開催中止を要求していたことが分かった。
 一方、張氏らの支援者は12月24日、共同通信の取材に、張氏の自宅が同日、100人近くの「暴徒」に取り囲まれて多数のけが人が出たと話した。信者らの抗議集会を当局が指示して力で抑え込んだ可能性があると言う。


◎イラン大統領と最高指導者がツイッターでクリスマス祝福

 【CJC=東京】イランのハッサン・ローハニ大統領は12月25日、クリスマス記念メッセージを投稿サイト『ツイッター』に掲載した。米CNNテレビが報じた。
 ローハニ大統領の公式アカウントには、「愛と平和の預言者、イエス・キリストの祝福がありますように。メリークリスマス。特にイランのキリスト者へ」とのメッセージが掲載された。
 同国の最高指導者セイエド・アリー・ハメネイ師のツイッターにも、「イエス・キリストはまぎれもなく、敬虔なキリスト者と同様、イスラム教徒にとっても尊い存在だ」と書き込まれた。さらに「マリアの子、イエス・キリストは、神の恩寵と祝福と導きの使者だった」とツイートしている。
 モハンマド・ジャヴァード・ザリーフ外相も、ツイッターに「クリスマスの精神が来る年に喜びと平和、共感、思いやりをもたらしますように」とのメッセージを寄せた。
 ローハニ大統領とハメネイ師のツイートを実際に投稿しているのが誰なのかは不明だ。ザリーフ外相は英語が堪能で、ツイートは自分で書いているという。


◎アサド大統領が教皇に書簡、和平会議に向け立場説明か

 【CJC=東京】シリアのバッシャール・アル=アサド大統領が、カトリック教会のフランシスコ教皇に書簡を送った。2011年に内戦勃発以来、大統領が教皇に書簡を送るのは初めて。
 シリアのヨセフ・スウェイド国務相ら外交使節団が12月28日、バチカン(ローマ教皇庁)で国務省長官のピエトロ・パロリン大司教と会談した際、使節団が持参した書簡を手渡した。シリア政府の姿勢を説明しているという。詳しい内容は明らかにされなかったが、国営シリア・アラブ通信によると、1月22日からスイスで開かれる和平会議「ジュネーブ2」にアサド政権として参加の用意を示したという。
 バチカン広報事務所長のフェデリコ・ロンバルディ神父も、パロリン国務長官が、シリアのスウェイド国務相ら外交使節団と会談したことを明らかにした。会談には外務局長のドミニク・マンベルティ大司教も同席した。
 バチカンはジュネーブ2には参加しないが、教皇フランシスコは、シリアでの戦闘の終結と人道支援の実現を強く訴えており、クリスマス・メッセージでも言及している。
 反政府勢力を支持し、行方不明となっているイタリア人イエズス会士パオロ・ダログリオ神父の消息への懸念もバチカン側は表明したものと見られる。

◎イラク首都のキリスト者地区で爆発

 【CJC=東京】イラクの首都バグダッド南部のキリスト者が多いドーラ地区で12月25日、教会付近や市場で自動車爆弾などが爆発し、ロイター通信によると、少なくとも24人が死亡した。教会でクリスマスのミサが行われた後で、犠牲者のほとんどがキリスト者という。犯行声明は出ていない。

 イラク人口の9割以上はイスラム教徒だが、キリスト者も40万〜60万人いると見られる。


◎「政教分離」徹底に米国で反発も

 【CJC=東京】サンタは既に世界中の子どもたちにプレゼントを配り終わったかもしれないが、米国では一部の議員や保守団体はなお、「クリスマスを妨害する試み」と見なす動きへの警告を続けている。
 「クリスマス戦争」とも呼ばれるこの動きは、「メリークリスマス」と書かれたカードの代わりに。「ハッピー・ホリディズ」だとか「シーズンズ・グリーティング」と書かれたカードが使われることでも分かる。
 テキサス州では、学校の子どもたちが退役軍人たちに「メリークリスマス」と書かれたカードを渡そうとしたところ、特定の宗教の言葉を禁じた規則に反するとして復員軍人援護局に拒否されるという出来事があった、とAFP通信。バラク・オバマ大統領の公式なカードにもクリスマスへの言及はない。
 共和党のダグ・ランボーン下院議員(コロラド州)ら37議員は、このような動きをクリスマスに対する攻撃と見なし、「クリスマスのシンボルと伝統は、それを祝う人々が使うために保護されるべきだ」とする決議案を提出した。
 拘束力のないこの決議案の提出には民主党議員2人も加わった。その1人ニック・レイホール下院議員(ウエストバージニア州)は、「『メリークリスマス』という由緒あるあいさつの言葉を、『ハッピーホリデーズ』などといった空虚な言葉に置き換えるなんて、ばかばかしいの一言に尽きる」と言う。
 ランボーン議員はクリスマスイブの12月24日、FOXニュースに対し、「声高に意見を主張する少数派が、クリスマスを祝いたい残りの人々に対して腹を立てている」と述べ、「こういった禁止措置に甘んじてはいけない」と世間に呼び掛けた。
 だが、FOXニュースの番組に出演した著名テレビ伝道師でテキサス州ヒューストンにある全米最大のメガチャーチ『レイクウッド教会』のジョエル・オスティーン牧師は、こうした見方に対して冷静な姿勢。クリスマスから宗教的な意味合いをなくしたいと考える特定の団体があると指摘した上で、「私はそれほど心配していない」と述べ、「誰もが私と同じように信仰をしているわけではない。この国にいる全員がキリスト者というわけではない」と加えた、とAFP通信は報じている。


◎教皇フランシスコ教皇は米信者にも高い人気

 【CJC=東京】世界のカトリック信者約12億人の頂点に立つ教皇フランシスコは、米国でも高い支持を得ていることが、CNNテレビと調査機関『ORCインターナショナル』が12月24日に発表した世論調査結果で分かった。
 回答者のカトリック信者のうち88%がフランシスコ教皇の実績を評価すると答え、ほぼ4人中3人が教皇に好感を持っていると回答した。米国人の教皇に対する好感度としては過去最高。
 人工妊娠中絶や同性愛といった問題に関心を向けていることについてもほぼ3分の2が評価したほか、85%は教皇を「極端なリベラルでも極端な保守でもない」と評し、「現代社会に沿っている」も86%に上っている。


《短信》

〇新旧教皇が互いに「メリークリスマス」
 教皇フランシスコ(77)がクリスマスを前に12月23日、前教皇ベネディクト16世(86)と面会した。
 教皇は、ベネディクト16世が居住しているバチカン庭園内の観想修道院マーテル・エクレジエを訪れ、約30分間滞在。互いに「メリークリスマス」とあいさつし、教皇は「元気な姿を見れてうれしく思う」とベネディクト16世に話したという。(CJC)

〇反プーチンのバンド女性2人に恩赦
 インターファクス通信によると、ロシア正教会の聖堂でウラジーミル・プーチン大統領らを批判する歌を歌ったとして、暴徒行為罪で服役していたパンクバンド『プッシー・ライオット』のメンバー2人が12月23日、恩赦によって釈放された。
 釈放されたメンバーはマリヤ・アリョヒナさん(25)とナジェージダ・トロコンニコワさん(24)。アリョヒナさんは「恩赦は人道的な措置ではなく、PRだ。断れるなら断っていた」と語ったという。(CJC)


《メディア展望》

 キリスト教界各紙は年末休刊しています。


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