世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1195信(2013.12.16)

  • 教皇が米誌『タイム』の「今年の人」に
  • 「兄弟愛は平和の基礎」と教皇メッセージ
  • イスラム教徒殺害でキリスト者に終身刑=エジプト
  • シリアで修道女12人拘束続く
  • ベツレヘムの『降誕教会』が修復中
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎教皇が米誌『タイム』の「今年の人」に

 【CJC=東京】米ニュース週刊誌『タイム』は12月11日、年末恒例企画の「パーソン・オブ・ザ・イヤー」(今年の人)に、中南米出身としては初めて、3月に着座した教皇フランシスコを選んだと発表した。教皇は、12月23日増大号の表紙を飾っている。
 同誌は選定の理由として「この1200年でヨーロッパ出身以外の教皇」であることを挙げている。ナンシー・ギブズ編集長は教皇フランシスコが「世界最大の組織の一つである同教会の雰囲気や意識、優先する課題を劇的に変えた」として、「世界という劇場で新人俳優が、老いも若きも、信者も懐疑派も含めてこれほど多くから、これほど早く注目されるようになるのは、極めてまれなこと」と指摘する。
 「この9カ月、富と貧困、公正と正義、透明さ、近代化、グローバリゼーション、女性の役割、結婚の本質、権力の誘惑など、現代に交わされる会話のまさに中心に、彼は自分を置いた」と言う。
 バチカン(ローマ教皇庁)報道事務所長のフェデリコ・ロンバルディ神父は11日、国際的なメディアの最も権威ある認定が「霊的、宗教的、倫理的価値を公言し、平和とより大きな正義のために力強く語りかける人」に行われたことを評価し、「教皇は名声や成功を求める人ではないが、もし多くの人がそのメッセージを理解してくれたということであれば喜んでいると思う」とコメントした。
 「今年の人」の最終候補には、米中央情報局(CIA)元職員で、米英情報機関の通信傍受に関する機密文書を暴露したエドワード・ジョセフ・スノーデン氏やシリアのバッシャール・ハーフィズ・アル=アサド大統領、米国の同性愛運動家エディス・ウインザー氏、テキサス州選出のテッド・クルーズ米上院議員の名が上がっていた。
 『タイム』誌は、「今年の人」にこれまで教皇を2人選定している。1994年はヨハネ・パウロ2世、63年はヨハネス23世だった。


◎「兄弟愛は平和の基礎」と教皇メッセージ

 【CJC=東京】2014年度『世界平和の日』に向けた教皇フランシスコのメッセージが12月12日、バチカン(ローマ教皇庁)から発表された。カトリック教会は、毎年1月1日を「世界平和の日」とし、戦争や分裂、憎しみや飢餓などのない平和な世界が来るように祈る。
 バチカン放送(日本語電子版)によると、教皇フランシスコの初めての「世界平和の日メッセージ」のテーマは、「平和の基礎、道としての兄弟愛」(仮訳)。
 全10章からなるメッセージを通して、教皇は「兄弟愛」のないところに正しい社会と永続的平和を築くことはできないと説くと共に、暴力と死をもたらす者たちに武器を捨てるようアピールしている。
 教皇は「兄弟愛」を人間の本質的側面として示しながら、人間同士の真の兄弟愛には超越的な父性、すなわち神の父性が必要であると指摘。
 今日、兄弟愛への召命は「無関心のグローバル化」によって脅かされ、その無関心はわたしたちを他人の苦しみに慣れさせ、自分の殻の中に閉じこもらせようとしていると、教皇は警告している。
 今日の経済危機は、人間が神から遠ざかり、物質的な富の飽くなき追求に走った結果であり、また人と人、共同体関係の疲弊に原因するものと教皇は明言。この危機を経済発展モデルを再考し、生活スタイルを見直すきっかけとするよう勧めている。
 さらに教皇は「兄弟愛は戦争の火を消す」とし、武力闘争を止め、相手と向き合い、双方に正義・信頼・希望を育てるために、対話・赦し・和解の道をとるよう招いている。そして、ただ敵であると思っている相手が、自分の兄弟であることを発見し、上げた手を下ろすよう説いている。同時に教皇は、核兵器・化学兵器をはじめ、あらゆる方面での軍縮を願っている。
 加えて、様々な形の社会的腐敗、組織的犯罪に見られるエゴイズムを教皇は非難しつつ、これらは神を冒涜し、兄弟を苦しめ、被造物を破壊するものと述べている。そして、今日の悲劇として、麻薬や、搾取的労働、人身売買、未成年虐待、受刑者らの劣悪な環境などにも言及している。
 最後に、教皇は兄弟愛が自然を守り育てることに貢献すると説き、強欲や支配的な傲慢をもって自然を扱わず、自然を無償の贈り物として大切にし、それを兄弟への奉仕に役立てるよう呼びかけている。


◎イスラム教徒殺害でキリスト者に終身刑=エジプト

 【CJC=東京】エジプト北部カルビヤの刑事裁判所が、イスラム教徒1人を殺害したとして、キリスト者3人に有罪判決を出した。カイロ近郊コスースでこの4月に発生した事件はキリスト者側に死者9人を出すなど、2013年に発生した宗教紛争の中で、最悪の事件だったが、その犯人は逮捕されていない
 キリスト者被告3人のうち、ハニ・ファルーク・アワド氏には終身禁固刑、他の2人には禁固15年が言い渡された。キリスト者の財産を略奪したとしてイスラム教徒9人が5年未満の禁固刑に処せられた。
 エジプトのキリスト者は総人口の約1割を占めているが、差別や宗派的抗争に巻き込まれるケースが続発している。


◎シリアで修道女12人拘束続く

 【CJC=東京】シリアのダマスカス北方マアロウラで『聖テクラ』修道会の修道女12人が12月2日拉致された。現地はキリスト者が多数居住する地域で、宗教間対立の一環として拉致されたと見られる。教皇フランシスコは、解放を繰り返し訴えている。
 カトリック慈善団体『教会緊急援助』とのインタビューで、シリア正教会のアルネメ主教は、修道女たちからの連絡がない、と語っている。情報では、修道女たちはマアロウラから約20キロ離れたヤブルドにいる模様。
 同主教は、「修道女の即時解放を要請する。誰にも何も危害を与えていない。体制側にも反対側にも組みしておらず、修道院では、戦禍を受けた難民をイスラム教徒でも誰でも、宗教と関係なく援助している」と語った。
 メルキト典礼ギリシャ・カトリック教会の指導者グレゴリオス3世も修道女解放を訴え、ギリシャ正教会総主教ヨハネ10世(アンテオケ)の手に即時委ねるべきだ、と言う。
 グレゴリオス3世もアルネメ主教も、今年3月にアレッポ付近で拉致された総主教の兄弟パウル・ヤジギ大主教とヨハネ・イブラヒム大主教の所在が今も不明だ、と指摘する。
 アルネメ主教は、シリア紛争でキリスト者の受けた被害が大きいと言う。自ら主教座を置くホムズでキリスト者3000人が犠牲となっており、さらに10万人が脱出せざるを得なくなり、教会堂も多数破壊された、と述べている。
 シリア市民は戦争に疲れはてた、とアルメネ主教は「これが革命だとか改革だ、さらには明確な基盤の上に新しい国家を設けるのだ、などとは誰も信じてはいない」と言う。
 今では1月にジュネーブで開かれる平和会議に希望を託すだけだとして、そこで紛争解決が図られ、正義と平和への希望がもたらされるのではないか、と期待する人は多い。


◎ベツレヘムの『降誕教会』が修復中

 【CJC=東京】今年のクリスマスにヨルダン川西岸ベツレヘムに巡礼する人たちには、イエス・キリストが生まれたとされる『降誕教会』(聖誕教会)が9月から修復に入っており、不便さが増すことになるかも知れない。
 ただ作業員たちは、巡礼や観光客の通行や安全の妨げにならないよう慎重に進めている、と言うのは現場責任者のアフィフ・トゥウエメ氏。
 『降誕教会』の保存状態のは急速に悪化している。天井や窓からの漏水は、モザイク、床面、フレスコ画などへの浸食が著しい。今回の修復は、危機遺産指定と共に、イタリアの専門家がハイテク技術を駆使して調査した結果、緊急修復が必要とされたため。
 AP通信によると、修復費用は第1段階で約300万米ドル(1米ドルは約130円)と見積もられ、パレスチナ自治政府が100万米ドル相当を負担、民間が80万ドルを拠出、残りは仏、露、ハンガリー、ギリシャなどが援助するという。
 イエスが生まれたとされる洞穴を中心として、その上に4世紀に建設された聖堂を、現在はローマ・カトリック教会、東方正教会、アルメニア使徒教会が区分所有・共同管理しているが、権益を巡って対立が絶えず、聖職者同士の乱闘に発展することも再三だ。
 『降誕教会』と関連資産群は、2011年6月に国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産委員会によって、早急な保護が求められる危機遺産として『世界遺産』登録が認められた。投票は賛成13、反対6だった。
 パレスチナは前年10月、ユネスコに正式加盟しており、『降誕教会』を、イスラエルによる占領の影響で維持・補修が困難になっているとして、「国家」の立場で危機遺産登録を申請したもの。登録は、イスラエル占領地の一部をユネスコが「パレスチナ領」と認めたことになるので、イスラエルと米国はともに反対票を投じた経緯がある。


≪短信≫

〇バチカンでツリーの点灯式
 バチカンで12月13日、クリスマスツリーの点灯式が行われた。高さ約25メートルの今年のツリーはドイツ・バイエルン州ヴァルトミュンヘンから贈られたモミ。(CJC)

〇ハーレムで火事、教会や葬祭場にも被害
 12月13日夕、ニューヨーク市北部のハーレムのヘアサロンから出火した。(CJC)


《メディア展望》

 =カトリック新聞(12月15日)=https://www.cwjpn.com
★永遠のいのち―希望の源=「人生を照らす光」=教皇フランシスコ、一般謁見で
★2015年は奉献生活の年=教皇 男子修道会総長らに語る
★「日本の信徒発見の聖母」=日本固有の祝日へ=教皇庁典礼秘跡省が承認
★東ティモールの浦善孝神父=「若い国」に学校を=貧しい若者 大切に育てる
★イエスの名刺=広がる「宣教」ツール

 =キリスト新聞(12月14日)=https://www.kirishin.com
★「福音主義」の歴史検証=日本福音主義神学会=「民主主義の危機に時代見つめ」中村敏氏・「戦争経験と悔い改め原点に」山口陽一氏
★聖書協会世界連盟・カトリック聖書連合会=聖書出版・家庭伝道へ一致して=合同会議に日本から渡部信氏
★〝原発輸出にストップを〟=大阪で超教派の反原発シンポ
★世界AIDS・DAY記念礼拝=〝HIV感染への偏見をなくそう〟
★「信仰年」終わりにあたり=教皇が使徒的勧告発表

 =クリスチャン新聞(12月15日・休刊)=https://jpnews.org


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