世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1194信(2013.12.09)

  • アパルトヘイト撤廃を主導したマンデラ元大統領死去
    • マンデラ氏死去に教皇や英女王が弔意
    • マンデラ氏10日に追悼式、15日に故郷で葬儀
  • 国連安保理が中央アフリカへ3600人規模の部隊増派
  • 独大統領が、人権政策に抗議しソチ五輪欠席
  • 聖職者の性的虐待問題でバチカン諮問委員会設置
  • 教皇フランシスコも「かつてバーの用心棒」
  • 「切迫流産でも治療拒否」と、米女性がカトリック教会提訴
  • グーテンベルク聖書の画像がネットで公開
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎アパルトヘイト撤廃を主導したマンデラ元大統領死去

 【CJC=東京】南アフリカ共和国初の黒人大統領、ネルソン・マンデラ氏が12月5日、ヨハネスブルクの自宅で死去した。95歳。アパルトヘイト(人種隔離)撤廃を主導、人種によって分断されていた南アを統一したことで知られる同氏は、世界の人種的融和の象徴的存在となり、1993年にはノーベル平和賞をフレデリック・ウィレム・デクラーク元大統領と共同受賞した。
 同国のジェイコブ・ズマ大統領は国営テレビの演説で、マンデラ氏が「安らかに旅立った」とし、「非常に悲しい瞬間だ。わが国は最も偉大な息子を失った」と述べた。
 同氏は30年近く投獄されていた間に結核を患っている。同氏は肺感染症治療のため今年9月まで3カ月間入院するなど、長く闘病生活を送っていた。9月の退院後、南ア当局は、マンデラ氏が「重体だが、安定した」容体だと述べていた。しかしマンデラ氏の一部の家族は、同氏の容体が最近数日間、危険な状態にあると認めていた。

◎マンデラ氏死去に教皇や英女王が弔意

 【CJC=東京】南アフリカのネルソン・マンデラ元大統領の死去について、バチカン(ローマ教皇庁)、国連や英王室からも哀悼の言葉が続いている。
 教皇フランシスコは12月6日、ジェイコブ・ズマ南ア大統領に弔電を送った。バチカンが発表した。教皇は弔電の中で「マンデラ元大統領は非暴力と和解、真実を礎に新生南アを造った。南アの人々が元大統領を範に正義と善を前面に打ち出すよう期待する」と述べた。
 英国のエリザベス女王は、「マンデラ氏と会ったときに感じた素晴らしい温かさを記憶している。彼は国のために懸命な努力を重ね、その遺産として、我々は今、南アに平和をみることができる」との声明を発表した。チャールズ皇太子も「彼は平和、正義、自由のために闘い、それによって人生を変えられた人は多い。彼の死は、そうした人々に大きな悲しみとなるだろう」と述べた。
 国連の潘基文(バン・キムン)事務総長は5日、緊急に開いた記者会見で「正義の巨人だった。世界中の多くの人が、彼の無私無欲の闘いに多大な影響を受けた」と業績を評価した。
 一方、南アフリカ出身のナバネセム・ピレイ国連人権高等弁務官は6日、マンデラ氏について「おそらく同時代の最も偉大な精神的指導者だった」との声明を出して死を悼んだ。
 ピレイ氏は南アで弁護士として反アパルトヘイト活動家の弁護を担当。95年にマンデラ元大統領から黒人女性初の南ア高裁判事に任命された。
 オバマ米大統領は5日、ホワイトハウスで声明を読み上げ、「最も大きな影響力と勇気を持ち、この地球上の誰もが共有する深き良き人間性をそなえた人物を失った」とその死を悼んだ。オバマ大統領は「私の最初の政治的行動はアパルトヘイトに反対することだった」と自らの青年時代を回想し、「彼が刑務所から釈放された日、人間は恐怖ではなく希望に導かれることで何事かを成すのだと感じた」と自らの人生に与えた影響の大きさに言及した。
 中国の習近平国家主席は6日、南アのズマ大統領へ弔電を送り、「中国政府や国民を代表し、個人としても深い哀悼の意を表する」とのコメントを発表した。

◎マンデラ氏10日に追悼式、15日に故郷で葬儀

 【CJC=東京】南アフリカ初の黒人大統領だったネルソン・マンデラ氏の死去を受け、同国各地の教会や礼拝所には12月8日、大勢の国民が集まり、祈りをささげた。
 マンデラ氏の葬儀は15日、故郷である東ケープ州のクヌ村で行われる。これに先立ち、ヨハネスブルクのサッカースタジアムで10日に追悼式を行う予定。


◎国連安保理が中央アフリカへ3600人規模の部隊増派

 【CJC=東京】国連安保理は12月5日、武装集団の抗争が続く中央アフリカ共和国に、アフリカ諸国による平和維持部隊の増派を認める決議を全会一致で採択した。
 中央アフリカではイスラム、キリスト両教徒間で暴力の応酬が激しさを増している。


◎独大統領が、人権政策に抗議しソチ五輪欠席

 【CJC=東京】ドイツのヨアヒム・ガウク大統領は、来年2月にロシア南部ソチで開催される冬季五輪の開幕式などを欠席する方針を決め、ロシア政府に伝えた。週刊誌『シュピーゲル』が12月8日報じた。同性愛宣伝禁止法をはじめとするロシアの人権政策に抗議するためという。
 ドイツでは大統領が国家元首。ガウク氏は旧東ドイツ出身で人権派の牧師として活動し、2012年3月に大統領に就任した。大統領就任以来、ロシアには公式訪問していない。
 『シュピーゲル誌』によると、五輪終了後にドイツ選手団を帰途のミュンヘンで出迎える予定。メルケル首相の対応は決まっていないという。


◎聖職者の性的虐待問題でバチカン諮問委員会設置

 【CJC=東京】教皇フランシスコは、世界各地で発覚したカトリック聖職者による未成年者らへの性的虐待問題に対応するための諮問委員会を設置することを決めた。バチカン(ローマ教皇庁)報道事務所が12月5日、記者会見で明らかにした。
 委員会構成などは未定。委員会は未成年者を性的虐待から守るための方策や犠牲者への精神的なケア、捜査当局への協力などについてガイドラインを策定し、教皇に提案する。
 今年3月に就任した教皇フランシスコは、この問題に「決然と行動する」よう指示していた。


◎教皇フランシスコも「かつてバーの用心棒」

 【CJC=東京】教皇フランシスコは12月1日、ローマ郊外の教会で信者たちと4時間にわたり歓談したが、その際、自分はかつて出身国のアルゼンチンでナイトクラブの用心棒をしていたと告白した。バチカン(ローマ教皇庁)機関紙『ロッセルバトレ・ロマノ』が報じた。
 教皇は用心棒のほかにも、床の清掃や化学研究所での実験に携わっていたこともあると打ち明けた。作家のクリストファー・ロウニー氏によると、アルゼンチンの枢機卿だった当時は午前5時半に起床して神父たちの衣類の洗濯をしていたという。
 用心棒だった過去については多くを語らなかったものの、文学や心理学を教えていたことが、教会に来る信者を増やした経緯などについて語ったとカトリック系メディアは伝えている。
 フランシスコ教皇は先に、教会改革を呼びかけた中で、「閉じこもって安全にしがみつく不健康な教会よりも、街に出て打たれ、傷つき汚れた教会の方がいい」と訴えていた。また「奇跡を起こせるとしたら何をしたいか」と聞かれ「病気の子供を治したい。苦しんでいる子供たちを見るのがとてもつらいから」と答えた。


◎「切迫流産でも治療拒否」と、米女性がカトリック教会提訴

 【CJC=東京】切迫流産の痛みの中、カトリック教会系の病院から2回自宅に帰された米ミシガン州在住のタマシャ・ミーンズさんが、あらゆる中絶を禁止する治療方針を課しているカトリック司教協議会を相手取り、訴訟を起こした。訴状を提出した『米国自由人権協会』(ACLU)が12月2日、発表した。司教協議会は訴訟についてのコメントを拒否した、とAFP通信が報じた。
 ミーンズさんは2010年12月、妊娠18週に早期破水を起こし、自宅そばにある唯一の病院『マーシー・ヘルス・パートナーズ』に駆け込んだ。
 病院側は妊娠を続けた場合に深刻な感染症に発展する危険性があることを告げず、鎮痛剤だけを渡し、1週間後、通常検診に訪れるよう伝え、ミーンズさんを自宅に帰したという。だがミーンズさんは翌日早朝、病院に再び駆け込んだ。出血と陣痛が始まったからだ。だが発熱が治まるやいなや、ミーンズさんは再び自宅に帰された。
 ミーンズさんはその夜、再び病院に戻った。「痛みと感染症の兆候があった」ものの、病院でできることはないと言われたという。しかし、退院許可書の作成中、胎児の足が子宮頸部から飛び出した。産まれた赤ちゃんは3時間後に死亡した。
 訴状によると、病院側はミーンズさんの事例を調査したものの、胎児の生存能力が確立する前に促進剤を使用して陣痛を起こすことを司教協議会が禁止しているため、陣痛促進剤を使用しなかったことは「適切」な行為だったと結論づけていたという。


◎グーテンベルク聖書の画像がネットで公開

 【CJC=東京】活版印刷の発明者とされているヨハネス・グーテンベルクが、1455年に印刷した聖書のスキャン画像を、バチカン(ローマ教皇庁)がネット上に公開した。
 今回公開された聖書は、バチカン図書館と英オックスフォード大学ボドリアン図書館の提携により、総予算200万ポンド(約3・4億円)を投じ、今後3年間で150万ページをデジタル化しようというものの一環。
 今回デジタル化されたのは、グーテンベルク本人がドイツで印刷工房を稼働させた直後に印刷した1冊だとされている。公開されたスキャン画像は、聖書全体を写したものや、一部の文字のズーム画像なども含めると、全部で668枚にのぼる。ズーム機能や、閲覧履歴機能なども備えられ、グーテンベルク聖書を簡単に見ることができる。
 グーテンベルク自身は、活版印刷技術を用いて世界で初めて印刷聖書を世に送り出した。そのほとんどのページが42行の行組で構成されていることから「四十二行聖書」などとも呼ばれている。
 この聖書原本は現時点で世界に48部が確認されており、バチカン図書館では羊皮紙のもの1部、紙のもの1部の計2部を所蔵している。一方、日本では、慶應義塾大学図書館と東北学院大学シュネイダー記念中央図書館がそれぞれ紙のもの1部を所蔵している。


≪短信≫

〇教皇フランシスコのろう人形がローマで展示へ
 ローマにあるろう人形館『ムゼオ・デレ・チェレ』に教皇フランシスコのろう人形が展示される。予定では12月8日公開。(CJC)


〇ワシントンを今年もラクダが練り歩く
 米ワシントンの連邦議会議事堂脇で12月3日、宣教団体『フェイス・アンド・アクション・イン・ネーションズ・キャピタル』のメンバーらが今年も、イエス・キリストの降誕場面を再現するイベントを行った。本物のラクダやロバ、羊も登場した。(CJC)

〇トリノの『聖骸布』が2015年公開
 北イタリア・トリノのカトリック教会チェザーレ・ノシグリア大司教が12月4日、『トリノの聖骸布』を2015年春から夏にかけて45日間、大聖堂で公開すると発表した。公開は10年春以来。(CJC)


《メディア展望》

 =カトリック新聞(12月8日)=https://www.cwjpn.com
★イエスに忠実なら=教皇フランシスコ=死が訪れる時さえも=安らぎのうちに向き合える
★教皇初の使徒的勧告=宣教する教会を強調
★特定秘密保護法案等めぐり=宗教者ら緊急集会=「いのち守る」ため宗派教団超えて
★聖書協会世界連盟とカトリック聖書連合会=より実践的な協力へ
★難民移住移動者委員会=入管について学習=ミサ中心にした養成の大切さも確認

 =キリスト新聞(12月7日)=https://www.kirishin.com
★〝知る権利〟守ろう=「特定秘密保護法案」衆院通過=宗教者〝戦前の弾圧〟再来懸念
★「特定秘密保護法案」に懸念=国際協力NGO代表らが要請書
★「信教の自由と政教分離」テーマに=〝憲法が国家神道拡大の歯止め〟=新宗連が公開講座
★「るつ記記念基金」=〝貧困克服には教育必要〟=フィリピンの青年支援30年
★〝再審無罪で喜ぶ顔見たい〟=「袴田巖さんを救う会」が署名活動

 =クリスチャン新聞(12月8日)=https://jpnews.org
★JEA宣教フォーラム=フクシマに聴き、応える=「宣教『と』支援」の神学を超え
★第1回Solaチャリティ陸上=スポーツで生きる勇気励ます
★「治安維持法と同じ危険」=「特定秘密保護法案」強行可決=ホーリネス弾圧を経験した2教団 初の共同声明
★クリスチャントゥデイ裁判=名誉棄損"引き分け"=東京地裁=謝罪請求は棄却
★クリスチャントゥデイ裁判=「来臨キリスト」疑惑=真実・相当性を認定=世界的組織の関連が解明


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