世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1184信(2013.09.30)

  • 『解放の神学』の時代が到来?
  • 枢機卿8人の委員会は教皇への助言役
  • 信徒評議会と正義と平和評議会首脳は留任
  • 教皇一般接見で上智大使節に挨拶
  • 「世界で初めてツイートしたのはイエス」とラヴァージ枢機卿
  • WCCが気候難民保護へ参画
  • シリアで修道女と孤児が修道院で孤立
  • ペシャワールでまた爆発、40人死亡
  • ガーナ聖公会がキリスト教協議会に再加盟
  • 肺がんのチャック・スミス牧師が退院
  • マグダラのマリアの町でイエスも礼拝?
  • 反プーチンのバンドメンバーが刑務所でハンスト
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎『解放の神学』の時代が到来?

 【CJC=東京】フランシスコほどメディアの注目を集めた教皇はいない。選出されると、宿舎へ費用支払いに出向き、ブエノスアイレスの新聞店に電話して購読取り止めを伝えた。さらに歴代教皇の居館ではなく、宿泊施設『聖マルタの家』に住み、夏の間も避暑に行かずそこに留まったことなどは、すぐにニュースとなって流れた。さらに自分が属している修道会『イエズス会』の雑誌のインタビューでは、映画の趣味にまで触れるなど、これほどに実生活を知られた教皇はフランシスコが始めてだ。
 一方で、バチカン(ローマ教皇庁)改革への手も着々と打ち始めている。こちらは、それほどあけすけに語っていないだけに、教皇は何をどこまで改革しようとしているのか、疑念も湧いている。その一つが『解放の神学』をどう扱うかだ。
 教皇は9月11日、「解放の神学の父」ともされているグスタボ・グティエレス神父(85)と会見した。『聖マルタの家』で私的に行い、公式日程には含まれなかった。ただバチカンの機関紙『ロッセルバトレ・ロマノ』が、同神父とのインタビュー記事や神父自身の寄稿を相次いで掲載、さらに教理省長官のゲルハルト・ルートヴィヒ・ミュラー大司教が同神父の働きを称賛した記事も掲載したことは見逃せない。
 『解放の神学』については、1990年代に入っても、教理省がグティエレス神父の働きに批判を加え、その神学的、司牧的見解について修正するよう要求していた。
 教皇フランシスコはイエズス会アルゼンチン管区長だった当時、特に軍事独裁政権下にあっては司祭の政治関与には消極的で『解放の神学』の同調者とは見られていなかった。しかし2007年のラテンアメリカ司教協議会の第5回総会がブラジルのアパレシアーダで開催された時、最終文書の主な著者として、当時のベルゴリオ枢機卿は、「解放の神学」という言葉は使わなかったものの、「公正で友愛あふれる社会の建設」について「全ての人に健康、食糧、教育、住居、働きを」と強く訴えることで、その精神を正統的に示した。
 教皇フランシスコの選出は、社会正義の追及がキリスト教信仰の必然的な帰結、ということの力強い確認であったと見られる。しかし教皇選出のコンクラーベの僅か9カ月前の昨年7月、ミュラー大司教を教理省長官に任命した時、当時の教皇ベネディクト16世が、同大司教が他ならぬグティエレス神父を称賛し、共著もあることを知っていたことも確か。それからすると、『解放の神学』に対するバチカンの「姿勢転換」はすでにその兆しを見せていたのではないか、とCNS通信のフランシス・ロッカ記者は報じている。
 長くバチカンの批判にさらされていた『解放の神学』が、貧者の側に立つ教会を目指すフランシスコ教皇の下で一転、脚光を浴びるようになるのは確実だ。


◎枢機卿8人の委員会は教皇への助言役

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)報道事務所は9月27日、声明で枢機卿8人による委員会は「教皇に助言するために設置されたもので、独自に決議を行うものではない」と記者団に説明した。枢機卿たちは来週に教皇と会見するが、内容は公表されない予定。


◎信徒評議会と正義と平和評議会首脳は留任

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)中枢の組織改革に乗り出した教皇フランシスコは、信徒評議会議長スタニスワフ・リュウコ枢機卿と次官ヨーゼフ・クレメンス司教の留任を決めた。2人とも2003年以来の在任。
 09年以来,現職にある正義と平和評議会議長のピーター・コドヴォ・アピア・タークソン枢機卿と次官マリオ・トーゾ司教も留任も決まった。


◎教皇一般接見で上智大使節に挨拶

 【CJC=東京】教皇フランシスコは、バチカンで9月25日、水曜恒例の一般接見を行った。
 サンピエトロ広場で開催された接見には、今年創立100周年を迎える上智大学(東京都千代田区)の使節が参加、教皇は巡礼団紹介の中で関係者に歓迎の言葉を述べた。その後、教皇はパウロ6世ホール内の一室で、同使節と改めて会見した。同大学設立の構想は、聖フランシスコ・ザビエルの時代にさかのぼる。
 上智大学の高祖敏明理事長、滝澤正学長、高山貞美教授、ホアン・アイダル准教授らの使節を迎えた教皇は、上智大学が日本の若者たちの教育・文化の向上に尽くしていることに深い感謝を述べた。11月1日の同大学創立100周年記念式典には、祈りの中で特別に思い出すことで参加したいと語った。


◎「世界で初めてツイートしたのはイエス」とラヴァージ枢機卿

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)文化評議会議長のジャンフランコ・ラヴァージ枢機卿は9月25日、「簡潔で深い意味のある」教えを説いたイエス・キリストは、世界で初めてツイートした人物だと言えると述べた。AFP通信が報じた。
 同枢機卿はイタリア各紙編集者との会合で、イエスが「『互いに愛し合いなさい』といったような、45文字以下の初歩的な語句を使った『つぶやき』を、誰よりも早く使った」と指摘。「今日のテレビのように、物語や象徴を通じてメッセージを伝えた」と語った。
 同枢機卿はまた、「聖職者、司祭がコミュニケーションに対して興味がないとしたら、それは自らの義務に反することだ」と述べ、コンピューター技術を聖職者が活用することの重要性も強調した。


◎WCCが気候難民保護へ参画

 【ジュネーブ=CJC】気候変動による被害者保護のため、世界教会協議会(WCC)が9月24日始められたキャンペーン『前線からのハガキ』に参加する。全世界の「気候難民」の存在を認め、保護しようとするもの。2012年だけで数百万人が天候がらみの問題で自宅を放棄しなければならなくなった、という指摘がある。
 キャンペーンは『環境正義基金』(EJF=英国に本部を置くNPO)が主催する。12月10日の「人権の日」までにハガキ10万通の発信を目指している。


◎シリアで修道女と孤児が修道院で孤立

 【CJC=東京】シリアのキリスト者の町マアルーラで、修道女と孤児約40人が『マルタクラ修道院』に閉じ込められたまま、とダマスカスの正教会アンティオケア総主教庁が9月24日明らかにした。
 マアルーラでは9月初めから政府軍と反政府勢力の抗争が続いている。「修道院は交戦地域の真ん中にあり、水や食糧補給もままならず、生命が危険にさらされている事態」と総主教庁の声明は指摘する。発電機も戦闘で破壊されており、総主教庁は人道援助団体に緊急救援を要請している。
 マアルーラはダマスカスの北東約50キロの山岳部にあり、住民が今もアラム語を話していることで知られる。戦闘が始まって以来、住民のほとんどが隣村やダマスカスに避難している。


◎ペシャワールでまた爆発、40人死亡

 【CJC=東京】パキスタン北西部ペシャワールの警察署近くで9月29日、爆弾テロとみられる爆発が起き、少なくとも40人が死亡、120人以上が負傷した。
 ペシャワールでは、22日にキリスト教会前で起きた自爆テロで80人以上が死亡したばかり。今回の爆発現場と教会は300メートルしか離れていない。


◎ガーナ聖公会がキリスト教協議会に再加盟

 【CJC=東京】ガーナ聖公会が同国キリスト教協議会に再加盟した。聖公会ガーナ管区の教会会議(シノドス)がこの3月にクマシで行われた際、指導者間で協議を重ね、再加盟合意に到達した。その結果を、アクラ教区がキリスト教協議会に通知して再加盟が実現した。
 聖公会アクラ教区のダニエル・トルト大主教が9月28日、主題「良い働きのために力を強めた」のもとに開かれた第21回シノドス第2会期で、他教区からの勧めを受け入れた結果だと発表した。


◎肺がんのチャック・スミス牧師が退院

 【CJC=東京】米カリフォルニア州コスタメサの「メガチャーチ」『カルヴァリー・チャペル』の主任牧師チャールス・ワード・チャック・スミス氏(84)は肺がんと闘病していたが、このほど退院、講壇に立つ。娘のジャネット・スミス・マンダソンさんが明らかにした。
 スミス牧師は1965年、コスタメサで信徒25人の教会を創設したが、教会を全世界に拡大、米国で著名な「メガチャーチ」の一つにまで成長させた。


◎マグダラのマリアの町でイエスも礼拝?

 【CJC=東京】『マグダラのマリア』が住み、イエスと出会ったかもしれないイスラエル北部の町ミグダル(マグダラ)で、1世紀のものと推定されるシナゴーグが発見されたのは2009年。
 その後発掘が進められる中で、ロゼッタ模様のモザイクや、トーラーを置いたと見られるテーブルなどが発見された。七つに分かれた燭台「メノーラー」が刻み込まれたレリーフもあった。
 イスラエル紙『ハアレッツ』は、ユダヤ教徒と共に最初期のユダヤ人キリスト者が礼拝していた、との見方も出て来た、と報じている。
 発掘された遺物の中には紀元29年の貨幣もあった。シナゴーグは40年から50年の間に改築され、放棄されたのは遅くとも68年までのことと見られる。
 イエスの十字架は最近の研究で紀元33年4月3日とされていることから、改めてイエス・キリストもこのシナゴーグに立ち寄られたのでは、との推測も成り立つ。
 ただ発掘に関係したメキシコ・アナフアク大学のマルセラ・ザパタ研究員は「イエスの時代、またその前後にシナゴーグが本来のシナゴーグとして使われていたことは確か」としながらも、イエスが足を踏み入れたという考古学的な証拠はない、と言う。一方『マグダラ・センター』所長のフアン・マリア・ソラナ神父は「キリスト者としては、イエスがそこにおられただろう、ということを疑うわけにはゆかない」と語っている。


◎反プーチンのバンドメンバーが刑務所でハンスト

 【CJC=東京】ロイター通信は、モスクワの大聖堂で「反プーチン政権」の曲を演奏したとして、禁錮2年の判決を受けた女性パンクバンド『プッシー・ライオット』のメンバーの1人が、刑務所での「奴隷労働」に抗議するためにハンガーストライキを始めた、と報じた。
 ハンストを始めたナジェジダ・トロコンニコワさん。「当局が法に従い、収監された女性を家畜のように扱うことをやめるまで続ける」と手紙に綴っている。


《短信》

〇パキスタンの教会自爆テロを教皇非難
 教皇フランシスコは9月23日、サルディニア島を司牧訪問した際、パキスタン・ペシャワールの教会爆破事件の犠牲者のために祈り、自爆テロを非難した。(CJC)

〇ペシャワール自爆テロの死者81人に
 パキスタン・ペシャワールの教会で9月22日発生した自爆テロの死者は81人に達した。なお増える模様。(CJC)

〇シリア北部のカトリック教会襲撃
 主要都市ラッカの教会をアルカイダ系の武装勢力『イラク・レバントのイスラム国』が9月25日襲撃。(CJC)

〇シリアで4月拉致された主教生存か
 専門通信によると、2人ともトルコ国境付近で監禁中。(CJC)

〇教皇が女性聖職を支持した司祭を破門
 オーストラリアのグレッグ・レイノルズ神父。(CJC)

〇前教皇が性的虐待、隠蔽を否定する手紙
 イタリア有力紙『レプブリカ』は9月24日付で、2月に退位した前教皇ベネディクト16世が、著名数学者に宛てた手紙の抜粋を掲載した。前教皇は、聖職者による未成年者らへの性的虐待スキャンダルを「隠そうとしたことはない」と強調している。(CJC)

〇『新求道共同体の道』神学校が100校に
 新たに米フィラデルフィアなど7校を開設。全世界の神学校は100校に達した。(CJC)

〇ビリー・グラハム牧師がイラン大統領に書簡
 拘禁されているサイード・アベディニ牧師の釈放を要請。(CJC)

〇ドミニコ会修道女の合唱曲がビルボードで連続1位
 合唱団『ドミニカン・シスターズ・オブ・メアリー』が歌う『MATER EUCHARISTIAE』が9月26日、米ビルボード誌のチャート「クラシック・トラディショナル」部門で6週連続1位に。(CJC)


《メディア展望》

 =カトリック新聞(9月29日)=https://www.cwjpn.com
★教皇フランシスコ=教会は母のように 常にゆるす姿勢を
★台風18号=猛烈な雨と強風で教会関係施設にも被害
★東日本大震災復興支援 全ベース会議=支援の現状 情報交換
★諸宗教部門=大阪で「自死」シンポ=宗教者の役割考える
★学校教育委=各地の教師ら、長崎へ=信仰の原点に触れる研修

 =キリスト新聞(9月28日)=https://www.kirishin.com
★日本クリスチャン・アカデミー関東=「牧師とは何か」問う=「教団出版局」の書籍めぐり対話
★聖書協会世界連盟(UBS)機構改革=日本聖書協会総主事・渡部信氏=世界連盟議会議員に
★ウィーンでの世界大会に向けて=前島宗甫氏「震災決して忘れない」=WCRP日本委・宗教者研究集会
★キリスト教出版販売協会 夏期例会=10年後見すえ展望語り合う
★UNHCR「ナンセン難民賞」=アンジェリーク・ナマイカ修道女に

 =クリスチャン新聞(9月29日)=https://jpnews.org
★WVJ現地スタッフ報告・祈りを要請=シリア難民2百万人超す=子どもの心・学習支援が課題
★宗教制限国が急増=07年からの4年で30%→40%に
★お茶の水聖書学院=OCCと再統合へ=牧師夫人コース、信徒説教者育成も視野
★同郷先人の信仰が原点=県人会「中国地方」で竹内豪氏
★JIFH東北事務所開設=被災地から世界に支援を


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