世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1183信(2013.09.23)

  • 教皇がイエズス会の雑誌に「本音」?
  • バチカンの主要人事発表
  • バチカン広報評議会が初の電子出版『ベネディクト16世』
  • パキスタン北西部で教会爆発60人死亡
  • 聖職者の児童性的虐待で公聴会=豪州
  • 「シリア紛争は終末につながる」米国人の3分の1
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎教皇がイエズス会の雑誌に「本音」?

 【CJC=東京】教皇フランシスコは、所属する修道会イエズス会がイタリアで発行する雑誌『チビルタ・カットリカ』とのインタビューに応じた。同誌は9月19日発売されたが、同時に各国のイエズス会系雑誌にも翻訳が掲載された。
 誌上では30ページを超えたインタビュー、質問は多方面にわたった。
 教皇は、教会が何よりも「傷を癒やせる」存在でなければならず、教会が認めていない行為に対しても、より深い同情と理解を示すべきだと指摘、「教会は、心狭い取り決めにこだわるべきではない」と述べた。
 「異なる意見への非難を超え、思いやりを強調すべきだ」とし、社会的に対立のある問題でより柔軟な姿勢をとる考えを示した。
 「常に個人個人のことを心に留めておく必要がある」と強調した。
 教会を『野戦病院』のようなもの、とたとえ、教皇は「重傷を負った人に、コレステロール値や血糖値を尋ねても無駄だ。まず傷を癒やすべきだ」との比喩を用いて、細かい規則にとらわれるより、救いを求める人に慈愛の心で接することが重要だと指摘。その上で、「規則と慈愛の間に新たなバランスを見つけなければ、カトリック教会の全道徳体系がトランプで作った家のように崩れ去ってしまう恐れがある」と述べた。
 自身のことを聞かれた教皇は、文学、絵画、映画、音楽について語った。ドストエフスキー、フリードリヒ・ヘルダーリン、ホルヘ・ルイス・ボルヘス、セルバンテス、カラヴァッジョ、シャガールなどの名も出た。さらにフェリーニの映画『ラ・ストラーダ』(道)、ロッセリーニ、デンマーク映画『バベットの晩餐会』についても語り、モーツァルト、ワグナーの四部作にも触れた。粗暴な旅芸人と無知で純粋な女性との悲しい関係を描いた『ラ・ストラーダ』について「自分と映画を重ね合わせてしまう」と述べた。
 教皇は、率直に自らを「一人の罪人」と語っている。「最も正確な定義だ。比喩的な表現ではなく、文字通りだ。わたしは罪人だ」と言う。
 インタビューの最後で、教皇は「過去や予想出来る将来に神を求めようとする誘惑」について語り、「神は確かに存在していたのは、その足跡を見られるからだ。そして神は将来に、約束として存在する。しかし『実在』の神は、言ってみれば、今日存在する。それだから、不満を言うことは、神を見出す助けには決してならない。『粗野な』世界についての今日の不満は、教会の中に、防衛策として、純粋保守の感覚で秩序を設けたいという欲望を生み出すことになってしまう。そうではない。神は今日の世界に向き合っておられるのだ」と語った。
 インタビューは、『チビルタ・カットリカ』、英国の『シンキング・フェイス』、米国の『アメリカ』など3誌の要請によるもので、『チビルタ・カットリカ』誌編集長アントニオ・スパダロ神父がこの8月、教皇の居宅『カーサ・サンタ・マルタ』で3回、延べ6時間行った。
 各誌のスタッフが用意した質問をスパダロ神父に送り、同神父がそれをまとめて、教皇にインタビューした。
 インタビューはイタリア語で行われ、記録が公式に認められて、5人の専門家が英語に翻訳、それを『シンキング・フェイス』と『アメリカ』は掲載した。


◎バチカンの主要人事発表

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)が教会中枢の主要人事を9月21日発表した。
 教皇フランシスコは、教理省長官ゲルハルト・ルートヴィヒ・ミュラー大司教、福音宣教省長官フェルナンド・フィローニ枢機卿を確定した。
 教皇は、聖職者省長官のマウロ・ピアチェンツァ枢機卿を内赦院長とした。現任のマヌエル・モンテイロ・デ・カストロ枢機卿は75歳に達したので引退する。聖職者省長官の後任にはベンジャミン・ステラ大司教(教会アカデミー院長)が任命された。同院長には国務省高官のギャンピエロ・グローデル司教が就任する。
 司教省次官のロレンツォ・バルディッセーリ大司教を、教皇は司教会議(シノドス)事務総長に任命した。教皇は司教会議に重要な役割を持たせたいとの期待を語っており、同大司教の選任は教皇自身の意向が働いたことは明らか。現任のニコラ・エテロビク大司教は駐独大使に転出する。CWN通信は降格と見ている。
 教理省『エクレシア・デイ委員会』副委員長のオーガスティン・ディノイア大司教が解任された。同大司教は前教皇ベネディクト16世によって昨年任命されたばかり。伝統固執派の『聖ピオ10世会』との対話に力をいれるための任命と見られており、今回の解任は教皇フランシスコが、同会との対話を重視しない意向を示したものとも見られる。


◎バチカン広報評議会が初の電子出版『ベネディクト16世』

 【バチカン市=CJC】バチカン(ローマ教皇庁)広報評議会(議長=クラウディオ・マリア・チェッリ大司教)は9月17日、電子書籍『ベネディクト16世=世界広報の日メッセージ』の無料公開を発表した。同書は、前教皇ベネディクト16世が2006年から13年までの在位時代に「世界広報の日」に向け発表した8メッセージを収録した。
 同評議会としては初の電子出版で、読者の関心を測定するテストケースと位置付けている。電子書籍はEPUB版とKindle版双方を提供、アップルやアンドロイドの機器でダウンロード可能。
 今回の電子書籍公開は、教皇の教えをデジタル世界に新たに創出された場所へ、「キリスト・イエスにおいて現された慈悲深く愛の神への信仰という信徒の希望と喜びの深い源を分かち合うことで信仰の正しさを示す」革新的な方法、と同評議会はサイトで指摘している。


◎パキスタン北西部で教会爆発60人死亡

 【CJC=東京】パキスタン北西部ペシャワルの『全聖人教会』で9月22日、自爆テロがあった。教会にはミサのため信者約350人が集まっていた。自爆犯2人が、警備員に発砲、130年の歴史ある全聖人教会に押し入り上着の爆弾を破裂させたと見られる。
 女性や子どもを含む少なくとも60人が死亡、約120人が負傷した。病院に運び込まれた負傷者の多くは重傷で、今後死者が増える可能性もある。
 パキスタンではナワーズ・シャリフ政権がイスラム過激派との和平交渉を模索する中、当局などを狙ったテロが頻発しているが、今回の攻撃の死傷者は最大規模。シャリフ首相は同日、テロを非難する声明を出した。
 パキスタンでは少数派キリスト者への抑圧が厳しく、2009年にイスラム教徒の暴徒が住居40戸と教会1カ所を焼き討ち、11年にはキリスト者の閣僚シャバズ・バッティ氏が、差別的な冒とく法に反対して暗殺された。爆薬やマシンガンによる攻撃もしばしば発生している。

 【CJC=東京】パキスタン北西部ペシャワルの教会で9月22日発生した自爆テロの死者は、AP通信によると、女性や子どもを含め75人に達した。
 イスラム武装勢力『パキスタンのタリバン運動』(TTP)の一派が、米軍による無人機攻撃への報復だと犯行を認めた。


◎聖職者の児童性的虐待で公聴会=豪州

 【CJC=東京】オーストラリアのシドニーで9月16日、大規模な児童への性的虐待疑惑について、教会や児童関連施設に対する異例の公聴会が始まった。疑惑は広範囲で「衝撃的」なものが含まれており、教会や児童施設、地域のコミュニティーグループや学校に対して聞き取りが行われる。AFP通信が報じた。
 児童への性的虐待問題を調査するために設置された王立委員会は昨年11月、カトリック教会の聖職者による児童への性的虐待疑惑が相次いで浮上したことを受けてジュリア・ギラード元首相が設立を発表した。ギラード氏は、調査はカトリック教会だけにとどまらないだろうと述べていた。


◎「シリア紛争は終末につながる」米国人の3分の1

 【CJC=東京】米キリスト教専門調査機関『ライフウェイ』が1001人を対象に実施した調査では、「シリア紛争はすべて、ヨハネの黙示録の預言に関係していると思う」という問いに対し、32%が「そう思う」と回答した。ネットメディア『ハフィントン・ポスト』が報じた。米国人の3人に1人が、シリア紛争は世界の終末の兆候と考えていることになる。
 聖書イザヤ書17章には「見よ、ダマスコは都の面影を失い瓦礫の山となる」と言った記述があり、それをシリアの首都ダマスカスの破壊を予言し、ハルマゲドン(世界の終末における最終的な決戦の地を表す)と結びつけ、現在の紛争を世界滅亡の前兆と多くの人がとらえているようだ。
 「米国によるシリアへの軍事介入は、ヨハネの黙示録で語られる最終戦争を招くだろう」という問いに対しては、26%が「そう思う」と回答している。


《短信》

〇イランでキリスト者女性2人釈放
 テヘランのエヴィン監獄から「良心の囚人」11人が9月19日釈放された。キリスト者女性のマリアム・ジャリリ氏とミトラ・ラーマティ氏も含まれている。(CJC)

〇禁固8年の牧師がイラン新大統領に直訴
 キリスト教信仰を理由に禁固8年の刑に服役している米国籍のサイード・アベディニ牧師が、このほど選出されたハッサン・ロウハニ大統領に直訴している。(CJC)

〇シリア反政府戦士の半数近くはイスラム過激派
 英国の防衛コンサルタント『IHS・ジェーンズ』の推定をテレグラフ紙が9月15日報じた。(CJC)

〇聖書時代の町ダルマヌタの遺跡か
英レディング大学のケン・ダーク教授がガリラヤ湖西北岸で発見。イエスが4000人に給食した後に湖を渡った先。(CJC)

〇教皇がカトリック医師に「命への奉仕者」の自覚促す
 9月20日、カトリック医師協会国際連盟会議参加者と会見した際に語った。(CJC)

〇教皇がサルデーニャ島カリアリを訪問
 教皇フランシスコは9月22日、地中海上の島サルデーニャ州のカリアリを司牧訪問した。ランペドゥーサ島に続いて、教皇登位後2番目のイタリア国内司牧訪問。(CJC)

〇オーストリア教会の「聖水」は大半が汚染
 オーストリアの教会で利用される聖水の多くが、排泄物やバクテリアに汚染されているとの研究結果が、学会で発表された。(CJC)

〇クリスタル・カテドラルが大改装
 米カリフォルニア州オレンジ・カウンティの名物クリスタル・カテドラルがカトリック教区に買い取られ、現在内部の大改装中。(CJC)

〇キューバ司教が政治改革呼び掛け
 司牧書簡で、政治改革と「家父長的国家」を「参画型国家」への転換を呼び掛けた。(CJC)


《メディア展望》

 =カトリック新聞(9月22日)=https://www.cwjpn.com
★教皇=先進国に移住者歓迎促す=困窮している人を助け、その権利を護る教会に
★日本カトリック難民移住移動者委員会=メッセージを発表
★被災地に修道院設立=聖霊会と聖心会 合同で=原町ベースで活動=福島・南相馬市
★パパ様からの"宿題"=「毎年の洗礼日を記念して」
★結婚誓約更新式=81組が参加=名古屋・布池教会

 =キリスト新聞(9月21日)=https://www.kirishin.com
★平和願う叫び=シリア介入、内外の世論に米政権配慮=戦争回避へ 教皇が積極姿勢
★日基教団埼玉地区="被災者に寄り添い、仕える"=東北ヘルプの支援活動振り返る
★救世軍が越谷・竜巻被災者支援=「お茶1本も支援品」
★日本キリスト教教育学会=「道徳の教科化」に対し要望書=「宗教」での代替措置継続求め
★仏中部・ナチ虐殺犠牲者の村=独仏大統領が追悼

 =クリスチャン新聞(9月22日)=https://jpnews.org
★2013年教会教勢データ=教会数は微減 さらに信徒減=教会の閉鎖、合併、休止続く
★合唱で結ぶ復興の絆=明治学院高校グリー
★高校生は居場所がほしい=日本青年伝道会議セミナー
★第45回 日本伝道の幻を語る会=森稔新会長「教会が教会らしく」
★仙台で「全国教会教育フェスティバル」=喜ぶ者と共に 祈りでつなぐ


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