世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1178信(2013.08.19)

  • エジプトの暴力拡大を国際社会懸念
  • ムスリム同胞団がキリスト教会襲撃
  • 米福音ルーテルに初の女性総裁監督
  • 「聖書」全巻読める言語はまだ484
  • 子どもに「メサイア」と名付けるのはダメ
  • 地震で被害の大聖堂が「紙の聖堂」に
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎エジプトの暴力拡大を国際社会懸念

 【CJC=東京】エジプトでは、ムハンマド・モルシ前大統領を支持する派のデモが治安部隊に強制排除された8月14日以降、一連の衝突による死者は800人を超えた。隣国チュニジアやリビアにも動揺がみられ、国際社会の懸念も強まっている。ただ、エジプト軍に強い圧力をかけると逆に安定を損なう恐れもあり、米欧諸国は有効な対策を打ち出しかねている。
 国連安全保障理事会は15日に非公開の緊急会合を開催、エジプトの「すべての勢力」に対して暴力の停止と最大限の自制を求めた。潘基文事務総長は17日、暴力の拡大に懸念を表明し、キリスト教会や病院など公共施設が攻撃されたことを強く非難した。
 潘氏はデモ参加者と当局側の双方に「最大限に自制し、直ちに収拾に転じる」よう求め「暴力に乗っ取られた政治プロセスを取り戻す」ことを訴えた。
 教皇フランシスコは15日、ローマ郊外カステル・ガンドルフォの夏の離宮で行ったミサで、エジプト治安当局によるモルシ前大統領支持派への強制排除で犠牲になった多数の死者の冥福を祈った。また「エジプトに平和と対話、和解が訪れるよう祈りをささげよう」と呼び掛けた。
 世界教会協議会(WCC)のオラフ・フィクセ=トゥベイト総幹事は16日、エジプトの加盟教会に宛てた書簡で、「前進する唯一の道は、エジプトの同等の市民として相互に認め合うこと、責任と権威を担い、政治的主張や信仰の多様性を受け入れること」だと表明した。
 エジプトに年13億ドル(約1270億円)の軍事支援を実施している米国は15日、軍トップのアブドルファッターフ・アッ=シーシー第1副首相兼国防相に対して支援見直しの可能性を示唆した。フランスのフランソワ・オランド大統領とドイツのアンゲラ・メルケル首相は16日、エジプト問題を話し合う欧州連合(EU)外相会合の開催を呼びかけた。EU各国はエジプトに2年間で最大50億ユーロ(約6500億円)の経済支援をする計画だが、実行を見合わせる可能性がある。
 欧州連合のヘルマン・ファン・ロンパウ大統領と欧州委員会のジョゼ・マヌエル・ドゥラン・バローゾ委員長は18日、共同声明で「EUはエジプトとの関係を早急に見直し、同国での暴力停止と対話再開を促すための措置を取る」と表明した。これに対しエジプト暫定政権のナビル・ファハミ外相は同日、援助凍結が浮上していることに「受け入れられない。我々は国際的基準に沿って事態に対処している」とけん制した。
 国際社会が事態収拾を急いでいるのは人道的な立場に加え、騒乱が周辺地域に及ぶ恐れがあるため。エジプトの騒乱を放置すれば、中東・北アフリカ地域が不安定になりかねないため。
 政教分離をうたう世俗派とイスラム勢力の対立、経済苦境にさらされる市民の不満という構図はチュニジアやリビアなども同じ。エジプト騒乱をきっかけに世俗派や市民らが勢いづき、イスラム勢力との対立が深刻になりつつある。
 ただ、国際社会が軍・暫定政権への圧力を強めすぎると事態がかえって混乱する恐れがある。現在のエジプトで「軍は唯一の安定装置」であり、米欧はエジプトへの本格的な介入には依然慎重な構え。
 暫定政権のハーゼム・エル=ベブラウィ首相は17日、「血に汚れた手で武器を持つ者と和解はできない」として、モルシ前大統領の出身母体『ムスリム同胞団』に対し、解散命令を出すことを検討していると述べた。
 『ムスリム同胞団』は2011年のホスニ・ムバラク政権崩壊まで、長く非合法とされてきたが、福祉活動などを続け、貧困層を中心に支持を集めており、解散命令が出ても、それを受け入れる可能性は低く、一層の反発を招くのは必至と見られている。
 一方、同胞団側は17日から1週間、デモ継続を呼びかけた。カイロ市内では軍と警察がデモ阻止へ交通の要所に装甲車などを展開し厳戒態勢を敷いたが、市中心部のイスラム教礼拝施設『ファタハ・モスク』に同胞団支持者が立てこもり、治安部隊と激しい銃撃戦を繰り広げた。同日夕方に治安部隊が強硬突入を図り、同モスクを制圧した。
 デモ隊の強制排除後、初めての「平日」の18日。カイロ市内では道路を封鎖していた有刺鉄線が外されてごみの回収作業が行われた。エジプト証券取引所も取引を再開、市中銀行は時間を短縮して営業を再開している。


◎ムスリム同胞団がキリスト教会襲撃

 【CJC=東京】エジプト軍のクーデターに反発して首都カイロで座り込みを続けていたムハンマド・モルシ前大統領支持派は8月14日までに強制排除され、暫定政権は同日夜、カイロを含む主要県で夜間外出禁止令を実施した。強制排除を受け、エルバラダイ副大統領はマンスール暫定大統領宛てに辞表を提出した。
 強制排除や各地の治安部隊とモルシ派の衝突による死者は一般市民235人、警官43人に上っている。カトリック教会の広報担当ラフィク・グレイシェ神父は、イスラム原理主義集団『ムスリム同胞団』がカトリック教会7カ所、コプト教会15カ所以上を襲撃した、と述べた。プロテスタント教会が襲撃されたとの情報もある。
 襲撃はカイロ周辺と南部のソハーグ県にわたった。西側メディアが教会襲撃について沈黙を守っている、と同神父は強調している。教会襲撃の際に死傷者が出たか、は明らかでない。


◎米福音ルーテルに初の女性総裁監督

 【CJC=東京】米福音ルーテル教会(ELCA、信徒400万人)は第25回年次教会大会を8月12〜17日、ピッツバーグで開催した。3年に1回開催される大会は今年25周年を迎える記念大会として、主題に「常に新しくされる」を掲げていた。
 大会は14日、5回目の投票でエリザベス・A・イートン牧師を総裁監督に選出した。イートン牧師は、全投票数889中で選出に必要な445票を大きく上回る600票を獲得した。対抗馬の現職マーク・S・ハンソン総裁監督は287票だった。
 12年間にわたって同派を指導してきたハンソン氏の後任となるイートン氏は、同派初の女性総裁監督。
 イートン新総裁監督は、オハイオ州内の教会牧師を務め、マサチューセッツ州ケンブリッジのハーバード神学校で神学修士号を、オハイオ州ウースター大学で音楽教育学士号を取得している。2007年から北東オハイオ・シノッド(信徒7万7000人)監督。米聖公会のコンラッド・セルニック司祭と結婚、成人した子女が2人いる。
 イートン新総裁監督は15日、「まだショック状態。対話を始めたい」と語った。「目標は、意見の異なる人々にも場を備えること。その人たちもルーテル派であり、この教派の完全な一部なのだとはっきりさせたい。もう一度,宣教師にならなければ、と感じている」と言う。
 同派は2009年に公然同性愛者の聖職を認め、ことし6月には初の同性愛監督を選出している。
 同派は1987年の設立以来、信徒数減少が続いている。2010、11年にはほぼ半減した。同性愛聖職を受け入れられない聖職、信徒が10年から『北米ルーテル教会』に転会したことが影響したと見られる。
 2006年に米聖公会の総裁主教に女性として初めて就任したカサリン・ジェファーツ・ショリ氏はイートン新総裁監督選出を歓迎する声明を15日発表した。両派は既に完全相互聖餐(フルコミュニオン)関係にある。


◎「聖書」全巻読める言語はまだ484

 【CJC=東京】世界で話されている言語は7015と推定されているが、「聖書」全巻が読めるのはまだ484に留まっていることが聖書協会世界連盟(UBS)の調べで明らかになった。連盟では、急進展している電子技術も導入して翻訳を推進する構え。
 最新のデータ『聖書言語レポート2012』によると、聖書全巻が訳出されているのは484言語(内、第二正典まで訳出されたのは141言語)、新約聖書全巻では1257言語になった。
 「ヨハネによる福音書」など分冊が少なくとも1書が訳出されているのは810言語で、これらを合計すると聖書翻訳言語の総数は2551言語となる。2010年は2527言語だった。


◎子どもに「メサイア」と名付けるのはダメ

 【CJC=東京】米テネッシー州で生後7カ月の赤ちゃんの姓(ラストネーム)をめぐり、両親の意見が対立、クック郡裁判所へ提訴したところ、ルー・アン・バリュー児童保護判事が8月8日、生後7カ月の赤ちゃんの名を「メサイア」(メシア)から「マーティン」に変えて全体を「マーチン・デショーン・マカロー」するよう命じた。「マーティン」は母親ジャリーナさんのラストネーム。
 赤ちゃんの生物学的な親はマーティンさんとジャワアン・P・マカローさん。2人は結婚はしていない。
 バリュー判事は、「メサイア」が称号であり、それはイエス・キリストが保持しているから、と判示した。また子どもの将来を考えてのこと、と言う。ただこのような判示は今回が初めてとか。
 ラストネームだけの問題だったのに、「メサイア」はダメと言われ,困惑している両親に、『米市民の自由連合』(ACLU)テネッシー支部が擁護に立ち上がった。判事が信仰を持つのは自由だが、自分の信仰を他人に押し付ける権利はないのに、それを強行したと言う。
 上訴審は9月17日に予定されている。
 赤ちゃんの名前専門のネット・サービスの調べでは「メサイア」は387位になっている。「ジーザス」(イエス)は101位、「クリストファー」は23位。
 別のデータでは、「メサイア」は2005年の904位から12年には387位に人気が上昇している。


◎地震で被害の大聖堂が「紙の聖堂」に

 【CJC=東京】ニュージーランド南島クライストチャーチで8月15日、2011年の大地震で崩壊した聖公会大聖堂、近くのラティマースクエアに日本の建築家、坂茂氏が設計した仮設の「紙の聖堂」が正式に奉献された。英公営BBC放送が8月15日報じた。
 マグニチュード6・3の大地震では185人が死亡。中心部では多くの建物が崩壊する中で、市の象徴だったネオ・ゴシック建築の大聖堂も大きな損傷を負った。
 AFP通信によると、リンダ・パターソン司祭代理は、革新的な紙の聖堂の完成は大地震からの復興の大きな節目となるものだとして、「以前の大聖堂は様々な意味で市を象徴するものだった。新しい聖堂はクライストチャーチの再編と再建のシンボルとなるだろう」と語った。
 防水難燃加工が施された直径600ミリの紙管が使われている新しい聖堂は、横からみると「A」の字のような形で、会衆席700。耐久年数は約50年とされているが、聖公会は新聖堂が建設されるまで、少なくとも10年間はこの聖堂を使用する計画。


《短信》

〇韓国カトリック大邱、安東教区司祭と修道者が時局宣言
 韓国カトリック教会大邱大司教区、安東教区司祭と修道者506人が、国家情報院の大統領選挙介入を糾弾する時局宣言を8月14日発表した。大邱教区が1911年の発足以来、時局宣言の発表は初めてという。(CJC)

〇アルカイダ指導者の弟をエジプト当局が拘束
 エジプト治安当局が国際テロ組織アルカイダの指導者、アイマン・ザワヒリ容疑者の弟ムハンマド・ザワヒリ氏を拘束した。AP通信が17日報じた。
 同氏は同胞団との関係が深かったとされ、政権側は同氏を拘束することで、同胞団とアルカイダとの関連を印象付ける狙いと見られる。(CJC)

〇英香港上海銀行がバチカン大使館の口座を閉鎖
 英週刊誌『タブレット』によると、駐英バチカン大使館の口座を香港上海銀行(HSBC)が閉鎖した。同行がリスク回避のためロンドンにある各国大使館の40口座を閉鎖した中に含まれていることが明らかになったもの。
 大使館は別の銀行に口座を開設した。(CJC)

〇フェミニズム思想のジーン・ベスキー・エルシュテイン死去
 8月11日、米テネシー州ナッシュビルで死去。72歳。シカゴ大学政治学部教授。専門は、政治哲学、倫理学、フェミニズム思想。
 邦訳書に『女性と戦争』(小林史子・廣川紀子訳、法政大学出版局、1994年)、 『裁かれる民主主義』(河合秀和訳、岩波書店、1987年)など。(CJC)


《メディア展望》

 =カトリック新聞(8月18日)=https://www.cwjpn.com
★カトリック平和旬間=広島=「真実を見抜こう 核と改憲」
★長崎教区平和祈願祭=「あなたも平和の宣教者」
★比叡山宗教サミット=教派超え集い 祈る
★教皇フランシスコ=「利益重視」の消費主義は「害悪」
★戦没捕虜を追悼=横浜の英連邦墓地で礼拝

 =キリスト新聞(8月17日)=https://www.kirishin.com
★緊急シンポ「この国はどこへ行くのか!?」=「届く言葉」で共有するために=キリスト新聞×クリスチャン新聞共催
★救世軍新大将にコックス前参謀総長
★教皇フランシスコ=司教5人の辞任認める=さいたま教区・谷大二司教も
★「被ばく労働の実態」学ぶ=元原発作業員や支援者が報告
★同志社大学「グローバル地域文化学部」開設記念=長倉洋海氏迎え講演会

 =クリスチャン新聞(8月18日)=https://jpnews.org
★被爆68年=平和を祈り続けて=胎内被曝の金信美幸さん=耳に残る両親の遺言
★「勝つ日本」から「ともに生きる日本へ」=英連邦戦没者捕虜追悼礼拝で関田寛雄氏
★賛美音楽界を牽引=「今度は皆さんの番」=ミクタム35周年=東京・大阪でセレブレーション
★"キリストの香り"届けて=ユーオーディア賛美の夕べ20回
★NCC靖国委=ナチス発言=麻生副総理の罷免要求


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