世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1177信(2013.08.12)

  • イスラム過激派に脅えるコプト教徒
  • カイロでコプト教徒の少女射殺
  • 救世軍万国総督にコックス参謀総長
  • 教皇がバチカン革新にじわり動く
  • 世界平和記念聖堂でミサ、タークソン枢機卿も参加
  • 公衆の場で聖書読み上げた米牧師の裁判始まる
  • 米の「蛇使い」伝道が専門テレビに
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎イスラム過激派に脅えるコプト教徒

 【CJC=東京】イスラム原理主義者約1万人が、エジプト南部の古代都市アシュートで7月30日、「イスラム、イスラム、キリスト者を侮辱しろ」と叫びながらコプト教徒(キリスト者)居住地区をデモ行進した。子ども数人が、大人の監視下に、壁に「キリスト者をボイコットせよ」とスプレーで落書きした。
 アシュートはカイロ南方400キロ、人口100万人の大都市。モルシ大統領を追放した7月3日以来、連夜のデモやスプレーによる落書きを当局が規制出来ないことで、キリスト者の不安が増大している。
 カイロで7月3日に、ムハンマド・モルシ大統領を追放する軍のクーデターが行われて以来、南部ではアシュートなど各地で、「モルシ追放」が少数派キリスト者の企みだ、と訴えるイスラム原理主義者の「憎悪キャンペーン」が発生している。
 アシュートでは、「タワドロスは犬」とスプレーの落書きがあった。コプト教会の教皇タワドロス2世を非難するもの。キリスト者の住居、店舗、礼拝所には大きく十字架がペイントで描かれた例もある。
 敵意に満ちた行動の続発に、権利擁護16組織の連合体が7月31日、人口の約1割を占めながら、慢性的な差別に耐えている少数派キリスト者の保護を当局に要請するまでになった。
 米宗教専門RNS通信は、「イスラム原理主義者は責任を問われることもないから、喜んで行進を続けるだろう。いつかウチもやられるのでは」と30日にデモ隊が通過したアシュートのヨウスリ・ラヘブ通りに宝石店を構えるホッサム・ナビル氏(38)が語ったことを報じている。他の店もそうだが、ナビル氏もデモ隊が通り過ぎるまで店のシャッターを閉めた。「彼らは人差し指を立てのどを切るまねをする。わたしたちを虐殺するぞと脅し、またモルシの名をわたしたちの顔に向かって大声で叫ぶ」と言う。デモ隊が通過中に店に来た若い夫婦は、恐怖に身を固まらせた。
 アシュートでイスラム原理主義者が強硬なのは、現地当局が弱体な一方、宗教の威力が強いこと。また貧困層が多く、生活が安定しているキリスト者へのねたみもある。
 落書きは消してもすぐに描かれてしまうので、ガマル・アダム知事代行は、消去を止めた、とAP通信に語っている。市の清掃係が現場で原理主義者に捕まったら、暴行されるだろうとも言う。
 アシュートの人口の4割を占めるキリスト者の生活は激変した。集合住宅の壁に、赤くばってんを付けられた十字架が描かれていたりした。夜の外出は控えられている。教会は午後の活動を止めた。富裕層の中には転出した人もいる。
 「こんな抑圧を経験したことはない。毎日が踏んだり蹴ったりだ」とナビーネ・カマルさん(40)。薬剤師で10代の娘さんが2人いる。「怒っているし、不満一杯だが、ここに留まる」と言う。「わたしと主人が、事態はすぐに良くなる、と話しても娘たちは信じない。エジプトに失望し、脱出したがっている。しかし、個人的に、私は、全てが、わたしたちと国に良いものをもたらすと信じている。ムスリム同胞団の指導者モルシが大統領になって、同胞団統治が80年は続く、と思っていたが、ちょうど1年でダメになった。誰がこのことを信じていただろうか」。
 クーデター以来、少なくともキリスト者7人が殺害された。負傷者は多数に上っている。
 エジプトのキリスト者は政治に介入することを避けるのが常だった。しかし2011年の「アラブの春」以来、政策に発言を始めた。モルシ政権がイスラム色を強めるにつれ、発言も厳しくなった。タワドロス2世は、教皇に選任されると、大統領批判を強め、信徒に向けては、積極的に政治に参画するよう勧めるようになった。一方、イスラム教過激派は、キリスト教はイスラム教の敵であり、コプト教徒に少数派であることを忘れるな、と警告していた。


◎カイロでコプト教徒の少女射殺

 【CJC=東京】エジプトのカイロでコプト教徒のジェッシカ・ブーロスさん(10)が8月6日朝、『アーメド・エスマット街福音教会』の聖書勉強会から帰宅の途中、市場地区を通過中に、何者かに射殺された。キリスト教迫害専門通信『モーニング・スター・ニュース』が報じた。
 同行していた日曜学校の教師が買い物のため、別れた直後の出来事だった。銃弾は1発で心臓を撃ち抜いていた。居合わせたイスラム教徒の商店主が顔見知りのジェッシカさんが倒れるのを見て、駆けつけ、シャツを脱いで覆い、病院に運び込んだが、すでに息絶えていた。
 ジェシカさんの伯父のナスル・アッラー・ザカリア牧師は、狙撃が宗教的な動機によるものか、は不明としながら、エジプトでは現在、キリスト者に対する暴力は「日常化している」ようだ、としている。


◎救世軍万国総督にコックス参謀総長

 【CJC=東京】救世軍最高会議は8月3日、第20代『万国総督』(大将)にアンドレ・コックス参謀総長(中将、59)を選出した。引退したリンダ・ボンド大将の後任となる。
 シルビア夫人は参謀総長として総督に協力、150万人ともされる全世界の救世軍を指導する。


◎教皇がバチカン革新にじわり動く

 【CJC=東京】教皇フランシスコは、バチカン(ローマ教皇庁)諸機関のベテランたちとの距離を慎重に広げようとしている、と伊紙レスプレッソのバチカン担当サンドロ・マギステル記者。改革色を打ち出す過程で目立つようになった。
 教皇は、個人的な側近グループへの依存を強めている。その中心は秘書のファビアン・ペダッキオ・レアニス神父。ただ教皇は、重要な決定は、自身で下している。
 バチカンでは伝統的に国務省の力が振るわれることが多いが、教皇が信頼を寄せる側近グループの前では影が薄いようだ。


◎世界平和記念聖堂でミサ、タークソン枢機卿も参加

 【CJC=東京】広島の68回目の原爆忌、原爆と戦争犠牲者の永遠の安息を祈り、世界の平和を希求するミサが8月5日、広島の世界平和記念聖堂で行われた。
 バチカン放送(日本語電子版)によると、ミサに参加したバチカン(ローマ教皇庁)正義と平和評議会議長ピーター・タークソン枢機卿は式中の言葉で、人間の残酷さを表す十字架上の受難の傷をそのままに、弟子たちの前に現れ、「あなたがたに平和があるように」と平和の挨拶を与える復活のキリストの姿を見つめるよう呼びかけた。
 同枢機卿の日本訪問は、カトリック日本司教協議会の平和旬間(8月6日〜15日まで)を機会としたもの。同枢機卿は広島原爆忌当日6日には宗教者による平和の祈りにも参加した。
 7日より9日までタークソン枢機卿は長崎を訪れ、世界平和のための対話を目的とした諸宗教関係者との集いや、長崎大司教区主催の平和祈願祭に参加する。


◎公衆の場で聖書読み上げた米牧師の裁判始まる

 【CJC=東京】米カリフォルニア州へメットで2011年2月、ブレット・コロネード牧師とマーク・アレン・マッキー牧師が、自動車登録所(DMV)脇で、聖書を大声で読み上げていたところ、警察がマッキー牧師を逮捕、聖書を押収した。続いてコロネード牧師も逮捕された。この事件の裁判が8月5日始まった。
 『信仰と自由擁護者』という信教の自由専門の非営利法律事務所が弁護に当たっている。2人は公有財産の上で信仰を示しただけのことだ、と言う。現場は登録所入り口から10メートルほどの所だった。
 早朝、登録所が開くのを待って並んでいる人たちに向かって2人が聖書を読み上げていた。守衛がマッキー牧師に移動するよう促したが、2人は、聖書を読むのは憲法修正第1条に定められた権利だと主張、読み上げを続けた。
 州警察のダリン・マイヤー警部が10分後に到着、マッキー牧師の聖書をつかみ、牧師に手錠を掛けた。「囚われの聴衆」(いやでも聞かなければならない聴衆)に伝道出来ないようにしたものだと言う。
 警察側は2人が国有財産に「侵入」しており、これは、「デモや集会」を行うには許可が必要と定めた『カリフォルニア州行政法』違反だと主張する。
 聖書を読み上げることはデモではない、と警察を批判する声も上がった。弁護側は、逮捕当時に登録所は閉まっており、また州法は「囚われの聴衆」に語りかけることを禁止してはいない、と主張している。
 有罪となると、禁固最高90日、罰金400ドル(約3万9000円)に処せられる可能性がある。


◎米の「蛇使い」伝道が専門テレビに

 【CJC=東京】米テネシー州ラフォレットにある『タバーナクル・神の教会』のアンドリュー・ハンブリン牧師とケンタッキー州ミドルズボロの『フルゴスペル・タバーナクル・イン・ジーザス・ネーム』教会のジェミー・クーツ牧師は「蛇使い」伝道で知られている。
 昨年、現地紙『ザ・テネッシアン』で取り上げられ、話題となったが、この9月10日からは『ナショナル・ジオグラフィック・チャンネル』でも放映されることになった。
 マルコによる福音書16章には、イエスの言葉として「信じる者には次のようなしるしが伴う。彼らはわたしの名によって悪霊を追い出し、新しい言葉を語る。手で蛇をつかみ、また、毒を飲んでも決して害を受けず、病人に手を置けば治る」(新共同訳)と記されているものの、住宅地にある教会で、実際に蛇を使って伝道するというのは、米国でも特殊な文化と見なされており、それがテレビ局の目をひいたようだ。


《短信》

〇バチカンの裏方部門を教皇が突如訪問
 世界最小の国『バチカン市国』を支える裏方部門を、教皇フランシスコは8月9日に突然訪問し、従業員の歓迎を受けた。送電所、木工所、鍛造部門や配管部門など。
 教皇宿舎で行われる朝のミサに参加して教皇を間近に見ている人たちにしても、自分たちの職場に教皇が現れるとは予想もしなかったようだ。(CJC)

〇米修道女のCDがビルボード部門調査で13周連続1位
 米ベネディクト修道会の修道女が歌ったCDが人気度調査の米ビルボード社『伝統的クラシック・アルバム』部門で8月9日現在13周連続1位となっている。2006年に発足した同部門では最長記録。
 「エンジェルズ・アンド・セインツ・アット・エフェサス」がそれでミズーリ州ガウアーの女子修道会『使徒の女王マリアのベネディクト会』が制作した。(CJC)


《メディア展望》

 =カトリック新聞(8月11日)=https://www.cwjpn.com
★WYDリオ大会=教皇、300万人の若者たちに=「国境を越えて宣教を」
★空中で記者に応答=教皇、女性の役割など話す
★さいたま教区=谷司教、退任
★ジャン・バニエさんに平和賞=米の教区、「ラルシュ共同体」評価
★中央協「子どもと女性の権利擁護のためのデスク」=マニュアル配布を開始

 =キリスト新聞(8月10日)=https://www.kirishin.com
★"祈りでつながる、祈りで広げる"=全国の教会教育関係者が仙台に
★宗教法人法「再改定」求める要望書=日基教団京都教区総会などが提出
★"平和の遺伝子"受け継ぎ=「多摩がん哲学外来カフェ」1周年
★中高年の関心高まる=『三浦綾子電子全集』配信完結=旭川市の記念文学館で電子書籍展
★聖学院大次期学長に姜尚中氏

 =クリスチャン新聞(8月11日)=https://jpnews.org
★グラハム家3代目ウィル氏来日=フクシマに希望伝える=東京でもレーナ・マリアと共演伝道
★原発事故後の規制区域へ通い続ける写真家小林恵=「フクシマ」写真展
★8月公開=映画「少年H」=戦時下の教会が舞台=苦難の時代に信念貫いた家族描く
★聖学院大=次期学長に姜尚中教授
★佐藤丈史氏逝去=宗教団体の法的権利擁護に尽力=宗教連盟幹事など歴任


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