世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1168信(2013.06.10)

  • 教皇フランシスコ着座約3カ月に見る
  • 米福音ルーテル教会に初の同性愛監督アーウィン牧師
  • カンタベリー大主教が教皇と会見へ
  • 司祭は銃持つな、とフィリピン司教
  • インド東部で改宗拒否したキリスト者が首はねられる
  • バッハが筆写したミサ曲の楽譜発見
  • キリスト者はスターバックス飲めない?
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎教皇フランシスコ着座約3カ月に見る

 【CJC=東京】教皇フランシスコは6月2日午後5時から、バチカン(ローマ教皇庁)のサンピエトロ大聖堂で「聖体の祝日」に合わせた1時間のミサを行った。バチカンは初の試みとして、世界各地の信者に同時刻に祈りをささげるよう呼び掛けていた。
 サンピエトロ大聖堂でのミサはテレビ中継されたが、クローズアップされた教皇の横顔は、頬の肉が垂れ下がった生気のない疲れた感じがまざまざと映し出されていた。
 教皇が着座して約3カ月近く、歴代教皇とは対照的な行動は、世界のマスメディアの関心を今も惹きつけている。このほど明らかになった夏の行事で、最も注目されたのは避暑地カステルガンドルフォにある夏の離宮へは7月14日、正午の聖母への祈りの集いに行くだけで、「青年の日」に出席するためブラジルを訪問する以外は、バチカンで過ごすということ。
 さらに6月7日、バチカンで修道会イエズス会経営の学校に通う子どもたちと交流して「教皇にはなりたくなかった」と言い、子どもたちや関係者の笑いを誘った。子どもの1人に、教皇になりたかったか、と尋ねられ「自分のことを大事に思っている人は教皇になろうなんて考えない」と冗談めかして語ったものだが、メディアの目を意識しての発言となると、単に冗談と聞き過ごすことは出来ない。
 教皇は、バチカンのサンピエトロ広場に面した専用住居には入らず、コンクラーベの際に使用したバチカン内の宿舎『サン・マルタ館』で他の聖職者らと寝泊まりを続けている。その理由を「独りになりたくない。性格的な理由だ」と答えた。前例を破って公開されたフランシスコの住居は、201号室で、同館に106あるスイートルームの一つ。コンクラーベでフランシスコが宿泊していた際に割り振られた部屋よりは家具調度が少し上等といった 程度のものという。
 フランシスコは教皇の指輪を金から銀の金メッキに変えた。十字架はそれまで使用してきた鉄の十字架を使用し、ヨハネパウロ2世の時にはかれなくなった伝統の赤い靴は、ベネディクト16世が復活させたが、それもやめて従来の黒い靴を履いている。
 選出以降、一貫して「ローマ司教」の呼称を用い。さらに教皇紋章の装飾のある伝統的な教皇の椅子の使用をやめて、バチカンで賓客用などに供される肘掛け椅子に教皇の椅子を取り換えた。また、ミサではラテン語ではなくイタリア語を用いている。
 第二バチカン公会議以来、教皇自身、また周辺で変わったことは多い。地上の王権を象徴するかのような三重宝冠が消え、人に担がせて移動した教皇の椅子が消えた。教皇の赤い靴もフランシスコがはかないとなると、これで永久に消えることになろう。こう見ると、宮殿内の教皇居宅を出たことも、夏の離宮を棄てたことも、後戻りのできない改革の一つと見られる。
 しかし、真の教会改革、バチカン改革はこれからで、バチカン内外にそれを阻止する動きがあることは、あからさまに報じられないにしても確か。「聖体の祝日」ミサで写し撮られた、疲労顔が語るものは、底が深そうだ。

◎教皇が「浪費文化」を手厳しく非難

 教皇フランシスコは6月5日、水曜日恒例の一般接見で、「浪費文化」を手厳しく非難した。当日が国連の定めた世界環境デー(環境の日)であることに言及した。(CJC)


◎米福音ルーテル教会に初の同性愛監督アーウィン牧師

 【CJC=東京】米福音ルーテル教会(ELCA)南部カリフォルニア・シノッドは5月31日、公然同性愛者のR・ガイ・アーウィン牧師を監督に選出した。任期6年。同派で同性愛聖職者を容認してから4年後に初の登場となった。
 「女性叙階の時のような、歴史的転換点。文化が変わったことを示す兆候の一つなのだ」と、同派に属す著名な神学者マーティン・マーティー氏は言う。
 アーウィン監督は先住民の同派監督としても初めて。エール大学で博士号、修士号を取得、大学や神学校で教育に携わり、カリフォルニア州キャノガパークのフェイス・ルサラン教会牧師、カリフォルニア・ルサラン大学神学教授。
 同派は9638教会、会員400万人以上と米国ルーテル派では最大規模だが、1987年創設以来、会員減少に見舞われており、同性愛聖職を容認した後の2010、11両年には50万人近く減少した。
 教会単位で同派を脱退し『北米ルーテル教会』に加盟したところもある。また在外教会では、エチオピア・ルーテル教会は同派との関係を断絶した。
 今回の選出は、米ルーテル派では2番目に大きいルサラン・チャーチ・ミズーリ・シノッドとの関係にも影を落としそうだ。より保守的なミズーリ・シノッドとは社会問題での立ち位置が相当異なっているものの、災害救援、難民・移民対策などでは協力してきた。
 カリフォルニア州南部では、聖公会で最初の公然同性愛者のメアリー・グラスプールさんが2009年にロサンゼルス補佐主教に選出されており、同地での同性愛容認の傾向がひときわ目を惹くことになった。


◎カンタベリー大主教が教皇と会見へ

 【CJC=東京】イタリアのANSA通信によると、英国国教会の最高指導者カンタベリー大主教ジャスティン・ウエルビー氏が6月14日、バチカン(ローマ教皇庁)を訪問、教皇フランシスコと会見する。「重要な」しかし「非公式、簡素な表敬訪問」だとモンシニョール・マーク・ランガムがバチカン放送に語った。
 ウエルビー氏は3月19日の教皇着座式典には参列しなかった。その2日後の自身の着座式の準備のため、という。
 今回の会見が設定されたのは、両教会の首長が、「互いにより良く、深く知る」ようになれるためだ、とランガム神父は語っている。


◎司祭は銃持つな、とフィリピン司教

 【CJC=東京】登録すれば銃携帯を認められるフィリピン。社会不安が進む中で、カトリック教会の司教2人が司祭は銃を持つな、と警告している。
 マニラ南方リパのラモン・アルゲレス大司教は「わたしたち司祭は危険を恐れない。一般大衆、特に貧困者が危険にさらされるなら、わたしたちがより安全ではありえない」と言う。
 マニラ北郊マロロスのホセ・オリヴェロス司教も「司祭は平和の人と見られているのであって、戦争の人ではない。主は言われた。剣によって生きる人は剣によって死ぬと。わたしたちは暴力に暴力をもって立ち向かうべきではない」と述べている。


◎インド東部で改宗拒否したキリスト者が首はねられる

 【CJC=東京】インド東部トリプラ州テリアムラでキリスト者のタパス・ビンさん(35)が頭部を切断され死亡した。遺体が付近の川で発見された。現地メディアの報道としてカトリック通信アジア・ニュースが6月3日伝えた。
 タバスさんは、家庭教師をしていたジェントゥリさんと3年前に結婚したが、ジェントゥリさんの父親ゴビンダ・ジャマティヤ(55)にヒンズー教に改宗するよう迫られ、拒否し続けていた。怒りの収まらないゴビンダがシャーマンのクリシュナパダ・ジャマティヤ(42)の助けを借りて伝統の儀式を行い、その後殺害したもの。ゴビンダは逃走中。
 ジェントゥリさんは、警察に「父親が結婚を認めず、ビンさんに改宗を迫っていた。自分も子どもも殺されるかも知れない」と語っている。


◎バッハが筆写したミサ曲の楽譜発見

 【CJC=東京】作曲家J・S・バッハ(1685〜1750)に関するドイツ研究機関『ライプチヒ・バッハ資料財団』は6月6日、これまで存在が知られていなかった、バッハ筆写の楽譜が見つかったと発表した。
 カトリックのミサ曲を1740年頃に書き写したもの。プロテスタント教会で重視されるバッハが、カトリックの教会音楽の影響を強く受けていたことを示す資料。
 筆写したミサ曲は、イタリア・ベネチアの作曲家フランチェスコ・ガスパリーニの「ミサ・カノニカ」(1705年作曲)。ワイセンフェルスにある作曲家ハインリヒ・シュッツの記念館で今年4月に見つかったという。
 財団が使われた紙のすかし模様やインク、筆跡を分析した結果、1740年にバッハ本人が書いたものと断定した。計30枚あり、保存状態は極めて良好という。財団は、バッハ晩年の作品がイタリアのミサ曲に影響されたことを裏付けると指摘している。


◎キリスト者はスターバックス飲めない?

 【CJC=東京】正しさにこだわるキリスト者ならスターバックスを飲めない、と米保守派の活動家デービッド・バートン牧師が5月19日、アラバマ州ハンツビルのホワイトバーグ・バプテスト教会で説教していたことが分かった。
 その際、同氏はスターバックスが、伝統的な結婚を破壊するため「カネをつぎ込んでいる」と述べている。
 2012年1月、スターパックス社がワシントン州の同性婚法案を正式に支持、同社のハワード・シュルツCEOがこの3月の株主総会で、同性愛者の平等への支持を再確認したことを念頭においたものと見られる。


《短信》

◎イスラエルで脳死した児童の臓器をパレスチナ少年に移植
 5月末に窓から転落し死亡判定されたノアム・ナオルちゃん(3)の臓器が両親の申し出で提供され、腎臓1個がパレスチナの10歳の少年に提供された。手術は成功した。(CJC)

◎引退生活は快調、と名誉教皇
 「読書、祈り、快調。修道僧のように生きている」と名誉教皇ベネディクト16世が、訪れた旧友の神学者マンフレッド・ルッツ氏に語った。(CJC)

◎バチカンのコッホ枢機卿がウクライナ訪問
 ウクライナ正教会のヴォロディミル・サボダン府主教と会見の予定。東方典礼カトリック教会と正教会との関係改善への期待を表明した。(CJC)

◎ローマでグレゴリオ聖歌とオルガンに関する修士課程が
 教皇庁立聖アンセルムス大学典礼研究所(ローマ)が、グレゴリオ聖歌とオルガンに関する2年間の修士課程を設立した。(CJC)

◎チェコ共産主義政権下の資産押収への補償金約3000億円教会に
 チェコ最高裁は6月3日、共産主義政権下の資産押収への補償案を認めた。補償金約3000億円は今後30年間、分割支給される。また国有化された資産約3800億円の56億円相当が返還される。一方、教会への財政支援は削減される。(CJC)

◎米南部バプテスト連盟所属の教会がボーイスカウト隊を閉鎖
 米ジョージア州マリエッタのロズウエル・ストリート・バプテスト教会(会員2300人、南部パプテスト連盟所属)のアーネスト・イーズリー牧師は、同教会が1945年にスポンサーとなったボーイスカウト第204隊を年末で閉鎖する、と発表した。(CJC)

◎フォレスト・ウィッテカーがキング牧師の最後描く映画に主演?
 マーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師の最後の日を描いた映画『メンフィス』の主演としてフォレスト・ウィッテカーが交渉に入っている、と複数のメディアが報じている。(CJC)


《メディア展望》

 =カトリック新聞(6月9日)=https://www.cwjpn.com
★教皇フランシスコ=「愛といつくしみ感じる教会に
★増加する活動要請=支援者の意識喚起も必要=全ベース会議=仙台教区サポート会議
★憲法96条改定に反対=宗教者が共同声明=発足集会 賛同人1万目指す
★憲法9条を世界の宝に・ピース9の会=初の全国集会開く
★日本カトリック教誨師連盟=矯正施設で奉仕する=増員と後継者養成が課題

 =キリスト新聞(6月8日)=https://www.kirishin.com
★アフリカ人スタッフをコンゴに派遣=地元に根ざした支援に貢献 =日本国際飢餓対策機構
★「九条の会」が訴え="草の根から改憲反対を"
★「狭山事件」から50年=石川一雄さんの再審求め宗教者集う
★日本盲人キリスト教伝道協議会=「全国教会の受け入れ状況調査」
★ロシアのキリル総主教が訪中=正教会「公認」狙う?
★無神論者も救いの対象=教皇フランシスコ

 =クリスチャン新聞(6月9日)=https://jpnews.org
★通過儀礼で宗教文化変容を=宣教の革新を求めて/データから日本の教会の現状と課題を分析・提言=TCU国際宣教センターがデータブック発刊
★火災にめげず「さあ!新しい地へ」=東京メトロチャーチ=会堂に感謝とお別れ
★イエスの弟子となるための世界会議開=イエスに従い弟子となるという教会の原点に返る
★改憲阻止へ 戦時体験語り継げ=「政教分離の会」=平和憲法の重要性訴え
★「慰安婦」強制認め謝罪を=橋下・大阪市長に抗議


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