世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1166信(2013.05.27)

  • 無神論者も救済の対象、と教皇フランシスコ
  • 米ボーイスカウト連盟が同性愛隊員禁止撤回
  • 米国務省が「信教の自由」報告書発表
  • スコットランド教会が同性愛教職認める
  • バチカン財務情報監視局が初の年次報告書
  • 「中国の教会のための祈り」を教皇フランシスコ要請
  • 教皇フランシスコの悪魔払い報道をバチカン否定
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎無神論者も救済の対象、と教皇フランシスコ

 【CJC=東京】教皇フランシスコが5月22日朝のミサで、無神論者の罪の救済に言及した。
 世界中から大きな反響があり、バチカン(ローマ教皇庁)報道事務所は翌23日、「罪の救済」の解釈について補足する談話を発表した。
 教皇は22日午前、居宅で行ったミサで、善いことをするなら、無神論者でも善い人とされる、として、あらゆる宗教の人、そして宗教のない人が共に働くことを促した。「主はキリストの血によって、我々すべての罪を救った。カトリック信者のみならず、すべての人を、無神論者も」と語った。
 教皇は、無神論者もイエスによって救われるか、と司祭に尋ねたあるカトリック信徒の話をした際に、「あの人たちも、誰でも救われる。私たちは皆、善いことをする義務がある」と語った、とバチカン放送は伝えている。教皇は用意したメモを読み上げたのではない、という。
 無神論者や無宗教者に対する教皇フランシスコの姿勢は、前任者ベネディクト16世が示したものとは対照的なところから、たちまち大きな反響を呼んだ。ベネディクト16世は、カトリック以外の信徒を「二流の信徒」と見なしているようだ、と苦情が寄せられることもあった。
 米CNNテレビは、信仰にとらわれない倫理観を説いている米団体のロイ・スペクハルト氏が、「世界の宗教的、哲学的多様性に関する教皇の見解は広がっている」、「人文主義者は以前から、人は神がいなくても善良になれると訴えてきたが、その言葉をカトリック教会の指導者から聞いて大きく心を打たれた」と歓迎している、と報じた。同氏は、ほかの宗教指導者たちもこうした見解を示せば、無神論者などに対する差別の解消につながるだろうと期待を示した。
 CNNによると、ネット上でも教皇の発言は注目され、無神論者や不可知論者でも天国に行けるのかと問いかける声が相次いだ。
 これらの反響にバチカン(ローマ教皇庁)報道事務所長フェデリコ・ロンバルディ神父は23日、「すべての男女は、いかなる状況にあっても救われることができる。たとえキリスト教徒でなくても、この精神の救済行為に応えることはできる。生まれながらに罪深い存在であるというだけで、救済の対象にならない人物は誰もいない」と指摘、22日の教皇の発言については、「救済の本質についての神学的論争をあおる意図ではない」と述べた。


◎米ボーイスカウト連盟が同性愛隊員禁止撤回

 【CJC=東京】米ボーイスカウト連盟は公然同性愛隊員を禁止する措置を撤回する。テキサス州グレープバインで開催した全国評議会で5月23日、約1400人の評議員のうち6割以上の賛成で撤回案を採択した。2014年1月1日から発効する。ただ成人の公然同性愛者が「指導者」となることは依然禁止する。
 今回の採択に至るまでには、同性愛者の権利を主張する活動家と、教会員などとの間で激しい事前運動が展開されていた。教会によって設立されたスカウト隊が多い米国で、保守派の脱退が続発する可能性もある。
 同性愛者が兵役に就くことも現実となり、また同性婚を認める州も増えている米国で、ボーイスカウトが同性愛者隊員を禁止してきたことは、同性愛者の権利を巡る論議の核心になっていた。
 ボーイスカウト指導部は隊員制度変更決定を、同性愛者容認に関する調査のため遅らせていた。今回の投票が、その3カ月後に行われたことも見逃せない。
 ボーイスカウト運動への寄付者からの圧力も高まっていた。同性愛者の権利擁護者だけでなく、社会変革に敏感な企業スポンサーからの圧力がある一方で、全米でスカウト運動のスポンサーとしてまた支援者であった教会の影響も無視出来なかったと見られる。
 全米のボーイスカウト10万隊の約70%は信仰を基盤とする組織によって創設された。約22%が市民団体が創設され、7%が教育団体によるもの。
 ロイター通信は、ほぼ3万8000隊を創設し、隊員25万人を要する最大のスポンサー、モルモン教会(末日聖徒イエス・キリスト教会)が今年初め、禁止措置終了を支持すると表明したと報じている。これが、今回の採択への直接のきっかけとなったと見られる。
 信仰基盤では第2位の合同メソジスト教会も禁止撤回支持の声明を発表した。同派は1万1000隊、隊員36万3000人。84隊のスポンサーとなっているカトリック教会は、これまでの論議で立場を明らかにしていない。
 ロイター通信は、全米規模の調査で同性愛者の権利受け入れ支持が増加しているが、隊員、両親、指導者など20万人を対象にしたオンライン調査ではほぼ2対1で禁止維持に賛成が多い、と報じている。
 同性愛者の権利擁護派は、禁止撤回支持の署名180万、禁止維持派は25万筆を集めた。
 企業スポンサーでは最有力と見なされるインテル社は昨年9月、同性愛隊員禁止を継続する隊への支援停止を発表した。同社は2009年に70万ドル(約7000万円)を寄付している。大手貨物輸送企業のユナイテッド・パーセル・サービスも11月に、製薬のメルク社も追随したという。


◎米国務省が「信教の自由」報告書発表

 【CJC=東京】米国務省は5月20日、世界の信教の自由に関する2012年版の報告書を発表した。トルコやベトナムで状況が改善したとの見方を示す一方、公権力が特定の宗教の信者を弾圧していることなどを理由に中国、サウジアラビア、北朝鮮、イラン、ミャンマー、エリトリア、スーダン、ウズベキスタンの8カ国を「特に懸念される国」に指定し、信教の自由を保障するよう求めた。
 報告書は11年版に引き続き、中国について、チベット、新疆ウイグル両自治区の状況に懸念を示し、「信教の自由を尊重する姿勢が後退した」と中国政府を批判した。特にチベットでは「公権力による激しい弾圧」に抗議する仏教徒の焼身自殺が昨年1年間で83人に上ったことを問題視した。
 また、ベネズエラ、エジプト、イランなどで反ユダヤ主義が公権力によって扇動されている事態に強い懸念を示した。
 報告書は、トルコで宗教的な服装に関する規制が緩和されたこと、ベトナムで10万人以上の大規模な宗教集会が許可されるようになったことなどを評価している。
 15年前、上院議員として同報告書の作成を義務付ける法案の成立に尽力したジョン・ケリー国務長官は、今年の結果発表に当たって「宗教の自由の現状をはっきりと客観的に見た報告だ」と述べ、各国との利害関係にかかわらず率直な意見が書かれていると強調した。「特に報告書で特定された国に対し、直ちに行動するよう促している」と述べ、今後も中国などに信教の自由擁護に向けた具体的な方策を求めていく考え。
 日本については、概評では信教の自由が維持されていると評価したものの、「第3部」で、統一教会に入会した人への「脱洗脳」を扱っており、女性信者が、指導教官の、信教の自由及び名誉感情を著しく侵害する不法行為によって、精神的苦痛を被り、佐賀大学はその使用者責任を負う、として。信者が大学側を訴えたことを記載している。


◎スコットランド教会が同性愛教職認める

 【CJC=東京】スコットランド教会(長老派)は、同性愛教職を認めることにした。「宗教改革者」ジョン・ノックス以来450年も守って来た伝統から離脱する歴史的な決定。
 エジンバラで開催した総会で5月25日、僅差で採択した。2009年に、公然同性愛者(ゲイ)のスコット・レニー牧師がアバディーンのクイーンズ・クロス教会区主任に選出されたのを契機に論争が起き、同派を脱退する教会が出るまでになっていた。
 総会は、同性愛教職を認めたものの、それは特に選出された場合に限定している。ゲイとレズビアンの教職を認めはしたが、受け入れるか否かは各個教会が選択出来る。
 スコットランドでゲイの権利を訴えている人からは、今回の決定を称賛する声が上がっているが、19世紀に同派を離脱した『スコットランド自由教会』は「完全に惑わされる」と言う。
 『ザ・ガーディアン』紙によると、新規定は2015年までは発効しない。そしてまず教会規則に書き込まれ、総会で採択される必要がある。


◎バチカン財務情報監視局が初の年次報告書

 【CJC=東京】ローマ教皇庁とバチカン市国の財務情報を監視する独立機関『聖座財務情報監視局』は5月22日、初めての年次報告書を発表した。2012年の金融取引のうち6件にマネーロンダリング(資金洗浄)の疑いがあると認定した。前年の1件から増加した。
 監視責任者のルネ・ブルラート氏は、増加したのは「監視態勢が整備された結果だ」と評価した。2件について、バチカン検察に捜査を要請したという。ただ6件とも「テロ資金とは無関係」とした。同氏はマネーロンダリング問題を専門とするスイス人弁護士。
 疑わしいとされた取り引きには、カトリック教会の資産を管理・運用する『宗教事業協会』(バチカン銀行)が関わるものもあるという。同協会は約60億ユーロ(約7900億円)の資産を扱っているが、10年、資金洗浄に関与したとしてイタリア当局の捜査を受けた。
 『聖座財務情報監視局』は、前教皇ベネディクト16世が10年末に設置した。資金洗浄やテロへの資金供与を防ぐ国際的取り組みに協力するための部署。


◎「中国の教会のための祈り」を教皇フランシスコ要請

 【CJC=東京】前教皇ベネディクト16世により2007年に「中国カトリック教会のための祈りの日」と定められた5月24日、教皇フランシスコは、全世界のカトリック信者たちに中国のための特別な祈りを依頼した。
 バチカン放送(日本語電子版)によると、中国のカトリック信者の間では「キリスト信者の助け手、聖マリア」に対する信心が篤く、特に上海の『シェーシャンの聖母巡礼聖堂』へは聖母マリアのご保護を求める多くの信者たちの参詣が絶えない。


◎教皇フランシスコの悪魔払い報道をバチカン否定

 【CJC=東京】教皇フランシスコが5月19日、サンピエトロ広場で開かれたミサを訪れた男性から悪魔を追い払ったとイタリアの宗教系衛星テレビが報じた。しかしバチカン(ローマ教皇庁)広報事務所長のフェデリコ・ロンバルディ神父は「教皇は悪魔払いをしたわけではない」と否定している。
 教皇は19日のミサの後、参列した車いすの男性に近づき、頭に手を置いて祈りをささげた。男性は口を大きく開けて、体を震わせた。宗教系テレビは「映像を見たエクソシスト(悪魔払い師)たちは、悪魔からの解放の祈りだと確信した」と報じた。
 一方、バチカン側は「いつものように病気の人に対して祈りをささげただけ」としている。


《短信》

◎死海の水位低下続く
 人口増や工場建設で取水量が増え、気候変動による少雨が続くことが要因。200年後には消滅か。(CJC)

◎拉致1カ月の主教2人解放求め2000人が祈る
 アンマンで5月23日夜、キャンドル行進した。(CJC)

◎教皇フランシスコが2016年にフィリピン訪問か
 セブ市で開かれる国際聖体大会出席のため。(CJC)

◎米テキサス州が公立学校での聖誕シーン展示認める
 キリスト教にユダヤ教や非宗教的なシンボルも併せることが条件。(CJC)


《メディア展望》

 =カトリック新聞(5月26日)=https://www.cwjpn.com
★教皇フランシスコ=キリスト者はフルタイムで働く
★厳格すぎる教会は愛と優しさを失う=教皇、国際カリタス代表者らに語る
★バチカンが統計値を公表=カトリック信者数は続伸=特にアフリカとアジアで
★「忘れない」を合言葉に=復興支援ふれあいフェスタ 東京で
★カトリック教育の充実図る=学校、教会の連携実例を紹介=東京

 =キリスト新聞(5月25日)=https://www.kirishin.com
★クラッシュジャパン=東北支援活動を報告=首都圏地震に備え、教会でも防災意識を
★"どこまでも子どもとともに生きる"=G・E・キュックリッヒ氏記念礼拝
★新たに広がる水野源三の世界=召天30年を前に写真展や朗読ライブ
★日本同盟基督教団「教会と国家」委=NPT共同声明拒否に抗議
★「日本における拉致・強制改宗」=米「国際宗教の自由委」年次報告書に初の項目

 =クリスチャン新聞(5月26日)=https://jpnews.org
★震災から学ぶ包括的宣証=日本ローザンヌ委=3年連続シンポ=「他の信仰を持つ人々の中で愛を生きる」
★流浪の旅路から2年2か月=福島第一聖書バプテスト教会=涙の献堂式
★3千人被災地へ クラッシュが感謝報告=現地教会活動を後方支援へ=次期災害準備にも力入れ
★「核兵器の影響」共同声明署名拒否に同盟基督「教会と国家」委が抗議
★北朝鮮=韓国系米人旅行者に懲役15年=キリスト者として人道問題訴えで?


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