世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1165信(2013.05.20)

  • 訪中のキリル総主教は正教会「公認」狙う?
  • 中国「人権白書」が宗教の自由保証強調
  • カトリック教会はアジア・アフリカで成長
  • バチカン銀行がバランスシート公開へ
  • シリア内戦激化で死者12万以上にも
  • 北朝鮮抑留のペ・ジュンホ氏が「特別教化所」に
  • 米で教会版ボーイスカウトに関心集まる
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎訪中のキリル総主教は正教会「公認」狙う?

 【CJC=東京】ロシアのインタファクス通信によると、ロシア正教会の最高指導者、「モスクワと全ロシアのキリル総主教」は中国訪問の最終日の5月16日、上海で、正教会の地位が強化されることになろう、と記者団に語った。
 総主教は、「中国正教会を強化する計画」のあることを明らかにした。特に、計画と関連して、中国人学生2人が、サンクトペテルブルグとセルゲイエフ・ポサドにある正教会神学校で学んでいる、と指摘した。
 「300年にわたって中国に存在し、20世紀には中国の人々全てと苦難を共にしてきた正教会という『真の教会』のリバイバルに立ち会っている」、と総主教は語った。
 総主教は、今回の訪問が中国社会に積極的な発展の結果であるとし、中国当局が中国人民の生活の中の宗教の重要性と、両国間の関係発展における正教の重要性を理解したから可能になった、と指摘した。
 今回の訪問が両国間の関係強化に貢献し、それが両国間だけでなく全世界に大きな影響を与えることを望む、と総主教は語った。
 中国政府は、国務院宗教局が宗教を管理しているが、宗教活動を認めているのは、カトリック、プロテスタント、イスラム教、仏教、道教だけで、宗教団体は登録認可が必要。
 カトリック、プロテスタントとも、政府の規制を嫌って非登録のまま「地下活動」を行い、取り締まられる事態もこれまで続発している。
 「正教会の地位強化」をロシア正教会の最高指導者が要請したことは、中国の宗教政策の変更を迫ったものと見られ、中国側の対応が注目される。


◎中国「人権白書」が宗教の自由保証強調

 【CJC=東京】「2012年中国人権事業の進展」白書は、「中国公民の宗教・信仰の自由は確実に保証されている」と強調した。中国国務院新聞弁公室が5月14日発表した
 現在、中国で宗教の教員は約36万人に達している。また法に基づいて登録された宗教活動の場所は14万カ所に上るという。
 宗教団体は5500、各種の宗教学校は97カ所で、「基本的な宗教教育システムが形成されている」と白書は記している。
 2012年までの『聖書』印刷は1億冊を超えており、世界で『聖書』の印刷数が最も多い国となったとしたほか、「中国は宗教界の交流活動を支持し、2011年10月には湖南省で国際道教フォーラム、12年4月には香港で第3回世界仏教フォーラムを行った」と言う。
 白書全文は約2万1000字で、経済建設における人権保障、政治建設における人権保障、文化建設における人権保障、社会建設における人権保障、生態文明建設における人権保障、人権領域における対外交流と協力を含めた6方面から、中国人権事業の新しい進展を紹介している。


◎カトリック教会はアジア・アフリカで成長

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)が『教皇庁年鑑2013年版』と『カトリック教会統計2011年』を発表した。
 『カトリック教会統計2011年』によると、2011年の世界のカトリック信者は約12億1400万人で、2010年の11億9600万人と比較して1・5%増加した。地球全体の人口増加率1・23%をわずかに上回っている。世界総人口に対しカトリック信者が占める割合は17・5%と横ばい。
 信者増加率の最大はアフリカ大陸で4・3%(前年2・3%)、続いてアジア2・0%(同1・2%)。アメリカとヨーロッパでは0・3%で、変化はなかった。
 全カトリック信者の大陸別分布は、アフリカ16・0%、アメリカ48・8%、アジア10・9%、ヨーロッパ23・5%、オセアニア0・8%。
 世界の司祭数は、教区司祭・修道司祭合わせて41万3418人、10年前の2001年に比較すると2・1%増加している。司祭の増加はアフリカ(39・5%)、アジア(32・0%)で多く、一方ヨーロッパでは9%減少した。
 永久助祭の数は世界的に伸びており、2011年では4万1000人と、10年前の2万9000人に比べて40%以上も増加した。特にヨーロッパとアメリカでは増加が目覚しく、世界の永久助祭数の97・4%をこの2大陸が占めている。
 司祭でない男子修道者は、2011年には5万5000人以上。この10年間に、アジアで44・9%、アフリカで18・5%増加し、この2大陸で全世界の修道士数の36%以上を占めるようになった(2001年度は28%)。これに対し、ヨーロッパでは18%減、アメリカ3・6%減、オセアニア21・9%減少した。
 女子修道者は、2011年推定71万3000人以上。この10年間に10%の減少している。特にはヨーロッパ(22%)、オセアニア(21%)、アメリカ(17%)の減少が顕著なのに対し、アフリカ28%、アジアでは18%の伸びを記録し、この2大陸で全世界の修道女の33%を占めるようになった(2001年度は24・4%)。
 司祭を目指す神学生の数は、2011年は12万616人で、10年前より7・5%増えた。増加率は大陸別で大きく異なり、アフリカ(30・9%増)、アジア(29・4%増)での著しい成長に対し、ヨーロッパ21・7%減、アメリカ1・9%減となっている。
 『教皇庁年鑑』は、世界のカトリック教会と教皇庁における一般情報や人事をまとめたもので、バチカン国務省統計局が編纂している。年鑑と共に公表される『カトリック教会統計』では、教会人口の推移を、過去のデータとの比較のうちに展望できる。


◎バチカン銀行がバランスシート公開へ

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)の資産を管理・運用している『宗教事業協会』(バチカン銀行)のエルンスト・フォンフライベルク総裁は5月13日、インターネット・サイトを開設、資産状況を記したバランスシートを年末までに公開すると発表した。
 3月に就任以来、バチカンの官僚組織改革を志向している教皇フランシスコの施策の一環。同協会のイメージを一新するには透明性を高める必要があることを意識したもの。
 同協会はこれまでマネーロンダリング(資金洗浄)への関与や、政治家やマフィアの蓄財への利用を指摘されている。イタリア当局の捜査を受けたり、米国や欧州連合(EU)からも懸念が示されていた。
 フォンフライベルク総裁は2月15日、退位を表明した直後の前教皇ベネディクト16世によって任命された。


◎シリア内戦激化で死者12万以上にも

 【CJC=東京】シリアで2011年3月に反政府デモが本格化して以来の死者が9万4千人を超えた。英国に本拠を置く『シリア人権監視団』が5月14日発表した声明で明らかにした。監視団は死者が8万人を超えたと12日に発表したばかりだが、アサド政権を支えるイスラム教アラウィ派が多い西部タルトス、北西部ラタキアなどでの犠牲者数が、従来の情報よりはるかに多いことが判明したという。監視団によると、実際の死者数は12万人以上と推定される。
 4月22日に北部アレッポ付近で拉致された正教会主教2人の所在は不明のまま。拉致犯との連絡もついていないまま、1か月を迎える。
 バラク・オバマ米大統領は5月16日、シリアのアサド政権の化学兵器使用が裏付けられた場合の対応について「外交・軍事の両分野で追加的措置を取る用意がある」と述べ、軍事的対抗措置を検討していることを明らかにした。発言は従来より踏み込んで「軍事」と明言したもの。大統領は「大事なのは何が起きたのか、さらなる具体的情報を得ることだ」と化学兵器使用の証拠収集を続けていることを強調した。
 シリアのバッシャール・アル=アサド大統領は19日、メディア・インタビューで、米ロが開催で合意したシリア問題の国際会議について、「シリアの改革を決めるのはシリアであり、米国もいかなる国も介入は許されない」と述べ、会議の成果に懐疑的な見方を示した。
 また「国家はテロリストと交渉しない」と述べ、反体制武装勢力との対話をあらためて拒否した。
 レバノンとの国境に近い要衝の町クサイルでは19日、政府軍と反体制派の戦闘が激化し、双方が町の一部を制圧したと宣言した。『シリア人権監視団』によると、この戦闘で反体制派の戦闘員48人を含む多数が死亡し、数百人が負傷した。
 国連総会は15日、アサド政権を強く非難し、反体制派の統一組織『シリア国民連合』が設立されたことを歓迎する決議案を採択した。賛成は日米やアラブ諸国など107、反対はシリアや中ロ、北朝鮮など12で、インドなど59カ国が棄権した。


◎北朝鮮抑留のペ・ジュンホ氏が「特別教化所」に

 【CJC=東京】昨年11月に北朝鮮で逮捕され、「反共和国敵対犯罪」で15年の労働教化刑(懲役)を言い渡された韓国系米国人ケネス・ペ・ジュンホ氏(44)が、5月14日から「特別教化所」に入った。北朝鮮の朝鮮中央通信が報じた。


◎米で教会版ボーイスカウトに関心集まる

 【CJC=東京】米ボーイスカウト連盟(BSA)が同性愛少年のスカウト入隊拒否を撤廃する方向に進む中で、教会版ボーイスカウトに関心が集まっている。5月24〜28日に開かれる連盟総会で評決が行われるが、採択される可能性が高い。その場合、BSA脱退者が10万人から35万人に上ると見られている。
 米国のボーイスカウトの7割は教会やキリスト教団体が設置したと見られる。同性愛問題はキリスト教会も直面を迫られているが、保守派を中心に否定色が濃い。
 ボーイスカウト連盟が同性愛少年の入隊を認めても、それは全スカウトものではなく、加入も各隊ごとの判断に委ねられてはいる。
 教会版「ボーイスカウト」の中で、『パスファインダーズ』(セブンスデー・アドベンチスト)、『ロイヤル・アンバサダーズ』(南部バプテスト)、『ロイヤル・レンジャーズ』(アセンブリーズ・オブ・ゴッド)などはすでに数十年の歴史がある。
 誓いをし、バッジを着用、キャンブも行うが、「ボーイスカウト」とはされていない。
 超教派のものでは『カルビニスト・カデット・コープス』『クリスチャン・サービス・ブリゲード』などがあげられる。
 セブンスデー・アドベンチストの北米青年宣教部門のジェームズ・ブラック担当は、「親が子どものために『パスファインダーズ』を前向きに選択するなら、両手を広げて歓迎する」とRNS通信に語った。
 末日聖徒イエス・キリスト教会(モルモン教会)はスカウト隊設立に力を入れている教派の一つ。「これまでBSAが思慮深く、良い信仰に立った努力をしてきたことに満足している」という。しかしプロテスタント最大の南部バプテスト連盟のフランク・ペイジ執行委員会委員長は、「改定は、ボーイスカウトに留まろうとする信念を軽視するよう教会に課すことだ」と語る。
 バプテスト通信は、『ロイヤル・アンバサダーズ』が約3000教会で設立された、と報じている。その大半は南部バプテスト連盟の教会。
 BSAの宗教関係タスクフォースのR・チップ・ターナー全国議長はRNS通信に、評決が延期されることが望ましい、と語った。総会前にタスクフォースは集まって神の導きを祈る、と述べている。


《短信》

◎教皇が国連食糧農業機関への協力約す
 国連食糧農業機関(FAO)のジョゼ・グラジアーノ・ダ・シルバ事務局長は、教皇フランシスコが飢餓問題に深い関心を持ち、全面的な協力を約束した、と5月15日ローマで語った。(CJC)

◎教皇と解放の神学には深い溝が、と伊紙
 貧者の味方と目される教皇フランシスコには南米の「解放の神学」者による評価も高いが、そこには深い溝がある。バチカン・オブザーバーの1人が伊エスプレッソ紙で5月16日指摘。(CJC)

◎オブライエン枢機卿がスコットランド離れる
 教皇フランシスコと協議の後、バチカン広報事務所から発表された。行く先は明らかにされていない。(CJC)

◎米が中絶反対団体への免税措置適用を再検討
 米内国歳入庁が非営利団体への免税措置適用を再検討する中で、中絶反対団体も対象になっている。(CJC)

◎米カトリック教会教区に60万ドル支払い命令
 米ミズーリ州のカトリック教会教区司祭が幼児ポルノを
撮影したと訴えられ、教会に60万ドル(約6000万円)の支払い命令。(CJC)


《メディア展望》

 =カトリック新聞(5月19日)=https://www.cwjpn.com
★教皇フランシスコ=「人生の渇き 聖霊が癒やす」
★教皇、女子修道会総長らに=「皆さんのいない教会はあり得ない」
★キリスト者メーデー集会=「社会の片隅」で働く人々に焦点
★エキュメニズムの日=エキュメニカル功労団体に日本福音ルーテル社団
★神学院5校集う=信仰年に召命考える=東京

 =キリスト新聞(5月18日)=https://www.kirishin.com
★救世軍に厚労相が感謝状=東日本大震災の支援活動
★DRCnetが震災証言集会=「フクシマの声を聴く」
★メノナイト教会有志が声明=「憲法守り、平和実現」
★第19回エキュメニカル功労賞=日本福音ルーテル社団が受賞="キリストの愛もって人々に仕える"
★長老派教会牧師が主演=台湾映画「セデック・バレ」公開

 =クリスチャン新聞(5月19日)=https://jpnews.org
★DV防止活動が宣教に=別居夫婦が回復 信仰決心も
★復興祈念会堂スタート=震災で解体した仙台・尚絅教会再建
★震災越え恵みを分かち合う使命=仙台学校教育の系譜・日本バプテスト尚絅教会
★「生命軽視の時代、使命一つに」=小さないのちを守る会が創立30周年=理事会が新たに発足
★危機募る憲法の変質=憲法記念日=市民と教会が共闘


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