世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1154信(2013.03.04)

  • ベネディクト16世退位し『名誉教皇』に
  • 最初の枢機卿会議は4日に
  • バチカンが「使徒座空位」期間限定切手
  • 教皇のツイッターは「凍結」
  • 英オブライエン枢機卿「不適切な性的行為」謝罪
  • 教皇退位スクープのカギは記者のラテン語力
  • パレスチナの子どもをイスラエル病院が診療
  • エジプト南部でまた改宗がらみの抗争
  • レバノンでキリスト者比率が増加へ
  • LWFのスタアルセット元総幹事に庭野平和賞
  • 《メディア展望》

◎ベネディクト16世退位し『名誉教皇』に

 【CJC=東京】教皇ベネディクト16世が2月28日午後8時、教皇職を公式に退位した。同日午前、バチカンで枢機卿団に挨拶した教皇は午後5時ヘリコプターでカステルガンドルフォの離宮に向かい、午後8時に教皇職を退位した。その時点で教皇職を示す「使徒座」(聖座)は新教皇が就任するまで空席となり、「空位期間」と呼ばれる時間に入った。
 枢機卿団への挨拶で、教皇は枢機卿団の中にいる「未来の教皇」に、無条件の尊敬と従順を約束した。
 バチカン放送(日本語電子版)によると、教皇は「この8年間、わたしたちは教会の歩みの上で、素晴らしい光り輝く時期と同時に多少の雲が空に立ち込めた時期も、信仰のうちに体験してきました。わたしたちはキリストと教会に深いまったき愛をもって奉仕しようと努めました。その愛はわたしたちの任務の核心です。わたしたちは、歩みを照らす唯一のものである、キリストから来る希望を与えました。わたしたちは交わりのうちに成長したことを共に主に感謝し、これからもあなたがたが、枢機卿団のこの深い一致のうちにさらに成長できるようその助けを祈りたいと思います」と語り、枢機卿団はオーケストラのようなもので、そこではそれぞれの違いと、普遍の教会の表現が、常に優れて調和したハーモニーに収斂していくののだ、と指摘した。
 教皇の出発にあたり、バチカン市国のヘリポートで、教皇は枢機卿団主席ソダノ枢機卿、前バチカン市国長官ラヨロ枢機卿の挨拶を受けながら、ヘリコプターに搭乗、ヘリコプターはバチカン市国の上を旋回。この間、聖ペトロ大聖堂と周辺の教会が鳴らす鐘の音が響いた。
 ヘリコプターは約20分後、カステルガンドルフォの離宮に到着した。


◎最初の枢機卿会議は4日に

 【CJC=東京】ベネディクト16世が教皇職から退位した翌3月1日、枢機卿団主席アンジェロ・ソダノ枢機卿は、枢機卿総会を4日に招集した。総会は4日午前9時半にパウロ6世接見ホールのシノドス会議場で行われる。また、同日午後5時に第2回会議を予定している。
 この枢機卿総会で、次期教皇を選出する「コンクラーベ」の開始日を決める。
 バチカン広報事務所長フェデリコ・ロンバルディ神父は、枢機卿総会の初日に「コンクラーベ」の開始日が明らかになるとは限らないと述べた。


◎バチカンが「使徒座空位」期間限定切手

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)切手・貨幣事務所が教皇不在の「使徒座空位」期間にだけ使用する切手を発売した。しま模様の傘と重ねられた鍵であらわす「空位」の紋章や、2013年を示すローマ数字などがデザインされている。実際に使用するには、バチカン内にある郵便局に差し出す必要がある。
 発売されたのは70セント(イタリア宛て)、85セント(欧州各地宛て)、2ユーロ(南北アメリカ宛て)、2・5ユーロ(大洋州各地宛て、1ユーロは100セント、約120円)の4種。4種をセットにしたものは15ユーロ。「使徒座空位」の記念切手は1939年、ピウス11世の死後に初めて発行された。約600年ぶりの存命中退位とあって、バチカンを訪れた観光客や信者らが買い求めている。
 同事務所は、5月に2ユーロと5ユーロ、10ユーロの記念硬貨を発行する予定。記念硬貨は2ユーロが12万5千枚、銀製の5ユーロは1万枚、金製の10ユーロを5千枚発行する。


◎教皇のツイッターは「凍結」

 【CJC=東京】教皇ベネディクト16世が昨年12月に始めたツイッターは、退位に伴いアカウント(@Pontifex)が凍結され、表示名は「空位」(Sede
Vacante)となった。またこれまでの「つぶやき」(ツイート)はすべて消された。
 ベネディクト16世最後のツイートは2月28日午後、「暮らしの真ん中にキリストを置くことから生まれる喜びと、いつもともにありますように」だった。
 ツイッターの今後は、新たに選出された教皇の手に委ねられる。


◎英オブライエン枢機卿「不適切な性的行為」謝罪

 【CJC=東京】スコットランドのカトリック教会セントアンドルーズ・エディンバラ大司教キース・オブライエン枢機卿(74)は、1980年代に複数の司祭らにセクシャルハラスメントを行っていたとオブザーバー紙に報じれれ、当初疑惑を否定していたが、2月25日大司教職を辞任した。同紙が掲載した司祭たちの証言によると、オブライエン枢機卿は夜の祈祷や会食などを利用して司祭たちに不適切な接触を要求したという。
 同枢機卿は3月初めに開催される、次期教皇選出の「コンクラーベ」に英国からただ1人出席する予定だったが、これにも欠席すると発表した。
 オブライエン枢機卿としては3月に退任を教皇に申請する年齢である75歳の誕生日を迎えるので、それを待つ意向だったが、ベネディクト16世が即時辞任を求めたと伝えられる。
 AFP通信によると、同枢機卿は3日、声明を発表、「立場にふさわしくない性的行為があった」と認め、謝罪した。今後は英国内でのカトリック教会の職務から一切退くという。
 ベネディクト16世在位中の8年間、カトリック教会ではスキャンダルが多数発覚した。オブライエン枢機卿のほかにも、「コンクラーベ」参加資格を持つ枢機卿4人に児童への性的虐待疑惑が浮上、とAFP通信は報じている。


◎教皇退位スクープのカギは記者のラテン語力

 【CJC=東京】ネット時代は情報がすぐに伝わるか、というわけでもない。教皇ベネディクト16世が退位の意向を固めたというニュースを速報したのは、地元イタリアのANSA通信で2月11日現地時間11時46分(日本時間同日午後7時46分)。バチカン(ローマ教皇庁)には自前のメディア『バチカン放送』があるが、発表は12時3分だった。
 世界のメディアに先駆けて報じたのは同通信のジョバンナ・チリ記者。当日バチカン記者クラブにはチリ記者のほか、メキシコや日本のメディアの記者がおり、枢機卿会議の中継を見ていたという。後で発表を聞けば良いとして、日頃は誰も中継に関心を払うことはなかったようだ。
 ラテン語の知識があったチリ記者。教皇がゆっくりとラテン語で話すのを聞いていたが、あるところで教皇が「疲れた」「プレッシャーが大きすぎる」「辞めるつもり」といった内容を語ったことを聞き取った。
 チリ記者はすぐにバチカン報道事務所長のフェデリコ・ロンバルディ神父に確認の電話をしたが、返答は得られなかった。
 同記者は編集長に、自分のラテン語の能力は十分だから、辞任速報を出しても大丈夫と主張したと言う。その後、ロンバルディ神父から電話があり、ANSA通信は「教皇が2月28日退位」という速報を流した。
 それを受けてロイター通信は11時47分に、AFP通信が同53分に速報を流したから、世界のメディアは騒然となり、英BBCや米CNNなどのテレビや新聞が一斉に報じた。バチカンと緊張関係にある中国でも国営新華社通信が事実関係だけではあるが報じた。
 ツイッターなどソーシャルメディアも教皇辞任とANSA通信の速報、チリ記者のラテン語力などで盛り上がった。


◎パレスチナの子どもをイスラエル病院が診療

 【CJC=東京】イスラエル有数の『アッサフ・ハレフ医療センター』とパレスチナ難民に宣教しているキリスト教団体『国際リビング・ブレッド教会』(LBCI)が1月、「子どもを救え」計画に合意した。ヨルダン川西岸地区とガザ地区に居住するパレスチナ市民の幼児を無償で診療するもの。
 「死にかかっており、少しの希望もない子どもたちへ愛と同情を示すのは神の働きだ」とLBCIのカレン・ダナム責任者。「今この時、イスラエルの敵に対し愛を占めすためにキリスト教団体とイスラエルの病院が組むというのは神さまのようではないか。もっとも小さい人に手を差し伸べるのは、まさにイエスがされたこと。主に越えられない境界などないのだ」と言う。
 LBCIは早速活動を開始、治療が必要な子どもを連れてきて、終わり次第、ガザに送り返している。医療センターはテルアビブ近郊にあり、子どもたちの送り迎えにはボランティアの協力が必要という。


◎エジプト南部でまた改宗がらみの抗争

 【CJC=東京】エジプト南部コムオンボで3月1日、暴徒が警察を襲撃、火炎瓶を放り込んだり、投石した。イスラム教徒が、キリスト教に改宗した女性を保護していると思い込んでコプト教会を襲撃、負傷者24人を出す事件に抗議したもの。
 行方不明になったイスラム教女性が、キリスト者の友人と一緒に教会付近にいるのを見て、付近の住民がその女性がキリスト教に改宗し、教会に隠まわれている、と噂にしたのが始まり。また改宗は強制されたものだ、との見方も出されて、教会襲撃にまで至ったとも見られる。
 ホスニ・ムバラク大統領を退陣に追い込んだ「アラブの春」以来、噂に基づいたイスラム教徒によるコプト教徒襲撃が増加している。


◎レバノンでキリスト者比率が増加へ

 【CJC=東京】レバノンでキリスト者の比率が増加に転じそうだ。イスラム教徒の出国が増え、また出生率が減少しているため。レバノン情報センターの報告書によって明らかになった。
 レバノンのキリスト者は1932年の54%から現在は34%にまで減少したが、2045年には39%にまで回復すると見られている。


◎LWFのスタアルセット元総幹事に庭野平和賞

 【CJC=東京】ルーテル世界連盟(LWF)元総幹事でノルウェー国教会オスロ名誉監督のグナー・スタアルセット氏(78)が第30回庭野平和賞を受賞した。庭野平和財団が2月27日発表した。
 スタアルセット氏は1935年生まれ、1998年から2005年までオスロ監督。世界教会協議会中央委員も務めた。
 5月16日に東京で贈呈式と受賞者記念講演が行われる。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(3月3日)=https://www.cwjpn.com
★2012年度臨時司教総会=被災地支援状況を報告=次期司教協会長に岡田大司教
★震災発生2年控え=活動報告書を発行=カリタスジャパン=「被災地で一緒に歩み続ける」
★教皇=「自発教令」で=コンクラーベの開始日前倒し許す規定に変更
★教会にある"嫌がらせ"=関東の信徒有志らが「考える会」
★シノドス報告書 発行=中央協

 =キリスト新聞(3月2日)=https://www.kirishin.com
★2月11日「信教の自由を守る日」="改憲"の動き迫る中に訴え=札幌・仙台・東京・名古屋などで集会
★国際宗教研究所="「いのりと分かち合い」ある共同体"=公開シンポで釜石ベースの支援紹介
★国際宗教研究所賞=イスラーム法・塩崎悠輝氏
★バッハ・コレギウム・ジャパンの鈴木優人氏=「調布音楽祭」総合プロデューサーに
★バチカン銀行新総裁=独のフレイベルク氏

 =クリスチャン新聞(3月3日)=https://jpnews.org
★自然エネルギー=原子力の44倍=日本に原発いらない=足利工大の牛山泉学長
★台湾・賛美バンド"CALLING"来日=「神様のタイミングで集まった」
★100人規模教会で世界宣教=賛美は神への愛、従順に=台湾ワーシップアンドプレイズチャーチ
★教皇=最後の「灰の水曜日」メッセージ=教会の分裂に「立ち返れ」
★キリスト者の子どもを自爆戦士に?


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