世界キリスト教情報

世界キリスト教情報

世界キリスト教情報 第1152信(2013.02.18)

  • 「教皇の勇気と自由の精神」を広報事務所長が強調
  • 教皇の辞任発表に驚き・感謝・批判の声
  • 教皇が最後の「灰の水曜日」儀式
  • 「教皇選挙は早まる可能性も」とバチカン広報事務所長
  • 次期教皇選びに「賭け屋」が早くも乗り出す
  • バチカン銀行新総裁にドイツ人フレイベルク氏
  • バチカンでのカード使用がOKに
  • エルサレムで『ヘロデ大王展』始まる
  • 『ローザンヌ運動』新総裁に韓国系米国人
  • 《メディア展望》

◎「教皇の勇気と自由の精神」を広報事務所長が強調

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)広報事務所長のフェデリコ・ロンバルディ神父は、教皇ベネディクト16世の教皇職からの引退発表について2月11日、コメントを発表した。
 「教皇は自分の良心を何度も神の前で問い、自分の手にこの使命を託された神への祈りの頂点において、個人的な深い決意に達したと述べており、高齢のために、自分の体力が教皇職を遂行するのに十分でないという確信を得たのが決断における基本的動機」と言う。
 ただロンバルディ神父は、「教皇の引退をめぐる理由の中には、今日の世界に対し、様々な問題の発生する速さと量のために、以前と比べてより多くの取り組みが必要となり、そのための体力も要求されるようになったということを挙げている。教皇はその体力が減じたことをここ数ヶ月感じていた」として、単に高齢のためではないことを、慎重に指摘している。
 同神父はさらに、ベネディクト16世の「この行為の重大さをよく自覚した上で、完全な自由をもって、ローマの司教職、聖ペトロの後継者の位を引退することを宣言する」と述べた点が教会法上からも重要だと指摘している。教会法では『ローマ教皇がその職を辞する場合、それが有効であるためには、その辞退は自由に、正当に公表されなければならない。これに対し、誰かの受諾を必要としない』とあるが、教皇は実際、枢機卿会議という公の場で、自らの意志を表明した、同神父は言う。
 今後のベネディクト16世について、同神父は「教皇は2月28日20時まで、完全にその職権と仕事に留まる。その時点から、空位期間が始まるが、それについては教会法と、ヨハネ・パウロ2世が使徒座空位期間について定めた使徒憲章『ウニヴェルシ・ドミニチ・グレジス』に記された法的観点から規定されている」と指摘した。
 さらに「ベネディクト16世は、空位期間が始まると共に、最初はカステルガンドルフォの離宮に、そしてバチカン内にある女子観想修道院の補修工事が終わった後に、同修道院に移られると思う」と述べている。


◎教皇の辞任発表に驚き・感謝・批判の声

 【CJC=東京】教皇べネディクト16世が2月末で教皇職を退くと2月11日発表したことは、全世界の教会内外に大きな反響を呼んでいる。
     ◇
 「教会への要請が特に高まっている時に、高齢で自らの宣教の責任と重荷を担っていることを、深い尊敬の念をもって見てきた。教会とエキュメニカル運動への愛と関わりに感謝する。ベネディクト教皇はWCC(世界教会協議会)のことを良く知っていた。この重大な転換期に神がカトリック教会を導き祝福されるように」(オラフ・フィクセ=トゥヴェイト=WCC総幹事)
 「わたしたち他のキリスト者家族に属するものは、今回の証しの重要さを快く認め、ベネディクト教皇の宣教に関する霊感と挑戦について、カトリック教会の兄弟姉妹と共に、神に感謝する(ジャスティン・ウエルビー=英国国教会カンタベリー大主教)
 「わたしたちとの対話や会合で、教皇が温かくかつ正統な人であることを知った。それに加えて信念についての勇気を、最近の姿勢にはそれと相容れないことがあった時でも、わたしは評価する。倫理的相対主義と自己中心的思想の横行に断固とした姿勢を示したことには特に感銘を受けた」(ジョン・タニクリフ=世界福音同盟総主事)
 「辞任は、教会に対する配慮の大きさを示している。辞めることは悲しいが、聖ペテロの後継者としての無私のリーダーシップを発揮した8年間に感謝する」(ティモシー・ドーラン=米カトリック司教協議会会長)
 「べネディクト16世は、カトリック教会がユダヤ人を改宗に導くべきではないと語った。障害はあったものの、彼はわたしたちの懸念に耳を傾け、わたしたちの二つの共同体がこの半世紀に緊密になったこと、破壊された世界を修復するために共に為すべきことについて語ろうとしてきた」(エイブラハム・フォックスマン=反誹謗同盟全米部長)
 「教皇自身が、慎重に考慮した上で、もはや職務を遂行するために十分な力がないという結論に達したのなら、それには最高の敬意を払う。長生きになった時代に、教皇が高齢化の重荷に耐えて行かねばならないのか、を人たちの多くは理解するだろう」(アンゲラ・メルケル=ベネディクト16世の出身国・独首相)
 「教皇はただの人ではない。キリストの代理だ。最後まで留まって、その十字架を背負って前進すべきだった。今回のことは世界の不安定の大きなサインであり、それは教会を弱体化させよう」(アレッサンドラ・ムッソリーニ=イタリアの政治家、独裁者ベニト・ムッソリーニの孫)


◎教皇が最後の「灰の水曜日」儀式

 【CJC=東京】カトリック教会は今年2月13日を「灰の水曜日」として記念、復活祭に向けての「四旬節」に入った。
 引退を前にした教皇ベネディクト16世は、バチカンでミサを捧げ、伝統の「灰の儀式」を行った。ベネディクト16世が司式する公の宗教儀式はこれが最後とあって、通常、アベンティーノの丘の聖サビーナ聖堂をミサ会場としていたが、今年はサンピエトロ大聖堂で行われた。大聖堂は参加者でいっぱいとなった。
 説教の冒頭で教皇は、大聖堂で行なわれることになった経過に言及。皆で「聖ペトロ」の墓を囲み、今特別な時にある教会の歩みをその取り次ぎに託し、最高の牧者である主キリストにおける信仰を新たにする機会としたいと話した。
 ミサ中の朗読箇所、ヨエル書(2・12〜18)を示された教皇は、主に立ち返るとはどういうことかをテーマに、「神に立ち返ることがわたしたちにできるのか。そう、できる。わたしたちの心にはないその力は、神ご自身の心からほとばしるからである。それは神のいつくしみの力だ」と語った。
 さらに教皇は、『心からわたしに立ち返れ』という神の呼びかけは、個人だけでなく、共同体にも向けられたものだとして、「教会の示す顔が、時にゆがめられていることがある。特に、教会の一致への反対や、教会内の分裂がその原因だと思う。個人主義や競争意識を乗り越え、四旬節をより強められた教会の交わりの中に生きることが、信仰から遠ざかった人々や無関心な人々に対する謙遜で貴重な証しとなる」と語った。
 教皇の説教に続き、「灰の式」が行われた。「灰の式」は、死と悔いあらための象徴である灰を、額や頭に受ける儀式。
 ミサの終わりに、バチカン国務長官タルチジオ・ベルトーネ枢機卿が、教皇に深い感謝の言葉を述べた。


◎「教皇選挙は早まる可能性も」とバチカン広報事務所長

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)広報事務所長フェデリコ・ロンバルディ神父は2月16日、教皇ベネディクト16世引退に伴う次期教皇選挙が、当初想定されていた3月半ばより早まる可能性があることに言及した。
 通常、ある教皇の在位が終わり、次の教皇が選出されるまでは、15日間から20日間の空位期間が設けられるため、ベネディクト16世の2月28日引退を受けたコンクラーベ(教皇選挙)は、当初、3月15日から18日に開かれると予測されていた。
 ロンバルディ神父によれば、使徒座空位期間について定めた憲章では、コンクラーベ開催までの期間は「準備のため」で、枢機卿たちがバチカンに到着する時間が必要であることを前提としている。しかし今回は、退位の翌日の3月1日にほとんどの枢機卿がバチカンに集合しており、コンクラーベ開始の時期もそこで検討されると予想される。
 また、ベネディクト16世は2月28日夕にはカステルガンドルフォの離宮に移り、同所には約2カ月滞在する。引退後のベネディクト16世の住居となるバチカン市国内の修道院の改築に必要な時間を考慮してのこと、とロンバルディ神父は語った。
 ロンバルディ神父は、ベネディクト16世が引退後もバチカン内に留まることを決意した理由について、住まいの管理に関する実際上の問題と、次期教皇を霊的に支え続けるため、と述べた。
 退位したとは言え、「ペテロの後継者」であることには変わりないとなると、教皇2人時代を迎えること、との指摘も出ている。


◎次期教皇選びに「賭け屋」が早くも乗り出す

 【CJC=東京】次期教皇は「コンクラーベ」で選ばれるが、イタリアのバチカン・ウオッチャーの間では、コンクラーベの前に次の教皇と目された枢機卿が実際に教皇になるのはまれとされている。そうは言うものの、欧米で何かあると出て来る「賭け屋」(ブックメーカー)にとっては稼ぎ時。早くも英国で有名な『パディ・パワー』がハンディを発表した。
 選出確率が高いとして最もハンディの少ないのは、カナダのマルク・ウェレット枢機卿(司教省長官)で5対2。次いでガーナのピーター・コドヴォ・アピア・タークソン枢機卿(正義と平和評議会議長)
4対1。アルゼンチンのレオナルド・サンドリ枢機卿(東方教会省長官)5対1と続き、イタリア人ではジャンフランコ・ラヴァージ枢機卿(文化評議会議長)が6対1で初登場、ナイジェリアのフランシス・アリンゼ枢機卿と肩を並べた。
 カトリック教会の現勢を反映してか、第三世界の枢機卿が上位を占めている。
 最下位にアイルランドのロックバンド『U2』のリードボーカル、ボノが500対1で出ているのはご愛嬌か。


◎バチカン銀行新総裁にドイツ人フレイベルク氏

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)の資金管理と運営を行う『宗教事業協会』(IOR、通称バチカン銀行)の理事会は2月15日、新総裁にドイツ人のエルンスト・フォン・フレイベルク氏を選任した、
と発表した。バチカン銀行は、資金洗浄疑惑をめぐって、前任者が昨年5月に解任されて以来、総裁ポストは空席が続いていた。
 フレイベルク氏は1958年生まれ。ミュンヘン大学、ボン大学卒。カトリック信徒で、『マルタ騎士団』会員。慈善団体でも積極的に活動している弁護士。1991年から昨年まで、大和証券グループのドイツ法人『大和コーポレート・アドバイサリー社』の最高経営責任者。昨年からは、造船大手『ブローム・ウント・フォス』の会長。
 バチカンは「ベネディクト16世が新総裁の選定に関わった」としているが、フォンフライベルク氏と直接会見はしていない、と言う。


◎バチカンでのカード使用がOKに

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)の財政悪化で、美術館の入場料や、郵便局や売店での支払いにクレジットカードが年初から利用出来なくなっていたが、バチカンがスイスの金融企業と銀行間取引再開で合意し、2月12日利用が可能となった。


◎エルサレムで『ヘロデ大王展』始まる

 【CJC=東京】エルサレムの『イスラエル博物館』が2月12日、『ヘロデ大王、最後の旅』展を開催した。『ヘロデ大王』が関係した神殿、宮殿ヘロディウム、要塞マサダや2007年に発掘された同王のものと見られる墓などの遺物250点を展示する。ニューヨークのメトロポリタン博物館から貸し出されたものもある。
 会期は10月5日まで。


◎『ローザンヌ運動』新総裁に韓国系米国人

 【CJC=東京】世界宣教に向け福音派諸教会を結ぶ『ローザンヌ運動』が、新総裁兼CEOにマイケル・オー氏(41)を任命したことを2月5日、ロンドンで発表した。オー氏は韓国系米国人。日本での活動が長く、名古屋市に『キリスト聖書神学校』を設立、現在も校長を務めている。
 就任は3月1日だが、正式な就任式は、6月に南インド・バンガロールで開催される「ローザンヌ・グローバル・リーダーシップ・フォーラム」の中で行われる。
 オー氏は、今後も日本での活動は継続するとしており、『ローザンヌ運動』の本部が日本に置かれると見られる。
 S・ダグラス・バーザル前総裁は、3月1日付で米国聖書協会国際総主事に就任する。ただ『ローザンヌ運動』には名誉会長として今後も関係するという。
 福音派の世界宣教は1974年にスイスのローザンヌで開かれた第1回『ローザンヌ世界宣教会議』から始まった。「運動」としての『ローザンヌ運動』は、2010年に南ア・ケープタウンでの第3回宣教会議で発表された『ケープタウン決意表明』を契機に盛んになった。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(2月17日)=https://www.cwjpn.com
★教皇、2月末辞任を表明=高齢による衰え理由に=現役教皇の退任600年ぶり=良心究明し「確信」
★高山右近列福祈願ミサと講演会=キリスト者の使命再確認=大阪
★栄國寺で殉教者祭=名古屋=住職も献花
★射殺事件を追う=終戦直後に神父犠牲
★洗礼 相互で承認=米国のカトリックと4教会

 =キリスト新聞(2月16日)=https://www.kirishin.com
★ワールド・ビジョン・ジャパンが外務省に提言=世界の貧困解決へ=玉川聖学院生徒らも
★第11回学生宗教意識調査=信仰もつ学生増加、災害時の宗教への期待も
★原子力エネルギーと現代社会="命守り危険遠ざける者に"=WCRP日本委員会が研究集会
★第37回日本カトリック映画賞=ドキュメンタリー「隣る人」に
★相互に洗礼認知へ=米カトリック教会とプロテスタント4派

 =クリスチャン新聞(2月17日)=https://jpnews.org
★ローザンヌ運動新総裁=マイケル・オー氏を選任=全福音を全世界へ 41歳に託す
★タラッパンは異端ではない?=韓国基督教総連合会の「解除」決定に論議=12教団の「異端」「不健全」決議は有効
★DRCネット3年目も継続=被災地教会の働き 必要な限り支える=OCCに事務所機能移行=将来の災害にも備えて
★米カトリックとプロテスタント4派が洗礼を相互承認
★イラン=家の教会=指導者有罪


 ◆世界キリスト教情報◆ご案内
☆活動紹介・メールマガジン(整形テキスト)『週刊・世界キリスト教情報』お申し込みは
https://homepage3.nifty.com/cjc-skj/で。
☆ニュースレター(PDF)・同報メール(無整形テキスト)『週刊・世界キリスト教情報』お申し込みは
cjcpress@gmail.comまで。
☆『週刊・世界キリスト教情報』既刊号は下の各サイトで
・ニュースレター=PDF
https://www.evernote.com/pub/cjcpress/skjweekly/
・メールマガジン
https://blog.livedoor.jp/skjweekly/
・同報メール
https://cjcskj.exblog.jp/
☆記事検索は『教会と神学』(小原克博氏制作)をご利用ください
https://www.kohara.ac/church/
........................
☆CJC通信(メディア向けですが、どなたでもお読みいただけます。転載使用ご希望の方は巻頭の連絡先までお申し込みください)
https://blog.livedoor.jp/cjcpress/
☆CJC通信速報(Twitterを利用しています)
https://twitter.com/cjcpress/

月別の記事一覧