世界キリスト教情報

世界キリスト教情報

世界キリスト教情報 第1142信(2012.12.10)

  • カトリック福祉団体への教会管理強化
  • 教皇がツイッターでも布教活動へ
  • エジプト新憲法案めぐり国内対立激化
  • 「中国がキリスト者最大国に」とコックス氏
  • 聖書訳出が進展、とウイクリフ聖書翻訳協会
  • 《メディア展望》
◎カトリック福祉団体への教会管理強化

 【CJC=東京】カトリック救援団体が教義に反する活動をしていないか司教が厳密に監督しなければならない、という新指針を教皇べネディクト16世が12月1日公布した。
 新指針は、カトリック系の救援団体は「活動に際してはカトリックの教義に従い」、その原則を危うくするような「関係を受け入れてはならない」と述べている。また救援団体が、「教会の教義に反する目的を遂行している団体や制度から」の資金を受けることや、「教会の教義に合致しない」活動のための供与を禁止している。
 これらの条件を満たしていない組織には、司教が介入し、信徒に警告し、「カトリックという名称を使用することを禁止」すべきだ、と言う。
 全世界のカトリック救援団体に関する新規則は教皇書簡『救援の業』として出された。団体の活動が「ただもう一つの社会援助組織の形になるという危険を避ける」ことを目的としている。新指針遵守の責任は『コルウヌム』(教皇庁開発援助促進評議会)が担う。
 指針は、職員が団体の「カトリックであることを実践し、少なくともそれに敬意を払うこと」と、それが「キリスト者の生活の例」となることを求めている。
 カトリック救援団体の給与は「キリスト教的な質素な生活」に相応したものである、と司教が確認するべきだ、としている。
 これらの規制は、教会の救援団体や社会活動団体への監督強化をバチカンが推進してきたことの延長線上にある。この5月には、バチカンが、162の地域カトリック救援団体の包括組織ではる『国際カリタス』への監督強化に乗り出している。
 米国では、『人材育成のためのカトリック・キャンペーン』への支援、支持を撤回する司教が出ている。同組織の毎年の募金は反貧困プログラムに向けられているが、その多くがカトリック教会とは関係のないものだった。
 2010年、米カトリック司教協議会は、「基本的なカトリックの倫理や社会教説と相容れない活動支援のため」に資金は供与しないという改革案を採択した。
 『カリタス』への資金援助では、米国最大規模の一つ『ゲイツ財団』が問題として浮上している。同財団は世界各地の『カリタス』に助成しているものの、問題は「家族計画」を支持していること。これまでも、そのような財団からの助成は受けるべきでない、とする司教はいたが、今回の新規制が個々の司教の判断に与える影響が注目される。


◎教皇がツイッターでも布教活動へ

 【CJC=東京】教皇ベネディクト16世が12月3日、インターネットサービス『ツイッター』を始めた。使う言語は英語、スペイン語、イタリア語、ポーランド語、フランス語、アラビア語、ポルトガル語、ドイツ語の8言語。アカウント名は、ラテン語での教皇の正式称号「@Pontifex」。
 バチカン(ローマ教皇庁)のフェデリコ・ロンバルディ報道事務所長らによると、信仰に関する質問に答えるのは12日から。
 教皇は、ソーシャルネットワークの中で多くの人が人生についての問いを発している現状を認め、「デジタルという新大陸に福音を説く必要性がある」と語っている。
 自ら神学者として、カトリック信仰に関する長文の研究書で知られる教皇が、1回が140字以内という制限のあるツイッターでどこまで発信出来るかメディアの注目を集めている。
 ツイッターに参加するには、教皇のツイット・アカウンドに入って「フォロワー」になる必要があるが、手を振る教皇の写真を掲げたアカウントには、バチカンの発表後6時間以内に、英語版で14万3600人がフォロワーになった。翌4日には、8言語合わせたフォロワー数が50万人を超えた。同日午後の時点で、フォロワー数は英語バージョンが約40万人と最多、次がスペイン語という。
 イスラエルのシモン・ペレス大統領もフォロワーの1人で、「ツイッターにようこそ。イスラエルとバチカンの関係はこれまでになく良好で、平和の礎を今後も築いていくことができる」とツイートしたと報じられた。
 教皇による最初のツイートは12日の現地時間正午に予定されている。水曜日の一般接見に合わせた時間。
 この6月にバチカンのメディアアドバイザーに就任した、元米フォックスニュース特派員のグレッグ・バーク氏は、教皇は好きなだけ何度でもツイートすることになると語っている。教皇が実際にそれぞれのツイートを自身で書くわけではないが、内容は全て教皇が承認したものになる。
 最初のツイートは、ツイッターで教皇に寄せられた信仰に関する質問への答えになる見通し。質問の送信先は「#askpontifex」。
 教皇はツイートはするが、他の誰かのアカウントをフォローすることはないという。
 教皇はこれまでも、バチカンの新情報ポータルサイト開始を発表するために、1回ツイートを行ったことがあるが、それはバチカンのアカウントからだった。
 教皇が新たなコミュニケーションと取り組む目的は、若い世代に働きかけることだ。第3千年紀に入ったカトリック教会は、高齢の敬虔な信者を引きとめる伝統の維持と、若い世代を引き付ける新たな文化の受容との間のバランスに配慮している。
 幅広い層の信者との交流を目指しては、特にインターネット世代を重視し、ソーシャルメディアを活用する取り組みを進めている。ただ最大手とされるフェイスブックに教皇の公式アカウントを開設する予定は現在のところないという。「教皇のメッセージを届けるのには、フェイスブックよりツイッターの方がふさわしいと思われる」と、バーク氏。
 ツイッター上にはベネディクト16世の名をかたる偽アカウントが複数存在するが、バチカンは公式アカウントが攻撃対象になることはないと楽観的だ。


◎エジプト新憲法案めぐり国内対立激化

 【CJC=東京】エジプトのムハンマド・モルシ大統領は12月1日、新憲法案の国民投票を15日に実施すると発表した。
 モルシ大統領は先に発表した大統領権限強化の大統領令(暫定憲法)について、新憲法と議会が決まるまでの時限措置としていたが、反発するリベラル派などの野党勢力は大統領令の撤廃、憲法起草のやり直しなどを要求、4日夕から、大統領府周辺などで抗議デモを開き、市民ら10万人以上が集まった。大統領の出身母体、イスラム原理主義組織『ムスリム同胞団』などイスラム主義者もデモを行い、双方の対立が深まっている。
 モルシ大統領は8日、大統領令を無効とする一方、新憲法案の国民投票は予定通り15日に実施することを決めた。大統領令撤回により政権運営に反発する野党勢力に譲歩する一方、投票を強行する方針を明確にした。
 大統領令の撤回はセリム・アル・アワ氏が8日未明の記者会見で発表した。アワ氏は元大統領候補で、モルシ大統領と反大統領派の間の橋渡しを行う交渉者の1人。 
 投票延期や憲法案作成のやり直しを求める野党勢力は反発を強め9日、大統領の譲歩は不十分だと指弾。主要な野党の連合体『国民救済戦線』幹部は、「全エジプト人を代表していない憲法を押し通そうとするのは理解できない」と批判、国が「暴力的な対立」に陥る恐れがあるとして拒否する考えを示した。
 同派の報道担当は記者会見で、憲法をめぐる一連の手続きには終始反対していると語り、新たな街頭デモを11日に行うよう呼び掛けた。
 15日に国民投票が強行されれば、イスラム勢力と、リベラル系や世俗派、少数派コプト教徒の間の分断が深まるのは確実だ。


◎「中国がキリスト者最大国に」とコックス氏

 【CJC=東京】今後20年で、中国がキリスト者人口の最大国になる、と米国の神学者ハーヴイ・コックス氏が、ローマの教皇庁立グレゴリアン大学の宣教学部設立80周年記念会の席上指摘した。
 現在見られる状況の一つは、キリスト教をもはや「西側の」宗教と見なせなくなったこと、もう一つは、キリスト者が急増している国にキリスト教文化や伝統が存在していないことだ、と言う。
 指摘は、記念会で行われた、「世界宗教とのカトリックの関わり=編集者2人との対話」というプログラムの中でのこと。米オービス・ブックス刊行の同名の書籍を紹介する企画で、「これまで、現在の立ち位置、そして今後の方向を決めるのに図りしれない役割を果たす」とコックス氏は同書を推薦した。
 コックス氏は、日本でも「世俗都市」(新教出版社)などの著作で知られる。また創価学会の池田大作氏との対話は「二十一世紀の平和と宗教を語る」(潮出版社)として刊行されている。


◎聖書訳出が進展、とウイクリフ聖書翻訳協会

 【CJC=東京】米ウイクリフ聖書翻訳協会(本部フロリダ州オーランド)が、全世界での聖書訳出事情を明らかにした。宣教通信ANSが報じた。
 同協会の発表によると、進行中のものが2075言語、準備中で訳出が始まっていないものが1967言語。
 同協会のボブ・クレソン会長は、「2025年までにはどの言語共同体でも聖書が読めるようにするという目的『ビジョン25』に向かって前進していることを示すもの」と言う。
 発表によると、現在、部分訳であっても聖書を読める人は54億人。訳出を待っている人が2億900万人。全世界で使用されている言語は6800語と推定されているが、訳出されていない1967言語の比率は29を割るまでになった。未訳出言語の使用者はほとんどが少数。
 訳出には新技術の導入や新方策採用が貢献している。記述文字を創出したり、コンピューターやサテライト技術による集団作業などで作業効率が向上した。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(12月9日)=https://www.cwjpn.com
★被災地支援さらに注力=来年から毎月開催 岩手、福島でも=仙台教区サポート会議
★52年の訳業完結=『神学大全』の訳者 稲垣良典さん
★JOC=小教区に出向く=初の試みで青年に訴え=東京・豊島教会で集い
★さいたま教区=2聖堂80周年=前橋と松が峰
★教理省長官が見解=伝統派と進歩派の双方に=公会議の「異端的解釈」

 =キリスト新聞(12月8日)=https://www.kirishin.com
★神奈川建築コンクール=教界関係に脚光=本郷台キリスト教会・上星川教会が優秀賞
★救世軍が漁場監視船を寄贈="漁場を守って行きたい"=宮城県漁連に31隻目の支援
★P・S・メーヤー宣教師召天50周年="福音宣教の思い新たに"=日基教団清水ヶ丘教会で記念礼拝
★日本福音ルーテル東京教会宣教100年=石製飼葉桶を「洗礼盤」に
★中国プロテスタント教会指導者=丁光訓氏が南京で死去

 =クリスチャン新聞(12月9日)=https://jpnews.org
★震災で迫られた隣人への「愛」=日本同盟基督教団宣教121周年大会=初代の救霊スピリット継ぎ 被造物世界に視野
★普天間基地前=ゴスペルで意思表示=キリスト者はオスプレイ配備、暴力に抗議します。
★広島・東京=フランクリン・グラハム大会苦渋の選択=米大統領選=ロムニー候補応援で開催困難に
★長老教会第21回大会=東北宣教に木村大介氏派遣=ウエストミンスター信仰告白の現代の意義見解を採択
★CCCシンポ=災害とこころのケア=被災地に求められる適切な支援


 ◆世界キリスト教情報◆ご案内
☆活動紹介・メールマガジン(整形テキスト)『週刊・世界キリスト教情報』お申し込みは
https://homepage3.nifty.com/cjc-skj/で。
☆ニュースレター(PDF)・同報メール(無整形テキスト)『週刊・世界キリスト教情報』お申し込みは
cjcpress@gmail.comまで。
☆『週刊・世界キリスト教情報』既刊号は下の各サイトで
・ニュースレター=PDF
https://www.evernote.com/pub/cjcpress/skjweekly/
・メールマガジン
https://blog.livedoor.jp/skjweekly/
・同報メール
https://cjcskj.exblog.jp/
☆記事検索は『教会と神学』(小原克博氏制作)をご利用ください
https://www.kohara.ac/church/
........................
☆CJC通信(メディア向けですが、どなたでもお読みいただけます。転載使用ご希望の方は巻頭の連絡先までお申し込みください)
https://blog.livedoor.jp/cjcpress/
☆CJC通信速報(Twitterを利用しています)
https://twitter.com/cjcpress/

月別の記事一覧