世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1141信(2012.12.03)

  • エジプトの新憲法国民投票を15日に実施
  • 「神をどのように伝えるか」教皇一般接見
  • 女性性器切除禁止の法制化を国連総会で決議へ
  • 世界で急成長しているのはキリスト教?
  • 《メディア展望》
◎エジプトの新憲法国民投票を15日に実施

 【CJC=東京】エジプトのムハンマド・モルシ大統領が、自らに強権を与える新憲法案の是非を問う国民投票を12月15日に実施する、と1日発表した。憲法委員会委員との会談で語ったもの。234条からなる新憲法案は、大統領の権限を制限し、人民議会と諮問評議会の権限を拡大するものとしている。新憲法草案を受け取った後、モルシ大統領は「われわれは対立と相違の期間を乗り越え、生産的な仕事に取りかからなければならない」と強調。国民に投票への参加を呼び掛けた。投票で有権者の支持を取り付け、憲法成立を既成事実化するねらいと見られる。
  新憲法案は、憲法委員会が11月30日、世俗派やコプト(キリスト)教会を代表する委員が抗議のため欠席する中で承認したもの。欠席者は全体の4分の1を超えたという。
 新憲法案には、イスラム法が法律制定の基盤と記載されており、同国では連日、国民による抗議デモが発生している。問題となっているのは、イスラム教に基づく法体系『シャリーア』に優先的立場を与える条文。これは事実上、エジプトがイスラム国家となることを意味している。旧憲法にも同様の条文はあったが、象徴的な意味を持つに過ぎなかった。
 大統領はまず11月22日、憲法委員会およびエジプト議会上院はいかなるエジプトの裁判所の決定からも護られているという大統領宣言を発表した。これを受け、大統領の母体であるイスラム原理主義組織『ムスリム同胞団』などのイスラム勢力は12月1日、首都カイロ郊外のナハダット・マスル広場で数十万人規模の支持集会を実施した。
 エジプト最高憲法裁判所は2日、憲法委員会および議会上院の解散を検討する時期について延期を決定した。マヘル・アル=ブヘイリ裁判長がカイロで明らかにした。憲法宣言の支持者らが最高裁判所の建物を封鎖、判事らの入廷を阻止したため、「心理的、物理的圧力」なく判事が活動できるまで、審理を停止すると発表した。これにより、最高裁とモルシ政権側との対立がさらに深まっている。
 反モルシ勢力も広がりを見せ、司法関係者だけでなく、若者、リベラル派、世俗派のほかに、コプト教徒や穏健派イスラム教徒、国民の多数を占める無党派層にも広がりを見せている。11月30日にはカイロ中心部にあるタハリール広場に数万人が集まり、憲法令と憲法草案の破棄を要求している。
 反モルシ勢力は、リベラル派、左派グループ、コプト教徒などで連合体『国民救国戦線』を結成。国際原子力機関(IAEA)の前事務局長モハメド・エルバラダイ氏や、大統領選の元有力候補らが、指導的な役割を担っている。
 『国民救国戦線』側は「モルシ氏は力で押さえつける独裁的な手法に走っている。抗議デモを続け、ストライキを計画する。国民投票は、棄権でなく、反対票を投じるよう呼び掛けるだろう」と語った。
 新憲法案が、国民投票で過半数の支持を得た場合、新しい議会を選出する統一選挙が行われ、エジプトは「第二共和制」時代に入る。


◎「神をどのように伝えるか」教皇一般接見

 【CJC=東京】教皇ベネディクト16世は、バチカン(ローマ教皇庁)で11月28日、水曜恒例の一般接見を行った。
 教皇は現在開催中の「信仰年」のためのカテケーシス(教会の教えの解説)として、今日の時代に神をどのように伝えるかを考察した。
 バチカン放送(日本語電子版)によると、教皇は、わたしたちが神について話せるのは、神がわたしたちに話しかけてくださったからであると述べた教皇は、神を伝えるためには、わたしたち自身が神の言葉にしっかりと耳を傾けていなくてはならない、と指摘した。
 また、神について話すためには、抽象や仮定ではない、歴史の中に具体的に存在する神、イエス・キリストの神を伝える必要があり、それにはイエスと聖書に親しみ、イエスご自身がとられた方法、すなわち謙遜の道にわたしたち自身も従わなくてはならないと述べた。
 教皇は、神を伝えるのに適した場所の一つとして「家庭」を挙げ、家庭は信仰を新しい世代に伝える学び舎であり、両親は神の最初のメッセンジャーであると話された。そして、信仰教育という使命をよりよく果たすには、信仰を伝える機会を見出す注意力、喜びを伝える力、そして、聞き対話する力が必要と強調した。


◎女性性器切除禁止の法制化を国連総会で決議へ

 【CJC=東京】アフリカや中東の一部で続く「女性性器切除」(FGM)について、国連加盟国に禁止の法制化を強く求める決議案が年内にも、国連総会で決議される見通しになった。人権問題などを扱う国連総会第3委員会が12月1日決議案を採択した。法的拘束力はないが、「文化や伝統に根ざした慣習」としてFGMを続ける地域に対し、国際社会が根絶を後押しするもの。
 決議案は、性器切除を「女性に元に戻すことができない傷を負わせる虐待」と非難。全世界で1億〜1億4千万人が傷を負わされ、今も毎年推定300万人以上が犠牲になっていると警告、根絶に向けた啓発教育に取り組むよう求めている。
 人権擁護団体『国際アムネスティ』によると、アフリカ、イエメン、イラク、マレーシア、インドネシアの各国、南米の先住民族などでは。「女性性器切除」が日常的に行われている。またその他の国でも移住者社会で行われているところがある。『国際アムネスティ』のホセ・ルイス=ディアズ国連代表は、第3委員会が「女性性器切除」について問題提起したのは初めてのこと、と語った。


◎世界で急成長しているのはキリスト教?

 【CJC=東京】「今、世界で急成長している宗教は?」と問われたら、その答えは「イスラム教」と思う人にとって、朗報か悲報か分からないが、実際には「キリスト教」だ、とインターネット・サイト『リアル・クリア・レリジョン』が、『ウイキペディア』(英語版)のデータを元に分析している。ただ重要な前提条件が一つある。それは「欧州を除いて」ということ。
 『ウイキペディア』は、イスラム教、キリスト教、仏教、法輪功、サイエントロジーなどを検証しているが、これらを数量的に比較するのが困難なことは確か。そこでまずキリスト教を見ると...。
 20世紀を通じて、キリスト教は成長したが、それは南半球において顕著だった。1900年以来、アフリカのキリスト者は1000万人から約5億人へ4930%と信じられない増大。このまま行くと、2050年には10億人に届きそうだ。これは1900年の全世界のキリスト者の2倍に相当する。特にアフリカのカトリック信徒だけを見ると、190万人から1億3000万人へ6700%成長している。ラテンアメリカでも877%だった。
 20世紀に入って、イスラム教も急成長し、キリスト教をしのいだ、とも見られる。1900年には世界人口の約3分の1はキリスト者で、その比率はほぼ現在までほぼ一定している。2050年にもそれは変わらないと予想される。
 一方、イスラム教は、1900年に2億〜2億2000万人で12〜13%だったが、現在は22・5%、2050年には27%に達するものと見られる。キリスト者とイスラム教徒の比率は1900年が2・8対1、現在が1・5対1、2050年には1・3対1と差が急速に縮まっている。
別の見方をすると、キリスト者は現在、1900年の4倍になったが、イスラム教徒は7倍だ。
 これはどういうことか、と言うと、世界の人口急増地帯との関係がある。イスラム教は20世紀を通じてアフリカ、アジアなど出生率の高い地域に集中している。それに対して、キリスト教は欧州に集中しており、欧州自体の増加率が他に比べて非常に遅々としているのだ。
 1900年、欧州人口は世界の4分の1を占めていた。これが2050年には8%に近づくと予想される。1900年には欧州の人口はアフリカの3倍だったが、2050年にはそれが逆転する。欧州を除外して見ると、イスラム教とキリスト教の勢力は拮抗しているとも言える。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(12月2日)=https://www.cwjpn.com
★横浜天主堂献堂・日本再宣教150周年=4千人が感謝の祈り
★「宣教地司祭育成の日」=献金額、前年を下回る
★サポートステーション「もみの木」=仮設住宅で「秋祭り」=茨城の教会ボランティアも協力=福島・いわき
★「基地のない沖縄」目指して=宗教者らシンポジウム開く=大阪梅田教会
★冒涜法で逮捕のキリスト者少女=パキスタン高裁が不起訴に

 =キリスト新聞(12月1日)=https://www.kirishin.com
★韓国・台湾・モンゴルからも参加者=アジアでの脱原発目指す国際ネットワーク=メーカーの法的責任問う
★東京基督教大国際宣教センターが現状分析=牧師は平均61歳、NCC加盟34%
★聖学院幼稚園創立100周年式典="神さまに喜ばれる子どもに"
★『一六時四〇分』出版記念講演会=藤掛明氏=「教会で人生学んだ」
★日本福音ルーテル社団=米国ワークキャンプ参加者募集

 =クリスチャン新聞(12月2日)=https://jpnews.org
★地域が頼れる教会へ=TCU・ケアチャーチプロジェクトで協力関係構築
★寮に泊まって学生生活を体験=東京基督教大学
★戦前の国策順応の歴史を踏まえて=天皇葬儀時も平常授業で良心示す=シンポ「信教の自由と明治学院」
★「キリストの愛 我に迫れり」=作曲家・天田繋氏逝去
★日本伝道のため仏教研究=伝道者・渡辺暢雄氏逝去


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