世界キリスト教情報

世界キリスト教情報

世界キリスト教情報 第1139信(2012.11.19)

  • イスラエルとパレスチナ自治区抗争が激化
  • パレスチナ紛争拡大を国際社会は懸念
  • ガザ抗争にWCC総幹事も懸念
  • 双方が犠牲者、とラテン典礼総大司教
  • 『ワールドユースデー2013リオ大会』に教皇メッセージ
  • バチカンに『ラテン語学院』設置へ
  • 第118代コプト教皇タワドロス2世が着座
  • 英国国教会で女性主教望む公開書簡
  • 《メディア展望》
◎イスラエルとパレスチナ自治区抗争が激化

 【CJC=東京】イスラエルとパレスチナ自治区の間の抗争が激化している。
 イスラエル軍はパレスチナ自治区ガザ各地への空爆を続行している。作戦開始から5日目の11月18日、ガザを実効支配するイスラム原理主義組織『ハマス』の広報を担うテレビ局2局の事務所や、イスラエルに向けロケット弾を発射する武装勢力の潜伏先と見られる北部のベイトラヒヤやベイトハヌーンの家屋が空爆の標的となった。ガザ市の沖合に展開するイスラエル艦船は、沿岸部に砲撃を繰り返した。
 民間人の犠牲が増えており、パレスチナ側の死者は同日、31人が死亡、空爆開始からでは72人に上った。うち21人が子どもで、女性数人も含まれており、負傷者は700人近くに上るという。
 イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、『ハマス』への攻撃に際しては市民の犠牲を出さないよう最大限の注意を払うと説明していた。ただそれは『ハマス』側の攻撃停止を条件としていた。
 ハマスの軍事部門は声明を出し、イスラエル軍による今回の一家殺害に対する報復を行うと表明した。
 『ハマス』はイランで設計された改良型ロケット弾『ファジル5』をイスラエル経済の中枢都市テルアビブに向けて発射したが、イスラエル軍の対空防衛網『アイアンドーム』の迎撃ミサイルが上空で撃墜している。
 ネタニヤフ首相は18日の閣議で「軍事作戦を大幅に拡大する用意がある」と表明した。「兵士たちは、あらゆる行動を取れるよう準備している」との指摘は『ハマス』に深刻な打撃を与えるために地上戦も念頭に置いている模様。テレビ局『チャンネル10』によれば、ネタニヤフ首相は16日、予備役の招集枠を3万人から7万5000人に拡大することを認めており、ガザへの地上侵攻に備えるものと見られている。


◎パレスチナ紛争拡大を国際社会は懸念

 【CJC=東京】イスラエルとパレスチナ自治区の間の抗争激化に国際社会は懸念を強めている。双方に停戦を求める圧力を強め、エジプトなど関係国が停戦努力を続けている。
 イスラエル政府代表団が停戦協議のため11月18日、エジプトのカイロを訪問した。エジプトのムハンマド・モルシ大統領は、『ハマス』の政治指導者ハリド・メシャル党首や『イスラム聖戦機構』の指導者ラマダン・シャラハ氏と会談した。ただエジプト大統領府の声明は、会談が何らかの結論を導くものだったかについては言及していない。
 エジプトのヒシャーム・カンディール首相は11月16日、パレスチナ自治区ガザに入り、同地を実効支配するイスラム原理主義組織『ハマス』の指導者イスマイル・ハニヤ首相と会談、イスラエルによる占領継続を強く批判した。14日のイスラエルによる大規模空爆開始後、ハニヤ氏が公の場に姿を見せたのは初めて。ハニヤ氏は「革命後の新しいエジプトを象徴する訪問だ」とたたえた。
 約3時間にわたる訪問の間もイスラエル軍による攻撃は続けられた。イスラエルは、カンディール首相の訪問中は全ての軍事行動を停止すると宣言したが、それにはハマスが同様に攻撃を停止するという条件がついており、結果として、砲弾の応酬は停止されなかった。
 エジプト首相の訪問の目的は、イスラエルを批判しパレスチナ支持を誇示することではなく、イスラエル砲撃を停止するよう『ハマス』を説得することだったとの指摘もある。中東紛争のエスカレートや軍事衝突回避を目的としたものだ、という見方は、米国のバラク・オバマ大統領が、エジプト政府を『ハマス』との交渉における重要な仲介役と見なしていることからも出ている。オバマ大統領はモルシ大統領と対話を行っている。
 ロシアも今回の危機が先鋭化することに危惧を抱いており、両当事者に攻撃を停止するよう呼びかけている。
 国連の潘基文(パン・キムン)事務総長は18日、イスラエルと『ハマス』双方に、停戦に向けてエジプトと協力するよう呼びかけた。
 潘事務総長は、「エジプトが主導する即時停戦に向けた努力に協力するよう、私は全当事者に強く求める」と述べるとともに、自身も中東を訪問する予定であることを明らかにした。


◎ガザ抗争にWCC総幹事も懸念

 【CJC=東京】イスラエルとパレスチナ自治区の間の抗争激化に、世界教会協議会(WCC)のオラフ・フィクセ=トゥベイト総幹事は11月16日、「市民の保護」を確実にするため「敵対行為の停止」を双方に要請する声明を発表した。
 WCCは、ガザとイスラエルの事態展開を注視している、としてトゥベイト総幹事は「暴力を即時停止しなければ、いつも被害者とされる市民の生命が救われない」と述べた。
 総幹事はさらに、「人々の貴重な生命の損失は、神の目からすれば、双方に未解決の政治課題や問題のために支払われるべきものとはされない」として、「国連安保理とアラブ連盟に、双方のために、暴力の拡大を阻止するよう、即時決断と方策を立てることを呼び掛ける」と述べた。
 総幹事は声明で、イスラエルがガザに対して6年間続けてきた封鎖を解除するようにとのWCCの呼び掛けを改めて強調した。一方、「ガザ地区からイスラエルの市民社会に向けたロケット攻撃は、非難されるべきものであり、決して正当化されないことであること、また将来実現可能な隣国となることを、国際社会に支持され、認められるようパレスチナ市民が求めている時に、ロケット攻撃は非常にネガティブな効果をもたらす、とWCCは宣言する」と結論で述べている。


◎双方が犠牲者、とラテン典礼総大司教

 【CJC=東京】イスラエルとパレスチナ自治区ガザとの抗争が激化する中で、エルサレムのラテン典礼教会のウイリアム・ショマリ総大司教は11月15日、バチカン放送に、「誰もが他人を非難する」ので事態の発端を知るのが難しくなっている、と語った。
 「確かなのは、被害者の多くは倒れており、関係のない人が死んでいるということ」と総大司教。戦っている人の多くは両方とも飢えており、生徒たちは学校に行くことも出来ない。そこでは生きて行くこと自体が不可能なのだ」と大司教は述べている。


◎『ワールドユースデー2013リオ大会』に教皇メッセージ

 【CJC=東京】教皇ベネディクト16世は、2013年7月にブラジルのリオデジャネイロで開催される『世界青年の日・国際大会』(ワールドユースデー、WYD)に向けてメッセージを発表した。バチカン通信(VIS)が11月16日報じた。
 リオデジャネイロ大会は、「行って、すべての民をわたしの弟子にしなさい」(マタイによる福音書28・19)をテーマに、7月23日から28日まで行われる。
 メッセージで教皇は、2011年8月に開かれたWYDマドリード大会を思い起こしつつ、次のリオデジャネイロでの出会いに向け精神的準備を進めるよう、若者たちを促した。
 「行って、すべての民をわたしの弟子にしなさい」という、キリストが教会全体に遺した偉大な宣教への招きは、2000年後の現在も響いていると教皇は記し、今、若者たちがこの使命をそれぞれの胸に響かせるように、と要望している。
 教皇は、リオ大会への準備が、現在開催中の『信仰年』や、この特別年の開幕と並行して行われた「新しい福音宣教」をテーマにした第13回通常シノドス(世界代表司教会議)と結びついていることを指摘した。
 来年のWYDを準備する若者たちへの指針として、教皇は、「宣教の使命に応える」「キリストの弟子となる」「自分自身から出て、宣教に向かう」「すべての人々のもとへ」「キリストの弟子をつくる」「信仰に固く留まる」「全教会と共に」「主よ、ここにおります」と、八つのテーマを展開している。


◎バチカンに『ラテン語学院』設置へ

 【CJC=東京】教皇べネディクト16世が、バチカン(ローマ教皇庁)に『教皇庁立ラテン語学院』(仮訳)を設置することを認可した。
 『ラテン語学院』は、古代から現代までのラテン語に関する知識と研究を深めようというもの。
 カトリック教会は、ラテン語の「保護者であり推進者」だったとして、教皇はラテン語を正しく理解することの重要性は増している、と指摘した。
 カトリック教会は1960年代にミサでのラテン語使用を止め、現地語ミサに踏み切った。
 しかし教皇は、伝統的な会衆が望む場合には、司祭が現地語よりはラテン語でミサを行うことを容易にするよう段階を踏んで来ている。
 認可発表に当たり、教皇は、初期キリスト教以来、教会はラテン語を「自身の言語」としており、そのことは尊重されて来た、と述べている。
 それを正しく理解することが、これまで以上に重要になったが、将来の司祭に哲学的、神学的訓練を施すためには、ラテン語の「表面的な」理解では有害、と教皇が語ったと、バチカン放送は報じている。
 教皇は、オンラインでも設置することにした『ラテン語学院』は、全世界に向けラテン語と古典文化への新たな関心を広めることになろうとして、「そのような関心は、学術的世界だけでなく、多彩な国々や伝統から若者や学者にも向けられている点でも、何よりも重要」と述べている。


◎第118代コプト教皇タワドロス2世が着座

 【CJC=東京】エジプト・コプト教会の最高指導者として、第118代教皇タワドロス2世が11月18日、カイロの聖マルコ大聖堂で行われた4時間に及ぶ式典で着座した。ムバラク退陣後のイスラム教政権下で信徒間に将来への懸念が高まる中での式典。
 タワドロス2世は、教皇代行を務めたパコミウス主教から冠と十字架像を受け取り、ライオンが彫刻された聖マルコの巨大な木製の「座」に着いた。
 詩編朗読、祈祷などではアラブ語、英語、ギリシャ語が古代コプト語と混ざり合い、独特の雰囲気を生み出していた。


◎英国国教会で女性主教望む公開書簡

 【CJC=東京】英国国教会の総会開催を目前に、女性主教実現を望む指導者1000人以上が、総会議員に賛成投票を求める公開書簡を、日刊紙『インディペンデント』11月19日付けに発表した。
 「教会は歴史的な反ユダヤ主義と奴隷制度容認を悔い改めて来たように、、明確に女性が男性に劣っているとは最早信じないことを今はっきり示すべきだと信じる」と主張する書簡には、主教5人を始め数百人の指導者が賛成している、と言う。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(11月18日)=https://www.cwjpn.com
★カリタスジャパン全国担当者会議=「福島の声」聞く=援助活動、啓発活動の報告も
★「右近列聖 早期実現を」=公式巡礼団、ローマ訪問
★上智大学創立100周年記念=日本とバチカン国交樹立70周年記念=タークソン枢機卿ら平和の問題で講演
★教皇=レバノンに使節団送る=シリアへの派遣は断念
★横浜教区の若者ら結成 =「Peace be with YOU(ピース ビー ウィズ ユー)」="Tシャツ"で支援=被災地工場の製品も販売

 =キリスト新聞(11月17日)=https://www.kirishin.com
★宗教法人運営実務研究協議会=「守秘義務」打ち立てる必要
★教文館=藤城清治氏プロデュース=『ハウス・オブ・クリスマス』
★"一人ひとりが「暴力反対」の意思表示を"=「普天間基地ゲート前でゴスペルを歌う会」
★キリスト教学校教育懇談会=髙木慶子氏「キリストの"こころ"示せ」
★「百万人の福音」連載30年記念=「星野富弘 花の詩画展inお茶の水」=来年3月2日まで100点展示

 =クリスチャン新聞(11月18日)=https://jpnews.org
★韓国孤児の母 田内千鶴子生誕100年=国連に「世界孤児の日」制定請願=「孤児のない世界」実現一緒に
★"震災後"に慰めと希望を=聖書に「いのち」教えられ詩が生まれた=都心で4か月=星野富弘 花の詩画展開幕=「いのちより大切なもの」テーマに
★キリスト教功労者に倉松功氏、西原由記子氏
★森郷キャンプ場が「復興支援ボランティアセンター」開始
★米大統領選めぐり波紋=異なる信仰の候補でも建国の信条のため="カルトリスト削除"の真相は?


 ◆世界キリスト教情報◆ご案内
☆活動紹介・メールマガジン(整形テキスト)『週刊・世界キリスト教情報』お申し込みは
https://homepage3.nifty.com/cjc-skj/で。
☆ニュースレター(PDF)・同報メール(無整形テキスト)『週刊・世界キリスト教情報』お申し込みは
cjcpress@gmail.comまで。
☆『週刊・世界キリスト教情報』既刊号は下の各サイトで
・ニュースレター=PDF
https://www.evernote.com/pub/cjcpress/skjweekly/
・メールマガジン
https://blog.livedoor.jp/skjweekly/
・同報メール
https://cjcskj.exblog.jp/
☆記事検索は『教会と神学』(小原克博氏制作)をご利用ください
https://www.kohara.ac/church/
........................
☆CJC通信(メディア向けですが、どなたでもお読みいただけます。転載使用ご希望の方は巻頭の連絡先までお申し込みください)
https://blog.livedoor.jp/cjcpress/
☆CJC通信速報(Twitterを利用しています)
https://twitter.com/cjcpress/

月別の記事一覧