世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1136信(2012.10.29)

  • 「新しい福音宣教」シノドスがメッセージ発表
  • 教皇が新たに6人の枢機卿任命
  • バチカンがシリアへの枢機卿使節団派遣延期
  • ナイジェリアのカトリック教会に自爆テロ
  • プッシー・ライオットのメンバー2人、辺境の刑務所へ
  • 「1年間同性愛者として生きた」米国の男性
  • 《メディア展望》
◎「新しい福音宣教」シノドスがメッセージ発表

 【CJC=東京】「新しい福音宣教」をテーマに10月7日からバチカン(ローマ教皇庁)で開催した第13回通常シノドス(世界代表司教会議)は26日、『神の民へのメッセージ』を採択した。
 メッセージは、イタリア語をはじめ5言語で読み上げられ、シノドス・ホールに集った参加司教たちの拍手で迎えられた。
 メッセージでは、新しい福音宣教を世界の急務として示し、キリスト者は信仰によって恐れに打ち勝ち、確固とした勇気をもって福音を告げなければならないと、呼びかけている。
 バチカン放送(日本語電子版)によると、メッセージの要旨は次の通り。
 「神の民」とはヨハネ福音書に登場する「サマリアの女性」にたとえられ、イエスに出会う者は救いと希望の知らせの証し人とならざるをえない。しかしながら、福音を告げるには、自分自身が福音化され、回心していることが大切である。
 グローバル化、世俗化、移民現象、無神論などがもたらす困難に負けず、むしろこれらをすべて福音の機会としていかなければならず、新しい福音宣教を考えることは、イエスに人がどのように近づくことができるかを再発見することであるといえる。
 シノドスは家庭を福音宣教に適した自然の場所とみなし、それが教会や政治や社会によって支えられることを希望する。家庭における女性の特別な役割、父親の責任を強調すると共に、婚姻関係に無い男女の同居や、離婚者、再婚者に注目。教会の皆を受け入れる家としてのあり方を再確認している。
 新しい福音宣教は世界と同様の広がりを持つために、文化・教育・科学、芸術、経済、労働、政治、諸宗教など様々な分野での対話を必要とする。
 信仰生活において、新しい福音宣教のために有効な手段として、神の言葉を沈黙のうちに観想すること、キリストの顔を人々の中に見出すための貧しい人々への奉仕が挙げられている。
 東方のカトリック教会には平和と宗教の自由の下で信仰生活が営めるように、アフリカには新旧の文化の中で福音との出会いを開拓し、政府に闘争と暴力の停止を訴えるように願っている。
 また、北アメリカには福音から遠ざかった文化の中で回心を見つめ、移民・難民に手を差し伸べるように、ラテンアメリカには貧困・暴力・多宗教的状況の中で常なる宣教に取り組むように、アジアでは社会の少数派であるにも関わらず、勇気と固い信仰をもって生きるように励ましている。
 ヨーロッパの教会には世俗主義や神や人間に敵対するイデオロギーに負けず、人間の尊厳、共通善の構築を表現する文化を構築し、困難を挑戦の機会と受け取っていくように、最後にオセアニアには福音宣教への取り組みの必要性をさらに意識していくようにと呼びかけている。


◎教皇が新たに6人の枢機卿任命

 【CJC=東京】教皇ベネディクト16世は10月24日、新枢機卿6人を発表した。
 バチカンで行われた水曜恒例の一般接見の席で、教皇は11月24日に枢機卿会議を開催、この中で6人の新枢機卿の叙任式を行うことを明らかにした。
 今回、任命された6人の高位聖職者は、1人がバチカン(ローマ教皇庁)の役職にある以外、5人が世界各地の教会で奉仕しているのが特徴。大陸別では、アジアから3人、アメリカから2人、アフリカから1人。
全員が80歳未満で、教皇選挙の投票権がある。
 11月24日の叙任式によって、全枢機卿数は211人、そのうち教皇選挙の投票権を持つ80歳未満の枢機卿は120人、投票権を持たない80歳以上の枢機卿は91人となる。
 バチカン放送(日本語電子版)によると、新枢機卿の詳細は次の通り。
 ジェームス・マイケル・ハーヴェイ(米国、1949年生まれ)大司教、教皇公邸管理部長。枢機卿指名と共に、サン・パウロ・フォーリ・レ・ムーラ大聖堂首席司祭に任命。
 べカラ・ブトロス・ライ(レバノン、1940年生まれ)マロン典礼アンティオキア総大司教。
 バセリオス・クレミス・トトゥンカル(インド、1959年生まれ)シロ・マランカル典礼トリヴァンドルム首位大司教。
 ジョン・オロルンフェミ・オナイエカン(ナイジェリア、1944年生まれ)アブジャ大司教。
 ルーベン・サラサール・ゴメツ(コロンビア、1942年生まれ)ボゴタ大司教。
 ルイス・アントニオ・タグレ(フィリピン、1957年生まれ)マニラ大司教。


◎バチカンがシリアへの枢機卿使節団派遣延期

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)は10月22日、予定していた枢機卿らによる使節団のシリア派遣を延期すると発表した。予断を許さない内戦の深刻さ増大を考慮したためとしている。現地では、ラフダール・ブラヒミ国連・アラブ連盟合同特別代表が仲介したバッシャール・アル=アサドアサド政権と反体制派による4日間の停戦合意が、初日から事実上崩壊した。
 訪問延期発表前日の21日にも首都ダマスカスの旧市街で自動車爆弾が爆発し、少なくとも13人が死亡した。9月に教皇が訪問した隣国レバノンの首都ベイルートでも19日、自動車爆弾と見られる爆弾テロで治安担当トップらが死亡した。いずれもキリスト者が多い地域。
 枢機卿使節団は、内戦で大きな被害を受けている全てのシリア国民への「連帯」を示し、武力によらない政治的な解決を求める予定だった。


◎ナイジェリアのカトリック教会に自爆テロ

 【CJC=東京】ナイジェリア中北部カドゥナ州の州都カドゥナで10月28日朝、爆弾を積んだジープが警備の阻止を無視し、聖リタ・カトリック教会の門を突破しそのまま爆発した。地元警察などの調べでは、爆発物を積んだ車は、当初教会の正面から侵入しようとして失敗し、向きを変えて教会の壁に激突して爆発したという。
 ミサ最中の爆発で、車を運転していた自爆犯を含む20人以上が死亡し、100人以上が負傷した。重体の負傷者たちは、地元4カ所の病院へ搬送された。
 現場には赤十字や警防団のスタッフが出動した。怒ったキリスト者青年がスタッフに殴りかかって救急車の窓を割るなど、現場は混乱したとの報道もある。
 犯行声明を出している組織はない。カドゥナにはキリスト者が多数住んでおり、過激派イスラムグループ『ボコハラム』はこれまでも数回、キリスト者に対するテロ事件を起こしている。
 ナイジェリアでは、北部で優勢なイスラム教徒と南部のキリスト者の間で対立が長年続け、カドゥナ周辺ではキリスト教の教会がたびたび襲撃されている。特にイスラム教原理主義者らは、ナイジェリア全土に『シャリア』(イスラム法)による支配を実施しようと計画、欧米の生活スタイルの一掃も視野に入れている。
 一部メディアが「事件発生後、一部のキリスト者がイスラム教徒に対して報復的な襲撃を行った」と報道したが、カドゥナ州の報道官は「今回の自爆テロ事件に対し報復的な行動をとった人はいない」として、「治安担当者が全力で該当地域の住民の安全を確保する」と述べた。グッドラック・ジョナサン大統領も「残虐な攻撃を非難する」との声明を発表し、テロ対策の強化を表明した。


◎プッシー・ライオットのメンバー2人、辺境の刑務所へ

 【CJC=東京】この2月21日にロシア正教会モスクワ総主教座の救世主ハリストス大聖堂でウラジーミル・プーチン大統領を批判した歌のパフォーマンスをしたとして、宗教的憎悪により秩序を乱した罪で禁錮2年の実刑判決を言いわたされていた『プッシー・ライオット』(子猫の暴動)のメンバー2人が辺境の刑務所に送られたことが明らかになった。。
 メンバーの1人エカテリーナ・サムツェビッチ(30)は「教会内でパフォーマンスをする前に、まだギターを取り出してすらいなかったのに不当に逮捕された」との弁護側の主張により9月に釈放されたが、マリア・アリョーヒナ(24)はモスクワから1100キロ東のペルミ、ナジェージダ・トロコンニコワ(22)はモスクワから500キロ東のモルドヴィアの刑務所に送られたもの。
 ヴィオレッタ・ボルコワ弁護士は「10月20日にナジェジダはモルドヴィアへ、マリアはペルミへそれぞれ移送された」と明かしている。
 2人は「モルドヴィアだろうとシベリアだろうと、どこへ収容されようと私たちはただ黙っているつもりはない。そうなれば逆に面倒を被るのはそっちの方だが、それでも良ければどうぞ」と語り、姿勢を変えるつもりの無いことを改めて示した、と伝えられる。
 他の主要メンバーの多くは海外へ逃れており、プーチン大統領とロシア政府に抗議を続けるという。
 釈放されたエカテリーナ・サムツェビッチは、モスクワ市内で産経新聞のインタビューに応じ、宗教の力を利用して政権の「神格化」を図っている、などとプーチン政権を批判した。
 サムツェビッチは、自らの行為を「反宗教的ではない」と訴え、ライブが行われたモ大聖堂を「プロパガンダ発信の中心地」と断じ、正教会トップであるキリル総主教の政権への接近を批判。政教一致を目指すプーチン政権への抗議が目的だったと動機を語った。
 また裁判経過についても、「公正なものではなく、(判決までの経過には)かなりの部分で違法性があった」とし、司法の独立が確立されていないとの考えを述べた。


◎「1年間同性愛者として生きた」米国の男性

 【CJC=東京】米ネットメディア『ハフィントン・ポスト』によると、テネッシー州のティモシー・キュレクさん(26)が10月11日、ABCニュースに登場、自らが同性愛者として1年間生きてきたことを明らかにした。同日は、自身の性的指向や性自認をカミングアウトしたレズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーの人々を祝い、認識向上を目的とした記念日。
 キュレクさんは、同性愛者として生きることがどのようなものかを理解するために1年間「同性愛者として生きる」ことにしたと言う。ただこの行動は彼の生活と周囲の人々に大きな変化を与えることになった。
 テネッシー州は米国でも特に保守的なキリスト者の多いところで、キュレクさんも小さい頃からキリスト者としての教育を受けてきた。通っていた教会では友人が同性愛者だとしたら「あなたは神の嫌悪の対象だ。天国に行くためには悔い改めなければならない」と言うように教えられてきた彼。その教えを信じ、疑わなかった。
 4年前のこと、知り合いの女性が家族に同性愛者であることをカミングアウトしたところ、家族にその事実を受け入れてもらえず拒絶されたという話を聞いた。その悲嘆にくれて泣く姿を見て、心が揺さぶられたという。
 「ゲイというラベルを貼られることが人生をどのように変えるのか、可能な限りの現実感を持って理解したいと思った」キュレクさんは、そこで1年間ゲイとして生きることを決意し、友人や家族を含めあらゆる人々に「カミングアウト」した。彼の計画を知っていたのは、彼のおばさんと親友1人、そして「彼氏」となったゲイの友人だけだった。
 ゲイ向けのカフェで仕事を得たり、ゲイバーに通ったり、ゲイのソフトボールリングに参加したり、とゲイのコミュニティに入って行ったが、カミングアウト以降、彼の友人の95%が彼に話しかけなくなったという。そしてカミングアウトに最も衝撃を受けたのは彼の母親だった。
 日記に「同性愛の息子を持つぐらいなら、末期がんを宣告された方がまし」と書くほどのショックを受けていたが、最終的には彼のセクシュアリティを受け入れ「非常に保守的なキリスト者からゲイコミュニティの理解者へと変化した」。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(10月28日)=https://www.cwjpn.com
★第1回召命担当者の集い=人生の選択を手助け=東京=溝部司教創設の「望洋庵」=3カ月で青年延べ78人が宿泊
★カリタスソウル事務局長ら来日=自死防止の取り組み視察
★難民移住移動者委員会全国研修会=改定入管法施行後の問題点も=大分
★長崎教区報「よきおとずれ」1000号=「教皇様と同じ気持ちで」=元編集長、教会広報の「変革」語る
★「これからが本番」=福島支援の団体連絡会=東京

 =キリスト新聞(10月27日)=https://www.kirishin.com
★宗教社会学者ロバート・N・ベラー氏講演=市民社会と市民宗教の可能性探る=「日本聖公会ウィリアムズ主教記念講座」
★アジア学院=新コイノニアハウス・教室棟完成=カリタス・聖公会などが支援=丹羽章前理事長覚え奉献式
★キリスト教本屋大賞に『ガリラヤのイェシュー』=山浦玄嗣氏「世間に通じる聖書を」
★日本キリスト教書販売株式会社主催=「クリスマス見本市」に42社参加
★カトリック教会「信仰年」開幕=「霊的な砂漠化」からの旅立ち

 =クリスチャン新聞(10月28日)=https://jpnews.org
★震災体験の「語りべ」に=3・11から1年7か月=手記、証し集、講演集続々
★今年も被災者にクリスマスソックス
★台湾大地震に学ぶ「支援と宣教」=福音運動から戦略的に一致協力
★震災1年半ようやく解体=「被災者どこまでできるか」=救援拠点の内郷キリスト教会
★システィーナ礼拝堂天井画完成から500年−−大塚国際美術館が記念イベント


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