世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1130信(2012.09.17)

  • ムハンマド中傷への抗議デモ拡大
  • 教皇、レバノンを司牧訪問
  • 教皇、『中東のためのシノドス後の使徒的勧告』に署名
  • 教皇、レバノン各界代表者と会見
  • バチカンが教皇メッセージ拡散にネット新技術
  • ロシア正教会のキリル総主教が訪日
  • 《短信》
  • 《メディア展望》
◎ムハンマド中傷への抗議デモ拡大

 【CJC=東京】イスラム教の預言者ムハンマドを冒涜(ぼうとく)する映像が米国で製作され、その一部がインターネットに掲出されたことから、イスラム教徒が反発、エジプトの首都カイロの米国大使館に9月11日、抗議デモが行われた。
 リビアでも同日、北東部ベンガジの米領事館が襲撃され、ジョン・クリストファー・スティーブンス大使ほか3人が殺害された。
 国際テロ組織アルカイダ系の武装組織『アラビア半島のアルカイダ』が15日声明を出し、事件について、米軍によるアルカイダ幹部殺害と、イスラム教預言者を侮辱的に描いた映像への報復だと指摘した。ただ自らの組織が直接的関与したとは述べていない。
 一方、リビア国民議会のムハンマド・ユースフ・エル=マカリーフ議長は14日、襲撃事件について、「自然発生的な行為でない」として、米国で10年前に起きた同時多発テロの記念日に合わせて周到に準備されたものだ、と指摘している。中東の衛星テレビ『アルジャジーラ』が15日、議長とのインタビューを報じた。議長は、携帯式ロケット弾などの重火器が用意されていたと指摘、映像問題と関係なく襲撃が行われていたとの見方を示している。
 13日にはイエメンの首都サヌアにある米大使館が襲撃された。イランの首都テヘランでは、イスラム体制を支持する保守派の学生約500人が、国交断絶している米国のビザ発給業務などを代行している在イラン・スイス大使館近くで「映像制作者に死を」「米国に死を」と叫んで気勢を上げた。
 抗議デモは14日、英独の大使館や米系の民間施設も標的となった。矛先が米政府だけでなく欧州諸国や企業にも広がることで、経済活動に支障が出る恐れも出てきた。抗議はアフガニスタン、チュニジア、パキスタン、バングラデシュ、仏、オーストラリアなどに拡大している。
 米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、問題となっている映像『イスラム教徒の無知』(イノセンス・オブ・ムスリムス)について、ユダヤ系米国人の不動産開発者サム・ベイシル氏(52)が100人から500万ドル(約4億8000万円)を集めて制作した、と報じている。
 米メディアは、イスラム教の聖典『コーラン』を焼却したことで有名になったテリー・ジョーンズ牧師が宣伝に関与したと伝えている。
 バラク・オバマ米大統領は声明で、襲撃の原因とされる映像にも言及、「米国は他者の信仰を侮辱する行為を認めない」とした。ただ「無分別な暴力は決して正当化できない」と力説してもいる。
 マーティン・デンプシー米統合参謀本部議長は12日、ジョーンズ牧師に電話し、イスラム教預言者ムハンマドを侮辱した映画が緊張を高め、暴力を誘発するとして、映画の内容に懸念を表明、支持を撤回するよう要請した。ただ、ジョーンズ牧師は、撤回に応じるかどうか明言を避けたという。
 米国は治安維持を目的に、リビアとイエメンに海兵隊を派遣することを決めたが、派遣が逆に緊張を高める恐れもある。


◎教皇、レバノンを司牧訪問

 【CJC=東京】ローマ教皇ベネディクト16世が9月14日、特別機で中東レバノンの首都ベイルートに到着した。空港ではミシェル・スライマーン大統領はじめ同国の政府要人および教会関係者らが教皇を出迎えた。隣国シリアの内戦に加え、イスラム教の預言者ムハンマドを侮辱する映像作品に端を発した緊張が中東全域で高まる中、3日間の訪問。
 バチカン放送(日本語電子版)によると、教皇は、機内で記者団に、内戦が激化するシリア情勢に関連して「武器を輸出するのは重大な罪だ」と述べ、即時中止を求めた。また「アラブの春」は「自由と民主主義を求める若者の叫びだ」と評価しつつ、「過去の革命の歴史は、憎しみを生み続ける危険性があることを我々に教えている」と述べた。
 今回の訪問は、2010年10月にバチカンで開催された『中東のためのシノドス』後の指針となる『使徒的勧告』に教皇が署名、それを司教らに託すことを主な目的としている。
 同国の大統領とカトリック司教団双方の招待を受けたこの訪問は、「中東のためのシノドス後の使徒的勧告」への署名とその公布があるとし、中東と全世界に向けられたこの使徒的勧告が、教会の今後の歩みの指針となるよう期待を表明した。


◎教皇、『中東のためのシノドス後の使徒的勧告』に署名

 【CJC=東京】教皇ベネディクト16世は、レバノン司牧訪問の初日9月14日の午後、首都ベイルート北東約20キロにあるハリッサのカトリック・ギリシャ・メルキト典礼司教座・聖パウロ大聖堂を訪問、『中東のためのシノドス後の使徒的勧告』(エクレジア・イン・メディオ・オリエンテ)に署名した。
 バチカン放送(日本語電子版)によると、教皇はギリシャ・メルキト典礼のグレゴリウス3世ラハム総大司教をはじめ、レバノン司教団、中東シノドス関係司教らに迎えられた。
 署名式には、ミシェル・スライマーン大統領や、正教会、イスラム教の使節も出席した。
 教皇は、署名式を十字架称賛の日に行うのは摂理的なことと述べ、この祝日が335年、東方で生まれたことを想起した。
 教皇は、中東シノドス後の指針となるこの使徒的勧告は、中東の教会の未来をキリストの眼差しをもって見つめたものであると説明。聖書学、司牧、霊性、典礼、カテキズム、対話など、様々な観点から、時に困難で苦しみに満ちた状況の中でキリストに従う道を示すという内容を紹介した。
 使徒的勧告は、16日、ベイルートで行われるミサの中で、関係司教らに手渡される。


◎教皇、レバノン各界代表者と会見

 【CJC=東京】教皇ベネディクト16世はレバノン司牧訪問2日目の9月15日、ベイルート郊外バーブダの大統領官邸を訪問、ミシェル・スライマーン大統領と会談した。教皇と大統領は共に、官邸の庭園にレバノンのシンボルである杉を植樹した。
 この後、同官邸内で教皇はナジブ・ミカティ首相およびナビ・ベリ国会議長ともそれぞれ会見。続いて、政府および政界関係者、外交団、イスラム教をはじめとする諸宗教指導者、文化人らと挨拶を交換した。


◎バチカンが教皇メッセージ拡散にネット新技術

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)は、教皇べネディクト16世の活動を世界に伝えるため、インターネットなどで新たなハイテク技術を利用しようとしている。その相手に米アップル社と組んだ、とカトリック通信『CNA』が報じた。
 「国際的な段階で大きな一歩を示すものだ。なぜならインターネットは時間空間を超えるからだ。教皇のメッセージはこれからは世界のどこにでも届く」とバチカン出版部門『リブレリア・エディトリチェ・バチカーナ』部長のジュセッペ・コスタ神父は言う。
 アップル社は、教皇の毎週恒例の接見も広く伝えることを企画しており、これまでの印刷物に加えEブックスやiTunesの採用も計画している。将来には教皇著作全般を電子化する構想もある。


◎ロシア正教会のキリル総主教が訪日

 【CJC=東京】ロシア正教会の最高指導者モスクワ総主教座のキリル総主教は9月14日、日本を18日までの日程で訪問した。日本に正教会の基礎を築いたロシアの宣教師ニコライ・ヤポンスキイの没後100年に合わせたもの。
 キリル総主教は、昨年3月の東日本大震災と津波で最も深刻な被害を受けた仙台主教管轄区域訪問も日程に組み入れ、15日、仙台主教座を訪れた。訪問には、ロシア正教会と日本の自治教会の聖職者が同行、まず受胎告知主教座教会を訪れ、祈祷式(パニヒダ)を行なった。祈祷式には親戚縁者を地震で亡くした信徒や主教座の聖職者らが参加した。
 インターファクスなどロシアのメディアによると、総主教は祈祷式で、日本のハリストス教会(ロシア正教会)において仙台は特別な位置を占めているとし、函館から布教を開始した聖ニコライ・ヤポンスキーが信者の集まりを組織したのがまさに仙台であった事実を強調した。
 総主教は、息子を亡くした父の心境を詠んだ松尾芭蕉の俳句「萎れ伏すや世はさかさまの雪の竹」をロシア語訳で読み上げた。
 総主教は、参加者を祝福し、教会にはカザンの聖母のイコン(聖像画)を、また祈祷式に参加した100人以上に聖ニコライ・ヤポンスキーの小さなイコンを贈った。
 総主教は仙台主教セラフィムと信者代表らに教会の器物購入費として10万ルーブル(約26万円)を手渡した、という。
 総主教はまた、大震災で被災した仙台市若林区荒浜の慰霊塔を訪れ、犠牲者追悼の祈りをささげた。時事通信によると、キリル総主教は「この大震災で被災した方々と同じ感情を分かち合い、心を一つにしたい」と集まった住民らに語り掛けた。この日は、町内会の呼び掛けなどで住民や関係者ら約200人が集まった。
 総主教は1969年以来、総主教の座に就くまでにも日本を訪れている。
 今回の訪日を控え、総主教はモスクワで4日、NHK、共同通信など日本メディアとの会見に応じ、「ロシアと日本は多くの点で結びついており、その一つが正教会である」と語った。


◆短信◆(CJC)

▽イスラム教聖職者が反米デモで聖書引き裂く=米宣教通信『アシスト・ニュース』によると9月11日、エジプトの首都カイロの米大使館前で行われたデモの際、イスラム教聖職者アブ・イスラムが聖書を引き裂き燃やした。デモ隊から歓呼の声が上がった、と『アッシリア国際通信』が報じた。
 この聖職者は自動車で立ち去る前、群衆に「次は小便を掛ける」と語った。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(9月16日)=https://www.cwjpn.com
★JOC国際評議会=人間らしい労働環境求め=20カ国の青年ら集い、討議
★那覇教区=家庭ミサから始まり 昨年献堂=読谷教会=「私たちは家族」
=ミサ後共に昼食 司牧の中心は子ども
★ドイツに学ぶ脱原発=上智人間学会の発表の1つ=日本の課題考える
★教会乗っ取るカルト教団=韓国で創立の「新天地」
★祝1000号=ドン・ボスコ社の月刊誌『カトリック生活』=碑文谷教会(東京)で感謝ミサ

 =キリスト新聞(9月15日)=https://www.kirishin.com
★「16司教の思い」受け取って=平和といのち・イグナチオ9条の会シンポ=原発から「人間を守る」
★カリタスジャパン=「続・自死の現実を見つめて」=思いの分かち合い目指し発行
★日本キリスト者医科連盟など=閣僚の靖国参拝中止要請
★"統一協会"創始者文鮮明氏死去=「救世主」を自称
★米ワシントン大聖堂修復が本格化=完成には5千万ドル

 =クリスチャン新聞(9月16日)=https://jpnews.org
★相馬・南相馬=福島原発30キロ圏で続ける礼拝=長引く閉塞の不安
★植民地時代に朝鮮を愛した官吏=キリスト者 浅川巧の実像=説教を真剣に聴き 皇国の教会を批判
★9・1集会=関東大震災時の朝鮮人虐殺 史実に迫る=直前のメーデー弾圧が序章=「新在留管理制度は人権後退」と警鐘
★高倉健主演の「あなたへ」にエキュメニカル賞特別賞=モントリオール世界映画祭
★豪ヒルソング教会主任牧師迎え都内でカンファレンス=次世代をテーマに


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