世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1129信(2012.09.10)

  • ドイツ有力者が教会一致を呼び掛け
  • 改革派の教皇候補マルティーニ枢機卿死去
  • 聖書の中国語訳に着手したアレグラ神父列福へ
  • モスクワでペンテコステ派教会堂を破壊
  • イランの首都テヘランで聖書も買える?
  • 高倉健主演の『あなたへ』に『エキュメニカル特別賞』
  • 《短信》
  • 《メディア展望》
◎ドイツ有力者が教会一致を呼び掛け

 【ベルリン=ENI・CJC】ドイツの政治、スポーツ、文化、演芸各方面の有力者23人が、ベルリンで9月5日、カトリック教会とプロテスタント諸教会の一致を求める緊急呼び掛けを発表した。
 「今日、教会分裂は、欲せられたものでもなければ政治的に正当化されるものでもない。神学的要素、制度的な慣習、教会的また文化的伝統が諸教会の間の分裂を維持しているのだろうか。わたしたちはそうは思わない」と声明『現下のエキュメニズム=一つの神、一つの信仰、一つの教会』は指摘する。
 声明は諸教会の間の500年に及ぶ分裂に終止符を打つことを呼び掛けており、連邦議会のノルベルト・ラマート議長、トーマス・デメジエール国防相、野党社会民主党のフランク=ヴァルター・シュタインマイアー党首らが署名した。
 テレビ司会者ギュンター・ヤオホ、独オリンピック連盟のトーマス・バッハ会長、作家アーノルド・シュタットラーほか芸術家や学者も署名している。
 声明は、50年前の10月に開かれた第二バチカン公会議と、2017年に500周年を迎える『宗教改革』とが大きな衝撃を持って来たが、そのことを教派を超えて認識されるべきだ、としている。今回の呼び掛けは、諸教会の一般信徒が、これらの記念行事を変革の機会として捉えるために積極的な役割を果たすよう求めている。
 「わたしたちは、教会一致という課題を、教会指導者たちが、聖体(聖餐)と教会政治について一つの理解に到達するまで、そのままにして置くことは出来ないし、そうすべきでもない。そしてわたしたちは、諸教会がただ相互に認め合うだけでは満足出来ない」と声明は指摘している。
 教派間の聖体(聖餐)問題はドイツでは大きな関心事になっている。キリスト者約5000万はほぼカトリックとプロテスタントに二分されており、いまでは混宗婚も多い。双方の信徒はこれまでも繰り返し、カトリックの聖体規定を緩和し、一緒に聖体(聖餐)に預かれるよう求めて来た。
 今回の呼び掛けに対し、ドイツ・カトリック司教協議会議長のロベルト・ツォリッチ大司教は、問題が「解決困難な点であり、信仰における共通理解が不足していることを浮き彫りした」と指摘している。
 司教協議会もプロテスタントの福音教会(EKD)も、いくつかの留保条件付きではあるが、声明を歓迎してはいる。
 「『現下のエキュメニズム』呼び掛けの考えを前向きに受け止める。それは、エキュメニズムの将来を、教会指導者の応答としてだけでなく、一致強化とが全てのキリスト者の責任であることを憶えることでもあるとするための努力なのだ。福音的、そしてカトリックのキリスト者が、切り離されているよりも結び付けられていることが分かることは感謝だ」と福音教会のティエス・グンドラッハ副会長は声明で指摘した。
 しかし重要なことは、各教派をそれ自身の基本的な神学理解の上に憶えることだ、と言う。
 「16世紀の始め、宗教改革者は、教会について、今日でもカトリックの兄弟姉妹の中心的信仰とは相容れない見解を発展させた。とにかく最低線は、出来るだけの速さで、エキュメニカルな問題に取り組むことが重要だ、ということ、しかしそれには出来る限りの忍耐も必要だ」と結論で述べている。


◎改革派の教皇候補マルティーニ枢機卿死去

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)の改革派で、教皇候補にも挙げられたイタリアのカルロ・マリア・マルティーニ枢機卿は持病のパーキンソン病が悪化し8月31日、療養先のミラノのイエズス会修道院で死去した。85歳。葬儀は9月3日、ミラノの大聖堂(ドゥオーモ)で行われ、約2万人が集まった。イタリア内外にテレビでも中継された。
 率直で分かりやすい語り方で、市民に広く愛され、葬儀前の3日間、遺体が置かれた大聖堂にはマリオ・モンティ首相を含め、約20万人が訪れた。
 バチカン放送(日本語電子版)によると、同枢機卿は聖地を愛し、2002年ミラノ教区長辞任後、長年の希望通りエルサレムに居を移し、祈りと聖書研究の日々を送っていた。しかし、パーキンソン病の悪化に伴い2008年からは治療に専念するためイタリアに帰国、療養生活をしていた。
 マルテイーニ枢機卿は1927年、伊北部トリノ生まれ。17歳でイエズス会に入会、25歳の時に司祭に叙階。80年、教皇ヨハネ・パウロ2世によりミラノ教区教区長(大司教)に任命された。
 ミラノ教区教区長になる前に枢機卿は、ローマの教皇庁聖書学院および教皇庁グレゴリアン大学学長を歴任した。ミラノ大司教在任中、多くの人々を神のみことばである聖書に導くために「みことばの学校}と呼ばれる一連の聖書講座を教区内で開き、神のみことばに耳を傾けながらそれを黙想し、そして実際生活に生かしていこうとする、いわゆる「レクチオ・ディヴィーナ」を人々の間に浸透させるべく努力した。
 生殖医療や離婚の是非、避妊具の使用に柔軟な姿勢を示し、他宗教との対話にも積極的だった。
 聖書学者、教育者としても知られ、バチカンでの様々な会議では改革派の騎手的な役割を果たした。著書も聖書釈義から詩、祈りの手引きなど数多く、イタリアでベストセラーになったものもある。
 伊紙『コリエーレ・デラ・セーラ』が8月に収録したインタビューでは、「教会は200年ほども時代から取り残された。官僚組織が肥大化し、儀式と服装ばかりが仰々しい」と現在のバチカンを厳しく批判していた。


◎聖書の中国語訳に着手したアレグラ神父列福へ

 【CJC=東京】1935年に聖書の中国語訳に着手したフランシスコ会修道士ガブリエル・マリア・アレグラ神父が9月29日、故郷のシチリア島で福者に列せられる。バチカン(ローマ教皇庁)教理省の通信『フィデス』が報じた。
 アレグラ神父は1907年生まれ。11歳でフランシスコ会入会。30年司祭叙階。翌年中国宣教に赴き、45年北京にフランシスコ会聖書研究所を設立したが、政情から香港に移転、76年死去した。


◎モスクワでペンテコステ派教会堂を破壊

 【CJC=東京】身元不詳の作業員が9月6日深夜、モスクワ東部コシノ・ウクトムスキー区にある『聖三一ペンテコステ教会』の取り壊しを始めた。ワシリー・ロマニュク牧師が『フォーラム18』通信に語ったところでは「朝までに3階建ての教会堂が破壊された」。
 人権擁護関係者は教会員たちは、突然の取り壊しに衝撃を隠せない。『苦情調査官』(オンブズパーソン)のミハイル・オディントゥソフ副調査官は「深夜に掘削機を持ち込むとはソ連当時のやり方だ。認められるものではない」と『フォーラム18』通信に語った。
 同教会は、自費で1995年から96年にかけて建設した教会堂の認可を得るために努力して来たが、東部行政区のアンドレイ・イワノフ報道担当は、「全ては裁判所の決定によるもの」と、取り壊しを正当だとしている。
 オディントゥソフ氏は、教会員から電話があった、ウラジミル・ルキン調査官に書類を提出する、と語った。
 聖三一教会は1979年、セラフィム・マリン氏が創設した。同氏はペンテコステ派の信仰を理由に18年間、強制労働収容所に収監されていた。教会が当局から登録を認められたのは1970年末のこと。しかし当局は95年に立ち退きを強制、教会側は翌年にかけて「仮」教会堂を建設したが、それが今回取り壊された。
 当局は会堂の認可を拒否し続け、上下水道や電気設備を認めなかった。そこで教会側は接収されないよう自営策を立てていたが、今回の不意打ちとなったもの。
 ロマニュク牧師は、物音に目覚め、取り壊しを阻止しようと駆けつけたが遅かった。「作業員たちは身分を明らかにしないどころか派遣主のことも話さなかったし書類も見せなかった。ただ警察が保護していたことは確実で、当局がやったことに間違いはない」と言う。次週の日曜礼拝は瓦礫になってしまった跡地で行う、と語った。
 教会員の懸念は自分の教会だけに留まらない。これが前例になって、賃貸借契約を一方的に破棄し、教会堂を押収する可能性がある、と言う。


◎イランの首都テヘランで聖書も買える?

 【CJC=東京】イランのイスラム教政権と保安部隊は、聖書配布を禁止、所持しているだけで犯罪と見なされるが、首都テヘランでは聖書だけでなく違法とされる書籍も露天商や古書店で買うことが出来る。
 イランのキリスト教通信『モハバト・ニュース』によると、テヘランの昔から有名な『ナセル・コシュロ』街がその一つ。そこでは高価ではあるが、入手が難しい違法薬品まで入手可能という。『エンケラブ(革命)』通りでも違法書が買える。
 『モハバト・ニュース』は、宗教を研究している大学生が『悪魔の詩』も買えると語ったと報じている。著者のサルマン・ラシュディはイランの最高指導者アヤトラ・ホメイニ師から「背教者」と呼ばれ、著書の印刷配布は今も禁止されたままだ。
 イランでイスラム革命を実現させたホメイニ師は、ラシュディにたいする「ファトワ』(宗教指令)を1989年2月14日発し、イスラム教徒は全て、ラシュディを発見次第殺せ、と指令している。
 面白いことに、その大学生は、書店に関する情報を教授の1人から得た、と言う。
 違法書をテヘランで見つけるのが容易なことについて、収書家の1人は、「エンケラブ街の古書店なら、イスラム革命前に発行された本を見つけるのはたやすい」と言う。
 ただ『モハバト・ニュース』は、文科省やイスラム教指導者が、違法書の販売について対処すると発表した、と報じている。
 さらに、警察も違法書を販売する書店摘発に乗り出す、と言う。


◎高倉健主演の『あなたへ』に『エキュメニカル特別賞』

 【CJC=東京】第36回モントリオール世界映画祭(カナダ)で9月3日、高倉健主演の映画『あなたへ』(降旗康男監督、英語題名はデアレスト)が主要賞の受賞はなかったものの、キリスト教関係の審査員が選ぶ『エキュメニカル賞』特別賞を受賞した。コンペ部門のグランプリはトルコ映画『ホエア・ザ・ファイア・バーンズ』。工藤夕貴が出演した日本・カナダ合作映画『カラカラ』(クロード・ガニオン監督)が『世界に開かれた視点賞』と、カナダ映画に対する観客賞を受賞した。高倉は1999年に『鉄道員(ぽっぽや)』で最優秀男優賞を受賞して以来の同映画祭での受賞。
 『エキュメニカル賞』は1974年の『カンヌ映画祭』から公式審査の他に、キリスト教映画制作者、批評家などの関係者の働き掛けで実現した審査制度。「人間の神秘的な深みを、その希望だけでなく傷、失敗なども含めて表現するフィルムの力を示す芸術的な質を持った作品を顕彰する」ことを目的としている。今回、本賞はドイツ・イスラエル合作の『季節の終わり』(仮題、フランチスカ・シュロッテラー監督)が受賞した。
 『エキュメニカル賞』審査員は6人。カトリック側はSIGNIS、プロテスタント側は『インターフィルム』が指名する。カンヌの他、ベルリン、ロカルノ、モントリオール、カルロビバリの映画祭でも『エキュメニカル賞』が設定されている。
 SIGNISは2001年、メディアを使って、キリストの福音を広めようと活動しているカトリック2団体が合併設立された。
 『インターフィルム』は1955年、独、仏、蘭、スイスのプロテスタント映画関係者によって設立された。今日では聖公会、正教会、ユダヤ教関係者も参加、世界教会協議会(WCC)の関係団体になっている。


◆短信◆(CJC)

▽金正恩第1書記が文鮮明氏死去に哀悼の意=韓国の『聯合ニュース』によると、北朝鮮の金正恩第1書記が、『世界基督教統一神霊協会』(統一教会)創始者・文鮮明氏の死去に哀悼の意表した。北朝鮮の『朝鮮中央通信』が9月5日報じた。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(9月9日)=https://www.cwjpn.com
★福島の支援 長期化必至=課題確認し今後の体制検討=福島会議
★全国の女子修道会=被災地のため 祈りのリレーつなぐ
★カリタスジャパン=「世界自殺予防デー」を前に=「声」集め小冊子発行
★医療関連学生セミナー=「理想」と現状のはざまで=奮闘する医療従事者に学ぶ
★スマホは置いて=祈りの時大切に=ローマ

 =キリスト新聞(9月8日)=https://www.kirishin.com
★全国友の会と自由学園が5泊6日のサマースクール=原発離れ自然観察・川遊び"うれしく"=福島県中心に22家庭の子どもたちが参加
★医師、教師の立場から発題=癒しの技として方向探る=キリスト教性教育研究会
★ワールド・ビジョン・ジャパン"命の木プロジェクト"=東尾理子さん=「笑顔広がれば世界が平和に」
★カナダ合同教会常議員会=イスラエル入植地産品をボイコット
★中絶問題の判断=米国の有権者悩む

 =クリスチャン新聞(9月9日)=https://jpnews.org
★片腕失ったサーファー=ベサニーさん=宮城沿岸にエール=「どんな状況でも神様は避け所」
★地元と関係薄い都市の教会=次期東京災害対策=教会の備え調査
★シンポジウム「地方伝道を考える」=社会に関わる統合性に注目
★東日本大震災を覚え 日本伝道の幻を語る会
★9月17日から初の日本青年伝道会議=青年の魂の危機に福音で成長を


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