世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1124信(2012.08.06)

  • 米国務省が世界の宗教規制に関する年次報告書
  • 「不法」叙階に反対した聖職者を中国政府が制裁
  • 香港の教会が政庁に教育指針撤回を要求
  • 教皇、『ナザレのイエス』執筆終了、新回勅準備へ
  • バチカン機関紙がゲイツ財団やネスレ批判
  • 米合同メソジスト会員数なお減少
  • 《短信》
  • 《メディア展望》
◎米国務省が世界の宗教規制に関する年次報告書

 【CJC=東京】米国務省は7月30日、世界各国の宗教規制に関する報告書を発表した。ヒラリー・クリントン国務長官が『2011年国際宗教の自由報告書』を連邦議会に提出した。米国は1998年、『国際宗教自由法』(IRFA)を制定している
 国務省の国際信教の自由担当スーザン・ジョンソン・クック特使が、世界の約半数の国では「宗教少数派を虐待したり、社会的に虐待を受けていても介入しない」と報告書発表に際し指摘した。
 報告書は、特別観察リストに、アフガニスタン、中国、キューバ、エリトリア、イラン、北朝鮮、パキスタン、ロシア、サウジアラビア、スーダン、シリア、ベトナム、ウズベキスタン、トルクメニスタンを上げている。
 報告書は、11年には世界で反ユダヤ主義が拡大したと指摘。また、イランで「宗教的信仰を理由とした拘束、嫌がらせ、脅迫、差別」が起きるなど、宗教の自由をめぐる状況が悪化した国もあったとした。
 パキスタン、サウジアラビアでは、人々が冒とく法に違反したとか批判したとして、殺害されたり、投獄・監禁されている。インドネシアでは、キリスト者が「イスラム教を攻撃する」と見なされた本を配布したとして禁固5年の判決を受けている。これらの法は、「宗教を保護する」名目で人々を沈黙させている、と言う。
 報告書は、中東の民主化運動「アラブの春」による政変の流れの中で、宗教上の少数派が危険にさらされていることを指摘した。特にエジプトではコプト派キリスト者への暴力増加を阻止することに失敗したとしている。暫定統治を担う軍部が寛容な姿勢を示す裏側で宗派間の緊張が高まり、コプト教徒中心のデモ隊が治安部隊の攻撃を受け、死者25人、負傷者350人が出た例などを挙げた。さらに、暫定政権はキリスト教徒を狙った暴力や教会への攻撃を阻止できず、実効性のある捜査や訴追もできていないと指摘している。
 宗教少数派が認知を求めて戦っている例もある。ハンガリーでは、認可宗教団体が300以上あったのが32にまで減少している。
 中国では政府による自由尊重の取り組みが悪化したと批判、状況は「著しく悪化している」と指摘した。中国政府は認可した少数の宗教団体にしか合法的な礼拝を認めず、新疆ウイグル自治区のイスラム教徒やキリスト教の地下教会への弾圧も続いているとしている。チベット仏教寺院での宗教活動の制限拡大なども指摘、「当局による宗教行事への干渉が不満を拡大させた」とし、これを受けて11年に少なくとも12人のチベット族が焼身自殺を図ったとしている。
 北朝鮮に関しては「真の宗教の自由は存在しない」と断言。布教活動や宣教師らとの接触を理由に逮捕されたり厳罰を受けたりしたケースも報告されているとした。
 報告書はまた、欧州諸国に外国人の排斥運動や反ユダヤ教、反イスラム教の動きが広がっていると指摘した。さらに、ロシアやイラク、ナイジェリアでは、「対テロ戦」という名目で平和的な宗教活動が取り締まりの対象になったとしている。
 歓迎すべき動きとして報告書は、トルコが過去に宗教団体から没収した資産の返還を容易にする決定をしたこと、リビア最高裁がイスラム教への冒とくを罰する法律を覆したことなどを挙げた。
 キューバ、ロシアも状況が改善された国として上げられている。


◎「不法」叙階に反対した聖職者を中国政府が制裁

 【CJC=東京】中国政府は、東北部の黒龍江省のカトリック教会ハルビン教区司祭7人に制裁を科した。ヨセフ岳福生(ユエ・フシェン)神父の司教叙階に反対したため。この叙階は、教皇の指令なしに行われており、岳神父は「教会法1382条に基づき課された制裁を、自動的に招いた」と、バチカン(ローマ教皇庁)が「不法」と発表している。
 同教区には司祭37人が在籍しているが、7人は叙階式典への参列を拒否、また自らの立場を明確にしたため、聖務執行を3カ月停止された。当局側から岳司教と式典を共にすることを指示され、拒否した場合はさらなる処置をとる、と警告されていた。その結果、1人は破門された岳司教との式典を共に執行した。
 中国に1949年、共産主義政権が樹立されて以来、同教区には59年から92年までペテロ・ワン・ルイファン司教と後継のリウ・フアンド司教が97年まで在籍していた。2人ともバチカンの承認は得ていない。


◎香港の教会が政庁に教育指針撤回を要求

 【CJC=東京】7月29日、香港で約9万人が参加する街頭デモが行われた。政庁に新教育課程の撤回を要求するもので、内容が中国共産党への過度に傾倒し、偏向しているという。
 デモ参加者の多くは子ども連れで、炎天下を3〜4時間にわたって「洗脳反対」などと書いたバナーを掲げたり、バッジを着けていた。
 香港中文大学のウイリー・ウォラプ・ラム助教授(歴史学)は、新課程で採用されることになった教科書は「非常に露骨に愛国的かつ国家主義的な宣伝だ」と指摘している。今回のデモを、香港の新行政長官に選出されたルン・チュンイン氏が北京寄りであることへの不信を反映したもの、と見ている。
 カトリック教会のヨセフ・陳日君枢機卿も7月28日、政庁は計画を撤回すべきだ、とメディアに語っている。
 香港の私立学校500校の3分の1はカトリック教会、聖公会、ルーテル教会などが運営している。これらの諸校では新課程導入の計画はない。非導入校への制裁は発表されていない。


◎教皇、『ナザレのイエス』執筆終了、新回勅準備へ

 【CJC=東京】ローマ郊外カステルガンドルフォの離宮に滞在中の教皇ベネディクト16世が著書『ナザレのイエス』第3巻の執筆を終了した。バチカン(ローマ教皇庁)国務長官タルチジオ・ベルトーネ枢機卿がイタリア北部の村で休暇中に明らかにした。
 『ナザレのイエス』は、教皇がシリーズとして取り組んだ著作で、第3巻はイエスの幼年期がテーマになっている。
 教皇庁広報事務所によると、『ナザレのイエス』第3巻は、これからドイツ語原文から主要言語への翻訳作業に入る段階で、正確な訳出のために時間が必要と見られる。
 ベルトーネ枢機卿はまた、教皇の新しい回勅が今後発表される可能性にも言及した。教皇が新回勅を出されると、2005年の『神は愛』、07年の『希望による救い』、09年の『真理に根ざした愛』に続き4番目。


◎バチカン機関紙がゲイツ財団やネスレ批判

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)機関紙『ロッセルバトレ・ロマノ』7月29日付けがジウリア・ガレオッティ署名で、第三世界で避妊を推進している国際規模の財団や企業を厳しく批判する論文を掲載した。
 米『ビル・ゲイツ財団』のメリンダ・ゲイツ夫人は、「少し見当外れで、混乱している」とし、情報不足の上の判断では、援助を必要とする女性よりは製薬企業を富ますだけだ、と指摘する。
 多国籍企業『ネスレ』社に対しては、同社が「悪名高く、巧妙かつ不正な方法」でアフリカの女性に無料で粉ミルクを提供するのは、母親になった女性たちに、母乳を作る能力を失わせ、乾製品に依存するようにさせる、として「慈善の名の下で利益を念頭に置いている」と言う。


◎米合同メソジスト会員数なお減少

 【CJC=東京】米合同メソジスト教会は2011年に会員を7万1971人減少させている。全59年会(地区会)のうち55年会からの報告に基づいたもの。
 教勢を測るのには会員数、礼拝出席者数、教会学校参加者数などが参考にされるが、28年会ではこの3点とも減少している。
 11年会では礼拝出席者が増加、5年会では会員数が増加したが、両方増加したのは僅か3年会に留まった。
 「この5年間の傾向が続くと国内の合同メソジスト教会は50年持たない」と、カンサス州リーウッドのリサレクション教会のエイダム・ハミルトン主任牧師が総会で報告した。
 新会員獲得も米国の人口増加率を下回り、高齢会員の死亡率も平均より高い。


◆短信◆(CJC)

▽クリントン長官がエジプト大統領に権利尊重要請=ヒラリー・クリントン米国務長官は『2011年国際宗教の自由報告書』の発表に合わせて8月1日、『国際平和カーネギー基金』の集会で演説し、エジプトのムハメド・ムルシ大統領に「全国民の権利を尊重する」との約束を守るよう強く求めた。CNNテレビが報じた。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(8月5日・休刊)=https://www.cwjpn.com

 =キリスト新聞(8月4日)=https://www.kirishin.com
★君が代強制反対キリスト者の集い=「法改正で国のための教育へ」山口陽一氏=「教会の天皇判断があいまい」山崎龍一氏=「『儀礼的動作』神学的批判を」岡田明氏
★荒井献・桃井和馬氏がトークセッション=「弱さを絆に 震災の闇路から紡ぎだす光」=桜美林学園キリスト教センター
★世界宗教者平和会議「いのちの教育」学習会="ユーモアを大事にしよう"=デーケン神父が呼びかけ
★東京基督教大学が特別奨学金=キリスト教福祉のリーダー育成
★明治学院大学=「かわいい子には旅をさせよ」=被災地スタディツアーを企画

 =クリスチャン新聞(8月5日)=https://jpnews.org
★「つらい時こそ大人がそばに」=大津いじめ自殺問題 痛む地元教会祈る
★TCU・総神大合同シンポ「震災と日韓教会」=教会は再生可能エネルギー転換の努力を
★福音主義神学会東部研究発表3=教会は大震災にどう関わったのか=地域再生支援で私事化に歯止め
★「説教の指針が与えられた」=オルフォード講解説教セミナー16人修了


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