世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1118信(2012.06.25)

  • 米南部バプテスト連盟に初の「黒人」議長
  • オバマ大統領の宗教を判らない人が米国で44%
  • 10月11日からカトリック教会は『信仰年』
  • 「新しい福音宣教」討議するシノドスを10月開催
  • ロシア正教会首脳が中国訪問
  • エジプト大統領にイスラム主義のモルシ氏
  • 《短信》
  • 《メディア展望》
◎米南部バプテスト連盟に初の「黒人」議長

 【CJC=東京】米南部バプテスト連盟(本部=テネシー州ナッシュビル)はニューオーリンズで開いた年次総会で6月19日、新議長にフレッド・リューター第一副議長(55)を選出した。
 同氏はニューオーリンズの黒人主体のフランクリン・アベニュー・バプテスト教会牧師。圧倒的に白人主体の同派では創立以来167年で最初の「黒人」議長。
 リューター氏指名の動きは1年以上前からあり、今回対立候補は出なかった。
 当日は1862年に奴隷制が禁止された記念日。7900人の代議員が「ハレルヤ」と叫び、1分以上も歓呼の声を上げるなか、リューター牧師は「神がなされた業のために栄光あれ」と、受諾宣言を行った。任期を終えたブライアント・ライト議長が腕をリューター氏に巻き付け、祈った。
 リューター氏は、2005年のハリケーン・カトリーナによる大被害を受けた教会の再建に努め、路上伝道の経験も生かし教会員を3400人にまで増加させた。
 同派は1845年に奴隷制度擁護の立場で創設されたが1995年、それまでの歴史について謝罪、「少数派」受け入れを打ち出した。90年には5%だった非白人教会は2010年には19%を占めるまでになっている。
 同派は米国では信徒数約1600万人で、カトリックの約6800万人に次ぐ規模。


◎オバマ大統領の宗教を判らない人が米国で44%

 【CJC=東京】大統領選挙を控え、米国ではバラク・オバマ大統領の信仰が政治問題化しそうな情勢になってきた。このほど『ギャラップ』が6月22日発表した調査では、大統領の宗教が判らないとした人が44%に達していた。キリスト者、さらにプロテスタントだとする人が34%、カトリックとする人2%だった。
 一方、イスラム教徒とする人は11%、無宗教だと思っている人も8%いた。
 2008年の大統領選挙の際、オバマ氏が長らく通っていたシカゴ。トリニティ合同教会のジェレミア・ライト牧師が扇動的な発言を繰り返すことが問題視され、オバマ氏は様々な教会の礼拝に出席し、同牧師との距離を置くなど対策に大わらわだった経緯がある。
 さらにオバマ氏は、歴代大統領とは異なり、演説でキリスト教に関係する言葉を使い、イメージ作りに努めていたのに、今回の調査は、大統領がキリスト教信仰を告白しても、それを信じていない人が一定の割合を占めていることを裏付けた。
 共和党の大統領候補と目されるミット・ロムニー氏は、ほとんど信仰について触れないにもかかわらず、回答者の57%は、彼がモルモン教徒、と正しく認識している。共和党員は、オバマ氏をイスラム教徒だと見なしている人が民主党員の6倍に達しており、キリスト者とする人は逆に半分以下に留まっている。


◎10月11日からカトリック教会は『信仰年』

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)は、第二バチカン公会議開会50周年にあたるこの10月11日から2013年11月24日までを『信仰年』と定めた。
 6月21日の記者会見で概要を、新福音化推進評議会議長のリノ・フィジケッラ大司教が発表した。
 バチカン放送(日本語電子版)によると、同議長は、教皇ベネディクト16世が『信仰年』開催を宣言した使徒的書簡『ポルタ・フィデイ(信仰の門)』を引用して、「教皇登位の最初から、信仰の歩みを見つめなおすことで、キリストとの出会いの喜びと熱意を再発見することの必要を説いてきた」教皇が、第2バチカン公会議開幕(1962年)から50年、「カトリック教会のカテキズム」発行(1992年)から20年にあたるこの年に『信仰年』の開催を希望した経緯を示し、目標と内容を説明した。
 教皇は『信仰年』に教会が取り組むべき目標として、「この年がすべての信徒に、新たな確信と信頼、希望のもとに信仰を完全に『宣言』し、典礼を通して信仰を熱心に『祝い』、同時にそれを生活の中で『証し』するよう促すこと」を掲げた。
 この目標は、新しい福音宣教を活性化させるための純粋な宣教精神を再発見させるべく、何よりもまず、すべての信者の毎日の生活、キリスト教共同体の通常の司牧の中に取り入れるべきもの、としている。
 バチカン放送は、こうした観点から、典礼秘跡省が、「新しい福音宣教のための」特別ミサの式文を承認したと伝えている。同時に、教理省は今年1月に公布した「司牧的覚書」を通して、司教協議会・教区・小教区・組織・運動の各レベルのための具体的な取り組みを提案している。
 『信仰年』のための公式「ロゴ」や「賛歌」を作成、インターネットの公式サイトを開設した。
 また『司牧のしおり=信仰年を生きる』を、複数の言語で、9月に発行する予定という。使徒ペトロをテーマとした展覧会や、コンサートなども予定されている。

《注》公式サイトはwww.annusfidei.va。


◎「新しい福音宣教」討議するシノドスを10月開催

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)は6月19日、この10月7日から28日開催する「新しい福音宣教」をテーマにした世界代表司教会議(シノドス)第13回通常総会の「討議要綱」を発表した。同シノドスは、福音に深く根差し、時代に適応した新しい福音宣教に対する考察を深め、それを推進することが目的。
 討議要項は、シノドス委員会事務局長ニコラ・エテロビッチ大司教の「序文」に始まり、「導入」、「第1章=イエス・キリスト、人間のための神の福音」、「第2章=新しい福音宣教の時」、「3章=信仰を伝える」、「第4章=司牧活動の再活性化」、「終章」まで、全40節で構成されている。
 教皇がこのシノドスを招集した背景として、現代社会における人々の信仰離れの現実に目を向け、この状況への対応を急務として示し、福音宣教の中心にあるもの、イエス・キリストと人間との出会いの重要性を再発見するよう、討議要項は促している。
 また現代における世界の変化を、文化・社会・経済・政治・科学技術・コミュニケーション・宗教の七つの角度から取り上げ、教会が刷新された方法と自らの経験をもってこれらの状況に対応することの必要と、そのために力を入れるべき点を具体的に示唆している。
 討議要項は、信仰を伝えることはすべてのキリスト者と教会の使命と強調、救いを熱望する人々に希望を与える福音、その福音に深く根差す文化の推進を目指し、勇気をもって世界に福音を告げるよう呼びかけている。


◎ロシア正教会首脳が中国訪問

 【CJC=東京】ロシア正教会モスクワ総主教座の対外教会部門責任者ヒラリオン府主教が、6月19日から22日まで北京を訪問した。府主教は、現状のさまざまな制約はあるものの、正教が中国で盛んになることを期待している、と語った。ENIニュースが報じた。
 今回の訪問は、「中国における正教会の地位に関するさまざまな問題」を含む「宗教団体の近況」を協議する狙い。訪問団には仏教僧も加わっている一方、中国側は政府当局者のほか、カトリック、イスラム教、仏教関係者も参加していた。
 ヒラリオン府主教は19日、ロシア大使館内にある大聖堂で、聖体礼儀を行った。北京在住の各国正教会信徒のためのもの。府主教は「正教信仰がロシアと中国で盛んになるように」と祈った。
 府主教は20日、北京のカトリック神学校を訪問した際、「中国の宗教の中に正当な地位を保つために」、ロシア正教会の「娘」教会として、中国の自治正教会への期待を語った。ただインターファクス通信は、府主教が中国訪問直前に、「自治正教会の地位正常化への対話はなかなか困難」だと認めたと報じている。
 現在、中国では仏教、カトリック、イスラム教、プロテスタント、道教の5宗教だけが認可されており、正教会は外されている。
 ENIニュースによると、香港ではモスクワ総主教座に属する正教会信徒たちが『伝道団』設立300周年を祝っている。同伝道団は、ロシアのピョートル大帝の要求に応じて清朝の康熙帝が北京に設置するよう布告したもの、という。
 香港のディオニシ・ポズニャエフ司祭は22日、ENIニュースに、『義和団の乱』による中国人正教徒の犠牲者を憶える祈祷会を24日に行うことにした、と語った。同司祭は、中国自治正教会の復活に努力しており、香港の正教会共同体の重要性を強調している。


◎エジプト大統領にイスラム主義のモルシ氏

 【CJC=東京】エジプトの選挙管理委員会は6月24日、大統領選決選投票で、イスラム主義組織『ムスリム同胞団』系の自由公正党のムハンマド・モルシ党首(60)が当選したと発表した。エジプト史上初の自由選挙による大統領。
 アラブ世界でイスラム主義者が国家元首になるのは初めて。西側が支援する世俗派の独裁政権が支配してきたアラブ世界に衝撃を与えることは必至。
 モルシ氏は、「自分は全エジプト人の大統領」と宣言、目指すのはイスラム国家だが異教徒の権利も完全に保障する、と訴えている。
 モルシ氏の勝利にもかかわらず、エジプトが民主化に逆行する懸念は消えない。ムバラク独裁政権崩壊後に実権を握った軍最高評議会は新大統領に、外交権や首相を任命する権限などを移譲する一方、軍の指揮権や予算執行権などの権限は軍が持ち続ける方針。大統領と議会、軍の権限は今後制定する新憲法で規定することになっている。
 『ムスリム同胞団』や2011年の民主化運動を支持した若者たちはこうした軍の姿勢を「民主化に逆行する」と強く反発している。
 モルシ氏は1975年カイロ大学工学部卒業、米国の大学で工学博士号を取得。帰国後は教授として学生を指導した。同胞団に加わったのは学生時代の70年代とみられる。独裁政権崩壊後の2011年4月に同胞団傘下の自由公正党党首に就任した。
 妻1人。男女5人の子どもと3人の孫がいる。趣味は読書という。


◆短信◆(CJC)

《欧州》
▽WCC中央委、8月末からクレタ島で=世界教会協議会(WCC)中央委員会が8月28日から9月5日までギリシャ・クレタ島西部のコリンパリで開催される。エキュメニカル総主教バルトロメオス1世がホスト役となり会場は正教会アカデミーがあてられた。
 今回は、来年韓国の釜山で開かれるWCC第10回総会に備えるもので、WCCの運営やプログラムなどに関する検討が中心。

《アフリカ》
▽ナイジェリアの教会襲撃でボコ・ハラムが犯行声明=ナイジェリアのイスラム過激派『ボコ・ハラム』(西洋の教育は罪)は6月18日、カドゥナ州でキリスト教会で起きた爆破事件の犯行声明を出した。イスラム教徒に残虐行為を行ったキリスト者への報復だとしている。AFP通信が報じた。
 この報復で死傷者が増え、警察によるとこれまでに教会襲撃の犠牲者を含めて52人の遺体が確認され、150人以上が負傷した。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(6月24日)=https://www.cwjpn.com
★第2回復興支援全国担当者会議=続く復興 全国から支援=各活動の現状知り、課題を共有
★大槌ベース=岩手="一緒に"が一番楽しい=地元の人と心通わせる支援活動
★被災地の外国人を司牧=信徒間の関係深める=仙台教区滞日外国人支援センター
★「環境でも保護主義」に警鐘=リオ+20会議で バチカン
★伝統主義団体「聖ピオ10世会」、教会と=和解に「新たな段階」も

 =キリスト新聞(6月23日)=https://www.kirishin.com
★2016年刊行の新改訳聖書=津村俊夫翻訳編集委員長インタビュー=本格的「改訂」は日本初
★原発は信仰と倫理の問題=日本福音ルーテル教会・日本聖公会が相次ぎ声明
★日基教団奥羽教区=大飯原発再稼動に抗議
★カトリック貝塚教会=外国人信徒逮捕に抗議
★バチカン流出文書=前駐日大使書簡も

 =クリスチャン新聞(6月24日)=https://jpnews.org
★教会の無かった南三陸町で礼拝始まる=教会と支援の働き=教派を超えて協力
★教界外で広がる「修復的司法」=法学、社会学、心理、受刑者更生、保護、犯罪被害者支援など=聖書が背景なのに無関心なぜ?
★クラッシュジャパン=那須ベース閉所=郡山ベースへ移管=県北牧師会で感謝の報告
★十字架刑は紀元33年4月3日=大規模地震の記録から算出


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