世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1111信(2012.05.07)

  • バチカンが『国際カリタス』に新規範示す
  • 教皇がドイツ語ミサ典礼書の訳語変更指示
  • 英の神父ジャーナリストに検閲指示
  • オーストリア改革派司祭グループが公然不服従で表彰
  • バチカンのコッホ枢機卿がキュンク教授批判
  • キリスト教とアフリカ伝統宗教の間につながり?
  • 米政府系の放送局がキューバのオルテガ枢機卿を非難
  • 問題のジョーンズ牧師またコーラン焼却
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎バチカンが『国際カリタス』に新規範示す

 【CJC=東京】教皇べネディクト16世は5月2日、『国際カリタス』の新規範と関連諸規定を採択した。カトリック教会の援助・慈善組織として『国際カリタス』は各国の『カリタス』164組織を包括している。
 『国際カリタス』は2004年に教会法上の地位を当時の教皇ヨハネ・パウロ2世によって認められたが、その活動がバチカンの意図から逸脱しているとの疑問が出され、規範などの再検討が2007年に始められた。
 国務省のモンシニョール・オスヴァルド・ネヴェス・デ・アルメイダは、聖座(バチカン)がカリタスの活動を検証、「人道的、慈善活動と配布物の内容が、使徒座と教会の権威に即したものとなるように」注視すると言う。


◎教皇がドイツ語ミサ典礼書の訳語変更指示

 【CJC=東京】教皇べネディクト16世がドイツ司教協議会会長のロベルト・ツォリッチ大司教に、ミサ典礼書に、キリストは「全てのために」ではなく「多くのために」死なれたと変更するよう、個人的に書き送っていたことが明らかになった。
 4月14日付けの書簡で、教皇はドイツ語圏各国の全司教に送ったことも明らかにし、ラテン語の「プロ・ムルティス」は「全てのために」ではなく「多くのために」と訳出するようにとの理由を説明した。
 ツォリッチ大司教が3月、訪独した教皇に、「ドイツ語圏の司教はこの問題については意見が分かれている」と語ったのを受けて、「分裂を避けるために」書き送った、と教皇は指摘する。
 『ローマ・ミサ典礼書』が1960年代にドイツ語へ訳出された際、「多くの」という語は、ヘブル語の「全体」に対応するもの、という「聖書解釈上の合意」があった、と指摘したうえで、「この合意は、もはや存在しない」と教皇は語っている。


◎英の神父ジャーナリストに検閲指示

 【CJC=東京】英北アイルランドでジャーナリスト、キャスターとして活躍していたブライアン・ダルシー神父(御受難会)に、教理や倫理に関する著作や放送内容について、カトリック教会の検閲を受けるようバチカン(ローマ教皇庁)教理省から指示が出された。
 ダルシー神父は、公営BBC放送のラジオ番組『ポーズ・フォア・ソウト』のレギュラーを務めるほか、アイルランドのタブロイド紙『サンデー・ワールド』に寄稿、ベストセラー作家でもある。
 神父は、司祭独身制や避妊に関する教義への反対を公言、聖職者の性的虐待を行った聖職者への対応にも批判的だった。


◎オーストリア改革派司祭グループが公然不服従で表彰

 【CJC=東京】オーストリアの改革派司祭グループ(PI)が、『教会内での自由のためのヘルベルト・ハアク財団』から表彰された。
 PIの指導者、モンシニョール・ヘルムート・シュラーが4月21日、スイスのルツェルンで賞金1万ユーロ(約104万円)を受けた。
 リベラルな神学者として知られるハンス・キュング教授は、PIが「目をつぶること、また目をつぶっている上長に対する、公然と認められ、また不動の不服従というものが、卑屈な、また偽りの服従より高度な服従の形であること」を明らかにした、と称賛した。
 『教会内での自由のためのヘルベルト・ハアグ財団』はスイスの同名の神学者を記念して設立されたもの。


◎バチカンのコッホ枢機卿がキュンク教授批判

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)・キリスト教一致推進評議会委員長のクルト・コッホ枢機卿が、ハンス・キュンク教授(84)を批判した。ドイツ語圏のカトリック者に反ローマ感情を作り出し、第二バチカン公会議への誤解を広めている、と言う。
 「ドイツ語圏に、何よりもまず、公会議が教会の伝統を発展させたのではなく逸脱した、という考えを広めた。この理解が最近の騒ぎを引き起こしている」と枢機卿はイタリアの雑誌『テンピ』とのインタビューで語った。
 キュンク氏は英カトリック週刊誌『タブレット』に、「わたしは、第二バチカン公会議が伝統断絶の行為だなどと断言したことはない。連続と不連続双方を含んだ画期的なパラダイムシフト(常識を覆す思考の枠組み転換)だったのだ」と述べている。


◎キリスト教とアフリカ伝統宗教の間につながり?

 【ナイロビ=ENI・CJC】ザンジバルである宣教師が住民に、神について何か語ってほしい、と言ったところ、即座に「神はとどろく」と答えた。その宣教師は19世紀に「宗教のない未開人」か「原始宗教もない人」に神について語るために海を越えてやって来た。
 種族宗教といったものが無視されたり過小評価されていた時代、アフリカでキリスト教を広めることに宣教師たちは成功していた。しかし近刊『アフリカにおける神の概念』(新版)は、キリスト教が実際には伝統宗教のいくつかの解釈によって助けられている、と指摘する。
 神学者のジョン・サミュエル・ムビティ氏は、アフリカの人たちが、その生活の全局面で神をいかに描き、関係付けるかを詳しく描き出した。「アフリカの文化は口承と象徴的な伝統の上に築かれ、継承されて来た。本書はその伝統の一掬い」とENIニュースに語った。アフリカ人の神理解の豊かさを見る窓だ、と言う。
 アフリカの宗教には、キリスト教やユダヤ教の伝統に通じる特徴が多くある、とムビティは指摘する。それがキリスト教の急速な拡大に貢献してきた。一つの特徴は、神に対する聖書の訳語にアフリカの単語が使われていること。
 アフリカに持ち込まれた聖書は英語が仏語のもので、神学者たちがそれを現地の言語に訳出したが、その際、神については現地語を採用した。ナイジェリアのヨルバ族では、神は「オロドゥマレ」すなわち「全能」と表現されるが、聖書を訳出する際に、神は「オロドゥマレ」と表現されることになった。
 「これは不可避的に、二つの宗教伝統の間の思いがけない出会いを推進する。アフリカの宗教が聖書的伝統に対して『その通り』と言い、それに容易に順応し、また聖書的伝統も、アフリカの宗教の同様の要素について『その通り』と言うのだ」とムビティ氏は同書の序文で指摘している。
 同書(新版)はナイロビのアクトン出版社から刊行された。初版は1970年にロンドンの『キリスト教知識推進協会』(SPCK)から刊行されたが絶版になっている。SPCKは創設1698年。聖公会の宣教組織としては最古のもので、出版活動に従事している。
 同書はアフリカの550種族と言語を取り上げている。初版は300だった。また神については1600の用語を記録している。その中には独立したばかりの南スーダンの例もある。それは人々の宗教に関連してよく使われる「アニミスト」に相当する用語だが、現地では神についての伝統的な名なのだ。参考書目録、索引、付録も増強された。
 ナイロビ大学の哲学・宗教学教授ジェス・ムガンビ氏によると、アフリカの文化と宗教的遺産は神に基礎を置いていると同書は指摘しているが、その神概念は伝統的宗教には存在しないと考えられていたもの。
 「本書はアフリカ文化と宗教的遺産の徹底的な再評価を呼び掛けるもので、それにふさわしい評価を与えようとしている」と同氏は前文に執筆している。
 「数字的には、キリスト教はアフリカとアジアで急成長している。西側キリスト教では見慣れない世界観という文脈からすると、本書は時を得たものだと思う。アフリカのルネッサンスへの重要な貢献だ」と言う。
 キリスト教とアフリカの伝統宗教との出会いを敵対的でなく価値あるものと見ることは容易なことではないが、ムビティ氏は、それが現実だ、と言う。双方の信仰伝統には、その根本的な要素である神について深い疎通性がある、と指摘している。


◎米政府系の放送局がキューバのオルテガ枢機卿を非難

 【CJC=東京】キューバ・カトリック教会の指導者ハイメ・オルテガ枢機卿が共産主義カストロ政権と信教と政治的自由の拡大に協約してきたとして、米フロリダ州マイアミに本拠を置くキューバ向け放送『ラジオ・イ・テレビ・マルティ』が、同枢機卿を抑圧的な体制と共謀する「下僕」と論評した。
 同放送は理事会が大統領府の任命によっており、キューバへのメッセージを届けるという方針は国務省と調整されていることから、今回の論評がオルテガ枢機卿のキューバでの地位に悪影響を及ぼすことで、同国教会の微妙な立場に不支持の信号を米政府が送ったもの、との見方がワシントンなどで出ている。
 同枢機卿は、政治囚の釈放に努め、キューバ政府への不満を持つ市民に小規模ながら比較的安全な場を提供したことで評価されてきた。キューバのカトリック雑誌は、政府批判も公然と行ってきた。しかし枢機卿は、カストロ兄弟の長期統治に手を貸している、とキューバを脱出した難民の評判は悪かった。
 先頃の教皇べネディクト16世のキューバ訪問の際にも、オルテガ枢機卿は、人権擁護や難民保護の姿勢を公に示さなかった、として不満の声が上がっていた。


◎問題のジョーンズ牧師またコーラン焼却

 【CJC=東京】反イスラムの過激攻撃で知られる米フロリダ州グレンスビルのテリー・ジョーンズ牧師が、自ら主宰する教会『ダブ・ワールド・アウトリーチ・センター』で4月28日、イランでの牧師拘束に抗議するため、コーラン数冊を焼却した。教会員ら20人が参加した。
 ジョーンズ氏は、「コーラン裁判」の「判事」となり、イランにユウセフ・ナダルカニ牧師の釈放を要求した。同牧師はイスラム教からキリスト教に改宗したとして2009年10月に逮捕、投獄されている。
 同教会のウエブサイトによると、コーランは灯油に浸されて燃やされた。ムハンマドの肖像画も焼かれた。
 グレンズビル消防署は、教会を告訴した。有罪となれば罰金271ドル(約2万円)が科せられる。
 米国防総省は、コーラン焼却が米軍兵士の生命を危険にさらすことになる、として再考を要請していた。2011年に同氏がコーランを焼却した際には、国際的な反響を呼び、アフガニスタンでは12人が殺害されている。


◆短信◆(CJC)

《中東》
▽イラン・エスファハーンで逮捕されていた牧師ら仮釈放=イラン・エスファハーンキリスト教会のヘクマット・アリニ牧師と信徒9人が2月22日、聖書大量持ち込み容疑で逮捕されていたが、4月30日から5月1日に掛けて、仮釈放された。ただ再召喚の可能性はある。
 キリスト教通信『ファルシ』によると、家族が高額の保証金を支払った。サリニ牧師の場合、5万米ドル(約400万円)相当額が支払われた。保証金が返還されることはまれで、当局者から賄賂を要求されることもあるという。

《欧州》
▽『シルビア・ミシェル賞』候補者をWCRC検討=世界改革教会連盟(WCRC)は、女性指導者として貢献した人を隔年に表彰する『シルビア・ミシェル賞』の候補者を検討している。受賞者には2013年3月、ジュネーブで賞金5000米ドル(約45万円)が贈られる。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(5月6日・休刊)=https://www.cwjpn.com

 =キリスト新聞(5月5日)=https://www.kirishin.com
★平和をつくり出す宗教者ネット10周年="社会と国の「見張り役」"
★日本聖公会東京教区=原発廃止求める要望書
★『たいせつにしたいもの 平和憲法第9条』=NCC平和憲法推進プロジェクト委員会が小冊子
★同志社講座 in Tokyo=本井康博氏「新島襄と八重」語る
★母子生活支援施設「愛の家」が新築=女性3人の働きが福祉事業の拡大へ

 =クリスチャン新聞(5月5日)=https://jpnews.org
★F・グラハム氏 来年各地で大会=11月に札幌・東京・広島など
★札幌、名古屋で新装開店=いのちのことば社・CLC店舗統合
★頑なな新体制に失望...なお変化に期待=第120回拉致祈祷会で横田早紀江さん=「神の力信じて祈るしか」
★ホーリネス教団=教会衰退で「再編委」設置=不祥事防止に「倫理綱領」協議へ
★基督兄弟団=新理事長に小平牧生氏=他教団と震災救援協力を感謝


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