世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1110信(2012.04.30)

  • 聖書のアラビア語訳出への疑問噴出
  • スーダン長老教会襲撃に世界の教界が反発
  • ナイジェリア大学の礼拝襲撃で約20人死亡
  • ナイロビの教会礼拝襲撃では1人死亡
  • マリで誘拐されたスイス宣教師釈放
  • 中国の司教叙階は三自愛国会が支配
  • 中国でイースターにカトリック教会受洗2万2000人以上
  • バチカン秘密文書館の歴史検証
  • クライストチャーチの仮設大聖堂建設へ
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎聖書のアラビア語訳出への疑問噴出

 【CJC=東京】聖書翻訳で知られる大組織『ウイクリフ聖書翻訳協会』(本部=米フロリダ州オーランド)が、イスラム圏諸国向けにアラビア語へ訳出する聖書で、「父、子、聖霊」の三位一体という重要なキリスト教の教義を外そうとしたことに批判を受け、再検討を進めている。
 批判は、「神」を三位の1位格とする際に、「息子」の代わりに「メシア」を、「父」の代わりに「主」を使うことが、教義をひどくゆがめる、と言うもの。
 イスラム教徒と広範に協働するキリスト教団体『ホライズンズ・インターナショナル』会長のジョージズ・ハッスニー牧師は、「もしも『息子』を外すなら『父』も外さなければならないし、そうなると、創世記からヨハネの黙示録まで聖書全体の筋が解体される」と言う。同氏自身もアラブ語への訳出者。
 ウイクリフ側は、翻訳作業に論議を避けることはしなかったし、福音を最も正確に反映する言葉を選んで来た、と主張する。「イスラム教徒を不快にさせない翻訳をしようとしている、と言われるが、それは本当ではない。神の言葉の正確な翻訳に取り組んでいるのだ。それが最高の価値なのだ」とウイクリフのボブ・クレソンCEOは言う。
 聖書としてまとめられた古代の文書集を翻訳するということは決して容易ではない。ヘブル語やギリシャ語の原典を新たな国に持ち込んだキリスト教の初めの数世紀からジェームズ王版(欽定訳)のシェークスピアが用いた言語を現代の読者にも理解しやすくすることにまで、聖書の用語をめぐる議論は絶え間がない。
 この3月、ウイクリフは、翻訳方策に対して世界福音同盟(WEA)が独自の評価を行うことに同意した。それはウイクリフと関連団体が「神の子」と「父なる神」という用語を不当に置き換えているかどうか判断するために専門家を任命する、というもの。
 この決定は、訳語を非難する批評家が増えてきたのを受けて、キリスト教神学を根本的に変えるものだという論争を避ける試み。論議は、インターネット上での会議や大組織からの懸念に配慮を求めるオンラインの請願にまで広がっている。
 ペンテコステ派では最大の『アセンブリーズ・オブ・ゴッド』は、ウイクリフとの長年にわたる関係を見直す、と発表している。
 様々な教会や宣教団体と広範に協働しているウイクリフとしては、WEAのパネルが評価を発表するまで、論議を呼ぶ翻訳を公表しない方針。
 クレソン氏は、「神聖な家族の用語」として学者には知られている「父なる神と神の子」が文化によっては翻訳しても意味がない、と言う。イスラム教の教えでは、神が人間の家族と同様な関係に入れるという考えを拒否するので、そのような文化にある人たちは、この訳語を即座に回避するだろう、と例を上げた。


◎スーダン長老教会襲撃に世界の教界が反発

 【CJC=東京】スーダンのハルツームにある福音長老教会の聖書学校が4月21日、襲撃され破壊された。南スーダンとの抗争激化の一環と見られ、世界教会協議会(WCC)などが抗議している。
 イスラム教過激派と見られる500人近くが、市内ウエスト・ゲリーフ地区の教会敷地に侵入、聖書を燃やし、建物や什器を破壊、略奪した。イスラム教が優勢なスーダンでキリスト者の間に恐怖が深刻化している。
 世界教会協議会(WCC)と全アフリカ教会協議会(AACC)は24日、共同声明で、重大な懸念を表明した。
 政府と反政府勢力の抗争が続くダルフール県ニャラ町で、公安当局がスーダン教会協議会の財産を接収したとも報じられている。


◎ナイジェリア大学の礼拝襲撃で約20人死亡

 【CJC=東京】ナイジェリア北部カノの『バイエロ大学』で4月29日午前8時半ごろ、講義室の一つで礼拝が行われていた最中に、武装集団が自動車1台とバイク2台で現れ、銃撃を加えたり手製爆弾4〜5個をを投げたりした。少なくとも20人が死亡した。負傷者数は明らかになっていない。
 大学は休暇中で、礼拝に参加した信者以外、キャンパスに学生はほとんどいなかったという。
 犯行声明は出ていないが、イスラム過激派『ボコ・ハラム』による襲撃の可能性がある。
 ボコ・ハラムは現地語で「西洋の教育は罪」を意味し、全土にシャリア(イスラム法)の導入を要求。国際テロ組織『アルカイダ』との連携も指摘されている。


◎ナイロビの教会礼拝襲撃では1人死亡

 【CJC=東京】ケニア・ナイロビの『奇蹟の教会・神の家』で4月29日、手投げ弾が爆発し、少なくとも1人が死亡、16人が負傷した。警察は「礼拝が終わりかけていた時、覆面した1人が手投げ弾を投げて逃亡した。追いかけようとした教会員に発砲し、付近の市場の混雑に紛れ込んだ」と述べた。
 ケニアでは同様の事件が続発しており、いずれもイスラム教過激派が実行したものと見られている。


◎マリで誘拐されたスイス宣教師釈放

 【CJC=東京】キリスト教迫害情報専門の『コンパス』通信によると、マリ共和国で4月15日、スイス人女性宣教師ベアトリス・ストックリーさんがイスラム系武装組織に誘拐されていた事件で、スイス外務省は24日、ストックリーさんが無事釈放されたと発表した。
 釈放されたストックリーさんは、バーゼル出身で40歳前後。マリの都市トンブクトゥで数年間、宣教師として働いていた。
 現地の保安当局によると、女性を誘拐したのはイスラム系武装組織アルカイダの北アフリカ系勢力AQIM。誘拐後、別の武装組織『アンサー・ダイン』と衝突。銃撃戦後、女性は『アンサー・ダイン』に引き渡された。
 同派はストックリーさんを釈放する意向があると発表、話し合いの後、ストックリーさんはヘリコプターで隣国ブルキナファソに運ばれた。身代金の要求や支払いはなかったという。ストックリーさんはトンブクトゥに残りたいと話している。


◎中国の司教叙階は三自愛国会が支配

 【CJC=東京】4月25日、中国天主教会(カトリック)長沙教区司教にテモテ・ク・アイレン司教が叙階された。バチカン(ローマ教皇庁)の承認を得たものだった。しかし叙階式典には、破門された安徽省蕪湖(ウーフー)のリュー・シンホン司教、その地位が不明確な北京のヨセフ・リ・シャン司教などバチカンからすれば「不法」な司教も参列していた。政府公認の天主教三自愛国会の介入があったと見られる。
 愛国会のリウ・ユアンロン副会長も式典に参列、同会と国務院宗教局の承認メッセージを読み上げた。当局者が多数参列した一方、信仰者の参加は少なかった。
 教皇べネディクト16世は、聖座(バチカン)の管轄に挑戦している三自愛国会の権威をカトリック者が受け入れることは不可能、と指摘している。
 聖座の承認なしの叙階式典に参列した司教は、強制下の行為でない限り、自動的に破門となる。北京のリ・シャン司教は、明らかに違法叙階に参加を強制された。リウ・シンホン司教は自身がバチカンの承認なしに叙階されたことで破門処分となった。
 かつて中国で宣教に従事していた、『アジア・ニュース』のベルナルド・セルヴェッレラ神父は、政府の高圧的な介入は「毛沢東主義が中国では今も健在」なことを示していると言う。
 共産党は、司教に給料と賞与を提供、「中国政府の下級役人扱い」しており、新しく司教を教皇が選任した場合、共産党は、その司教に「3月19日の南充と今回の長沙の叙階のように、違法・破門司教の存在を認めることを強要する。この2人は良い牧者ではある。しかし叙階に招くべき人を選ぶのは政府なのだ」と語った。


◎中国でイースターにカトリック教会受洗2万2000人以上

 【CJC=東京】中国天主教会(カトリック)は4月8日のイースター(復活祭)に受洗した人が2万2104人だった。河北省の『信仰調査センター』が報じた。ただ未報告の教区もあるため、実数はさらに増える可能性がある。約4分の3が成人。
 調査には香港の受洗者3500人も含まれている。
 教会側はイースターの受洗者を低く見積もっていたので、この数字は予想外。上海教区で見ると年間1500人の予想に対し実際には379人が受洗した。


◎バチカン秘密文書館の歴史検証

 【バチカン市=ZENIT・CJC】バチカン(ローマ教皇庁)で『バチカン秘密文書館』の歴史を検証する会議『レリギオサ・アルキヴォルム・クストディア』が、バチカン図書館400周年記念事業の一環として立ち上げられた。
 同文書館は聖座に関係のある全ての記録を収納している。
 同会議は、文書館の歴史だけでなく、文化的重要性や最近の研究結果なども検証する。
 「秘密」という名から文書館は不思議なオーラに囲まれてきたが、それは誤解からきたものと言える。
 1611年に教皇パウロ5世によって設立された文書館は元来、『カノッサの屈辱』で神聖ローマ皇帝ハインリギ4世の破門を解除したグレゴリウス7世(在位1073〜1085年)から出された文書を収録していたた。
 セルギオ・パガノ館長は、バチカン放送で、文書館には「歴代教皇が受発信した書簡、教皇空位期間管理局の文書、教皇大使や教皇使節からの外交文書、評議会やシノドスの文書がある」と語った。書棚は最初、延べ400メートルだったが、現在では85キロに達している。
 1881年、教皇レオ13世は、文書館を学者の研究のために開放した。ドイツの歴史家アーノルド・エッシュによると、「中世に関しては世界で最も立派な文書館。何よりも、普遍的な価値と重要性のある資料を集めた文書館」。
 学者たちの努力にも関わらず、文書館の大部分にはまだ研究が及んでいない。ほとんどが教皇大使が発したもので、しかも第二次大戦時代以後のものだという。


◎クライストチャーチの仮設大聖堂建設へ

 【CJC=東京】2011年2月、大地震に見舞われ被害の大きかったニュージーランド・クライストチャーチの大聖堂が再建を前に、材木、構造用鋼材,ボール紙の筒による仮聖堂を建設する。現地の英国国教会通信『アングリカン・タオンガ』が報じた。
 『トランジショナル・カシドラル』(過渡的大聖堂)と呼ばれ、座席数700。工費450万ニュージーランド・ドル(約3億円)で、ラティマー・スクエアのセント・ジョン教会跡地に建設される。同教会も地震で倒壊した設計は日本の建築家、坂茂氏。
 建設担当グループは、「この町の将来への希望のシンボル」にと意気込んでおり、クリスマスまでに完成させる、と語った。20年は使用可能とされており、本聖堂が出来るまで、礼拝や、コンサート、展覧会やコミュニティ活動に使われ、その後はセント・ジョン教会が使用する。同教会は現在、礼拝を高校などで守っている。


◆短信◆(CJC)

《アジア》
▽レディー・ガガの韓国公演、基督教総連合会が反対=韓国基督教総連合会は4月26日、ソウル蚕室総合運動場で行われる米国の歌手レディー・ガガの公演について、「同性愛美化」「キリスト教冒涜」と批判、反対する声明を発表した。
 声明では「同性愛を露骨的に美化し、猟奇的なパフォーマンスでキリスト教を侮辱する」「芸術ではなく、低俗なわいせつ行為」と非難した上で、公演の取り消しを求めている。
 同連合会は、公演を主催した『現代カード』に対して不買運動も辞さないという姿勢。
 26日には運動場の前でキリスト教団体による反対デモが行われた。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(4月29日)=https://www.cwjpn.com
★教皇=「世界召命祈願の日」メッセージ=神の愛に心開く土壌を
★バチカン・日本 外交樹立60周年=教皇就任7周年と併せ大使館で祝賀会
★「災害と心のケア」=カトリック医師会が講演会=仙台
★平和をつくり出す宗教者ネット=祈り、行動して10年
★WCRP日本委員会=新体制スタート

 =キリスト新聞(4月28日)=https://www.kirishin.com
★2016年版新聖書「自然で美しい日本語」=各書の担当51人を発表=原語翻訳者と日本語担当者協働=日本聖書協会
★NCC新役員が始動=「共に歩み続ける」テーマに
★袴田事件=DNA型不一致=「今こそ司法の正義実現を」
★明学と大槌町が協働連携=中学生31人が「虎舞」披露
★八木谷涼子さんが朝日文庫から「キリスト教大研究」増補改訂

 =クリスチャン新聞(4月29日)=https://jpnews.org
★「震災経て新たな音奏で」=津波被害のオルガン修復=青森の牧師が釜石の教会へ
★本郷台キリスト教会=被災した子らの心のケアのため=カンンセラー養成講座5月開催
★教会の危機管理と法律問題重要=チャーチリーダーズ・フォーラムで焦点に
★暗い世に復活の希望伝え続け=首都圏イースターのつどい半世紀
★気仙沼市の被災印刷所で「復興トラクト」印刷開始


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