世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1108信(2012.04.16)

  • 女性叙階でオーストラリア聖公会の分裂露わ
  • 米テネシー州で「進化論に異議」認める法案成立へ
  • アトス山のトップが3カ月拘束の後に釈放
  • 修道院返還でエキュメニカル総主教座が苦情
  • キューバで反体制派43人逮捕
  • バチカン図書館の蔵書がデジタル化
  • シアトルの大聖堂にスプレーでいたずら描き
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎女性叙階でオーストラリア聖公会の分裂露わ

 【CJC=東京】オーストラリア聖公会(英国国教会)に3人目の女性主教としてジェニーブ・ブラックウエル主教が誕生したが、3月31日の叙階式典には管轄者であるシドニー教区のピーター・ジェンセン大主教は参加しなかった。同大主教は、女性聖職への強硬な反対者として知られる。
 ブラックウエル主教は、ニューサウスウェールズ州では最初の女性主教。キャンベラ西方のウォガウォガ主教として、キャンベラとゴールバーン教区のスチュアート・ロビンソン主教によって任命された。
 ブラックウエル主教は、メソジスト教会牧師を父に持ち、合同教会(ユナイティング・チャーチ)で教職になったが、大学で勉学中に聖公会に加入した。1989年から92年までムーア神学大学で勉学、93年にシドニーで執事に任職している。
 ジェンセン大主教は、シドニー教区の全主教と共に「良心を理由」に叙階式典に参列しなかった。そしてニューサウスウェールズ州では第2位のニューカッスル教区のブライアン・ファラン主教に代理を依頼した。
 オーストラリアでは2人目の女性主教メルボルン教区のバーバラ・ダーリン主教は、叙階式典で、按手した主教18人の中の1人だった。


◎米テネシー州で「進化論に異議」認める法案成立へ

 【CJC=東京】米テネッシー州で、進化論などに異議を唱える教育を公立学校で認める法案が州議会の承認を得て、共和党のビル・ハスラム州知事の署名を待っている。AFP通信が報じた。
 法案は、気候変動や進化論など一般に認められている科学的なテーマについて、公立学校の教室で教師が異論を唱えることを認めるもの。成立すればテネシー州は、聖書における『天地創造説』を支持する法律を持つ9番目の州になる。
 テネシー科学教員連盟と米国自由人権協会テネシー支部は、法案が成立すれば教育者が生徒に疑似科学的な考えを教えることが法律で保証されてしまう、とハスラム知事に拒否権発動を求めている。
 法案推進者らは「天地創造説を主張するより、むしろ『インテリジェント・デザイン』を主張している」と言う。


◎アトス山のトップが3カ月拘束の後に釈放

 【CJC=東京】正教会の『聖地』とされるギリシャのアトス山にある20修道院の主席を務めるヴァトペディ修道院のエフライム院長は、脱税容疑で逮捕され、アテネのコリダロス拘置所に留置されていたが3月30日釈放された。
 現地紙『イ・カシメリニ』によると、エフライム院長は保釈金30万ユーロ(約3200万円)を支払って、31日修道院に戻った。同紙は、同院長は土地交換問題で横領、脱税したと告発されたもので、釈放を「生神女(処女)マリアの奇跡」と言い、帰還の際には修道士や巡礼数百人が歓迎した、と報じている。
 アトス山を中心としたアトス半島は面積約380平方キロ。4世紀ごろから修道者が住み着いたとされるが、9世紀に入って共同居住型の修道院が建設されるようになった。現在はコンスタンノープルのエキュメニカル総主教庁の管轄下にあり、行政上の主席は、最大規模のラヴラ、ヴァトペディ、イヴィロン、ヒランダルの5修道院から交代で選出される。
 控訴裁判所は、3カ月にわたった拘束は、被告に理性をもたらし、再犯することはないだろう、との結論で釈放を決定した、と明らかにしている。
 ギリシャ各紙は、今回の拘束は、エキュメニカル総主教座とモスクワ総主教座との主導権争いが背後にある、と見ている。


◎修道院返還でエキュメニカル総主教座が苦情

 【CJC=東京】ENIニュースによると、正教会コンスタンチノープルのエキュメニカル総主教座は、トルコ政府に接収されたイスタンブール近郊ヘイベリアーダ島のハルキ修道院返還問題で、政府が隣国ギリシャに居住するイスラム教徒の処遇と関連させようとすることは、受け入れられない、とドシテオス・アナグノストプウロス報道担当が明らかにした。「ハルキ修道院問題は、総主教座、アンカラ(トルコ政府)と欧州連合(EU)の間のことであり、アテネ(ギリシャ政府)は関係ない」と言う。
 3月末、トルコのエゲメン・バギス欧州連合担当相が、ハルキ修道院返還は、正教会が支配的なギリシャでイスラム教徒の権利問題が改善されれば、トルコにとって「脅威にならない」と思う、と語っている。日刊紙『ヒュリエト』が報じたもので「イスラム教の兄弟姉妹の問題が、トルコにおける正教徒の問題に加えて、解決されることを望む」と言う。
 トルコではイスラム教徒主導のレジェップ・タイップ・エルドアン政権は、2015年までのEU加盟に備えて少数派宗教者の権利改善に取り組んでいるが、キリスト者差別という批判に直面、またキリスト者共同体への攻撃阻止にも失敗している。
 2009年4月、バラク・オバマ米大統領は、トルコの国会議員に宛て、1844年に設立され、1971年に国家教育省により接収された神学校の再開を要請しており、これが「テストケース」とされている。3月26日、オバマ大統領は、韓国ソウルで行われた核安全保障サミットで、「宗教的少数派保護」への努力と、「ハルキ神学校再開の決断」についてトルコ首相に歓迎の意向を示した。


◎キューバで反体制派43人逮捕

 【CJC=東京】米福音派系CNA通信によると、『キューバ人権委員会』は、反体制派43人が4月2日、サンチャゴ・デ・クーバで当局に逮捕された、と4日伝えた。女性10人と男性33人で、ほとんどが穏健民主化路線の『キューバ愛国連合』のメンバー。教皇べネディクト16世訪問後の新たな抑圧の一環と見られる。政治犯として訴追されていたホセ・ダニエル・フェレル氏とベルキス・カンティーヨ夫人も含まれている。
 今回の抑圧は、2日朝、活動家10人が「アンドレス・カリオン・アルヴァレス、ロゲリオ・タビオ・ロペス、ビスマルク・ムステリエ・ガラン氏の逮捕に平和的抗議を計画して」エル・カネイ町のギエルモ・コバス氏宅で会合している時から始まった。アルヴァレス氏は、教皇がサンチャゴ・デ・クーバでミサを行った際、面前で「共産主義打倒」を叫んで逮捕された。ロペス氏は3月にグアンタナモの米軍基地付近で、ガラン氏はパルマ・ソリアノで逮捕されている。
 同様の抗議が行われた所に国家警察の手入れがあり、フェレル氏宅では、同氏夫妻以外に5人が逮捕された。パルマ・ソリアノでは26人、ヴィスタ・エルモサでも10人が逮捕された。
 フェレル氏は、2003年「暗黒の春」事件で逮捕され、禁固25年に処されていたが、キューバ教会の介入により11年釈放された。


◎バチカン図書館の蔵書がデジタル化

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)機関紙『ロッセルバトレ・ロマノ』によると、バチカン図書館所蔵の写本8万点以上と、古版本8900点が保存のためデジタル化される。
 英オックスフォード大学の『ボードリアン図書館』と提携して全体で150万点以上をデジタル化する。レナード・ポロンスキー氏が設立した英ポロンスキー財団が資金を提供、5年がかりの計画。
 デジタル化によって、研究用のコピーは敏速に提供出来、現物が劣化してもその影響を受けることはない。バチカン図書館のデジタル化計画の中には、ヘブル語、ギリシャ語の写本や、挿絵入り新約聖書も含まれるという。


◎シアトルの大聖堂にスプレーでいたずら描き

 【CJC=東京】米ワシントン州シアトルのカトリック教会セント・ジェームス大聖堂が4月8日の復活祭の朝、スプレーでいたずら描きされているのをミサに来た教会員によって発見された。教会関係者がスプレー・ウオッシャーで除去に努めた。警察は犯人を捜査中。
 ピーター・サーテン大司教は、悲しい、と言う一方、教会員は「バンダル」(破壊者)を許し、その人たちのために祈る、と語った。同大司教は、ワシントン州上院の公聴会で、同性間結婚に反対との証言を行っており、それへの反発がいたずら描きにつながった可能性もある。


◆短信◆(CJC)

《欧州》
▽教皇、9月にレバノン訪問=教皇べネディクト16世が9月14日から16日までレバノンを訪問する。レバノン司教協議会が先頃発表した予定をバチカン(ローマ教皇庁)が確認した。
 この2月、エルサレムのラテン典礼カトリック教会のフアド・トゥワイ総大司教は、教皇が9月に、中東司教会議の働きをまとめた使徒的勧告を公表のため中東訪問することを明らかにした際、レバノンも訪問するとの期待が高まっていた。
▽ダブリンの国際聖体大会に教皇は出席せず=アイルランドのダブリンで6月に開催される第50回『国際聖体大会』に、マルク・ウェレ枢機卿が、教皇の代理として出席する、とバチカン(ローマ教皇庁)が発表した。
 昨年まで、アイルランドの教会指導者は、教皇の出席を想定、バチカン当局者も打ち合わせのために訪問したとも伝えられていた。しかし教会の性的虐待問題が相次いで明らかになり、アイルランド政府とバチカンとの間の緊張も高まったことから、教皇訪問への期待は急速に薄れていた。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(4月15日)=https://www.cwjpn.com
★教皇「復活祭メッセージ」=主の復活が世界を変える
★基地のない沖縄をめざす宗教者の集い=泡瀬干潟埋め立ての問題学ぶ
★4ベース合同で「グルメ祭り」=岩手・釜石 仮設住宅に500人来場=高校の企画が発展=札幌・長崎・大阪...各地の名物に列も
★日本クリスチャン・アカデミー関東活動センター=教派超え、神学生交流=鎌倉・イエズス会日本殉教者修道院
★カリタス事務所破壊=アフリカ西部マリ=北部の反政府勢力

 =キリスト新聞(4月14日)=https://www.kirishin.com
★東日本大震災国際神学シンポジウム=いかにして立ち上がるか=米フラー神学校と救援連絡会などが共催=これからの100年見据え
★「被災地に届け私たちの思い」=上智大=僧侶玄侑宗久氏が講演
★大谷隆夫牧師ら威力業務妨害で有罪=「投票所でのデモは威力」=大阪地裁
★米国教会の献金額が再上昇へ=「携帯」などオンラインも影響か
★アパルトヘイト非難の声明採択に尽力=改革教会の指導者エドモン・ペレ氏死去

 =クリスチャン新聞(4月15日)=https://jpnews.org
★キリスト教ゆかりの地 韓国・麗水市で世界博覧会=地元教会が福音エキスポ
★聖学院大=「こども心理学科」開設=被災地でボランティア実習も
★明治学院大学=大槌町と協働連携協定
★「アラビア半島の全教会を破壊せよ」=サウジ高位聖職者が布告
★ドイツ新大統領に旧東独出身ヨアヒム・ガウク牧師選出


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