世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1107信(2012.04.09)

  • 受難週から復活祭へ
  • バチカンが仏教徒に「若者に正義と平和教える責任」強調
  • エキュメニカル総主教がギリシャ教会を非難
  • 米カリフォルニア州のキリスト教系大学で銃乱射
  • 米大学の乱射事件は学生たちを並ばせて殺害
  • ナイジェリアの教会近くで爆発し20人死亡
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎受難週から復活祭へ

 【CJC=東京】復活祭直前の日曜日『受難の主日』(枝の主日)の4月1日、教皇ベネディクト16世はバチカンのサンピエトロ広場でミサを捧げた。
 この日はカトリック教会の各教区で『世界青年の日』が記念されたこともあり、広場にはローマ教区の若者たちが多数集まった。
 ミサの説教で教皇は、『受難の主日』を聖週間・復活祭への大きな扉として示しながら、聖書の言葉を完成し、十字架にかかるためにエルサレムに上がるイエスの姿、その十字架を王座とし、あらゆる時代の人々を引き寄せ、すべての人々に贖いの恵みを与えるイエスの愛を観想するように訴えた。
 教皇は広場の若者たちに向け、この『受難の主日』を、主に最後まで従うことを受け入れる「決意の日」とするよう招いた。
 聖木曜日の5日午後、教皇は、伝統に従い、ローマ教区の司教座聖堂であるラテランの聖ヨハネ大聖堂で『主の晩餐』のミサを捧げた。続く洗足式で、教皇はローマ教区の司祭12人の足を洗った。このミサで集められた献金は、シリアの難民の人道支援に当てられる。
 イエスの十字架上での死を記念する聖金曜日の6日、教皇は伝統の宗教行事を行った。
 夕方、教皇はサンピエトロ大聖堂で主の受難の儀式を司式した。『ことばの典礼』に続き、教皇付き説教師ラニエーレ・カンタラメッサ神父が説教した。
 夜にはローマ市内のコロッセオで教皇による十字架の道行きが行われた。毎年、コロッセオでの十字架の道行きのために、黙想と祈りのテキストが用意されるが、今年は『フォコラーレ運動』の会員夫妻によって、家族をテーマとした黙想が書き下ろされた。
 十字架の道行きの終了後、教皇は、無理解や分裂、子どもの問題、経済危機の影響による失業など、多くの困難に直面する現代の家族に対し、苦しみを乗り越えるために、十字架上のキリストを見つめるようにと説教した。
 7日、エルサレムの聖墳墓教会では、毎年のように、復活祭の前日『聖火の土曜日』と呼ばれるこの日、ギリシャ教会大主教が墓と伝えられる所に入り、祈りを捧げ、復活のキリストを礼拝すると、奇跡としてキャンドルが点された。
 儀式は何世紀にもわたって行われてきた。始まりは9世紀にまでさかのぼる。この奇跡に預かろうと教会に集まってきた巡礼数千人を通じてキャンドルの灯火はエルサレム中に広められた。まず墓から取り出された光は、人から人へ、キャンドルからキャンドルへ伝えられ、世界に広められて行く。様々な伝統に立つ礼拝者が闇の中、キャンドルを持って道路に並び、イエス・キリストの光を広めて行く光景は、イエスのメッセージを人から人へ平和に広めて行くことを想起させた。
 エルサレムは、必ずしも喜び一色ではない。イスラエル政府の規制で、ヨルダン川西岸とガザのパレスチナ自治区に居住するキリスト者5万人の中で、受難週に検問所で、エルサレム入りを認められるのは僅か2000人から3000人。市内に入っても各種の検問所があり、聖墳墓教会にまでたどり着くのは容易ではない。
 8日、復活祭の当日、教皇は、バチカンからローマと世界に向けて復活祭のメッセージと祝福を送った。前夜、サンピエトロ大聖堂で復活の聖なる徹夜祭を行った教皇は、一夜明け、広場で復活の主日のミサを捧げた。続いて正午、教皇は大聖堂の中央バルコニーから、復活祭のメッセージを読み上げた。
 教皇は、わたしたちの人間性の中に入ってこられた神、善意と真理と憐れみそのものであるキリストは、十字架の死の試練を通過し、わたしたちに生命の王国に向かう道を開かれたと述べ、復活され、今も、いつもわたしたちのそばに現存するキリストに、希望の力を見出していこうと呼びかけた。そして、復活のキリストが、特に中東とアフリカの人々の平和と安定への努力を励ますようにと祈った。
 メッセージの後、教皇は世界の65カ国語で主の復活のお祝いを述べた。教皇は日本語でも「ご復活祭おめでとうございます」と挨拶した。
 最後に、教皇はローマと世界に向けての祝福『ウルビ・エト・オルビ』を送った。


◎バチカンが仏教徒に「若者に正義と平和教える責任」強調

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)の宗教間対話評議会が仏教徒に向けて、4月8日の『ウェーサク祭』(花祭り)に際し、「宗教間対話を通じて若者に正義と平和に関して教える責任を分かち合おう」というメッセージを4月3日発表した。
 『ウェーサク祭』はインドの月名のウェーサク月に行われる南方仏教(上座部仏教)の祭典。ブッダ(釈尊)の生誕・成道(悟り)・入滅を合わせて記念する。祝う日は、南アジアでも地域によって異なり、日本では、釈尊の誕生のみを『灌仏会』(花祭り)として8日に祝っている。
 メッセージは、同評議会議長のジャン=ルイ・トーラン枢機卿、書記のピエール・ルイジ・チェラータ大司教が署名しており、宗教信仰と他者の実践を尊重、理解する教育の必要を強調している。
 「今日、世界中の教室で、異なる宗教を信じる生徒が隣合わせに座り、一緒に、また互いに学ぶことがますます多くなっている。このような多様性は、課題を与えるとともに、若者に次のことを教育する必要性を深く考察するよう促す。すなわち、他の人々の信じ、実践する宗教を尊重し理解すること。自らの信仰理解を深めること。責任ある人間としてともに成長すること。そして、紛争を解決し、友愛、正義、平和、真の人間性の発展を推進するために他の宗教と進んで協力すること」とメッセージは指摘する。
 今年のメッセージは、原文の英語の他、イタリア語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、ポルトガル語、日本語、中国語(繁体字、簡体字)、タイ語、ベトナム語、韓国語の訳で発表、英語原文は、機関紙『ロッセルバトレ・ロマノ』に掲載された。


◎エキュメニカル総主教がギリシャ教会を非難

 【CJC=東京】世界正教徒の霊的指導者がギリシャ正教会に、同教会の1指導者の反エキュメニカル声明を非難する書簡を送った。ENIニュースが報じた。
 「エキュメニズムに批判的な意見はギリシャ教会内部で長く聞こえてきた。これまでは抑制されたものだったが、最近では認められないレベルになっている」とコンスタンティノープルのエキュメニカル総主教バルトロメオス1世は指摘している。「そのような意見は、正教会の精神に反しており、苦痛と悲嘆とを招くものだ。広くは諸教会の一致に、特にわたしたち聖なる正教会の一致に、予期しない結果をもたらす危険を冒している」と言う。
 『アテネと全ギリシャのイエロニモス大主教』に宛てた書簡で、バルトロメオス1世は、特にピレウスのセラフィム(メンツェロプーロス)府主教が、ローマ教皇、プロテスタント、ユダヤ教徒、イスラム教徒やエキュメニストを「呪われたもの」とした最近の声明に懸念を表明している。
 正教会の日曜日にあたる3月4日の声明で、セラフィムは、「堕落した大異端」、教皇べネディクト16世、その同一教派に属する人々、また「宗教改革によって派生した全ての異端」、「ユダヤ教のラビとイスラム教徒」、「キリスト教内の、また諸宗教間の混交的なエキュメニズムという異端説を教える人」たちを呪った。
 バルトロメオス1世は、イスタンブールに本拠を置くエキュメニカル総主教座とギリシャ教会が、世界教会協議会など超教派組織では「正教に対するエキュメニカルな証」として互いに支持し合う伝統があった、と言う。
 正教徒でない人々についても言及して、「このような正当でない危険な声明を否定し、反対の行動を起こすよう促す。それらの声明は、『異端説』との双方向的、多角的な神学対話に参画するために、正教諸教会によって共同して採られた決定に反する」と指摘した。ギリシャでは憲法が正教を「主要な宗教」と認めており、宗教的少数派はしばしば、ギリシャで疎外されることに苦情を述べていた。
 セラフィムの指摘は、テッサロニキのアリストートル大学教授陣からも批判された。教授陣は、ギリシャ教会総会に宛てた書簡で、「異なった宗教の人たちに対して出された1主教の正当な理由のない乱暴な攻撃から霊的、司牧的利益を識別したり推測することは不可能だ」と言う。


◎米カリフォルニア州のキリスト教系大学で銃乱射

 【CJC=東京】米カリフォルニア州オークランドにあるキリスト教系『オイコス大学』で4月2日、男が銃を乱射し、7人が死亡、3人が負傷した。同日午前10時33分ごろ、看護学科の教室で銃撃事件が発生したと警察に通報があり、特別機動隊(SWAT)が出動した。
 『オイコス大学』は、韓国系米国人が多く通う私立校。神学、音楽、看護学、東洋医学の各専攻があり、英語と韓国語で教えている。在サンフランシスコの韓国総領事館は現地に領事を派遣するなど状況把握に努めている。日本総領事館によると、日本人が巻き込まれたとの情報はない。
 10年前に同校を創設した韓国系のジョン・キム牧師は、地元紙『オークランド・トリビューン』に対し、学校の建物内で約30発の銃声を聞いた、と語った。地元紙『サンフランシスコ・クロニクル』が、負傷者として伝えたところでは、容疑者の男は授業中の教室で至近距離から1人の胸を銃で撃ち、続けて教室内で銃を乱射した。
 事件当時教室で英語の授業をしていた教員ルーカス・ガルシア氏はCNN系列局に「近くの看護学教室から6回ほど銃撃音が響き、だれかが『銃を持っている』と叫ぶのが聞こえた」と語った。同氏は銃撃音の続くなか、学生らを外へ避難させたという。
 容疑者の男は現場から8キロほど離れたアラメダのスーパーマーケットで逮捕された。オークランド市警察によると、拘束されたのは同大学看護学科の元学生で韓国系のワン・L・ゴー容疑者(43)。ゴー容疑者は単独で教室を訪れ、教室内で発砲し始めたという。地元メディアは、ゴー容疑者が借金を抱え、数カ月前に同大学を退学したと報じている。
 同大学は、オークランドの『プレイズ・ゴッド・コリアン教会』とサンフランシスコの『シェパード大学』と提携関係にある。


◎米大学の乱射事件は学生たちを並ばせて殺害

 【CJC=東京】米カリフォルニア州オークランドのキリスト教系オイコス大学で4月2日発生した銃乱射事件で、容疑者の韓国系米国人の男(43)は、犠牲者を並ばせて処刑するような形で殺害していたことが、現地オークランド警察の記者会見で明らかになった。
 ハワード・ジョーダン署長は地元テレビ局に、容疑者は英語がうまく話せないことをからかわれ、数週間前から犯行を計画していた、と語った。
 この事件でナイジェリア、ネパール、韓国から来ていた女性6人と男性1人が死亡した。犠牲者は全員が学生だった。
 現地メディアは容疑者の氏名をワン・ゴーと報じたが、韓国の聨合ニュースはコ・ウォンイルと報じている。


◎ナイジェリアの教会近くで爆発し20人死亡

 【CJC=東京】AFP通信によると、復活祭(イースター)の4月8日、ナイジェリア北部の経済・文化の中心地カドゥナの教会近くで爆弾を積んだ車が爆発し、警察によると20人が死亡、30人が負傷した。
犯行声明は出ていない。
 中部のジョスでも同日、袋に入れて道路脇に置かれていた爆弾が爆発し、警察によると1人が負傷した。
 一方、北東部のマイドゥグリでは、軍がイスラム過激派『ボコ・ハラム』(西洋の教育は罪の意)の隠れ家を急襲し、最近発生した市場の襲撃事件に関与したとされる3人を殺害し、2人を逮捕した。


◆短信◆(CJC)

《欧州》
▽ルーテル2組織が宗教改革記念行事など共催準備=ルーテル世界連盟(LWF)と国際ルーテル評議会(ILC)は3月27日から29日に掛けてジュネーブで年次会議を開催、席上、2017年が『宗教改革』500周年に当たることから、記念行事を共催する方向で検討を進める意向を固めた。
 LWFの発表によると、両組織は、2008年の前回会合以後、加盟教会の間に見られた積極的な展開について協議した。『宗教改革』記念に関しては、セミナー、教育的な催し、出版などでは共催を目指し、準備中の計画についてはさらに互いに検討を進めることで合意した。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(4月8日)=https://www.cwjpn.com
★フランシスコ会訳の『聖書』=点訳・音訳に着手=ロゴス点字図書館
★新しい動きなど報告=仙台教区サポート会議
★教皇=キューバ訪問=信教と人権の尊重促す
★国家指導者に依頼=教皇、カストロ兄弟と会談=聖金 今年は休日に
★バチカン=花祭りにメッセージ=今年は復活祭と同日

 =キリスト新聞(4月7日)=https://www.kirishin.com
★NCC新議長に小橋孝一氏
★プロテスタント校・カトリック校が合同フェア=「よく生きる力」つける教育を=蓮舫氏、辛酸氏らも在学経験語る
★『ふしぎなキリスト教』記念シンポで大貫氏=初学者が感じる疑問大切
★日宗連=第1回宗教文化セミナー=幅広い視点から振興を図る
★神学生有志によるセミナーで村上密氏=「社会派」と「教会派」どっちが正しい?

 =クリスチャン新聞(4月8日)=https://jpnews.org
★東京基督神学校=62年の歴史に幕=東京基督教大学院神学研究科開設に伴い閉校式
★JTJ宣教神学院=新学長に横山英実氏=創設時からの岸義紘氏より引き継ぎ就任
★物言えぬ教育現場に「ノー」=「日の丸・君が代」強制に反対する原告・支援者らが国会内で集会
★イスラエル医療チームに被災地牧師ら聖地で感謝


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