世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1099信(2012.02.13)

  • オバマ大統領、避妊への保険適用で宗教団体除外
  • 米カリフォルニア州の同姓婚禁止は違憲と連邦高裁
  • 『全米朝食祈祷会』で大統領に『ボンフェッファー』贈呈
  • 『ロンドンを占拠せよ』運動家排除に反対声明
  • 「森林ヒーローズ」に「森は海の恋人運動」畠山氏も
  • 米聖公会首座主教が日本などアジア各国を訪問
  • パキスタンにロシア正教会が新会堂建設
  • イタリアで客船事故犠牲者に追悼ミサ
  • 米歌手ホイットニー・ヒューストンさん死去
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎オバマ大統領、避妊への保険適用で宗教団体除外

 【CJC=東京】バラク・オバマ米大統領は2月10日、宗教団体に職員の避妊費用を負担させる規制案を撤回すると表明した。大統領は「当初から宗教の自由に配慮し、最終案策定前に解決策を見つけると言ってきた」と指摘したが、大統領選への影響を懸念したと見られている。
 雇用主である宗教団体が避妊関連サービスへの保険適用を認めない場合、保険会社は従業員と別途、協定を結んで同サービスを無料で提供するよう義務付けられる。
 米国では8月から、従業員の自己負担なしで予防医療に医療保険が適用される規則が実施される。企業や団体が職員に提供する医療保険の適用対象に避妊薬を含め、避妊も予防医療に含まれる、との見解を当局が1月に示したが、カトリック教会は、教義的に避妊を認めていないことから、反発していた。
 大統領はこの政策の発表前に、米カトリック司教協議会会長のティモシー・ドーラン大司教やカトリック保健協会会長のキャロル・キーハン修道女らに電話を入れ、変更について話し合ったという。医療保険制度の見直しを支持してきたキーハン修道女は、信教の自由が尊重されたことは喜ばしいとの声明を発表した。
 一方、カトリック司教協議会は同日遅く、この問題に妥協の余地はなく、完全に反対だ、と強硬姿勢を示す声明を発表した。教会関係の病院や大学など非利益団体は除外対象とされないことになる、という。
 オバマ政権内で、宗教団体へも負担させるべきだとの主張はキャスリーン・セベリウス保健福祉長官が中心。一方、ジョー・バイデン副大統領は、信教の自由の侵害だと解釈され、穏健なカトリック信者との関係が悪化する、との懸念を示していた。


◎米カリフォルニア州の同姓婚禁止は違憲と連邦高裁

 【CJC=東京】米サンフランシスコ連邦控訴裁判所(連邦高裁)は2月7日、カリフォルニア州憲法で、同性婚を禁止する修正案を可決した住民投票の結果について、合衆国憲法に違反するとの判決を下した。下級審の判決を3対1で支持したもの。
 カリフォルニア州では2008年6月に一時、同性婚が許可されたが、当時の州政府の方策により同年11月、同性婚を禁じる『プロポジション8』(提案8号)を巡る住民投票が実施された。これに対して同性婚の支持者らが、提案は違憲と主張し、連邦地裁に提訴。連邦地裁は10年、この主張を認める判決を下し、反対派が控訴していた。
 今後、同性婚反対派の上訴が予想され、連邦最高裁で最終判決が出されるまで同州の同性婚禁止条項は有効で、今回の判決ですぐに同性愛者の結婚が可能になるわけではない。
 ただ最高裁はカリフォルニア州内のみの問題と判断し、訴えを却下する可能性もある。その場合は事実上、今回の高裁の見解が最終判断となる。
 同性婚をめぐっては長年、米国を二分する議論となっている。これまでに同性婚を合法化している州は、コネティカット、アイオワ、マサチューセッツ、ニューハンプシャー、バーモント、ニューヨークの6州とコロンビア特別区(ワシントン)。
 CNNテレビなどが昨年9月に実施した世論調査では、米国民のうち同性婚を認めるべきだと答えた人が53%と、反対派の46%を上回った。
 同性婚を合法化する州が増えていることに、宗教界は懸念を強めている。教会が同性カップルの結婚式受け入れを拒むなど、同性婚を通常の結婚として取り扱わなかった場合、「差別」と訴えられる可能性もある。
 1月12日、福音派やカトリック、ユダヤ教、モルモン教など、39組織の代表者が連名で、同性婚合法化は信教の自由侵害につながると警告する公開書簡を発表した。
 宗教界の懸念は、すでに慈善活動などに支障が出始めたことで深まっている。カトリック慈善団体『カトリック・チャリティーズ』は、同性婚合法化によって一部の支部で養子縁組事業からの撤退した。事業継続には同性カップルにも養子縁組をしなければならず、それは教義に反するからだ。
 また、同性カップルに結婚に準じる法的権利を与える「シビル・ユニオン」(市民間結合)を認めているニュージャージー州では、メソジスト教会が"結婚式"を挙げたいとする同性カップルへの施設貸し出しを断ったところ、差別されたとして、州から免税資格を取り消されている。
 ニューメキシコ州では、キリスト教者カメラマンが同性カップルが愛を誓う"誓約式"の撮影を拒否したところ有罪となり、約7000ドル(約54万円)の支払いを命じられた。
 ただ米聖公会など同性婚を認め、同性カップルの結婚式を行っている組織もあり、教派により反応もさまざま。


◎『全米朝食祈祷会』で大統領に『ボンフェッファー』贈呈

 【CJC=東京】米ワシントンで恒例の『全米朝食祈祷会』が2月2日、ヒルトン・ホテルで開かれ、各国大使、両院議員、閣僚を始め約4000人が参加した。
 メーンスピーカーのエリック・メタクサスが、エセ宗教、人間の堕落、貧困、奴隷状況、妊娠中絶などについて、ウイットを込めながらも辛辣に語った。ナチスに逮捕処刑された神学者ディートリッヒ・ボンフェッファーについても触れ、著書『ボンフェッファー=牧師、殉教者、預言者、スパイ』をバラク・オバマ大統領に手渡した。
 その後、オバマ大統領の演説があったが、参加者の話題は大統領よりメタクサスに集中したという。


◎『ロンドンを占拠せよ』運動家排除に反対声明

 【CJC=東京】『ウォール街を占拠せよ』に呼応して英国で起こった『ロンドンを占拠せよ』運動の支持者たちが、ロンドン中心部セントポール大聖堂周辺を5カ月にわたって占拠した。占拠者たちが大聖堂の利用を求めたことに教会側が阻止に動いて、内外の関心が高まった。
 ロンドン市庁が、大聖堂周辺から占拠者を強制排除する、と発表したことに反発した聖職者、学者、教会関係者が2月7日、同大聖堂主任司祭と参事会に宛て抗議書簡を送った。
 書簡は、英国国教会と非国教派との連携を図る『チャーチ・ピース』とキリスト教シンクタンク『エクレシア』の呼び掛けに応じた発起人15人が署名して出された。
 書簡は「教会と強制退去に直面する運動家双方に与える衝撃を懸念している。キリストという名は、そのような行動によって崇められはしない。大聖堂の立ち位置は、無責任とさえ見られる。わたしたちは、教会が抑圧側と見られる位置に立つことがあるとは信じられない。教会の使命と宣教は、むしろ、人々の解放に関するものだ。わたしたちは、そこで、セントポール大聖堂の主任司祭と参事会が、強制排除を支持しないという公式声明を発表することを望む」と言うもの。
『チャーチ・ピース』と『エクレシア』は、なお賛同者の追加署名を呼び掛けている。


◎「森林ヒーローズ」に「森は海の恋人運動」畠山氏も

 【CJC=東京】世界の森林保護に取り組む国連機関『国連森林フォーラム』(UNFF)が実施している「フォレスト(森林)ヒーローズ」の1人に気仙沼市のNPO法人『森は海の恋人』理事長の畠山重篤氏(68)が選ばれた。
 表彰式はニューヨークの国連本部で2月9日、国際森林年閉幕式の際に行われた。
 畠山氏はカキ養殖業を営むかたわら、森からの養分が川を通じて海を豊かにすることを重視し森を育てる「森は海の恋人運動」を続けてきた。日本バプテスト同盟気仙沼教会員の畠山氏、『森は海の恋人』という名は聖書詩編42編から浮かんだという。
 「フォレストヒーローズ」は、2011国際森林年に際し、世界中から森を守るため地道で独創的な活動をしている功労者を顕彰する事業。世界41カ国から90人の応募があり、受賞者は畠山氏のほか8人。


◎米聖公会首座主教が日本などアジア各国を訪問

 【CJC=東京】米聖公会(英国国教会)のキャサリン・ジェファート=ショリ総裁主教が、世界共同体アジア地域の各聖公会の招待を受け、2月から3月初めまで各国を訪問、教区会議での演説、聖体執行、説教などを行う。
 「アジアで新しい地域を訪問し友好を新たにしたい。招待を受けて喜んでいる。今回の訪問で、現地の状況について、教会が直面している課題や機会について学び、神の宣教においてわたしたちの協力をどのように強めるか探ることが許されるだろう」とショリ主教は指摘している。
 訪問先としてはフィリピン、日本、韓国、香港、マカオ、台湾の各聖公会とフィリピンの『イグレシア・フィリピナ・インディペンディエンテ』。首座主教との会談も行われる。


◎パキスタンにロシア正教会が新会堂建設

 【CJC=東京】『ロシア以外のロシア正教会』の首位ヒラリオン府主教から特別宣教師として派遣されたアドリアン・アウグストゥス司祭が、1月末にパキスタン東北部のサルゴダで、新教会堂献堂に立ち会い、『大天使ミハエル・ロシア正教宣教』と刻まれた礎石を置いた。式典には約200人が参列した。
 ヒラリオン府主教は、『ロシア以外のロシア正教会』の首位とされアメリカ東部とニューヨークを管轄、オーストラリアとニュージーランドの教区の暫定主教にも任命されている。


◎イタリアで客船事故犠牲者に追悼ミサ

 【CJC=東京】イタリア中部トスカーナ州沖で、乗客・乗員合わせて4200人余りが乗った大型豪華客船『コスタ・コンコルディア』が1月13日に座礁した事故は、これまでに17人が死亡、15人が依然として行方不明。事故から1カ月を迎えるのを前に、ローマの『サンタ・マリア・デッリ・アンジェリ』教会では2月12日、犠牲者を追悼するミサが行われた。遺族のほか、ジョルジョ・ナポリターノ大統領も出席、遺族一人一人の手を握り哀悼の意を示した。
 ミサのあと同大統領は、地元メディアに「事故は悲劇であり、責任が誰にあるにせよ、哀悼の意を表したい」と語った。


◎米歌手ホイットニー・ヒューストンさん死去

 米国の人気歌手ホイットニー・ヒューストンさんが2月11日、米カリフォルニア州ビバリーヒルズのビバリーヒルトン・ホテル4階の部屋で容体が急変した姿で発見され、救急隊が20分間にわたって蘇生処置を施したが、同日午後に死亡が確認された。48歳。
 1963年8月9日、ニュージャージー州ニューアーク生まれ。11歳の時にジュニア・ゴスペル・クワイアに入り、教会で歌い始めた。85年、デビュー・アルバム『ホイットニー・ヒューストン』は女性歌手のデビュー・アルバムのベストセラーになる大ヒットとなった。アルバムからのリカット・シングル『オールウェイズ・ラヴ・ユー』は自身最大のヒットとなっている。
 音楽雑誌『ローリング・ストーン』はその声を「強力で鋭いポップ・ゴスペル」と評価していた。(CJC)


◆短信◆(CJC)

《アジア》
▽マシュー・G・ルイス著の『マンク』が映画化=17世紀のカトリック教会を舞台に、過激な描写のため160年間も「禁書」とされていたマシュー・G・ルイス著の『マンク』がドミニク・モル監督により映画化、日本でも上映される。

《アフリカ》
▽南スーダンで今年、数百万人が飢餓に陥る恐れ=国連食糧農業機関(FAO)と世界食糧計画(WFP)は、南スーダンで今年、数百万人が飢餓に陥る恐れがあるとする報告書を発表した。

《南米》
▽フォークランド諸島の近海に英国が原子力潜水艦=アルゼンチンのティメルマン外相は2月10日、ニューヨーク国連本部で記者会見し、アルゼンチン東沖の英領フォークランド(アルゼンチン名マルビナス)諸島の近海に、英国が核弾頭を装備した原子力潜水艦を派遣したとの情報があると明らかにした。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(2月12日)=https://www.cwjpn.com
★外キ協=名称新たに26年目へ=「外国人住民基本法」の制定目指し
★仮設の商店街、始動=カリタスジャパンも支援=宮城・気仙沼市
★「聖週間の典礼に関する補足事項」=教区事務所通じ中央協が配布
★仙台教区サポート会議=長期人員不足が課題=拡大会議と拠点代表者会合
★イングランド・ウェールズ司教協議会=「信仰カード」発行へ

 =キリスト新聞(2月11日)=https://www.kirishin.com
★米大統領選=共和党候補で混迷
★季刊「Ministry」が3周年=都内の書店で関連フェア
★袴田事件で弁護士が解説=有罪は"検察官の虚構"
★「マシンガン・プリーチャー」試写で渡部氏="血だらけで泣くのは子ども"
★大谷隆夫牧師=裁判が結審=大阪地裁=判決は3月末

 =クリスチャン新聞(2月12日)=https://jpnews.org
★福島住民に安全・安心を=教会復興支援ネット=木田恵嗣氏=医療・放射能など専門家派遣を要請
★米キリスト教NGO=津波被害の気仙沼市民にメガネ無料支援
★7月外登法廃止は改悪=管理強化の「改定」入管法に反対=外キ教=25年で新名称に
★教会の被災地支援がつないだ小学校交流=宮城・東松島の被災者招き東京・八王子で道徳授業
★「教会さん、ありがとう」=仮設で歓迎 教会ボランティア=外国からにも驚き


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