世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1091信(2011.12.19)

  • 英国で同性婚に踏み出す教会はなお少数
  • スコットランドの主流宗教は同性婚反対堅持
  • ポーランド児童保護団体が教会に問題直視要求
  • 教皇、復活祭前にメキシコとキューバを司牧訪問
  • 中東の諸教会、平和への努力を再確認
  • クライストチャーチ大聖堂首席司祭が市議選出馬へ辞任
  • プレゼント配るサンタクロースの離れ業
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎英国で同性婚に踏み出す教会はなお少数

 【CJC=東京】教会内で同性間の結合式典「同性婚」を挙行することが英イングランドとウエールズで12月5日認められたが、実行するのは非正統ユダヤ教徒、クエーカー、ユニテリアンの各派に限られそう。
 イスラム教徒とカトリックはそのような結合に反対の立場。英国国教会も『シノッド』(総会)で承認するまでは式典を行わない、と発表している。
 メソジスト、合同改革派、バプテスト連合などは、民法上の結合式典や結婚式典を即時認める計画はない、としている。合同改革派教会総会は、2012年7月の会議で決定する。メソジストはまだ総会議案として作成していない。
 同性愛者の権利を擁護するピーター・タッチェル氏は公営BBC放送に、政府が宗教的な敷地内での民法上の結合式典を許可したのに、宗教団体が挙行したくても、宗教的な同性婚禁止を継続するのは皮肉なこと、とコメントしている。


◎スコットランドの主流宗教は同性婚反対堅持

 【エジンバラ(スコットランド)=ENI・CJC】(トレバー・グランディ)最近の調査ではスコットランド市民の62%が同性間の結婚を容認しているが、主流宗教各派は断然否定。ただその声は意外に影響力が少なくなっている、と見る向きもある。
 スコットランド政府の報告書『市民契約の登録、同性間結婚』に対して、スコットランド教会(長老派)は「法律を同性婚許容へ変更すべきということには同意出来ない。同性婚も含めるように結婚を再定義することは、国・家族・社会・個人の安寧に重要な、そして今なお考慮が不十分な反響を呼ぶことになる」と指摘する。
 カトリック教会も政府の姿勢を非難する。強烈な語調の声明で、キース・オブライエン枢機卿が、「普遍的に認められた人権」を、結婚の意味を解体することで破壊しないよう呼び掛けた。「結婚はいかなる国家や政府の存在より前のものだ」と言う。
 これらの見解に、スコットランド・ムスリム評議会のサラ・ベルタギ博士も同調する。「わたしたちは、全体として同性カップルが結婚するという考えに反対だ。神は男を創造し、そして女を創造した。それで男と女が結婚し家族を持つのだ。同性婚は全く秩序に反している。地球上の政府で、神によって制定された結婚の本質を変更する権利を持っている所はない」と言う。
 ユダヤ教共同体のスコットランド評議会も、トーラー(律法)が禁止している同性間の関係には反対だ。ウエブに掲出した声明で、「共同体の全支部は、そうすることを望まない宗教団体は、市民結合の登録を求められない、ということに強く同意する」と述べている。
 しかし自由主義色の強いユダヤ教共同体の指導者は、「宗教的な市民結合式典の導入を強く支持し、なるべく早期にそれを許可することの立法化を願う」と声明で述べている。
 スコットランド教会のイアン・ギャロウエイ牧師は、教会の立場に驚くことはない、として「応答は教会の法務委員会から出されたもので、それは現行法によっており、法的なものであって、倫理的神学的応答ではない」と言う。同氏は、同性婚に関する教会の立場を理由に教会を離れる人が出てくるかもしれない、と認めている。


◎ポーランド児童保護団体が教会に問題直視要求

 【ワルシャワ=ENI・CJC】(ジョナサン・ラクスムーア)ポーランド最大の児童保護団体が、苦情の高まっている司祭の性的虐待問題に応答するようカトリック教会に要請した。
 「事件の規模が問題なのではなく、教会の態度が問題だ。これまで司教協議会は何も述べていない」と、ワルシャワに本拠を置く独立系の児童保護財団のヤコブ・スピエワク会長は言う。同財団は虐待被害者のためにホットラインを運営、保護のため7プログラムを実施している。
 「カトリック教会はここでは特別な地位を保持している。しかしこのような問題について語れなかったら、その地位を失い始めるようになるかもしれない」と、スピエワク会長は語る。同氏は、司教協議会会長のヨゼフ・ミハリク大司教とのインタビューを出版したが、ポーランドの教会指導者である同大司教は、カトリック聖職者の「不当な行動」には出来ること全部を行っている、と語ったと言う。
 同団体は「沈黙は金ではない」というキャンペーンを展開、被害者が表面に出て来るよう力づけている。ただスピエワク会長は、司祭が「最高権力者」になっている小さい町や村では、警察や役場が虐待が疑われる司祭に立ち向かうことを恐れる場合もある、と言う。
 2002年、ポズナンのユリウス・パエツ大司教が、神学生にみだらな行為をしたとの報道を受けて辞任したが、それ以来、カトリック関係指導者は、虐待されたという訴えへの対応を明確にするよう教会に要請していた。
 ただ虐待被害者の運動は、米国からの支援もあって組織されたばかり。運動関係者は、痴漢とされた聖職者数十人が執行猶予付きの禁固刑の判決を受けただけで、ほとんどが今も小教区で、しかも児童と一緒に活動している、と指摘する。
 他国でのスキャンダルについては広く伝えている同国カトリック通信『KAI』も、自国のことはほとんど報じていない。
 聖職者への性的虐待告発は、ここ20年にわたりアイルランド、独、オーストリア、米国などのカトリック教会に大きな影響を与えている。
 この5月、バチカン(ローマ教皇庁)は全司教協議会に対し、2012年5月までに虐待問題に関する指針を作成、児童保護プログラムを開始、教区間の聖職異動の情報交換、被害者に対し「霊的心理的援助」を確実に実施するよう指示した。
 しかし『絆』という名のカトリック月刊誌は最近の特別号で、ポーランド教会の聖職者に対する心理的チェックや、退任者に対する「明確な規範」が不十分で、虐待告発への対応に関する「情報方策」や「行動規範」もない、と指摘している。
 スピエワク会長は、同誌の警告が無視され、ほとんどの司教が「異常な弛緩」を見せている、と言う。「失望が高まっている。司祭に対する批判は、それが忠実なカトリック者によるものであっても、教会と信仰に対する正面からの攻撃とされる」と同氏は語った。
 「もしも教会が法律を守り、問題の司祭を教会法上の、また犯罪責任からかばうことを止めないと、他国の教会と同じ危機に直面することになろう。しかし指導者たちは、問題をただ避けられると考えているようだ」と言う。


◎教皇、復活祭前にメキシコとキューバを司牧訪問

 【CJC=東京】教皇ベネディクト16世が、2012年の復活祭前にメキシコとキューバを司牧訪問する。
 教皇訪問の可能性については、すでにバチカン広報室を通じて言及されていたが、12月12日夕、バチカンのサンピエトロ大聖堂で行われたラテンアメリカに捧げるミサの中で、教皇自身によってこの訪問が確認された。
 バチカン放送(日本語電子版)によると、典礼暦でグアダルーペの聖母を祝ったこの日、教皇ミサは、ラテンアメリカとカリブ海諸国の独立(1808〜24)から2世紀を記念して行われた。
 グアダルーペの聖母はラテンアメリカの人々に唯一の光、真理として御子イエス・キリストを示し続けたと述べた教皇は、これからも人々がイエスに導かれ、豊かな信仰の遺産を守りながら、一致と平和、和解と兄弟愛を育み、命と環境を尊重し、暴力や犯罪、貧困や不正義を克服する道を歩み続けて欲しいとの期待を表明した。
 そして教皇は、来年の復活祭の前にメキシコとキューバを訪れ、御言葉を告げると共に、人々の中にまっすぐな信仰、生きた希望、熱い慈愛を強めたい、と語った。


◎中東の諸教会、平和への努力を再確認

 【CJC=東京】中東教会協議会(MECC)は11月20〜30日、キプロスのパフォスで総会を開催した。総会には、正教会、東方正統教会、福音派、カトリック教会が参加した。同国正教会がホストを務めた。
 総会に参加した中東のキリスト者は、地域の多彩な政治情勢の中にあって、一致、対話、平和への誓いを新たにした。
 総会は、レバノンのマロン典礼カトリック教会のパウル・ロウハナ神父を新総幹事に選出した。任期4年。同氏はレバノン・カスリクの聖霊大学の前神学部長。


◎クライストチャーチ大聖堂首席司祭が市議選出馬へ辞任

 【CJC=東京】就任から9年、英国国教会クライストチャーチ大聖堂のピーター・ベック首席司祭は、同市市議会議員選挙に出馬するため、「教会最善の職務」とされている現職を辞任する。
 2月22日に同市を襲ったマグニチュード6・3の大地震による被害復興のために働きたい、と言う。
 「市議選では、教会を含め多くの共同体を代表出来ることを訴える。後任司祭が、素晴らしい新大聖堂建設という次の局面をリードするだろう。それがわたしたちの名誉となり、未来を建設することになる」と語った。
 ベック司祭はビクトリア・マシューズ司教と、大聖堂再建のための募金方法をめぐって対立していたという。ベック司祭は震災1周年までに再建したいとしていたが、マシューズ司教は、募金は大聖堂のためだけでなく被災全教会のためだと主張していた。


◎プレゼント配るサンタクロースの離れ業

 【CJC=東京】サンタクロースがクリスマスイブにどれぐらい働くのか。米誌『アトランチック』が試算した。
 まず「サンタクロースからプレゼントをもらえるのは14歳のキリスト者の子ども」として、米中央情報局(CIA)が年齢別人口と信仰別人口のデータを出していたのを利用した。
 若年層の人口分布とキリスト者の人口密度のを用いて算出した結果、クリスマスにプレゼントをもらえる子どもは5億2608万5400人となった。こうなると、サンタクロースはクリスマスイブに1時間あたり2200万人にプレゼントを配らなければならない計算。1分当たり36万5000人、1秒間に6100人に届けるという離れ業。トナカイさんも大変だ。


◆短信◆CJC通信速報(Twitter:cjcpress)から。

≪アジア≫
▽韓国のキリスト教団体が南北軍事境界線近くの3カ所で12月下旬から、高さ数十メートルのクリスマスツリーを点灯する。朝日新聞が、韓国国防省が明らかにした、と報じた。北朝鮮は強く反発しており、米韓両軍は北朝鮮による武力挑発を警戒している。
▽フィリピン南部で17日に起きた台風による被害で、フィリピン赤十字は18日、652人の死者を確認した。行方不明者も800人以上いるとみられ、犠牲者数は増える可能性がある。

≪インド亜大陸≫
▽パキスタンに拠点を置くイスラム過激派組織『ラシュカレトイバ』と密接な関係がある福祉団体『ジェマテダワ』などイスラム教団体が12月18日、東部ラホールで集会を開き、政府は米国が続ける「対テロ戦争」への協力をやめるべきだと訴えた。共同通信が報じた。

≪中東≫
▽このクリスマス・シーズンにイスラエルを訪れる観光客は9万人、その3分の1が12月24日から25日に掛けての巡礼、と同国観光省が予測している。

≪欧州≫
▽世界教会協議会(WCC)発行の宣教専門誌『インターナショナル・レビュー・オブ・ミッション』が創刊100周年を迎え、特集号『エキュメニカル・ミッショロジーの1世紀』を刊行、記念式典を12月9日、ジュネーブで開催した。
▽バチカンのサンピエトロ広場で12月16日夕、ウクライナ政府から贈られた約30メートルのモミの木を使ったクリスマスツリーの点灯式が行われた。金や銀の玉で装飾を施されたツリーに数百個の発光ダイオード(LED)による照明がともると、観光客たちが歓声を上げた。

≪北米≫
▽米国の国際宗教の自由委員会(USCIRF)が、予算削減をあおりを食って閉鎖の危機にさらされていたが、連邦下院は12月16日、発声投票で、同委員会をさらに3年間存続させることを決めた。上院は13日承認している。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(12月18日)=https://www.cwjpn.com
★上智大学「聖書講座」=今年は「終末論」=聖書週間、東京教区と共催
★支援活動 着実に進行=カリタスジャパン=地元密着プロジェクト
★反原発で5500人集う=宗教者代表し 谷司教あいさつ=東京・日比谷
★電子書籍の販売開始=女子パウロ会=第1作は晴佐久神父詩集
★教皇ベネディクト16世=移住者支援を激励=バチカン、国際機関に加盟

 =キリスト新聞(12月17日・休刊)=https://www.kirishin.com

 =クリスチャン新聞(12月8日・合併休刊)=https://jpnews.org


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