世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1086信(2011.11.14)

  • 聖職者の性的虐待は教会に責任、と英裁判所
  • 「宗教の自由」ロシアでは厳しく制限?
  • 米NCCキンナモン総幹事が難局下に辞任へ
  • 教皇、来春にもメキシコとキューバを訪問
  • 米アフリカ系神学校でヒップホップを評価する機運
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎聖職者の性的虐待は教会に責任、と英裁判所

 【CJC=東京】ロンドン高裁のアリステア・マクダフ判事が11月8日、カトリック教会が運営している子どもの家に入所していた女性が司祭によって性的虐待を受けたと主張し、それが認められた場合、管轄のポーツマス教区クリスピアン・ホリス司教に責任があるとする判決を下した。
 「このケースは、賠償請求に大きく影響する可能性がある。英国だけでなく他国でも注目している。他の教会にとっても、これまで聖職者は従業員ではなく任職者だとしていたような場合、今回の判決の影響は大きい」と、公営BBC放送のロバート・ピゴット宗教記者は言う。『タイムズ』紙も、「今回のケースは被害者の賠償請求に大きく影響し、世界中が注目している」と報じた。
 英国の裁判所にとって、聖職者の行動に教会は責任があるか、それとも「代位責任」かを判断するのは初めてのこと。カトリック教会側の弁護士は即時控訴の意向。
 問題の事件は、『JGE』と仮称されている女性が、1970年代にイングランド南部ハンプシャー州ウオータービルの子どもの家『ザ・ファーズ』に入居していた際に、ウィルフレッド・ボールドウィン神父に性的暴行を受けたというもの。同神父は2006年に死去している。
 教会側の弁護士は、聖職者は従業員ではなく「自営」だから、教会が賠償金を支払う必要はない、と主張した。
 マクダフ判事は、聖職者は公式には従業員ではないので、雇用契約も指揮監督も賃金支払いもない、とのポーツマス教区の主張に留意したものの、「教会が完全な権限を与え、資産、講壇と聖服を与えた。外部に対しては教会代表者として振る舞う権限を与えていた。その地位に任命したのは教会だ」と述べている。


◎「宗教の自由」ロシアでは厳しく制限?

 【CJC=東京】ロシアでは宗教の自由への規制が強化されており、西側政府と教会はこの問題に目を向けるべきだ、と英国の東欧圏の宗教事情を調査している『ケストン研究所』のマイケル・ボルドー所長が11月8日、ENIニュースに語った。
 「(公式には無神論国家だった)ソ連は20年前に崩壊したものの、宗教信仰者はなお深刻な問題に直面している」という。「本当のところ、誰もロシアを評定していないことが心配だ。それぞれの国の人権記録を監視する権利と義務が忘れられてしまった」と指摘する。
 ロシアで宗教の自由に関する法律が制定されたのは1990年のこと。それは「おそらく世界史的に最も自由なもの」だったが、97年に「恥ずべき法律」に置き換えられた、と同氏。97年の法律は、強硬派政治家と支配的な正教会の圧力により生まれ、それは「非伝統的」と判断された宗教団体を差別するものだ、と言う。
 ボルドー氏は、「ロシアでは18世紀初頭にルーテル教会が、そして中世にはカトリック教会が存在したことからすれば、それらを非伝統的とは、どんな法律論からも正当化出来ないのだが」と指摘する。
 西側の人権団体は、ロシアに宗教的権利を保護し、『エホバの証人』やその他の少数宗教グループなどに向けられた大量逮捕や家宅捜索などで出された欧州人権裁判所の裁定を受け入れるよう求めている。
 ロシアにはプロテスタントの登録団体が約3500存在する。ルーテル派、パプテストも含まれているが、中には非認可礼拝だとして警察の手入れを受けることに不満も出ている。
 カトリック教会も、マザーテレサが創設した『神の愛の宣教者会』が運営しているモスクワの慈善の家がこの9月破壊され、プスコフの教会が「法的手続き」の不備を理由に10月に工事を差し止められるなどの事件が発生している。
 10月、『国境なき人権インターナショナル』(HRWF、本部ブリュッセル)のウイリー・フォートル代表が、2002年に制定された過激派取締り法が「少数派宗教団体を対象とすることに利用」されている、と指摘した。
 米国務省は、9月13日に公表した宗教の自由に関する年次報告で、「禁止された宗教文書を所持したとか違法宗教団体に加わった個人」を犯罪者扱いするなど、ロシア政府の「宗教の自由を重んじる水準」がこの所低下している、と指摘した。
 ロシア正教会の教会と社会関係部門の責任者フセフォロド・シャプリン氏は11月7日、「わたしたちは世俗国家に居住しており、それは自然のこと。しかしわたしたちの社会はほぼ正教徒キリスト者で構成されているのだから、教会、国家、社会の調和は当然のことで、一つの身体の中の関係であって、異なった性質の間のものではない」と語った。ロシアのインターファクス通信が報じた。


◎米NCCキンナモン総幹事が難局下に辞任へ

 【CJC=東京】米教会協議会のマイケル・キンナモン総幹事(63)が健康上の理由で、4年間の任期更新を待たず辞任する。
 「即時、はっきりと」活動を止めなければならない、特に総幹事のような仕事で必要な絶え間ない旅行などはいけない、と心臓医に指示されている、と同氏は常置委員会に明らかにした。RNS通信が報じた。
 ディサイプル派『クリスチャン教会』牧師のキンナモン氏は、NCCが財政難から職員の一時解雇など予算削減を迫られる中、2007年に総幹事に就任した。
 ペグ・チェンバリン議長は「キンナモン氏の発表は、NCCの存続自体が問われている時に行なわれたが、この重要な変革期に共に働きたいと思ってくれていることには勇気づけられる」と、声明で明らかにした。キンナモン氏は、健康問題が明らかになる前は、引き続き4年間、総幹事を務めることに同意していた。
 NCCを構成している主流プロテスタント教会の財務事情と信徒数は低下しており、NCC自身がプログラムやスタッフ削減に追い込まれている。キンナモン総幹事の下、NCCは2008年の620万ドル(約4億7900万円)の予算を昨年には540万ドル(約4億1700万円)にまで削減している。分担金などの収入が540万ドルから510万ドル(約3億9100万円)に減少していることに対応したもの。
キンナモン氏の在任中、NCCは平和、貧困者援助、移住改革などを推進するなど、進歩的方策に立ってきた。


◎教皇、来春にもメキシコとキューバを訪問

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)報道事務所長フェデリコ・ロンバルディ神父は11月10日、教皇べネディクト16世が2012年春にもメキシコとキューバを訪問することを検討している、と発表した。
 現在、両国駐在の教皇大使が、それぞれ現地の行政当局・教会関係者と連絡を取っている段階。訪問の実現については、内容を吟味して教皇が判断を下す。
 教皇はラテンアメリカ諸国では、これまでポルトガル語圏のブラジルを訪問しているが、スペイン語圏の訪問先として、人口の多いメキシコ、そして教皇訪問を熱望しているキューバが候補に挙がったという。訪問の際は、2カ国を同時に訪れると見られる。


◎米アフリカ系神学校でヒップホップを評価する機運

 【CJC=東京】米国でも若者を教会に迎えるのは至難の業。ただ主要アフリカ系神学校では、次世代をつかむ道を見つけた、と宗教専門RNS通信が報じている。
 「ヒップホップ」によるのが有効だとして、「もしも若者について真剣に取り組もうとするなら、これしかない」と言うのはハワード大学神学部のアルトン・B・ポラード3世。「若者たちの生活について話し合うと、これまで接したこともない地下文化としてのヒップホップがあることが分かった」と言う。
 同大学の年次集会にはクリスチャン・ヒップホップの歌手が登場、プロテスト音楽を研究する授業でヒップホップの分析をする教授もいる。
 イリノイ州のノーザン神学校では青年宣教課程で2005年に刊行された『ヒップホップ教会』が使用されている。
 「今日の問題に取り組むため、青年宣教を行なうためには、ヒップホップなしでは済まされない」と言うのはアトランタの超教派神学センターで2年間、ヒップホップとキリスト教教育課程で教えているマイシャ・ハンディ氏。ヒップホップのアーティストは、教会が伝統に捕らわれ過ぎ、硬直的に過ぎるという。
 「わたしは若いし才能もあり、エキセントリックでアーティスティックだしと言って宗教的ではない」と言うのは黒人男性に混じって出演する白人女性。「伝統を拝んでいるのではない」と語る。
 ワシントンのウエスレー神学校の1年生、カオーン・トーマスは、教会はヒップホップのキリスト教的側面とそうでない側面の双方から学べることが多いという。


◆短信◆CJC通信速報(Twitter:cjcpress)から。

≪アジア≫
▽フアウスト・テントリオ神父(59)が10月17日、フィリピン・北コタバトのアラカンの教会敷地内で射殺された。フィリピン南部では1985年以来、教皇庁立外国宣教所のメンバーが射殺されており、同神父で3人目。
▽ビルマ陸軍第88軽歩兵師団の将兵が11月6日、カチン州のムクチイク村にある『アセンブリーズ・オブ・ゴッド』教会を襲撃、ヤジャウン・フカウン牧師とフプラウン・ルム・フカウン牧師補が負傷した。

≪中東≫
▽イランのキリスト教通信『モハバト・ニュース』が、青年たちにキリスト教が広がっている、と伝えたのに対し、政府系の日刊紙『ジョムフリ・エ・エスラミ』(イスラム共和国)が、『西側の政治勢力』により作られたものだ、と批判した。

≪欧州≫
▽教皇ベネディクト16世は、バチカンで11月6日、日曜正午の祈りを巡礼者と共に唱えた。教皇は、ナイジェリア東北部ボルノ州とヨベ州で4日から5日にかけて起きた連続テロに深い憂慮を表し、暴力は問題の解決にはならず、憎しみと分裂を助長するのみと述べた。
▽ユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界遺産に登録された仏南西部サンテミリオン市が、市の負債返済のため14世紀のコルドリエ修道院を売り払った。これまではスパークリングワイン製造元が使っていた。

≪アフリカ≫
▽マダガスカルでは3年越しの政治危機を回避する動きが進んでいるが、『イエス・キリストの教会』(FJKM)のララ・ラセンドラハシナ議長は、教会も礼拝で平和のメッセージを伝え、許しと和解を推奨することで力を合わせて来た、とENIニュースに伝えた。
▽11月28日から12月9日まで、南ア・ダーバンで第17回気候変動枠組締約国会合と第7回京都議定書締約国会合が開催される。会合に刺激を与えようと、若者約200人が11月7日、ケニアの首都ナイロビからバスでダーバンに向かった。約2週間がかりの旅。

≪北米≫
▽米国では若者を教会に迎えるには、特にアフリカ系の場合は「ヒップホップ」によるのが有効だ、とハワード大学神学部のアルトン・B・ポラード3世らが考えている。
▽米国のメルキト典礼カトリック教会のニコラス・サムラ首席司教が、既婚男性を聖職に叙階する計画を11月8日明らかにした。司祭不足に対応するため、という。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(11月13日)=https://www.cwjpn.com
★状況とらえ支援を移行=暖房具、心のケアなど提供へ=仙台=第2回ベーススタッフ会議=各ボランティア拠点から集う
★岩手・大船渡教会=大阪教会管区の復興支援拠点=国籍超えて一つに=信徒が司祭・派遣者を歓迎
★「原発銀座」住民に聞く=名古屋正平委=福井・敦賀で意見交換
★朝祷会関東ブロック大会=正教会から初参加=神奈川・藤沢教会
★アイルランド=駐バチカン大使館閉鎖へ=「外交関係は継続」

 =キリスト新聞(11月12日)=https://www.kirishin.com
★富坂キリスト教センターが研究活動総括 天皇制は"終わらない課題"
★スピリチュアルケア=生きる意味への援助=宗教倫理学会学術大会・京都
★「東京バッハ合唱団」創立50周年=日本語訳詞で「神に向かって歌う」
★石巻で「農」を復興=ボランティア募集=神戸国際支援機構
★伊アッシジで「宗教者サミット」=伝統主義者は"冒涜的"と批判

 =クリスチャン新聞(11月13日)=https://jpnews.org
★東京基督教大学に大学院設置=国際性・福祉生かし=深い人間理解できる牧師を養成
★タイ国土の3分の1が冠水=キリスト教支援団体が救済活動開始
★「天国の希望 伝えたい」=女川町出身の木下恵美子さん=津波で母、妹失った悲しみ越えて=トラクト自主制作・無料提供
★柴橋正直衆院議員に同信の実業人ら応援団=「東京百人会」旗揚げ
★序列化は子どもの人格育まない=改革派教会第66回大会が決議=大阪府「君が代」起立条例に抗議=教育、職員基本条例案の撤回要請


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