世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1085信(2011.11.07)

  • 『ハーパー・コリンズ』社が米宗教出版最大手に
  • 「反格差デモ」にセントポール大聖堂苦慮
  • 国連事務総長が反格差運動に理解示す
  • 教皇、G20首脳会議にメッセージ
  • アイルランドが駐バチカン大使館を閉鎖
  • スーダンのキリスト教各派は「統一」を維持
  • 十字架隠さず、生徒がイスラム教教師に殺される
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎『ハーパー・コリンズ』社が米宗教出版最大手に

 【CJC=東京】世界的なメディア・グループ『ニューズ・コーポレーション』系列の出版社『ハーパー・コリンズ』社が、キリスト教出版の『トーマス・ネルソン』社を買収することで合意に達した。買収額は明らかにされていない。『ハーパー・コリンズ』社は、聖書出版で知られる『ゾンダーバン』社の親会社。これで『ハーパー・コリンズ』社が米宗教関係では最大手となる。
 『ハーパー・コリンズ』社のブライアン・マレー社長兼CEOは報道発表で、『トーマス・ネルソン』社の「書籍、聖書、電子書籍、雑誌、AV、カリキュラム、電子ソフト」を買収に当たって評価した、と述べている。同社のこれまでのミッションに基づく出版企画に『トーマス・ネルソン』社が加われば、さらにバランスのとれたものとなる、という。
 『ハーパー・コリンズ』社の親会社『ニューズ・コーポレーション』社は英国で電話盗聴事件を引き起こしている。『ゾンダーバン』社関係の執筆者の中には、英語聖書ではベストセラーのNIVを出版している同社が、倫理的な問題を引き起こした企業の下に入ることに疑問を投げ掛ける人もいる。
 米出版専門誌『パブリッシャーズ・ウイークリー』によると、『ハーパー・コリンズ』社は年内買収を望んでいる。その後に両社が独自に出版活動を行なうのか、は明らかにされていない。


◎「反格差デモ」にセントポール大聖堂苦慮

 【CJC=東京】1710年に完成、1981年にチャールズ皇太子と故ダイアナ元妃が挙式。毎年200万人近い信者や観光客が訪れるロンドン屈指の観光名所でもある英国国教会セントポール大聖堂が「反格差デモ」に苦慮している。金融街シティーのしかもその中心である証券取引所に隣接しており、デモ隊が占拠するのに絶好な広場を前にしているからだ。
 デモ参加者は10月中旬に広場を占拠、今も約200のテントが並ぶ。炊事所や救護所、図書室のテントまであり、デモ参加者の勉強会や子供たち向けのイベントも開かれている。
 大聖堂側はテントで使われる火気や衛生の悪化などを心配し10月21日、第2次大戦後初めて大聖堂の一般見学入場を一時中止した。
 グレイム・ノウェルズ主任司祭は記者会見し、閉鎖の決断は「現代では例がない」と語った。第2次世界大戦中のロンドン空襲で建物の閉鎖を余儀なくされたのが最後だったという。同司祭は「多くのストーブや焚火、様々な種類の燃料が周囲に置かれ、消防上の危険があることは明らかだ」とし、「公衆衛生の面については言うまでもない」と続けた。
 ノウェルズ司祭はデモ参加者に宛てた公開書簡で、英国国教会は「平等と金融の誠実性を求める人々に共感する」と記す一方、キャンプが大聖堂の日常業務に支障を来していると指摘、穏やかに退去するよう求めた。28日からドームとギャラリー部分を除き入場見学を再開した。
 弱者への連帯か、信者の安全か。テント村が「来訪者の安全を損なう」として排除論が持ち上がるなか、「社会正義を求めるのが教会の使命」とキャノン・ジャイルズ・フレイザーなど聖職者が相次いで辞める騒ぎになった。ノウェルズ主任司祭も31日辞任した。
 カンタベリー大主教ローワン・ウイリアムズ氏まで事態に介入、デモ隊の声は取り上げられるべきだ、と主張している。


◎国連事務総長が反格差運動に理解示す

 【CJC=東京】「ウオール街を占拠せよ」という米国の反格差運動が10月半ば、ロンドン、フランクフルト、アムステルダムなどに広がり、「強欲企業」や歳出削減に抗議する座り込み集会が金融中心地で行われた。キャンプを張って長期間の座り込みを決め込んだグループも出ている。
 AFP通信によると、ジュネーブで開かれた列国議会同盟会議に出席した潘基文(パン・キムン)国連事務総長は、「彼らの未来は、われわれの未来でもある。彼らの声に耳を傾けなければ、今後の数十年間は不安定で排他的なものとなり、われわれの平和や治安、繁栄への見通しが損なわれる」と述べ、座り込み集会の参加者らの主張を聞くよう各国指導者に呼び掛けた。


◎教皇、G20首脳会議にメッセージ

 【CJC=東京】バチカン放送によると、教皇ベネディクト16世は11月2日、水曜恒例の一般謁見を行った。教皇は、仏カンヌで開催の主要20カ国・地域(G20)首脳会議の参加各国政府に向けて、世界経済に関わる主要問題を検討するこの会合が、世界の人間的・総合的な真の発展を妨げている様々な困難を克服する助けとなるようにと、メッセージを送った。
 カトリック教会の暦で「死者の日」を記念したこの日、教皇はキリスト教的立場から死について観想、死の中に大きな希望を認める者だけが、希望から発する生を生きることができると強調した。


◎アイルランドが駐バチカン大使館を閉鎖

 【CJC=東京】アイルランド政府が11月3日、駐バチカン大使館を閉鎖する、と発表した。聖職者による性的虐待問題などでカトリック教会との関係悪化を受けてのことと指摘する向きもあるが、イーモン・ギルモア外相は今回の閉鎖を財政的事情によるもの、と述べている。駐イラン大使館、東チモール事務所も閉鎖する。
 アイルランド首座大司教のショーン・ブラディ枢機卿は「深刻な失望」の意向を表明、「聖座が国際関係に果たす重要な役割と、何世紀にもわたるアイルランド市民と聖座との歴史的つながりを無視するものだ」と語った。


◎スーダンのキリスト教各派は「統一」を維持

 【CJC=東京】南スーダン独立が決まったものの、スーダン南北の諸教会は、イスラム教が大勢の状況下で分裂を避け一致を維持することを決めた。
 カトリック教会司教は10月28日、両国にまたがる一つの司教協議会を維持することを決めた。これまでの歴史と「現実の人間的なつながり」を意識したもの。7月には聖公会(英国国教会)が今後2年間、現状維持することを決めており、スーダン教会協議会も分離しないことにしている。


◎十字架隠さず、生徒がイスラム教教師に殺される

 【CJC=東京】この10月16日、、エジプト南部ミンヤ県マラウィで教室の席をめぐりイスラム教徒とキリスト者学生の間で口論が起きた。マリ・アブデルマッシ記者がAINA通信に伝えたところでは、この口論の結果、キリスト者の生徒アイマン・ナビル・ラビブさん(17)が殺された。同通信は宗派的な抗争ではないとしているが、コプト教会のニュース・サイト『国境なきコプト』は、ラビブさんが十字架を身に着けていたからだ、と報じた。
 「公式報道を知りたい。コプト側の報道通りだったら悲劇だ。キリスト者への迫害が学校にまで及んだのだから」と活動家のマルク・エベイド氏は述べ、マラウィの教会が事件について沈黙を守っていることを非難した。
 AINA通信は30日、ラビブさんの父、ナビル・ラビブ氏が沈黙を破り、イスラム教徒の教師から十字架の刺青を隠すよう指示されたのを拒否したため、殺されたことを確認した。十字架はコプト教徒の伝統に従って手首に刺青しており、さらに一つ身に着けていたという。
 暴行の現場に居合わせた級友は、手首の刺青を覆うのを拒否、さらに身に付けていた十字架を取り出すなど反抗的な姿勢を見せた、と語った。「教師は息子を息が出来ないようにし、イスラム教徒の生徒が殴打した」と母親は述べている。


◆短信◆CJC通信速報(Twitter:cjcpress)から。

≪アジア≫
▽中国カトリック教会広東省海門教区司教はこのほど新司祭5人を叙階した。3人は同省内の汕頭教区。同教区では3カ月前にヨセフ・ファン・ビンザン神父が、バチカン(ローマ教皇庁)の承認なしに司教に叙階されている。
▽国連が任命した人権問題専門家が11月1日、逮捕、拉致などチベットの僧侶に対する抑圧を中止するよう求めた。
▽香港キリスト教協議会は、特別行政区行政長官候補選考委員会への参加を、社会発展にキリスト者の声を反映させるため、と語った。香港基本法によって、選考委員会は10月30日、選挙委員会に対し候補者10人を推薦した。選挙は2012年3月に行なわれる。

≪大洋州≫
▽英連邦首脳会議が10月28日、オーストラリア西部パースで開かれ、英王室の継承権について、長女の継承や、カトリック教徒と結婚した者の継承を禁止する現行規定を廃止することで合意した。
▽インドネシア・ジャワ島のボゴールではキリスト教会(ゲレハ・クリステン・インドネシア)が現地当局によって閉鎖され、教会員は毎日曜、屋外での礼拝を余儀なくされている。しかも当局は路上での集会を禁止する措置にも出ている。

≪インド亜大陸≫
▽チベットの中国統治に反対する動きがチベットとインドで広まっているが、ネパールにも波及、カトマンズ渓谷にあるチベット難民キャンプ付近で100人近くが警察に逮捕された。

≪欧州≫
▽北朝鮮で獄中に誕生、23年間獄中生活の後、脱出した申東赫氏が『クリスチャン・ソリダリティ・ワールドワイド』の助成でこのほど英国を訪問、カンタベリー大主教ローワン・ウイリアムズ氏、ジェレミー・ブラウン外務閣外相などと会談した。
▽英国で同性カップルが人前結婚式を礼拝場所で行なえるようになった。リン・フェザーストーン平等相が11月2日、国会で発表した。
▽反格差社会デモに呼応した抗議活動が11月5日、ロンドンで行われ、セントポール大聖堂前を占拠している約200人が国会議事堂まで行進、2人が逮捕された。この日は17世紀の「反逆者」ガイ・フォークスが逮捕された記念日に当たる。
▽英国のキリスト教各派と関係慈善団体が10月31日、貧富格差解消のため、課税免除要請文書を財務大臣に提出した。
▽フランスの風刺記事専門の週刊紙『シャルリエブド』10月2日号に、ターバンにひげ面のムハンマドの風刺画を掲載された。この紙面が発売前からインターネット上で広がり、イスラム過激派とみられる勢力が同紙に対し「死刑」を宣告していたが、編集部に2日未明、火炎瓶が投げ込まれ事務所が全焼した。

≪アフリカ≫
▽ナイジェリア北東部ヨベ州のダマトゥル周辺で11月4日夜から5日にかけて過激派テロがあり、地元の救急当局者は死者が150人に上ったと述べた。軍施設や警察署、キリスト教会などに爆弾攻撃や銃撃があり、イスラム過激派『ボコ・ハラム(西洋の教育は罪)』が犯行声明を出した。
▽ケニアの南ソマリア内乱介入に宗教指導者も支持表明しているが、イスラム教過激派が反発、ケニアの宗教施設にテロ攻撃を行なう、と脅迫している。
▽世界教会協議会はシエラレオネのフリータウンで10月24〜28日、第2回『アフリカ人権擁護トレーニング』を開催した。トーゴ、コートジボアール、リベリア、ギネアなどから教会活動家など35人が参加した。
▽エジプト聖書協会のキャンペーン広告が全国紙に掲載されたが、内容に聖書語句を盛り込むことが初めて認められた。

≪北米≫
▽米ニュージャージー州の公立病院に勤務していた看護士12人が、妊娠中絶を拒否した場合は解職すると通告を受けたことに納得できない、と当局を告訴した。
▽11月7日に93歳の誕生日を迎える米国の著名な大衆伝道者ビリー・グラハム氏が30番目の著作『ニアリング・ホーム』をトーマス・ネルソン社から刊行した。自叙伝的な内容と老いの知恵を記している。
▽独自の信仰生活を守り続ける米国の『アミッシュ』から分離したグループが、主流派のあごひげや髪の毛を無理やり切るといった事件が発生、連邦捜査局(FBI)が捜査に乗り出した。
▽米神学者エリザベス・ジョンソン氏(カトリック神学会会長)の著作『生きる神の探求』がカトリックの教義に抵触するのではないか、として司教協議会教理委員会が協議を求めているが、ジョンソン氏は応じていない。同氏側は委員が会合を拒否している、と言う。
▽米『国際宗教の自由』委員会が11月18日に廃止されるが、カトリック教会司教協議会は、連邦上院に設置継続を訴えた。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(11月6日)=https://www.cwjpn.com
★教皇、アシジ「平和祈祷集会」で「信仰の清め」訴える
★教皇、「世界宣教の日」に聖ザベリオ宣教会創立者ら3人を列聖
★金融市場規制の新機関=バチカン文書が必要性指摘
★いじめの現実と向き合う=さいたま教区=部落差別人権委員会が「集い」
★「司教協議会諸宗教部門」主催のシンポジウム=宗教者に問われる「自死」めぐる使命=東京・麹町教会

 =キリスト新聞(11月5日)=https://www.kirishin.com
★東京基督教大="20年の悲願"達成=大学院を来春開設へ=牧師の継続教育にも
★キリスト教文化協会=西野和子氏・加藤常昭氏の功績称える
★世界死刑廃止デー記念集会で辺見庸氏=震災後の死刑判決に違和感=東京
★日本長老教会=震災勉強会で住田裕氏「神の前に、足るを知る」
★カイリンさんコンサート=本紙報道を機に実現=「つながりは偶然じゃない」

 =クリスチャン新聞(11月6日)=https://jpnews.org
★震災から半年の被災教会=津波被害に遭った教会=内陸部へ移転検討=原発30キロ圏 信徒離散したまま
★"希望のりんご"笑顔で=気仙沼の子=浅井力也さんと共同制作
★原子力発電所とはいったい何なのか=管理された原発所内と廃炉への事実を直視=映画「アンダー・コントロール」=フォルカー・ザッテル監督に聞く
★開かないと思った扉も開=拡大拉致祈祷会で佐藤彰牧師励ます
★「宗教者九条の和」=非戦・非核に加え"非原発"訴え


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