世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1084信(2011.10.31)

  • 伊アッシジで『宗教者サミット』
  • カトリック伝統主義者は『宗教者サミット』批判
  • 教皇、『信仰の年』開催に向け使徒的書簡『ポルタ・フィデイ』発布
  • 教会関係団体が武器交易反対へさらに努力
  • 『クリスタル・カテドラル』いよいよ大詰め
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎伊アッシジで『宗教者サミット』

 【CJC=東京】教皇ベネディクト16世が主宰して世界の宗教者代表が平和を祈り、諸宗教の対話を目指す会議が10月27日、イタリア中部アッシジで開かれた。『宗教者サミット』とも呼ばれる会合は、1986年に当時の教皇ヨハネ・パウロ2世の呼び掛けで初めて実現したが、それ以来の開催となった。
 会議には世界50カ国以上からキリスト教指導者だけでなくイスラム教徒、ヒンズー教徒、仏教徒、ユダヤ教徒、シーク教徒、神道、道教、ジャイナ教、ゾロアスター教の代表、アフリカの民俗信仰者、無神論者、不可知論者も参加した。日本からは神道や仏教の関係者らも出席した。ただダライ・ラマやマザー・テレサといった著名人の顔は少なかった。
 キリスト教では、世界教会協議会のオラフ・フィクセ=トゥヴェイト総幹事、正教会エキュメニカル総主教バルトロメオス1世始めギリシャ、ロシア、ルーマニア、セルビア、ベラルーシの各正教会、ルーテル派、メソジスト、バプテスト、長老派などが参加した。
 バチカン(ローマ教皇庁)正義と平和評議会議長のピーター・コドヴォ・アピア・タークソン枢機卿は、「わたしたちは、善に対する宗教の偉大な力を証しするために、また平和を作り出し、紛争の当事者を和解させ、人々を創造との調和に立ち帰らせるという共通のコミットメントを新たにするため、ここに来た」と挨拶した。続いて、バルトロメオス1世総主教、世界教会協議会のオラフ・フィクセ=トゥヴェイト総幹事、英国国教会の霊的最高指導者ローワン・ウイリアムス・カンタベリー大主教、イスラエルのダヴィド・ロゼン首席ラビ、さらにイスラム教、仏教、ヒンズー教、ヨルバ信仰の代表らが演説した。さらに信仰者と不信仰者との生産的な対話のために教皇に招かれたブルガリア生まれのフランスの作家ジュリア・クリステヴァ氏が演説した。
 世界教会協議会のオラフ・フィクセ=トゥヴェイト総幹事は「フランシスコが神に献身したのは若い時だった。今日、多くの国で民主化と平和に向かって若者がリードしているのを見ると、わたしたちは、必要な変革に対して若者のビジョンと勇気を必要としている」と語った。
 教皇は、会議参加者を歓迎し、宗教を理由に戦争やテロが行われてきたと指摘、「ただそれは宗教の本質ではない」と強調した。教皇は、キリスト教信仰が武力行使に利用されたことがあったことも認め、それは「大きな恥辱」と語った。
 教皇は、最初のアッシジ会合を冷戦の厳しい緊張の中にあったもの、と想起した。3年後、ベルリンの壁は崩壊、共産主義帝国は平和裏に解体した。「この自由の勝利、それはまた、何よりも平和の勝利であり、わたしたちが感謝する」と教皇は語った。
 教皇は、世界は今、二つの大きな形で暴力という脅威にさらされている、と語った。第一はテロリズムで、教皇はその「無謀な行為」と決め付け、それが宗教信仰を利用していることを非難した。第二は、人間の視界から神を消去しようとしていることだ、と教皇は指摘した。「神の否定は、限りない狂気と暴力につながる」と、それをまざまざと描き出すものとして強制収容所の例を取り上げた。
 教皇は同日、バチカン市国内の駅から汽車でアッシジに到着した。イタリアのテレビは、会場に集まる参加者を見ようと押し掛けた群集を映し出した。


◎カトリック伝統主義者は『宗教者サミット』批判

 【CJC=東京】伊中部アッシジで、教皇ベネディクト16世が主宰した世界の宗教者代表の平和を祈り諸宗教の対話を目指す会合『宗教者サミット』について、カトリック教会の伝統主義者グループ『聖ピオ10世会』は、これほど多くの「虚偽宗教」指導者がそれぞれの「神」に祈るような会合を教皇が主催するとは、と会合を「冒涜的」と批判している。
 『聖ピオ10世会』は、今回の会議が引き起こした害悪を償うためには1000回ものミサを行なう、と言う。そして非カトリック者にカトリックへ改宗するよう呼び掛けた。
 『聖ピオ10世会』米国管区長のアーノー・ロスタン神父は、アッシジで行なわれた超宗教的な催しは「神の第1戒『わたしのほかに神があってはならない』に直接反するものだ、と非難した。そして米国の同会は信徒に対し、『特に現在盛んになっているエキュメニズム(一致)に反対する』信仰防衛のために祈るよう求めた。
 フランス管区長のレギス・ド・カッケリ神父もアッシジ会合を非難し「祖先が神の子を十字架につけ、三位一体の神を否定した祖先に忠実なユダヤ人といることを神が喜ばれる、という考えを誰が受け入れられるだろうか。その信奉者が絶えずキリスト者を迫害しているアラーへの祈りに、神が耳を傾けることがどうして出来ようか。神が異教徒、分離派、そして御子によって表わされた教会を否定した背教者の祈りを受け入れることがどうして出来ようか」とする声明を発表した。
 この激烈な声明が、『聖ピオ10世会』に対するバチカンの和解努力に水を差すことは必至と見られる。

※関連短信
▽カトリック伝統主義集団『聖ピオ10世会』の影響を無視出来ないフィリピン・ダバオ教区では、アッシジで開催される超宗教会議への反対の声が高まっている。フェルナンド・カパラ大司教が同会司祭の発言に従わないよう、信徒に警告している。


◎教皇、『信仰の年』開催に向け使徒的書簡『ポルタ・フィデイ』発布

 【CJC=東京】教皇ベネディクト16世は、バチカン(ローマ教皇庁)で10月16日、「新しい福音宣教」のためのミサを行なった際、「いのちを与える福音の素晴らしさを世界に伝える、新しい福音宣教への力を汲み取る」ために、2012年10月から翌年11月まで、『信仰の年』を開催する、と宣言した。バチカン放送が報じた。
 同日のミサは、12年10月にバチカンで開催する「キリスト教信仰を伝えるための新しい福音宣教」をテーマとしたシノドス(世界代表司教会議)の精神的準備として行われた。
 教皇は17日、『信仰の年』について説明する使徒的書簡『ポルタ・フィデイ』(信仰の門)を発布した。「人生を神との交わりに導き、神の教会に入ることを可能とする『信仰の門』(使徒言行録14・27)
は、常に私たちに開かれている」という一文で始まり全15章からなる。
 第2バチカン公会議開幕から50周年を迎えると同時に、福者ヨハネ・パウロ2世が改編した『カトリック教会のカテキズム』発行20年目にあたる2012年10月11日から13年11月24日の「王であるキリスト」の大祝日まで、『信仰の年』を開催することを決意した、と教皇は記している。
 教皇は、この年がすべての信徒に、新たな確信と信頼、希望のもとに信仰を完全に「告白」し、典礼を通して信仰を熱心に「祝い」、同時にそれを生活の中で「証し」することを促すものであるよう願い、さらに愛(カリタス)の証しをより強めていく機会であるようとの期待を表明した。


◎教会関係団体が武器交易反対へさらに努力

 【CJC=東京】ENIニュースによると、全世界で少なくとも52万6000人が「武装した暴力」によって毎年殺害されている。スイスの調査団体『武装暴力と開発に関するジュネーブ宣言』が10月27日、報告書『武装暴力の世界的負担=危険な戦闘』(仮題)を発表した。
 報告書は、被殺害者は毎年39万6000人(内女性6万6000人)。また故殺によるもの5万4000人、法執行中の暴力2万1000人。さらに推定5万5000人がテロの際に殺害されている。
 「政治的暴力、犯罪、対人関係による暴力などの区別があいまいな状況が増加している。中央アメリカの麻薬密売やソマリアの貧困といった経済的な動機で行なっている海賊行為などがそれだ」と、武器貿易の専門家キース・クロース氏は言う。同氏は報告書の主要執筆者。
 調査では、全世界の暴力による死は、2004年から09年に掛けては10万人当たり7・9人だった。ただ少なくとも58カ国では10人に上っている。最高はエルサルバドルで同61・9人。次いでイラクが同59・4人。ジャマイカ、ホンジュラス、コロンビア、ベネズエラ、グアテマラの中米5カ国はいずれも43人以上だった。
 国連では在来型兵器の交易制限に向けての努力が進められており、世界教会協議会(WCC)など人権団体や教会団体による殺害減少への世界規模の活動支援が期待されている。
 WCCのオラフ・フィクセ=トゥヴェイト総幹事は10月21日、ニューヨークで開かれた、人権と武器交易に関するパネル討論会で、「国連加盟国、教会、民間団体などを代表しているか否かに関わらず、わたしたちはみな、一般市民の求めているものを、その人たちの日常生活と平和を脅かす武器に対する厳しい規制という課題に結び付けるためにここにいる」と語った。
 27カ国の教会、関係団体、ネットワークの代表が、WCC主導の、強固で効果的な武器交易協定成立への動きを支持し、パネル討論会に参加した。


◎『クリスタル・カテドラル』いよいよ大詰め

 【CJC=東京】米カリフォルニア州ガーデングローブにあるメガチャーチ『クリスタル・カテドラル』理事会は4300万ドル(約34億円)の負債を抱えて破綻した財政の再建へ募金を始めたものの、目標額に達せず、著名な教会堂の売却を検討するまでになった。
 『クリスチャン・サイエンス・モニター』紙によると、教会理事会は、募金が目標額に達しない時はチャプマン大学の提示を受け入れる意向を文書で示している。売却後も教会は多数の建物を引き続き使用出来、さらに将来、買戻しも可能となっている。
 現地紙『オレンジ・カウンティ・レジスター』によると、チャプマン大学とカトリック教会オレンジ教区がそれぞれ5360万ドル(約43億円)での買収に名乗りを上げた。
 クリスタル・カテドラルの創設者ロバート・H・シュラー牧師の娘のシーラ・シュラー・コールマン主任牧師は声明で、理事会が「裁判所により定められた期限までに提案を受け入れるか決めなければならない。ただその11月14日までにどうなるかは分からない」と述べ、自分は「祈り」「信じ」続けている、と付け加えた。
 ロバート・シュラー氏は、チャプマン大学とオレンジ教区双方に「多大な敬意を払う」と声明で述べている。


◆短信◆CJC通信速報(Twitter:cjcpress)から。

≪アジア≫
▽ドイツ政府のマルクス・レーニン対外人権特任担当官は10月27日、北朝鮮の政治犯収容所に収容されている、慶尚南道統営市出身の申淑子(シン・スクチャ)さんと娘のオ・ヘウォンさん、キュウォンさんについて、救出に向け積極的に取り組む意向を表明した。朝鮮日報報道。
▽この7月、バチカン(ローマ教皇庁)の承認を得ない司教の叙階式典への出席を拒否した遼寧のパウロ・ペイ・ジュンミン司教が、中国天主教(カトリック)司教団副主席の地位を追われた。

≪太平洋≫
▽この2月の大地震で損害を受けたニュージーランド・クライストチャーチの英国国教会大聖堂の一部取り壊しが決まった。来年のイースターに向けて、日本の建築家、坂茂氏による紙製の仮設大聖堂(座席数700)の建設準備も進められている。工費400万ニュージーランド・ドル(約4億3200万円)。

≪インド亜大陸≫
▽パキスタンのカトリック聖書委員会が10月23日、デザインや判型の異なる聖書4種類を10月23日公刊した。これまでプロテスタント系のパキスタン聖書協会が聖書を中国から輸入していた。

≪欧州≫
▽バチカン(ローマ教皇庁)正義と平和評議会が10月24日、「グローバルな公共の権威に照らしての国際財務システムの改革に向かって」と題する文書を発表した。金融市場を制御し、野放図な自由市場がもたらす不平等の是正を訴えるもの。
▽教皇べネディクト16世は10月22日、従軍司祭会議参加者と会見、軍人とその家族と為に適切な司牧を進めるよう促した。
▽教皇べネディクト16世が来年10月開催予定の『新福音化シノドス』発題総括者に米ワシントンのドナルド・ウイル枢機卿を、特別秘書に仏モンペリエのピエール=マリ・カレ大司教を任命した。
▽ソマリア沖に出没する海賊に襲われた被害者援護に『海員宣教会』(本部ロンドン)などキリスト教団体が乗り出している。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(10月30日)=https://www.cwjpn.com
★教皇、「信仰の年」発表=来年10月から公会議開会50年記念し
★強制連行と在外被爆者=スタディ・ツアーで学ぶ=高校生平和大使と共に「軍艦島」見学=長崎
★福者ヨハネ・パウロ2世教皇記念日=日本の典礼暦に=典礼秘跡省が承認
★韓国の基地反対に連帯=正平協会長が書簡
★新・駐日教皇庁大使が到着=岡田大司教ら空港に出迎え

 =キリスト新聞(10月29日・休刊)=https://www.kirishin.com

 =クリスチャン新聞(10月30日)=https://jpnews.org
★被災者に寄り添うクリスチャンアーティストら=「歌うの怖かった。でも喜んでくれた」=それでも希望を歌で
★マハリカミッション=陸前高田に総合福祉センター=比人ら雇用し高齢者介護再生
★全世界の基地撤廃を=沖縄で第3回九条アジア宗教者会議
★「一緒に働けて感謝でした」=90歳羽鳥明氏 PBA60周年式典で挨拶
★宗教者九条の和=長崎で非戦誓う


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