世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1081信(2011.10.10)

  • 「神の子」をイスラム世界でどう訳すか
  • 英BBC放送が「AD」「BC」に代え「CE」「BCE」採用
  • ▽バチカン機関紙もBBCを批判
  • リベリア内戦を非暴力で終息、ボウイーさんにノーベル平和賞
  • 米大統領選の共和党候補混迷、キリスト教保守派の影薄く
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎「神の子」をイスラム世界でどう訳すか

 【CJC=東京】ウイクリフ聖書翻訳協会と関係団体『SIL・インターナショナル』(本部=米テキサス州ダラス)はこの8月、トルコのイスタンブールで、翻訳担当者と外部専門家約30人による会合を開き、イスラム世界の文脈(コンテキスト)の中で、「神の子」とか「父なる神」をどのように表現するのが良いか、検討した。米キリスト教通信WNSが報じた。
 神とイエス・キリストをどのように訳出するか、が聖書翻訳に際して最重要課題であることは、昔も今も変わりはない。ウイクリフ協会も、内部だけでなく、支援教会や宣教団体も大きな関心を寄せており、同協会の70年近い歴史の中で、意見対立の結果、離脱者が出たり、支援停止を引き起こしたこともある。
 今回のイスタンブール会合も、これまでの深刻な意見対立を踏まえて開かれ、新しい翻訳基準に参加者間の合意が成立した。今回の問題は「神の子」と「父なる神」をイスラム世界の文脈で字義通りに訳出すると、神がマリアと性的関係を持ったという意味を含んでしまうことにあった。「神に愛された1人」というような意訳をする意見も出されていた。
 合意に達した結論は「ほとんどの場合、『神の子』を字義通りに訳出することが望ましい」としたものの、字義通りに訳出すると「誤った意味に取られる場合、『息子』という概念を保持している」ならば「等意義の言い換え」を許容する、と言うもの。
 これは「神の子」や「父なる神」を字義通りに訳出しないことを、ウイクリフ協会とSILが支持したことを意味する。
 ただ新基準は、字義通りでない表現で受け入れられるものについては厳しくした、と『ウイクリフ・米国』のルス・ハースマン上席副会長は語った。
 1990年代に、翻訳者たちは「神のメシア」や「神のキリスト」などを代替表現する実験を行ってきたが、「『息子』という意味を伝えていなかったので、それらは不完全だったことははっきりしている。限界線を越えている」と言う。
 現在、イスラム圏の文脈での訳出を進めている200件の中で、神に関するもので代替表現を採用する例が30から40あるという。その1例が「神の愛する子」を「神に愛された1人」にするもの。これなら神聖な家族関係、社会関係は意味するが、生殖関係の意味はない、とハースマン氏。
 それでも、関係者全員が納得したわけではない。すでに翻訳者2家族が脱会したという。逆に保守的な支援団体や教派からの不満も出そうだ。


◎英BBC放送が「AD」「BC」に代え「CE」「BCE」採用

 【CJC=東京】英公営BBC放送が紀元を表す「AD」「BC」の代わりに「CE」(共通紀元)、「BCE」(共通紀元前)を採用する、とウエブサイトで明らかにした。「AD」は「わたしたちの主の年」を「BC」は「キリスト以前」を意味しており、非キリスト者の感情を害するので、「BBCは公平を意識しており、非キリスト者の感情を傷つけたり敵視しない用語を使用することは正当なこと」と言う。
 これに対しボリス・ジョンソン・ロンドン市長ら政治家からも批判の声が上がっている。変更自体が無意味との批判もある。所詮はキリストの生涯に関係してくるからだ。マイケル・ナジル=アリ前ロチェスター主教は「この変更は必要ないし、BBCの目的は達成されない。CEにせよADにせよ日付は実際には同じなのだから、やはりキリストの生誕に関係づけられる」と言う。
 これらの批判を考慮してか、BBCは「紀元に関する指針を定めてはいない。ADとBC、CEとBCE双方が広く受け入れられており、選択はそれぞれの番組、制作チームに委ねられている」と発表した。


◎バチカン機関紙もBBCを批判

 【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)機関紙『ロッセルバトレ・ロマノ』は10月4日、英公営BBC放送の「AD」「BC」使用廃止方針を「無意味な歴史的偽善」と決めつけた。
 同紙上で、ルセッタ・スカラッフィア記者は、非キリスト者の報道関係者の多くが「これまでの紀元で何か気にさわったと感じたことはない」と語っている、と指摘、「他の宗教に対する尊敬というのは口実に過ぎないことは明らか。西側文明からキリスト教の痕跡を拭い去りたいと思っているのだ」と言う。
 これまでにも同様の試みがあった、とスカラッフィア記者。1789年の反キリスト教的「フランス革命」や、1917年のレーニン主義者によるロシア革命の際にも伝統的な暦の変更が企図された。


◎リベリア内戦を非暴力で終息、ボウイーさんにノーベル平和賞

 【CJC=東京】2011年のノーベル平和賞は、平和と女性の地位向上に貢献したとして、アフリカと中東の女性3人が受賞した。その1人、リベリアの平和活動家リーマ・ロベルタ・ボウイーさん(39)はリベリア・ルーテル教会員。同国の14年に及ぶ内戦を終息させた女性の非暴力運動を組織したことが評価された。
 ボウイーさんは2006年、米福音ルーテル教会(ELCA)の国際リーダーシップ開発計画の奨学金を受けて、バージニア州ハリソンバーグのイースタン・メノナイト大学で平和創出について研究した。
 女性への授賞はケニアの環境活動家ワンガリ・マータイさん(9月25日死去)の04年以来7年ぶり。


◎米大統領選の共和党候補混迷、キリスト教保守派の影薄く

 【CJC=東京】米大統領選挙を来年に控え、共和党を支持するキリスト教保守派の会合がワシントンで10月7日開かれた。米テキサス州ダラスのロバート・ジェフレス牧師は、共和党の大統領候補の中でリック・ペリー・テキサス州知事を「イエス・キリストの忠実な弟子」と称賛した後、ミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事の信じるモルモン教会をカルトと断定、同氏は「キリスト者ではない」と語った。
 代表約3000人による模擬投票が行われた結果、ロン・ポール下院議員が37%の票を集め1位、実業家のハーマン・ケイン氏が23%を得票し2位となった。一方、本命候補とみられていたペリー氏は8%で4位、ロムニー氏は4%の6位にとどまった。本命候補2人がともに低迷したことで、共和党の候補選びはさらに混迷の度を強めている。


◆短信◆CJC通信速報(Twitter:cjcpress)から。

≪アジア≫
▽北朝鮮の金正日総書記の孫で、金正男氏の長男キム・ハンソルさんは、ソーシャル・ネットワーキング・サービスで、自身の宗教について、複数ある宗教の選択肢から「その他のキリスト教教派」を選んでいることが分かった。

≪中東≫
▽イラク北部のキルクークで少なくともキリスト者2人が殺害されるなど、宗教少数派への抑圧が続いている。
▽シリアにある1000年前の聖典写本をイスラエルに持ち込もうとイツハク・ラビン政権が1995年に決めて以来、ようやくこの「移送作戦」が完了した。

≪欧州≫
▽ロシア北西部プスコフにカトリック教会建設の許可を申請したところ、却下されたことで、モスクワの神の母教区のパオロ・ペッジ大司教が抗議の声明を10月4日発表した。
▽バチカン放送が開設80周年を迎え、国務長官タルチジオ・ベルトーネ枢機卿が9月29日、記念ミサを執行した。
▽教皇べネディクト16世は、ヨーロッパの司教に、若い世代に仕えるために新福音化を推進するよう呼び掛けた。
▽教皇べネディクト16世が、『ガーディアン・エンジェルズ』は信仰者を「その生まれた日より死ぬ時』まで守る、と10月2日称賛した。
▽独シュパイアーで10月2日、カテドラル奉献950周年記念特別ミサが行われた。同カテドラルはロマネスク様式では最大。
▽カンタベリー大主教ローワン・ウイリアムズ氏が10月6日、アフリカ歴訪に出発、同日マラウィのブランタイヤに到着した。
▽アイルランド教会の大改革を求める司祭が今や540人と全員の1割を超えた、と『カトリック司祭協議会』が10月6日語った。
▽オーストリアの反体制司祭助祭グループは、この6月19日発表した「不服従への呼び掛け」取り消し要求には応じられない、と10月8日語った。cc
▽世界教会協議会は、世界のキリスト教神学教育に関する調査を10月8日開始した。

≪アフリカ≫
▽カトリック救援団体『国際カリタス』は加盟団体は、数十年ぶりという水害に見舞われた東アフリカで、4100万ドル(約32億円)を投じ、100万人を救済した、と発表。
▽ノーベル平和賞の受賞者で9月に死去したケニアの環境活動家ワンガリ・マータイさんの国葬が10月8日、ナイロビの公園で行われた。キバキ大統領や国際機関の関係者らが参列した。

≪北米≫
▽ウオール街の抗議デモに、ブルックリンのグリーンポイント改革派教会の会員に混じってユニオン神学校のリックス・トーセル神学生の姿も見られた。ENI通信が報じた。
▽米国防総省が従軍牧師(司祭)に、同性間結婚式の司式を認めたことに、軍人大司教区のテイラー・ヘンリー報道担当は、カトリックの従軍司祭が司式をしない、と語った。
▽米オハイオ州リッチランド裁判所ジェームズ・ドウィーズ判事が法廷に掲出した「十戒」を描いたポスターの撤去命令をめぐる訴訟で、米連邦最高裁は10月3日、同判事の上告を棄却した。
▽8月23日の地震で被害を受けた米ワシントンのナショナル・カテドラルは修復するだけで2500万ドル(約20億円)必要という。
▽キリスト教の歴史で最大の変化が現在進んでいる。ヨーロッパの宗教から、アフリカ、中南米、アジアの宗教に変わりつつある、とボストン大学神学部のデーナ・ロバート博士。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(10月9日)=https://www.cwjpn.com
★アキノ大統領被災地へ=東北3県のフィリピン人集う=宮城石巻教会
★比・インファンタ教区司教がミサ=津波犠牲者にささげる=「イエスこそ慰め」
★仮設住宅の取扱説明書(トリセツ)=中越地震の経験生かす
★NICE(ナイス)の精神学ぶ=福岡教区の信徒養成講座=大名町教会
★パレスチナ国連加盟申請に=バチカン外務局長=「勇気ある」決断呼び掛け

 =キリスト新聞(10月8日)=https://www.kirishin.com
★日本賛美歌学会="創作"テーマに大会=魂に染み込む歌を
★「原発体制を問うキリスト者ネット」発足=牧師の反応 薄さに危惧
★東京でネラン神父記念シンポ=「おバカさん」の孤独な戦い問う
★宗教科教員らが支援コンサート・東京=フランシス・ケアセンター=エイズ患者との出会い契機
★教皇独訪で諸問題への明言回避=プロテスタント側の期待外れる

 =クリスチャン新聞(10月9日)=https://jpnews.org
★ネットで世界の求道者導く=ジーザス・ネットジャパン=対話ボランティア募集
★被災地に元気を=東北応援団文化祭
★君は愛されて生まれたよ=七生養護学校の性教育=2審も「正しい」=教議の「不当支配」再認定=学習指導要領に反しない
★いのちの尊厳を支えるケア=日野原重明氏100歳=キングス・ガーデン30周年で講演
★日本CGNTVが開局5周年=47都道府県の牧師 出演


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