世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1077信(2011.09.12)

  • 米同時多発テロ10周年追悼、キリスト教指導者が声明
  • 9・11以後、米国では異宗教間の礼拝増加
  • 『南半球英国国教会共同体』代表団が中国訪問
  • 「HIVに立ち向かえる神学を」とアフリカの神学者
  • バチカンの秘密番号は?
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎米同時多発テロ10周年追悼、キリスト教指導者が声明

 【CJC=東京】2001年9月の米同時多発テロから10年を迎えた9月11日朝、ニューヨークでは世界貿易センタービルの跡地グラウンド・ゼロで追悼式典が開かれた。バラク・オバマ米大統領夫妻、ジョージ・ブッシュ前大統領夫妻ら多数が参列。犠牲者の冥福を祈った。式典の会場周辺は通行止めになり、各地でもテロを懸念して厳戒態勢が敷かれた。米政府が、「3人のテロ容疑者が入国して、車を使った爆弾テロを計画している」と公表したことの影響と見られる。
 2001年の同時テロではアルカイダ工作員とされる19人が民間航空機4機を乗っ取り、世界貿易センターのツインタワー、首都ワシントンの国防総省に相次ぎ激突、1機がペンシルベニア州シャンクスビルに墜落した。犠牲者は日本人24人を含め2977人と、史上最悪のテロとなった。
 追悼式典では同センターのツインタワー2棟に航空機が突撃した時間など六つの時刻に合わせて鐘を鳴らして黙とう。遺族が犠牲者の名を一人ひとり読み上げた。オバマ大統領は演台に立ち、聖書詩編「神はわたしたちの避けどころ、わたしたちの砦。苦難のとき、必ずそこにいまして助けてくださる。わたしたちは決して恐れない」(46編2〜3節)を朗読した。
 国防総省や、首都を標的にしていたとされる航空機が墜落したシャンクスビルでも追悼式典が開かれた。
 オバマ大統領はニューヨークでの式典出席後、シャンクスビルと国防総省をそれぞれ訪問。同日夜にワシントンで開く追悼コンサートに出席し、演説した。
 ニューヨークの国連本部では9日、犠牲者を追悼する式典が国連総会議場で行われ、各国大使らが黙とうをささげた。
 コンドリーザ・ライス米国連大使は、米国が国際社会と協力し、国際テロ組織アルカーイダを壊滅させ、世界のテロ防止に全力を挙げる決意を示した。
 一方、アフガニスタンのイスラム原理主義勢力タリバンは10日、「米国とその同盟国が何万人ものイスラム教徒を殺害した事実は西洋民主主義国家にとって永遠の汚点として残るだろう」と述べ、同時テロを根拠にした米国主導のアフガン攻撃を非難、徹底抗戦を改めて表明した。
 教皇ベネディクト16世はニューヨークのティモシー・ドーラン大司教にメッセージを送り、多くの無実の人々を神の無限の憐れみに託すと共に、愛する者を失った人々が神の慰めに支え続けられるよう祈った。教皇はこれらの悲劇を生んだ犯行が神の名を用いて行われたことを厳しく非難、いかなる状況においてもテロ行為が正当化されることは決してないと改めて強調した。
 教皇は「すべての人の命は神の目にとって大切なものであり、すべての人と人民の譲り渡すことのできない権利に対する真の尊重を世界に推進するため、その努力を惜しんではならない」と述べ、米国民が救助活動で示した勇気と寛大さ、希望と信頼のもとに前進する回復への力を賞賛、正義への確固とした取り組み、グローバルな連帯の文化が、暴力をしばしば引き起こす状況を世界から取り除き、より明るく安全な未来を目指して、いっそうの平和と繁栄を作り出す助けとなるよう祈った。
 世界教会協議会のオラフ・フィクセ=トゥヴェイト総幹事はメッセージで、エキュメニカル(教会一致)運動に携わるものとして、異なる信仰を持つ人たち、特にキリスト者、ユダヤ教徒、イスラム教徒との間の対話に関わってきたとして、宗教には大きな力と重要性があるにも関わらず、信仰が憎しみ、恐怖、戦争に火を付けるために捻じ曲げられ、悪用され得ることを認めなければならないと指摘、「暴力と非人間性にさらされた人たちに、わたしたしが形成している諸教会の交流の一部として祈り、連帯していることを確認する。あらゆるテロは、それが個人によるものであれ、集団のものであれ、国家によるものであれ、非難されるべきものだ。しかしそれにどのように対応したらよいのか。犯行者は、そのようなトラウマの再燃を避けるために考え出された正義と安全の手段にゆだねられるべきだ。わたしたちの多くは、非暴力こそが、暴力に対する長い視野に立った応答として役立ち、正義の基づく永続的な平和への最も効果的な方法だ、となお確認している」と述べた。


◎9・11以後、米国では異宗教間の礼拝増加

 【CJC=東京】宗教通信RNSによると、他宗教との合同礼拝が、2001年9月11日の同時多発テロ事件以来、米国では倍増していることが9月7日発表された『コーペラティブ・コングリゲーションズ・スタディーズ・パートナーシップ』調査結果で明らかになった。ただ7割以上の教会が他宗教と連合はしないことも明らかになった。
 2010年調査の際、教会の14%が他宗教との合同祝祭を行っていた。2000年の調査では6・8%だった。
 異宗教間の社会奉仕は2000年の7・7%が2010年には20・4%と3倍増している。テロ攻撃後、「イスラム教とイスラム教徒が米国では無視できないほどに存在感を増している」と報告書の著者デービッド・A・ルーゼン氏(ハートフォード神学校宗教調査研究所所長)は言う。
 全米規模のイスラム教集団は、他宗教との連携を図ろうとしている。改革派ユダヤ教徒も同様で、3分の2が異宗教間の合同礼拝に参加し、4分の3が宗教の枠を超えた社会奉仕に参加している。
 自由色の強い教派の方が、異宗教間の合同活動に可能性を見出している。ユニテリアン・ユニバーサリスト教会ではほぼ半数が他宗教との礼拝を行っており、4分の3が合同奉仕活動に参加している。保守派の南部バプテスト連盟の教会ではそれぞれ10%、5%に留まっている。
 調査対象の1万1077教会のほとんどが、異宗教間の活動を全く行っていなかった。ワシントンに本拠を置く『インターフェイス・アライアンス』会長のC・ウェルトン・ガッディ会長は「この現実は、イスラム教嫌悪という問題を抱えていることを示している。多くの人が抱く恐怖に対抗するには、他宗教との協議や行動に加わる人たちを10倍にする必要がある」と言う。
 そうであっても、異宗教間の礼拝や奉仕活動は進んでいる、とユダヤ教ラビのマーク・シュナイダー氏。同氏はニューヨークに本拠を置く『異教徒理解基金』の創設者。「あるべき場所に立っていると言うのではないが、事態が展開し始めているのは良いニュースだ。イスラム教社会にユダヤ教から接触することが今では流行になりつつある。10年前には、こんなことを言うものなら、火星から来たのではないか、と思われかねなかった」と語っている。


◎『南半球英国国教会共同体』代表団が中国訪問

 【CJC=東京】カトリック通信UCANによると、『南半球英国国教会共同体』指導者の代表団が中国国務院国家宗教事務局の招きで中国を8月31日から訪問した。代表団は31日、王作安(ワン・ツォアン)局長の歓迎を受け、その後、蒋堅永(ジャン・ジャンヨン)副局長と会談、宗教の自由などについて協議した。
 9月2日、代表団は中国天主教(カトリック)愛国会と天主教司教団を訪問、ヨセフ・馬英林(マ・インリン)司教団主席と非公式会談を行った。マ司教は2006年に教皇の任命なしに叙階、2010年に司教団主席と愛国会副主席に選出された。両組織ともローマ・カトリック教会の認可を受けてはいない。
 代表団は、中国のカトリック教会の歴史と発展、特にこの30年間の事情について説明を受けた。代表団長のジョン・チュー大主教(シンガポール)は、交流は、お互いの発展を理解し、友好を強み、新しい挑戦に立ち向かうため、皆にとって価値ある機会となった、と語った。
 馬司教は、中国カトリック当局者と南半球の英国国教会主教との会談は今回が初めて、として「わたしたちは、アフリカやラテンアメリカような遠隔地の英国国教会との接触がこれまでなかった」と語った。
 香港の英国国教会筋は、同地の教会は今回の代表団との接触はないとし、今回のような交流が中国政府の宗教部門によって組織されたことに懸念を示している。
「中国とアフリカの間には巨大な利害関係があるが、裏の事情についてほとんど分からない」と言う。
 代表団はその後、重慶、上海やプロテスタント教会が活発な江蘇省などを訪問した。


◎「HIVに立ち向かえる神学を」とアフリカの神学者

 【CJC=東京】アフリカの諸教会にとって、旧約聖書は神学的な思考に際しては歴史的に重要な地位を占めている。「わたしたちの神学は、旧約聖書に記された神のイメージにで形成されている」と『アフリカ・HIV・AIDSに関するエキュメニカル・イニシャティブ』(EHAIA)のチャールズ・クラグバ神学コンサルタントがこう指摘する。
 「この大陸では多くの教会が、病気は個々人の罪に対する罰という信仰に立っており、それが流行病に与える影響が大きい。この神学は旧約聖書によっていることは明白だ。この理解が汚れを強調し、教会の宣教が力を発揮するのを妨げてきた」と言う。
 この神学を解体し、人々に希望を与えられる道を探ることで、神学者、聖職者、教会指導者と協力することがクラグバ氏の主要な関心となっている。
 同氏の「宣教」の背後には、HIV・AIDSへの対応には変革が必要だという神学理解だけでなく、さまざまな、特に草の根のレベルの教会という場で人びとが表明し、それを生きる神学があるとの確信がある。「教会と神学校が、自身のため、人びとの日常の関心に根ざす主張を再形成するため、真剣に聖書を読み直すよう、働き掛ける」と言う。それは「脱構築の神学」と規定しても良い。
 HIV・AIDSに関しては、神の言葉は人びとを自由にし、配慮し、癒すために用いられるべきであって、排除、差別、つまるところ殺人のためにではない、ということが全ての人に対する挑戦なのだ、と言う。
 この神学は教会生活の中であらゆるレベルの成人と青年を育成し活動するのに役立つべきだ、とクラブバ氏は主張する。その訓練は全国や地域レベルの神学教育機関で行われるだけでなく、教会の牧師や信徒に対しても行うべきだという。
 究極の目標は、教会全体をHIVに強くし、癒しの共同体とすることだ。聖書をこのHIV時代に読み直すことに焦点を定め、訓練のテーマには倫理、ミッション、アフリカの宗教、セクシュアリティ、ジェンダー、キリスト教教育を掲げる。「訓練の参加者はいずれにせよ変革されたことを明らかにする。多くの人がこの変革の結果として何か行動することに関わるようになる」と言う。
 クラグバ氏は1985年以来、トーゴ・メソジスト教会の牧師。宣教や神学面での訓練のほか、教会運営、パストラルケア、カウンセリング、哲学、政治学も学んだ。同氏は、現在、解放の神学の重要性をこれまで以上に認めるようになったと述べている。「神学校は神学の研究室と思うかも知れないが、HIVの挑戦などパラダイム・シフトの時にあっては、もっと受容力のある進歩的なものとなる必要がある」と言う。


◎バチカンの秘密番号は?

 【CJC=東京】米国務省の公文書がネット上に漏えいした問題で、各国政府間の連絡用秘密電話番号も明らかになったのではないか、との不安が広がった。ただバチカン(ローマ教皇庁)関係では公開出版されている電話番号以外は漏えいされていない、とカトリック通信CNAが報じた。
 2004年12月27日、駐バチカン米国大使館発電報は、バチカン政庁の重要人物への接触方法などの情報が含まれていた。それには教皇の執務室、居室、当時の国務長官アンジェロ・ソダノ枢機卿の住居の電話番号が記載されていた。ただ教皇執務室の番号は、教皇公邸管理部につながるもの。教皇居室の番号とされているものは実際にはバチカンの電話交換台につながるもので、交換手は修道女が務めている。ソダノ枢機卿宅の番号は現在も変わらず、秘書が電話に出る。同枢機卿は2006年に国務長官を辞任、現在は枢機卿会議副会長。
 英公営BBC放送は9月2日、「バチカンの重要人物」の電話番号公表は、ウイキリークスへの情報提供者の正体を明らかにしてしまうとの懸念を伝えている。しかしバチカンに関しては、今回明らかになったのと同じ番号が公刊された電話番号簿にも掲載されており、それはサンピエトロ広場近くの書店で購入できる。


◆短信◆CJC通信速報(Twitter:cjcpress)から。

≪アジア≫
▽韓国カトリック教会光州教区のキム・ヒイジョン大司教は、『平和のための宗教者会議』の訪問団7人の代表として9月21日、北朝鮮を訪問する。

≪太平洋≫
▽フィジー軍事政権のメソジスト教会抑圧に、世界福音同盟宗教の自由委員会のゴッドフレイ・ジョガラジャ委員長が、専制権力の恥ずべき行為、と抗議した。
▽ニュージーランドの最大都市オークランド教区(英国国教会)は、同性愛者が叙階を含め教会の役職から排除されるべきではない、と宣言した。

≪パキスタン≫
▽パキスタンのラホールで活動している『医療奉仕研究所』(FIR)の看護士シャイスタ・サムエルさん(27)がイスラム教徒の同僚から性的暴行を受けた、と9月3日、警察に通報した。

≪バチカン≫
▽ラテン語ミサを順守、独自に司祭を任命するなどで追放されたルフェーブル派『聖ピオ10世会』総長のヴェルナール・フェレイ司教は、ローマ教皇庁側との会談の後、第二バチカン公会議の方向を受け入れるようにとの要求には今なお応じられない、と語った。
▽バチカン(ローマ教皇庁)は9月3日、アイルランドの聖職者による性的虐待に関する調査報告を、同国政治指導者が批判したことに厳しく反論した。

≪欧州≫
▽スイス司教協議会正義と平和委員会は、国際労働機関(ILO)が産休と母乳による育児を擁護した183号(母性保護)条約を2000年に採択したことを支持、関係法令の整備を連邦政府に呼びかけた。

≪北米≫
▽ワシントンのナショナル・カテドラルはマグニチュード5・8の地震で受けた被害の修復に着手、高さ150メートルのクレーンを会堂南側に設置したが、9月7日倒壊、作業員2人が負傷した。クレーンは売店を直撃、また駐車中の自動車数台も押しつぶした。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(9月11日)=https://www.cwjpn.com
★いのちの始まりと終わり=学生と社会人 共に将来の医療を考える=カトリック医療関連学生セミナー=福岡
★バチカンが強く反発=アイルランド「性的虐待」報告に
★原発30キロ圏内=原町教会=「いつまで続くのか」=戻って来る人増えても 仕事なく
★幼稚園=園再開の日 待ち望む=見通し立たない中、除染続けて
★台風12号=和歌山・新宮教会=信徒宅が浸水被害

 =キリスト新聞(9月10日)=https://www.kirishin.com
★福島原発=後遺症はこれから=広島の被爆医師が証言=東京
★南三陸町で「キリスト者ネットワーク」結成=支援団体が町の復興で提携
★「心にふれる性教育」模索=医師・牧師・教師が共に事例研究
★東南・東アジアカトリック大学連盟=学生、職員らが環境問題で討議
★米『共通英語聖書』すでに50万部=「マン」は「ヒューマン」に

 =クリスチャン新聞(9月11日)=https://jpnews.org
★支援と宣教は一体=第12回シンポジウム「地方伝道を考える」
★苦しむ人の痛みに出会う旅=明治学院高校の韓国研修旅行
★東アフリカ最悪の干ばつ=ソマリアなど1200万人以上 飢饉に直面
★各地の賛美リーダー6人=CD合作=「すべてを共有しささげる」大切に
★三谷幸子さん102歳=主のみもとに凱旋=「賛美は生活から湧き出る神さまへの応答」


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