世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1075信(2011.08.29)

  • 米国で『共通英語聖書』刊行、すでに50万部
  • 米・メキシコ長老教会の提携関係に終止符
  • オランダのカトリック司祭が安楽死者の葬儀ミサ拒否
  • 教皇、『世界青年の日』大会を一般接見で回想
  • コミュニケーション団体が活動連携をいっそう強化
  • WCC総幹事がフィジー教会への祈り要請
  • 米東海岸の地震、ワシントン大聖堂にも被害
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎米国で『共通英語聖書』刊行、すでに50万部

 【CJC=東京】米国で『共通英語聖書』(CEB)の印刷本がこの7月刊行された。英国英語から共通英語へ、読みやすく理解しやすい聖書を作ろうという動きは、2007年1月に、同委員会の設立で始まった。アビンドン・プレス(テネッシー州ナッシュビル)など聖書出版5社がスポンサーとなり、ニール・M・アレキサンダー氏(合同メソジスト出版社社長)が発行人に、アビンドン・プレスのポール・N・フランクリン氏が副発行人兼責任者となった。総費用は350万ドル(約2億7000万円)。
 新約聖書は2010年8月刊行、この7月に新旧約合本がアビンドン・プレスが版元となって発売された。ただ出足は好調で、すでに3刷に入り印刷部数は総計50万冊に達している。外典付きも刊行される。6月にはデジタル版も公開され、ダウンロードが可能。トゥイッターやフェイスブックでも読み出せる。
 訳出には、対話を意図し、対極的な立場に立つ聖書学者が24教派120人参画したが、プロテスタント各派だけでなくカトリックからも12人が加わった。さらに翻訳を評価するため77グループ500人以上が参加、各グループで聖書を1節ずつ読み上げ、あいまいに受け取られる箇所を指定、それを元に訳出しなおした例もあるという。教会指導者や出版編集者の意見も聞くなど、関係者は結局700人を超えた。
 訳出には、最近の米国の言語動向を反映してか、人間を意味するほかに男を意味する「マン」を避け「ヒューマン」に置き換えている例が創世記2章22節「人から抜き取ったあばら骨で女を造り上げられた」(日本語は新共同訳)などに見られる。キリストも「人の子」であるよりは「1人の人」としている(マタイによる福音書10・23)。
 「主なる神は、土(アダマ)の塵で人(アダム)を形づくり、その鼻に命の息を吹き入れられた。人はこうして生きる者となった」(創世記2・7)では、「土の塵」の代わりに「肥沃な土地の表土」と記している。
 印刷版にはナショナル・ジオグラフィック協会の多色地図を収録している。

※注=オンライン・サイトの例
▽ トゥイッター twitter.com/CommonEngBible


◎米・メキシコ長老教会の提携関係に終止符

 【ニューヨーク=ENI・CJC】メキシコ長老教会は8月19日、大会で米長老教会(PCUSA)との139年に及ぶ提携関係を賛成116票、反対22票で解消した。米長老教会が公然同性愛者の教職任命を認めたことに対応した。
 現在、米国との国境付近で活動している米教会宣教師への制限、またメキシコへの宣教旅行や20以上の教会間連携関係への影響が懸念される。
 女性教職についても17〜19日に開催した特別大会では議論の末、女性教職否定方針を維持することを158票対14票で採択した。またすでに女性教職を任命した中会(教区)にいかなる猶予期間も認めないことを103票対55票で決めた。これで各中会は女性教職の任命を即時取り消さなければならないことになる。
 米長老教会世界宣教部門のハンター・ファレル部長は「長老派の宣教はメキシコでも世界中でもパートナーシップ(提携協力)関係の中で行われているので、メキシコ教会の声を深刻に受け止める。決定は遺憾ではあるが、メキシコ教会の証と提携の歴史に感謝し、宣教において神が導かれるところを、対話の中で、注意深く聞き取る」と声明で指摘した。


◎オランダのカトリック司祭が安楽死者の葬儀ミサ拒否

 【CJC=東京】オランダ南部リーンプデのカトリック教会のノルバート・ファンデル・スラウス神父が、重症で安楽死を選択した高齢者の葬儀ミサを拒否した。安楽死を選んだ人には教会で葬儀を行う権利がない、という司教の指示に従ったとしている。
 同神父は、「他の神父にミサをあげさせることも私の良心が許さない」と拒否したため、亡くなった人の家族は別の教会を探すしかなくなった。同国のANP通信が報じた。
 リーンプデ教会委員会がこれを問題視し、オルガンのための寄付キャンペーンを中止、神父に謝罪するよう要求している。同教会が属すデンボス司教区は取材に応じていない模様。
 オランダでは安楽死は法律上容認され、毎年約3000人が選択しているが、教会は反対の姿勢を崩していない。
 同国議会は2002年に安楽死を世界で最初に合法化した。すでに最高裁は1984年に安楽死を容認していたが、医師は訴追される可能性があった。合法化以来、安楽死を選択した人は04年の1886人から09年には2600人に増加している。


◎教皇、『世界青年の日』大会を一般接見で回想

 【CJC=東京】8月18日から21日まで、第26回『世界青年の日』大会のため、スペインの首都マドリッドを訪問した教皇べネディクト16世は、避暑先のローマ郊外カステルガンドルフォに戻り、24日、水曜恒例の一般接見の際、講話の中で同大会の体験を振り返った。
 バチカン放送(日本語電子版)によると、教皇は、全世界からの約200万人の若者たちが喜びと兄弟愛をもって過ごし、主と出会い、信仰の成長を分かち合ったこの大会を感動的なものと述べ、教会の未来に希望を与えるこの貴重な恵みを神に感謝した。
 教皇は4日間の行事を順番に回想する中で、2日目の若い修道女たちとの出会いで、召命を忠実に生きる素晴らしさ、その使徒的奉仕と預言的証しの重要さを指摘すると共に、続く大学教員らとの集いでは、言葉だけではなく生き方を通して真理を追求しながら、新世代の真の育成者となるよう願った、と語った。
 3日目に行われた神学生とのミサについて教皇は、司祭への召命が増えることを祈りつつ、現に、大会開催中に主の呼びかけを聞いた人も少なからずいるだろうと語った。さらに同日夕方の若い心身障害者との出会いについて、すべての人間への大きな愛と尊重、福音的愛を静かに証する人々から受けた感銘を語った。
 マドリッドでの若者たちとの出会いは、スペインと全世界にとって素晴らしい信仰の表現となったと教皇は述べ、この機会を通して共に考え、対話し、信仰生活の刷新を願って祈った若者たちが、それぞれの生活に戻り人々の間でパン種となっていくことを希望した。
 教皇は、あた、来年に各教区レベルで記念される『世界青年の日』のテーマを「主において常に喜びなさい」(フィリピの信徒への手紙4・4)と、2013年にリオデジャネイロで開催される国際大会のテーマを「あなたがたは行って、すべての民をわたしの弟子にしなさい」(マタイ28・19)を発表した。


◎コミュニケーション団体が活動連携をいっそう強化

 【CJC=東京】カトリックとプロテスタントのコミュニケーション団体が活動連携をいっそう強化することで合意した。
 『カトリック・メディア協議会』(SIGNIS、本部ブリュッセル)と『世界キリスト教コミュニケーション連盟』(WACC、本部トロント)は、これまでも『人権映画賞』を共催するなど協力関係にあったが、今後さらに協働を密接にすることを決めた。
 WIGNISのアルヴィト・ドスーザ総幹事がWACCのカリン・アクテルステッター総幹事とドイツのアーヘンで会談、8月19日合意した。
 SIGNISは、世界100国以上のカトリック教会のコミュニケーション、メディア専門家を「平和の文化のためのメディア」のために結集した組織。WACCが、120国以上の会員、パートナーで、社会変革のためのコミュニケーション推進を目的にしている。


◎WCC総幹事がフィジー教会への祈り要請

 【ジュネーブ=CJC】南太平洋のフィジー共和国で、軍事政権が『フィジー・ロツマ・メソジスト教会』年次会議開催を、同派の方向が政治的過ぎるとして許可しなかったことを受け、世界教会協議会(WCC)のオラフ・フィクセ=トゥベイト総幹事が、教会に対する政府の干渉だ、として抗議した。
 英公営BBC放送によると、教会指導層が軍に召喚され、教会代表ホサテキ・コリオ牧師の拘留も計画した。
 政府がメソジスト教会の年次会議開催を許可しなかったのは今年が3回目。軍事政権は憲法も停止、報道の自由を制限、反対派を拘留している。その中で教会が批判的立場を崩していないことへの締め付けと見られる。
 トゥベイト氏は、2009年のWCC中央委員会のフィジー教会支持の姿勢を再確認、世界のキリスト者に同国教会支援の祈りに加わるよう呼び掛けた。


◎米東海岸の地震、ワシントン大聖堂にも被害

 【CJC=東京】米東海岸バージニア州を震源地に8月23日、マグニチュード5・8の地震が発生、地震の対策がされていない建物も多い中で、隣接する首都ワシントンでも国会議事堂、ワシントン記念塔やリンカーン記念館などの施設に被害が出ている。
 聖公会の本拠『ワシントン大聖堂』でも石造りの塔が一部壊れたり、天使の像がとれるなどの被害が出た。1990年に完成した同大聖堂は、聖公会の総裁主教が着座し、歴代大統領の葬儀や大統領就任直後の礼拝を行う場として知られている。
 同大聖堂によると、30階建てのビルの高さに相当する尖塔の先端部分が損壊し、地面に落下したという。点検のため大聖堂は閉鎖された。現在、修復のための寄付を募集している。


◆短信◆CJC通信速報(Twitter:cjcpress)から。

≪中東≫
▽米宣教専門『アシスト・ニュースサービス』は、イランで活動している宣教団体『プレゼント・トゥルース・ミニストリーズ』のマッシアス・ハネイヤド牧師がイスラム教侮辱容疑で拘束されていたが8月27日、保釈されたと報じた。家族が保釈金を用意したという。
▽イスラエルの考古学者がエルサレム旧市街の下水道からローマ時代の剣、メノラー(7本に枝分かれした燭台)が刻まれた石片を発見した。

≪欧州≫
▽教皇べネディクト16世のスペイン訪問は納税者に不当な負担を掛けるとして抗議デモが行われていたが、バチカン放送は、費用は教会や巡礼者さらには献金によるので、迷惑は掛けていない、と述べた。
▽アイルランド・カトリック教会ダブリン大司教区が「金融崩壊状態」に陥った模様。聖職者の性的スキャンダルが影響してか、ミサ出席者も激減している。

≪北米≫
▽大型ハリケーン『アイリーン』が米東海岸に接近に伴い、8月28日に予定されていた首都ワシントンの『国立公園ナショナル・モール』に建てられた公民権運動の指導者マーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師の記念碑の除幕式は延期された。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(8月28日)=https://www.cwjpn.com
★WYDマドリード大会=教皇=青年たちに呼び掛ける=信仰を育て、世界に伝えよう
★アビラの聖ヨハネ=34人目の教会博士に
★大震災から5カ月=釜石で復興祈願祭=仙台教区SC釜石ベース、諸団体と協力="夜回り先生"招いて講演会も
★平和旬間行事・東京=広島「平和アピール」から30年=3司教がシンポジウム
★宗教倫理教育担当者ワークショップ=心に響く宗教授業を=長崎で全国の教師ら研鑽

 =キリスト新聞(8月27日・休刊)=https://www.kirishin.com

 =クリスチャン新聞(8月28日)=https://jpnews.org
★被災地の痛みに届く伝道文書=EHC=100万部トラクト配布「ラブ・ジャパン」計画
★イスラエルの子ら愛の贈り物=500枚の絵 被災地へ
★66年目の8・15=平和脅かす原発に焦点=弱者いじめ沖縄基地問題と同じ
★震災の中で教会は平和作りを=それはキリスト者のDNA=同盟基督・平和祈祷会
★世界平和の視野で国のために=とりなしの祈りの動機問う=国のために祈る夕べ


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