世界キリスト教情報

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世界キリスト教情報 第1074信(2011.08.22)

  • 教皇がマドリッド訪問、『世界青年の日』に参加
  • 教皇、コルベ神父の死去70周年で「英雄的」と言及
  • 「科学は聖書に疑問」と述べた教授が米キリスト教大学辞める
  • ドイツに聖職者をランク付けするサイト登場
  • 米『南部キリスト教指導者会議』の指導者交代
  • 盗まれたレンブラント作品が30キロ離れた教会で発見
  • 《短信》
  • 《メディア展望》

◎教皇がマドリッド訪問、『世界青年の日』に参加

 【CJC=東京】教皇ベネディクト16世は8月18日、第26回『世界青年の日』大会参加のため、スペインの首都マドリッドのバラハス国際空港に到着した。教皇のスペイン訪問は、バレンシア(2006年7月)、サンティアゴ・デ・コンポステーラとバルセロナ(2010年11月)訪問に続き3度目。
 バチカン放送(日本語電子版)によると、空港で行われた歓迎式の挨拶で教皇は、キリストに関心を持ち、自分の存在に意味を与える真理を求めて集う世界中のカトリックの若者たちに会いに来た、と訪問の目的を述べた。
 マドリッド大会は、16日の開会ミサに続き、17,18日はグループ別に司教らによるカテケーシスが行われ、大勢の若者たちがその教えに真剣に耳を傾けた。
 大会は教皇の現地入りと共に、一層の熱気を帯びた。至る所で世界各国の旗を掲げて歩く若者たちが行き交い、各所で行われている集いには歌や歓声があふれると同時に、祈りの場所では静かに祈る参加者らの姿が見られた。ブエン・レティーロ公園に設けられた告解場では、ゆるしの秘跡を受ける若者たちの姿が夜遅くまで絶えなかった。若者たちに秘跡を授けるために数千人の司祭らが4時間交代で対応した。
 教皇は19日、バチカン大使館で、若者たちの代表と昼食を共にした。5大陸から各2人、スペインから2人の12人の青年男女ボランティアが抽選され、食卓を囲んだ。教皇は若者たちの話しに熱心に耳を傾けたと言う。
 同日夕方からマドリッド中心部で、教皇と若者たちによる十字架の道行きが行われ、約60万人が参加した。会場には厳かな雰囲気が立ち込めた。若者たちはイエスのカルバリの丘での苦しみを共にたどると同時に、戦争や自然災害、麻薬問題、宗教上の差別など、現代の人類の様々な苦しみに思いを向けた。
 十字架は内戦で苦しむアフリカの青年たちや、失業している若者たち、体の不自由な人たちなど、参加者の代表が交代で担ぎながら進み、最後は、大震災で深刻な打撃を受けた日本とハイチの若者たちによって担がれた。
 教皇は、私たちがイエスのためにできること、それをヨハネの手紙一3・16「イエスは、わたしたちのために、命を捨ててくださいました。そのことによって、わたしたちは愛を知りました。だから、わたしたちも兄弟のために命を捨てるべきです」が明示していると述べ、十字架の道行きの中で人類の様々な形の苦しみを目にしたが、これらは主の後を歩み、私たちが主の慰めと救いのしるしになるようにとの、主からの招きである、と強調した。
 20日、クアトロ・ヴィエントス空港で、教皇を迎え、閉会前夜の祈りの集いが行われた。朝から各国の旗を立て、リュックサックを背負い会場に向かう若者たちの行列が途絶えることなく続いた。教皇が到着した開始時刻の参加者は約200万人。
 教皇は、若い人がキリスト教の信仰に忠実にあると共に、現代社会の中で大きな理想を追求し続けるにはどうしたらよいのかと問いながら、その答えとして、「父がわたしを愛されたように、わたしもあなたがたを愛してきた。わたしの愛にとどまりなさい」(ヨハネ15・9)というイエスの言葉を示した。
 教皇は、キリストの愛にとどまり、信仰に根をおろすなら、逆風や苦しみの中でも喜びの源泉を見出すことができるだろうと説き、「どのような逆境も皆さんを押しつぶすことがないように。世を、未来を、皆さんの弱さを恐れてはなりません。主は、皆さんが信仰によってその御名を地の至るところに伝えるように、皆さんが歴史の今この時を生きることを望まれたのです」と若者たちを励ました。
 雨風が強くなり、前夜祭が一時中断している間も、若い人々の活気と喜びがもたらす陽気さは変わらず、参加者は皆、会場にとどまり、歌いながら、辛抱強く進行の再開を待った。
 教皇は10分ほどして再びスピーチを再開、6言語で会場の若者たちに挨拶をおくった。
 最後の聖体礼拝を教皇は最も大切なものと位置づけ、聖体の前で長く祈った。この聖体礼拝のために、トレド大聖堂から高さ3メートル近い16世紀製作の聖体顕示台が運ばれた。祈りに集中する教皇の姿を目に焼き付けながら、深い沈黙に包まれた広大な会場で、若者たちも祈り続けた。
 教皇は21日、マドリッド大会の閉会ミサを、前夜祭と同じクアトロ・ヴィエントス空港で行った。ミサには前日の200万人以上が加わり、入りきれなかった人々は、スクリーンの設置された会場に集まった。また、ミサにはフアン・カルロス1世国王夫妻も参列した。
 ミサの説教で教皇は、「信仰は人間の努力や理性によるものでなく、神の賜物であり、その始まりは神ご自身の働きかけにある」と強調。信仰はキリストのいくつかの特徴を知ることではなく、キリストとの個人的な関係を築き、知性や意志、感情など自分のすべてをもって神の働きかけに従うことを要求するものと話された。
 さらに、「イエスに信仰のうちに従うとは、教会との交わりにおいて、イエスと共に歩むこと」とも、教皇は述べ、1人でイエスに従うことは出来ず、自分よがりの方法や個人主義的誘惑に陥るならば、間違ったイメージに惑わされて、イエス・キリストに出会えない危険があると、注意を促した。
 教皇は、イエスとの友情に励まされて、一人ひとりが異なる環境、時には拒絶や無関心に出会うかもしれない環境の中で、勇気をもって信仰を証しして欲しいと要望した。
 ミサ後のアンジェラスの祈りで、参加者たちの帰りを待っている友たちの存在に触れた教皇は、これらの友だち、特に困難な状況にある人々、そして家族や教会共同体の人々に私の愛情を伝えてほしいと述べた。
 最後に教皇は、次回2013年の『世界青年の日』大会の開催地は、ブラジルのリオデジャネイロと発表、沸きあがる拍手と歓声の中、スペインの若者たちからブラジルの代表者らに、『世界青年の日』の十字架が手渡された。
 教皇は同日夕、バラハス国際空港から空路ローマに向かった。


◎教皇、コルベ神父の死去70周年で「英雄的」と言及

 【CJC=東京】教皇べネディクト16世は8月14日、避暑先のカステルガンドルフォで、ユダヤ人の身代わりを申し出てアウシュビッツで餓死させられたマキシミリアン・コルベ神父の死去70周年を想起、「憎しみ、苦難、死という人間ドラマの只中」での英雄的行為、と指摘した。
 コルベ神父は1982年、教皇ヨハネ・パウロ2世によって聖人に列せられた。


◎「科学は聖書に疑問」と述べた教授が米キリスト教大学辞める

 【CJC=東京】米ミシガン州グランドラピッズの『キャルバン大学』のジョン・シュナイダー教授(宗教学)が25年勤めてきた教壇を離れることになった。
 遺伝学と進化論は、天地創造とエデンの園に関する聖書の記述に疑いを持ち込んだ、と北米キリスト改革教会の『ザ・バナー』誌に寄稿したことが反発を招き、大学に免職を要求する意見が多数寄せられた。ただ同僚のダニエル・ハーロー教授も同様の論文を発表しているが、現在の所、教授の地位はそのまま。
 同誌のインターネット・サイトには「教会と大学を、虚偽を教える教師や正統的でない信仰から防衛するため、こいつらを去らせることが正しい」との書き込みもあった。
 同大教授の1人は、匿名で、キリスト教大学の中には、「科学的な証拠を無視することで成功している」と言う。
 大学とシュナイダー教授は共同声明で「遺伝科学とキリスト教神学で人類の起源に関して展開された最近の学術活動は、大学界とその周辺で正当な関心を呼び起こした。大学は信仰と科学の問題を探求し続け、そこではシュナイダー博士の成果は専門的かつ敬意をもって言及されることになろう」と述べている、
 今回の事態は、創世記に描かれているアダムとイブは歴史的事実ではない、と述べたことが原因。「自然界にも人間の道徳的経験からも、失われてしまうような楽園といったものは存在しない。キリスト者は、人類の始まりに関する伝承を再構築するという課題を持っていると思う」とインタビューで語ったことも問題となった。
 同教授がキャルバン大学と結んだ就業条件に違反したとする大学側との折衝の後、同教授は「早期引退」を選択したのだ、と高等教育関係のブログ運営者マイク・ルース氏は「キャルバン大学の恥」として書き込んでいる。
 大学側は、引退を選択したことで、教授の研究が大学に「損害や混乱をもたらす」ことはないとしている。


◎ドイツに聖職者をランク付けするサイト登場

  【CJC=東京】ENI通信によると、ドイツに聖職者をランク付けするサイトが登場した。教会に通う信徒たちに、自分の教会の「羊飼い」の礼拝、青年活動、高齢者対応、信頼度、時事的な問題への関わりなどの対応の仕方を評価してもらおうという。この『ヒルテン・バロメター』(羊飼いのバロメーター)は6段階評価で、教皇ベネディクト16世は3・81とか。
 「『ヒルテン・バロメター』を案出したのは、司牧(牧会)活動というものは質が問われるべきだから」とサイト設立者の1人アンドレアス・ハーン氏。「聖職者と教会員の対話のための公開の場としたい」と言う。
 独福音教会(EKD)は先ごろ、教会活動に関する声(フィードバック)を集める目的のパンフレットを発表した。著者の1人フォルケルト・フェンドラー氏は「礼拝の質を向上させようとするなら、フィードバックが欠かせないことははっきりしている」としており、『ヒルテン・バロメター』を有力な手段と言う。
 ハーン氏は、ウエブサイトがすでに50万回接触されており、これはフィードバックのためにはデジタルメディアが効果的だと感じる人が多いことを示している、と語った。
 しかし教会の中には懐疑的な人もいる。ベルリン市中央部のプロテスタント教会グループのクリスティアーネ・ベルテルスマン報道担当は、ウエブサイトでは「真面目な」取り組みにはならない、として「もしもベルリンに来て、誰も知らず、そこで落ち着けるキリスト教共同体を探そうとするなら、このウエブサイトは指針として役立つかも知れない。しかし実際に礼拝に出掛け、自身で判断するべきなのだ」と言う。
 ベルリンのホルガ・シュミット牧師はサイトを「全ての心にたどりつく道を求める非常にカリスマ的で才能のある現代的な若い羊飼い」と描写するものの、「公開されておらず、匿名だ。このような対話はオープンにされなければならず、それで聖職者は応答できるのだ」と電話インタビューで語った。
 これに対しハーン氏は、匿名だから議論が盛り上がるとして「多くの人は司祭に直接話したいとは思っていないし、その働きで気にいらないところや、改善の余地があるところを告げたいとも思っていない」と反論している。


◎米『南部キリスト教指導者会議』の指導者交代

 【CJC=東京】米『南部キリスト教指導者会議』(SCLC)は新会長にアイザック・ニュートン・ファリス・ジュニア氏を選任した。同氏はSCLCを1957年に創設したマーチン・ルーサー・キング・ジュニア氏の甥。
 今回の選任は、ハワード・クリーシー会長がこの7月死去したのを受けての措置。


◎盗まれたレンブラント作品が30キロ離れた教会で発見

 【CJC=東京】米カリフォルニア州ロサンゼルス近郊マリナデルレイのリッツ・カールトン・ホテルから8月13日盗まれていた、17世紀オランダの画家レンブラントの作品とされる絵画がロサンゼルスのセント・ニコラス・エピスコパル教会の建物で15日見つかった。
 犯人は作品に付いていた額の裏紙をはがそうとしてあきらめ、施錠されていなかった建物の中に放置したとみられる。
 作品は1655年ごろに描かれた縦約15センチ、横約25センチのペンスケッチ。タイトルは「審判」で、約25万ドル(1900万円)の価値があると推定される。それがホテルから30キロも離れた教会へ持ち込まれた理由は明らかでない。同教会のマイケル・クーパー牧師も、こんなことでメディアの注目を集めるとは、とびっくりしている。


◆短信◆CJC通信速報(Twitter:cjcpress)から。

≪アジア≫
▽教皇べネディクト16世は8月15日、新駐日教皇大使にジョゼフ・シェノットゥ駐タンザニア教皇大使(67)を任命する、と発表した。着任の日取りは未定。新大使はインド出身、教会法博士。

≪太平洋≫
▽オーストラリアの電子出版技術関係の有力デベロッパー『ユーロフィールド・インフォメーション・ソリュージョン』(EIS)が、聖書欽定訳(KJV)をウエブサイトから自由にダウンロード出来るようにした、と発表した。
▽オーストラリアの教会指導者は、マレーシアからの亡命志願者阻止政策を差し止めた裁判所の決定を歓迎している。

≪中東≫
▽イラン当局が南西部で聖書6500冊を押収した、とキリスト教系『モハバト・ニュース』が報じた。詳細不明。

≪北米≫
▽米テネッシー州メンフィスのジュニア・アカデミー(小学校)のスゼット・ヨーク校長(49)の遺体が8月10日朝、学校で発見された。警察は殺人容疑で16歳の生徒を逮捕した。
▽米フロリダ州オーランドにあるメガチャーチ「ニューディスティニー教会」のザチェリー・ティム牧師(42)が8月12日、ニューヨーク市中心部のホテルで死んでいるのを発見された。死因は不明。
▽米南部市民会議は、アイザック・ニュートン・ハリス・ジュニア氏を新会長に選出した。創設者マーチン・ルーサー・キング・ジュニア牧師の甥。
▽米非営利調査機関『ピュー・リサーチ・センター』が8月9日、2006〜09年に宗教に関係する暴力や迫害が増加した、との調査結果を発表した。迫害の対象となるのは、主にキリスト教徒とイスラム教徒という。
▽米カリフォルニア州のカトリック教会オレンジ教区は、クリスタル・カテドラルの理事会が7月31日売却しない、と決定したのを受け、改めて5360万ドル(約40億円)で購入したい、と申し入れた。8月10日発表した。
▽米国の保守派ルーテル保守派の『北米ルーテル教会』(NALC)はオハイオ州コロンバスで開催した年次総会で新指導者としてジョン・ブラドスキー牧師を主監督に選任した。


《メディア展望》

 =カトリック新聞(8月21日)=https://www.cwjpn.com
★平和実現へ 信仰を強めて=長崎8月9日=ミサ説教で駐日教皇庁大使
★新潟・上越市で7教会が参加=教派超え 平和求める集い=子どもも大人も握手交わす
★被災者支援「傾聴」で=仙台教区サポートセンター=準備のための研修会始める
★活動停止命じる=ネパールの司教 新求道共同体に
★修道女が支援活動=暴動被害者の悩み相談など=ロンドン

 =キリスト新聞(8月20日)=https://www.kirishin.com
★ルーテル支援センターとなりびと 東京で活動報告=「祈ってくれ」と言われ=粘り強く獲得した信頼
★元巨人軍 篠塚コーチが野球教室=チャイルド・ファンド・ジャパン=大船渡市で開催
★AIDS文化フォーラムin横浜「宗教とエイズ」=イスラム教から初参加
★日本・中東アフリカ文化経済交流会=「民衆の革命」が意味するもの=東京で講演会
★仙台キリスト教連合被災地ネットワーク=ディアコニア部門を法人化

 =クリスチャン新聞(8月21日)=https://jpnews.org
★お茶っこはうすオアシス=本郷台キリスト教会=石巻市に救援拠点=心に寄り添うために
★日韓共同でLED十字架プレゼント=被災地の空に希望の光を
★外国人の安否情報が欠落=第15回外登法問題国際シンポ=被災地の弱者支援を訴え
★2011宣教=フォーラム青森=県全域の教会から100人=重荷と祝福分かち合い
★アルコール依存 回復の家=青十字サマリヤ館=老朽化で改築募金


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